上杉幸太郎と六等分の思い出   作:Aikk

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ここから先更にフラグ管理や改変が大変だ…………。

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皆さまありがとうございます!


第七十九話 不良少年と長女の異変

『お兄ちゃんが…。バイト休んで勉強してる』

絶望を直視したかのようなその表情は何なのか…。

全国模試と真っ向勝負を挑むため俺は…。バイト先に連絡を入れ

『暫くおやすみを頂きます』と電話越しで頭を下げた

 

 

高校生の中で一位の成績を収めないと俺は家庭教師の補佐を辞める必要がある…自己責任だけどさ

加え…。幹雄さんとの取り決めだ 学校の転校まで視野に入っている

今度戦う相手は全国…。生半可な覚悟と勉強では一位なんて夢のまた夢

昨日の夜から今日の朝まで弟と俺はリソースを全て勉学に注ぎ参考書片手に呪文のような言葉の羅列をずーっと唱えている

らいは『怖いよ!』と部屋の隅に縮こまってしまい…。勇也さんも呆れていた

『幹雄との約束だろ?…。俺はお前一任してる…。』けして投げやりな言葉ではない

あの人なりに俺を信頼してその言葉を送ってくれた…。

ありがたい限りで全面の信頼を受けるのなら怖いものは何もない

 

ただ一人俺が勝てない人物も今では、高校を卒業している…。最大の障害となれば

勿論風太郎だろう…。本気のこいつと真っ正面からぶつかる…。どんな結果でも悔いはない

 

 

「数式は頭に入ってる…。この問いも確実に出てくるはずだ…。

 y=3x2ー……」

 

ぶつぶつと未だ呪文を唱える

ギリギリまで時間を費やし気づけば風太郎は先に家を出ていた

らいはも学校に向かっており残った。俺は戸締りを確認し…。異常がなければ

ノートと参考書を片手にひたすら復習…。ここまで真面目に勉強しているのも久方ぶりだ

今まではある程度覚えて…。それを用紙に書いて行けばいい

流れ作業…。まぁ実際にポカを起こし 前回の学年末試験ではまさかの20位ギリギリのライン

あの調子で勉強は続けている訳にも行かない…。真剣に問題と向き合おう

 

「コータロー君…。 そんな仏頂面で朝からどうしたのー ちゃんと前見よう」

「一花…。」

「おっはー…。コータロー君」

 

既視感だ…。

一花とこうして登校するのは何度目だろうか…。

カップに入った飲み物を片手に眼鏡スタイルと珍しい一花の姿だ

 

「あいつらは一緒じゃねーのか?」

「えっ…。あーうん…。ちっと飲み物を買いにね…。今日は偶然だよ」

「そうか…。」

「朝から頑張る君にこれをプレゼント」

「偶然のわりにプレゼントとは…。お前はすごいなー」

「えっー…。まぁ細かい事は気にしない気にしない…。さー飲んで飲んで」

「目を覚ますには丁度いいか…。あんがとな…。さて遅刻するし行くぞ 一花ー」

「うん…。行こうかコータロー君ー」

 

何にやら今日の一花はやけにテンションが高く見えるが気のせいか?

別に問題でもないし…。一花との登校も俺は楽しいからな…。

隣を歩く少女に一度視線を写せばにっこり笑顔…。なんだろう

 

「みんなやフータロー君から聞いたよ…。コータロー君もお父さんとひと悶着あったって」

「ん?風太郎から…。何時聞いたんだ?…。」

「あぁー…き 昨日メールで教えてもらって」

「あいつが一花とメールか…。やるもんだな」

(危ない…。実はずっと待っててフータロー君と話してたなんて言えない)

 

「まぁ…。確かにな お前らの父親と色々あった…。このままだと

 俺たちは家庭教師と補佐を辞める事になる 何時もの話だ」

「お父さんも中々粘るね…。」

「全国相手だ一問でも外したらほぼアウト…。」

 

肝が据わってるように見えてるなら気のせいだ…。

昨日からずっと謎の腹痛に悩まされてる…。表情に出ないのは…。2年で色々と味わったお陰

すげー皮肉な話だよ…。

 

「しかも相手が…。あの武田君でしょ」

「武田か…。確かに脅威だな」

「その口ぶりからすると…。知ってた?」

「中学の後半からだ…。好青年時代の俺を勝手に尊敬してた」

「へぇー…。3年近くなんだ」

「と言っても学校は別だぞ…。 まぁあの一件で勝手に疎遠にもなったりと忙しい奴だよ」

 

尊敬されること自体は今でも嫌と言わない

でも…。過度な期待はされる事を苦手としている

特に当時の俺は今と真反対だ…。性格もある意味歪んでいる

そんな男に憧れてるんだ あいつはもの好きな奴だ

根はいい奴だと思うが…。俺への反発と風太郎への対抗意識でとりつく暇もない

最初からその気もないけど…。 果たしてどっちが子供なのか考える程嫌になるな

 

