「全員赤点候補だと… 合わせて100点ってどういう事だ」
「うっせーぞ…風太郎 諦めろ~」
「幸太郎こそ知ってたくせにそうやって重要な事隠す癖 何とかしてくれないか?」
「へい、へーい」
家を出て暫く 姉妹の実力を図る為行われたテスト
その事を思い出しては今朝からずっとこの調子だ
頭を抱えては『ありえないだろう』と何度も呟く
風太郎の考えは『誰か一人赤点の回避』それさへ出来れば良かったと話す
ここは俺の予想通りだった…
だが、五月が俺に伝えようとした事やあいつらの勉強への意欲無さを見て俺も薄々はそうではないかと感づいてはいたが、ハッキリした事実が出るまでは風太郎にも黙っていた
『合格ラインを超えた奴には金輪際近づかないと約束しよう』
風太郎は言い放ったが現実は甘くは無かったのだ
彼が思い描いた 一人だけ勉強見よう作戦 淡い夢は、塵となって消え去り
中野姉妹という強大な存在に圧倒されテスト用紙もただの紙切れ同然に
彼女達から返却された紙には知りたくもない現実が俺達の前に現れた
ガタガタと肩を揺らし逃げ行った彼女達を風太郎はその日眺めてる事しか出来ない程
脱力してしてしまい
全員の勉強を見ないと行けないという過酷な現実が俺たちに待っていたのだ
今では五つ子卒業計画と名を変えている
仲のいい事に全員合わせて100点満点だ。花丸でもあげたくなるが、ここは小学校ではなく高校だ。褒められた事ではないのが本音だ
元から5人いる事を知っていた俺はある程度余裕はあるが
弟はそうもいかない様子だ これから先の事を考えながら
夜は自分の勉強までやらないといけないんだ
「なぁ 風太郎…暫く俺があいつ等の相手するか? お前も勉強したいだろ」
「はぁ? 良いよ お前だってバイトあるだろ それなのにこっちに本腰入れたらまたぶっ倒れるぞ」
「そんなやわな作りしてねーよ 心配すんなよ」
「今度また あんな事になったら」
「言わなくて良い 俺が一番わかってる まぁ気長にやるぞ」
「あぁ この際全員見てやるよ 一人づつ信頼勝ち取ってやるよ!」
「お互い無理のねーように頑張るぞ さて走っか」
【今度また、あんな事】 風太郎に言われなくても俺が一番分かってる
家族が泣く姿何てもう二度と見たくねぇ。
不意に頭に過ぎる あの記憶………誰も彼もが報われない記憶だ
でも今はその事は記憶の隅っこにでも閉まっておこう
何だかんだと言いつつ俺がこの依頼を投げ出さずやる気をだしてるのは
勿論 勇也さんや家計の為でもあるし
そして何より 中野姉妹が心の底で笑ってくれる姿を俺は見たいのだ
それに恩返ししなくては…………
俺の前に現れた【中野六花】そう名乗ったあの女の子の為にも………。
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ーー
「あぶねぇ 着いた」
「はぁ はぁ ギリギリセーフ 幸太郎お前早いよ」
「運動しない、お前が悪りーんだよ」
「……ん 見た事無い外車だな 百万くらいしそうだな」
「適当言ってんな あぶねぇぞ」
アパートから学園まではそれなりに距離があり
今日みたいに走って来なければ間に合わず門前で立ち往生もざら
風太郎は肩で息をし 辛そうなにしている
普段から勉強以外は切り捨てている為、体力勝負になると、とことんそれが目立つ
俺や風太郎が走って到着する中
結構高めな外車がその場に停まり
風太郎が興味本位で近づくが、ぶつかれば洒落にならない為少し距離を開けさせた
「あっ コウタロウ!!」
「上杉さんにお兄さん おはようございます!!」
「何なんですか?じろじろと不躾な」
車内から中野姉妹が降りて来た
外車で登校かやはりリッチだなぁ
「よう お前らおはよう」
「幸太郎君 おはようございます!」
「ん?今さ五月 こいつの事さ名前で呼ばなかった?」
「そ、それは……」
「二乃も一々噛みつくな 上杉君が二人いると厄介だから俺が頼んだんだ 悪いか?」
「キモ」
「はーい はい まぁ二乃もおはよう」
「…………っ」
テスト以前まで上杉君だったし
一昨日もそこまで会話する暇もなかった為 五月から名前呼ばれる機会もなく
急な変化だと思い二乃が気にするのわかるけどさ 一々嫌味っぽく言うのだけはやめて欲しい
五月が意味もなくしょんぼりしてしまう。
「って 悠長に挨拶してる場合かお前ら良くも一昨日は逃げて ってまたかよ!」
「やめろ 風太郎…… がっつくなビビッて余計逃げんだろうが ほれ見ろ 無害だ無害」
別に叱るのはダメとは言わんが、タイミングという物がある