「と…。舐めてはいないが俺の本当の敵は…。風太郎だ」

「確かに彼は…。勉強オバケで何時も参考書片手だからね…。兄弟なんだし手加減してもらったら?」

「残念だが…。俺はそんな気はない…。あいつとは正々堂々 小細工無しで戦う 

 あいつも加減する気はないと言ってるしな」

「そ…。そうだよね 正々堂々が一番だよね」

「そう言う事ー…。」

 

弟だからと加減を貰って…。それで得た勝利は何の成果も生まない

もしそれがあの父に知られればそれこそ俺たちは…。この姉妹には相応しくもない

 

 

「あのさ…。コータロー君…。君の件をみんなは知ったよね?」

「転校や学期末の点数の事か…。」

「その事なんだけど…。先に謝っておくべきだったね…。」

「もーいいよ 下手に誤魔化してた俺が悪い…。一花も悪かったな…。心配させたろ」

「本音を言えばね…。言い訳にしかならないけど…。君は凄く真剣な顔だったから…。」

「割とヘビーな内容しな…。俺は怒ってない 誰が見たのかそれを気にしてただけだ

 一言言うなら…。変な風に気を遣うなよ お前はお前らしくしてろ」

 

         手紙を読んだ犯人の一人は四葉

            最後の一人は一花

 

残った一人が読んでないとは限らない

四葉は『手紙は服の上にあった』と口にし。それがずっと気になっていた…。

その時点でおかしい 重要な内容が記載された手紙だ…。分かりやすく置きはしない

きっと一花が手紙を読んでる中で脱衣所に誰か(四葉)が入ってきた

慌てた彼女は手紙を元の場所に戻すのを忘れ…。

姉妹を探していた四女がそれを発見した そんなところだろ…。

 

 

「まぁー色々障害はあるが…。負ける気はなし…。風太郎とも話して

 これからは暫く勉強漬けだ…。」

 

「中々大変だけどね…。」

 

「一花に至っては俺たちは心配はしてない…。お前はずっと仕事と勉強を両立してきた

 前回のテストも姉妹の中では一番だ…。この調子で頼んだぞ」

 

「ふふ…。君は相変わらず 話に乗せるのがうまいね」

 

「本音だ本音…。 それにお前が眼鏡とは珍しいよな…。お勉強スタイルか」

 

「お勉強とは違うけど…。どう少しは知的に見える? 一応は変装なんだけどさ」

 

「変装ねー…。そりゃ女優さんだ…。人目を引くしな」

 

「実は昨日さ…。以前私が出た映画の完成披露試写会が合ってね…。

 そこそこテレビでも取り上げられてるんだよ」

 

「以前…。お前が出た映画…。」

 

「お 覚えてる?」

 

「…。タマコちゃんの奴か…。」

 

残念な事にうちにテレビは存在しない

せっかく真弓ちゃんが用意してくれた一花が出演しているドラマを録画したDVDも閉まったまま

彼女が出た試写会も拝むことは出来なかった…。

 

「その為の変装ねー…。タマコちゃん」

 

「もー恥ずかしいから言わないでーー!」

 

「お前が出てたならさ…。見たかったのは本当だよ」

 

(やっぱり…。私が一番彼に近い…。)

 

「そにしても変装かー…。お前ら得意だもんな」

 

「得意だよ…。急な用事の為に何時も常備してる…。四葉や二乃

 それに…。三玖や五月ちゃんもすぐに…。」

 

「ん?」

 

鞄とは別に肩にかけている袋の中身は…。様々な小物類だ

ヘアーバンドやカチューシャに何処かで見たウサリボン…。

何時でもどこでも姉妹で入れ替われるようとは気―抜いたら実は二乃でしたーと来そうで怖いな

 

鞄を漁っている一花は突然手を動かすのをやめ

表情を変える…。別に可笑しなことは言ってないけどな

 

「あっははは…。そんなことしたら二人共困るよねー…。ごめんごめん」

 

「余り見くびるなよ…。爺さんとの修行で風太郎も俺も成長した」

 

「へぇー…。」

 

「先日なんて…。変装した三玖をノーヒントで見破れたぜ

 昔の勘を戻してきたんだろうな…。」

 

「昔の勘…。ねぇーコータロー君」

 

「なーんだ一花?」

 

「昔の事なんだけどさ…。」

 

「ん?一花も思い出してきたのか…」

 

 

「うん…。でさ 君は昔さ」

 

「って…。向うにいるのは風太郎と姉妹たちだぞ」

 

「いるね…」

 

 

「あいつら合流してたのか…。」

 