今みたいに出会いがしらに挨拶もせず叱るのは、余計にあいつらを警戒させるだけだ
俺は手を上げ 危害は加えないと主張し 彼女達は疑り深く見るが一応は走るをやめてくれた………。
「騙されねぇーぞ つかアンタの見た目で無害とかないから!」
「何だかんだ言いつつ コウタロウくんも参考書とか持ってそうだしね」
「コウタロウも油断させて勉強させてくるかも」
おい 二乃おめーだけ後半悪口だろ
今更気にしないが、目の前で言われるとカチンとくるぞ
ビシッと指をこちらに向け言葉を飛ばしてくる
(五月 うちの事だけどあいつ等には黙っててくれるか? 家ではああは言ったが言いふらす事でもねぇ)
(妹さんやお父さんの為ですよね 口外はしません 幸太郎君は安心してください)
(ありがとな お前には貸し作ってばっかですまん)
俺と風太郎の事情は家に来た五月しか知らない
バレてあいつ等の同情さそう訳にも行かないしな
さり気にお父さんと言ったがスルーだスルー。
「それで私達の力不足は認めます けれど幸太郎君にも言いましたが自分の問題は自分で解決します」
「勉強は一人で出来る」
「そうそう 余計なお世話って事」
「そうかじゃ 一昨日のテストの復習は勿論したよな!」
「…………」
「はぁ幸太郎 頼む」
「はいよ 問一だ 厳島の戦いで毛利元就を破った武将を答えよ ヒントは無しだぞ」
俺達は事前にこいつらが復習しないのを予測し
答えられるかを試す為 問題を暗記してきた。
その中でも簡単な部類を選んできたつもりだが…………。
『『無言かよ!!』』
三日間接して居て分かってはいた
5姉妹全員勉強が大っ嫌いだと言う事が
んで 二乃は特に俺が嫌いだという事もだ
昔はもう少し素直だったのになぁ…………。
「心の距離を感じるぞ」
「奇遇だな 俺もだ」
ただ 勉学が嫌いな事で中には得意な事も存在はしていると言う事もある
(幸太郎 見て見ろ 三玖だけはさっきの問題正解してんだよ)
(本当だ でも何で答えないんだ?)
(答えない 答えられなかったって感じか………本人に聞くのが手っ取り早いな)
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「三玖 少しいいか」
昼飯時
食堂で俺は珍しく人が来るのを待っていた
『上杉から話しかけてるぞ』とかぬかしてくる輩がいるが、今は無視だ無視
それよりも三玖と少しでも会話をしていきたい
こいつには家に入れてもらった恩があるし
少しでも手助けをしてやりたい 本当に最近は柄にもねぇ事ばっかりしてるな
呼び止められた三玖はその場で固まり
一回転して去ろうとしたが、『ふぅ………』と息をしたかと思えば
ふり返り何食わぬ顔でこっち向かってくる
「お前好きだな 抹茶ソーダ うまいか?」
「コウタロウが意地悪するなら上げない」
「そうかい 残念」
「欲しいの?」
「今は良いかな 機会があればそん時貰うわ」
「うん それでコウタロウだけ?」
「あぁ 風太郎なら向こうに座ってるぞ」
「帰ろうかな」
「嫌ってやるな あいつは俺よりましだ」
「そうでもないよ………」
「どうだか んじゃ向こうに行こうぜ ここだと通行の邪魔に」
「何か 人が避けていく」
「はぁ…………」
「コウタロウ?大丈夫」
出入りの激しい場所での会話は避けたいと言ったが
案の定人が、通行する事はなかった何時も見たいにみんな俺を見ては避けていく
噂と同じだ今は無視だ無視………。
「幸太郎に三玖 良く来てくれた それで三玖聞きたいんだけど」
「上杉さーん お昼一緒に食べませんかぁー お兄さんもどうですか?」
「四葉よ 急に出てくるな 風太郎の心臓が止まるところだったぞ」
突然の襲来だ
今回三玖との話の為に俺と風太郎は他の姉妹の目を掻い潜って彼女を発見出来た
その為 先ほど五月からも『お昼どうですか? お勉強はしませんがお昼ならご一緒します』
笑顔で誘ってくれたが、俺が風太郎と一緒に食べると言えば
『は? えっ冗談ですよね 幸太郎君が』ぶつぶつと何かを言いその場で固まってしまった
何か色々とひどい思い込みをされていそうだが
最大の難関を超える事が出来て安心しきってのこれである。
四葉は何処から出てくるかわからねーんだよ
どうやら一花も同席してるようでこっちが気づけば手を振ってくれる
お前も大概神出鬼没だな………。
「んでさ み」
「見てくださいこれ全部間違ってるんですよー あっはははは 宿題も全然です」
「ふぬぬぬぬ」
「落ち着け 風太郎 一花見てねぇで止めてくれ」