「……………」

 

「二乃と風太郎も以前とは違って来たな…………四葉も珍しく参考書読んでるし

 三玖も何か持ってるな?…………五月ぃ お前は食べ歩きが好きだな……。」

 

 

 

(やめて…………私はここだよ コータロー君……君が想ってる子は君の隣にいるんだよ

 だから…………。)

 

 

「二乃もバイトに馴染んで来たし…。三玖は何かやりたい事でも見つけたのか

 向かいのパン屋でアルバイト頑張って欲しいな…。

 五月は中々バイトを見つけられないと言いながらもうちに食べに来たしな……。」

 

(もう……やめて……三玖や五月ちゃんの名前を呼ばないで……私だけを見てよ

  君の初恋は叶ってるんだよ……だから私だけを見て私と話して……。)

 

 

「ねぇ………コータロー君」

 

「俺の手なんか繋いでどうしたー?」

 

「このままさ…。二人でサボっちゃおうよ」

 

 

風太郎たちの光景を眺めている時

俺の左手を一花が掴む……一体何ようだと視線を直し

理由を聞けば……。このままサボってしまおう発言…。

一花は何をいってるんだ…………。

 

「はいはい…。冗談はそれくらいでいくぞ」

 

「いいじゃんすこしだけー」

 

「模試があるって言っただろう?」

 

「一限目は体育だよ」

 

「走れば気分も爽快だぞ」

 

珍しく駄々をこねる一花の手を引き校舎へと走って向かう

『戻ろう―』と悪魔の囁きだ……。

そんな言葉に俺は乗らんし一花もずる休みはさせない

勉強と仕事が両立出来てて……。ここで休まれたら風太郎の表情がどうなるか…。

 

下駄箱に入ったと同時に鐘が鳴る

まさか遅刻ギリギリだな…。

 

「やべー……。 走るぞ」

 

「もーコータロー君も真面目だね」

 

「お前らの兄貴みたいなもんだし…。その一人が『さぼろう』って言えば心配になる

 さっさといくぞー」

 

(またそれだ…。私はいい加減17なんですけど…。もう少し女子として意識してもいいじゃない

 それに私抜きで話も進めてるみたいだし…。 うまくいかないなぁ)

 

むくっと頬を膨らませる一花さん

何が合ったかは知らんが…。先ずは学校だ…。出席日数だけはちゃんと稼いでくれ

わりと心配になるんだからさ…。

 

 

「よーーし 着いた」

 

「着いちゃったよ」

 

「着いちゃった…。じゃねーよ …。はぁ 全くさ」

 

教室の前に着き

未だにぼやく一花をしり目に扉に手をかける

ガラガラと開けたその先は我らが教室…。の筈なんだが…。

 

 

『『一花さんだーーーーー すげーーーー』』

 

 

「なっ…。なんだ この騒ぎは!」

 

クラス中の連中が一斉に押しかける

一花さん一花さんとうるせーな…。ちゃんと本人だぞ

 

(お兄さん…だ それに一花もやっと来た 何処まで飲み物買って来たんだろう)

 

「うわぁ…流石テレビだな…。」

「あっはは…。大騒ぎだね」

 

「いやー全く…。お前は凄いな…。 オーディション受けて良かったな…これからもさ応援させてくれ…。一花」

 

 

「!!」

 

トクン

 

(…。こんな単純でいいのかな…。君が私を気にかけてくれた…。

 たったそれだけがクラスメイトのどんな賛辞より…。胸に響いてしまうんだ…。コウくん)

 

 

 

「おーっす 風太郎目が死んでるぞ」

「奇遇だな…。俺の目の前の人間も死んだ目をしてる」

 

 

 

ーーーーーー

 

ーーーー 

 

ーー

 

 

「先行くぞー」

「あぁ…この問題集暗記したら行くから…。」

「了解だ」

 

放課後まで時間が進む

朝からずっと一花の話題で持ち切り

今も数人の生徒に囲まれ…。少々引いている

目立つ仕事だ 覚悟はしてただろうが自分が思っていたよりも情報の広まりは早かった。隣のクラスの連中まで来てたしな…。

 

あっはははと愛想笑いでその場を乗り切り…。一瞬の隙をついて一花は逃走を開始

数人の生徒が後を追いかけていった…。

 

「有名人も忙しいな…。」

「むむむ…。」

「なんだよ 真弓ちゃん 一花が有名になったんだ喜ぼうぜ」

「納得できません…。以前から追っかけしていた 私たちを差し置いて…テレビで見たからと…。むむむ 確かに私も似たような立場ですが 一花さんはもっと前から うむむむ」