「はーい ほら行くよ邪魔になるし」
「一花も見てもらおうよー」
「うーん パスかな 私達 ほらバカだしね?」
「別に卑屈になるなよ 見る位ならこっちも気にしねーよ」
一花も一花で何言ってるんだか
勉強に興味あると思えば何もしないし テストしよと言えば寝てるしなぁ
笑ってるその顔も何処か嘘くさいんだよ…。
「それにさ 高校生活勉強だけってどうなの?もっと青春をエンジョイしよう」
「例えば何だ言うだけなら ただだぞ」
「そ れ は 恋とか!」
「!」
「恋ねぇ」
「あれは、学業から離れたもっとも愚かな行為だしたい奴ならすればいい…だがそいつの人生のピークは学生時代となるだろう」
「この拗らせ方 手遅れだわ それでコウタロウくんの方はどうなの 少し意味ありげに呟いていたし」
「そうだな 風太郎程は偏見はもってねぇぞ 恋は人の生き方を変える重要なもんだと俺は思ってる」
「へぇ 案外ロマンチックな事言うんだね」
「茶化すな 俺のはただの意見の一つだ」
恋とは色々な意味合いがあると俺は思っている
それはある意味では学業や勉学などと似たようなもんだと俺は認識しており
体験すれば人の価値観は少なからず見えてくると俺は解釈してる
なお、相手が居ればの話だ。
「あっははは お兄さんが言うような恋愛も良いですけど やっぱり相手がいないと成立しませんからねぇ 三玖はどう? 好きな男子とか出来た」
「えっ…………私は その い」
「い?」
「いないよ コウタロウの馬鹿!」
「何で俺が罵倒されんだ…。」
「あの表情 姉妹の私には分かります 三玖は恋をしてます!」
一花の発言から始まり三玖に渡されたバトンは彼女が去って行くことで終わってしまった
結局は朝方の事も聞けずじまいだし 五月に風太郎の事紹介する時もだ
どうしてこう話がうまくいかないんだろうな…。
ーーーーーー
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ーー
(三玖が恋かぁ… あいつ等が好きな相手か…。)
きっとそれは喜ばしい事なんだろうな
知らぬ間に成長した彼女達の一面として俺は受け入れてやらねば…。
「あれ 幸太郎君戻ったんですね 昼飯はきちんと食べましたか パンやご飯だけでは駄目ですよ
幸太郎君はただでさえ 家庭教師以外で週四でバイトを入れてるんですから 聞いてますか?」
「五月か、すまんすまん 少し考え事してたんだ。無視してた訳じゃねぇぞ」
「なら 良いのですが具合が悪いのなら保健室に行きますか?」
「いいよ というか俺のプライバシーどんだけ詳しいんだ バイトの日数教えた覚えねーぞ
お前は俺の母親かよ」
「……さて 準備しないといけませんね」
何だそのわざとらしい言い方は………
「おい 五月おめぇ!」
「うぅぅ…」
「良いよ別に 知られた所で俺に何のデメリットがある訳でもねぇから だから怯えんな」
「平気です 別に怯えてませんから」
少し熱くなりすぎたな教室で、これだけ声出してたら
周りもついついこっち見ちまうしな。
特に五月の事だ俺を心配してなんやかんや調べたんだろうな
本当にこいつはどれだけ俺の事知ってんだ?
そこんところは不思議だよ
…『どれだけ知ってんだ』か
五月を見習う訳じゃねーが 俺も俺なりに三玖の事を知ってあげるべきだろう
『やる気あれば来てくれ』とは少しばかり投げやり過ぎる言葉だと改めて思い知った
「五月 サンキューな お前のお陰で少し分かってきた」
「えっ あはは 何かは知りませんけど、少しでも幸太郎君のお役に立てたなら幸いです」
「そう言うな 驚かされる事もあるけど参考になる事もあんだ 謙遜すんなよ
ん………(手紙か」
「幸太郎君 何かありましたか?」
「何でもないよ 俺はちょっと用事あっから 何かあれば風太郎に伝言頼んだぞ」
「それをするくらいなら 幸太郎君を探し出して直接言いに行きます」
「こえーよ…………」
参考になる事も言うけどやっぱり五月の俺への扱いが、日に日にエスカレートしてくんだけど
携帯なんて持ってたらGPSとか付けられそうで余計に買う気しないわ………。
(コウタロウへ 昼休みに屋上へ来て、コウタロウに伝えたい事があるどうしても
この気持ちだけは抑えられないの。 三玖より)
机の中に入っていた手紙に主は 俺が今まさに探している
中野三玖からの物だった 昼休みにて屋上へと
如何にもなシチュエーションだが、何を伝えるつもりかは知らんけど
俺も三玖を知る為 あいつと話をしないとな…………。
「待ってろよ三玖」