「はぁ…。複雑なファンの心ですなー…。」

「それはそうと…。三玖さんから聞きました 先輩はまた大きな賭けに出ましたね」

「三玖と仲良いんだったな…。 相手は全国の学生だ わりと本気で勉強しないと。一位は無理だろ…。暫くは風太郎も俺も顔を出せん 任せたぞ」

「はい任されました…。これで一位を取れば先輩がどれだけ凄いか…。みんな知ってびっくりしますね ふふふ」

「真弓ちゃんもさ…。全国模試頑張ってくれ」

「私は大丈夫ですよー 兄と違って勉強は得意ですから」

「そう言えば真弓ちゃんは前回の学年末試験で8位だったな」

 

割と近くに秀才がいた

兄の和之は学力で言えば、普通で坂下は異常だ

あの女に隠れがちなだけで…。このちっこい後輩は運動と勉強や家事全般どんとこいの万能少女

結婚する相手が羨ましいね…。

 

「先輩…。そろそろ勉強会に行った方がいいんじゃないですか?」

「そうだな…。じゃー また明日ー」

「はーい さようなら」

 

後輩も応援してくれてるし

気合を入れ直すか…。

自分の教室から立ち去り…。中野姉妹と風太郎の待っている図書室まで足を動かす

必要な物は…。全部持ってきてるし 足りなければ風太郎に借りれば良いだけだ

 

 

「いい加減風太郎の誕生日プレゼントも考えねーとな…。」

「コータロー!」

「おう三玖か…。まだいたのか…。うーーーーん 」

「な…。なにかな?」

「三玖だよな?」

「えっコータローは変な事聞くね…。私だよ」

「いやさ…。何時も着けてる 髪飾りがなくてさ」

「あっ!」

(やばい…。忘れてた 三玖はコータローくんから髪留めプレゼントされてたんだ)

 

出先だ…。廊下のすぐ先で三玖?が立っていた

俺を見れば声をかけるので図書室まで行こうと進める

不思議な事に…。三玖には違和感を覚える 何故か三玖には見えない…。

爺さんとの修行で勘は戻った筈だが…。判断がつかない

変装する理由は姉妹にはない…。俺の勘は早速錆びついてるな

 

それに何時も着けてくれた髪留めも何故か着けてない

大事にって言ってたから少し残念だな…。

 

「ごめん…。忘れて来た」

「そ…そうか…。まぁ うん気分もあるしな はぁ」

(コータロー君ごめんね…落ち込まないでーーー)

「止まってても始まらないか…行こうか」

 

 

ーーーーーー

 

ーーーー 

 

ーー

一花side

 

 

彼は行ってしまう

そこにはいない筈の姉妹の姿が共に歩いてるように見える…。

何故だろう 胸が苦しくなる…。

再会した時は無愛想で何処か不思議な怖い人なんて思ってたのにさ

 

家で見つけたあの一枚の写真で私の中で何かが解け始めた

気になった私は林間学校で私は君に過去を尋ねた 私と君はずっと昔に会っていた

それから詳しい事実を病室で君は語った

 

ある日母が連れて来た こーと呼ばれる 年上のお兄ちゃん 

ガキ大将な私をちゃんと女の子として見てくれた…。とても優しいあの男の子は君だった

 

何時も六人で遊び…。それが充実した毎日だった

修学旅行で会った あの男の子も何処か君に似ていたね だからかな彼と話してる時に

自然に声をかける事が出来たのは…。

 

 

でも…。お母さんが死んだ あの日を最後に君は私たちの前から消えたね

 

まさか 5年後 こうして肩を並べて同じ学校通って 君が私の家庭教師になるなんて…。

 

けど…。私一人の家庭教師じゃない…。四葉や二乃

三玖や五月ちゃんだってあの場に居るんだよね…。そんな中で私が一人 前に進んで

抜け駆けはやっぱり駄目なのかな……。 こうくん…。

 

(コータロー君はもう一人じゃないんだね…

 今は五月ちゃんや三玖もいる…。君はどんどん遠くなっていく

 私だけを見てなんて…。)

 

 

『お好きにどうぞ 負けないから』

 

『蹴落としてでも叶えたい…』

 

『一花だけ我慢しないで…したいことしてほしいな』

 

 

 

 

幸太郎の初恋は…。君だよ 中野一花さん 彼はずっーーと君に片想いしてたんだよ

 

 

 

 

 

 

彼を想う三玖の言葉を思い出す

フータロー君に恋をする二乃の言葉を思い出す

私の異変に気づき心配してくれた四葉の言葉を思い出す

 

 

そしてあの女の言葉が私の何かを破壊した

あの人がコータロー君の何なのか彼と過去に何があったのか…。

今の私には関係ない…。 聞いたところでどうなるのか?

 もうー私は君を一人にしない

 君をいじめる人間から私は君を守ろう…。

私の夢を応援する君を私が…。私だけが守ってあげる…。…。

 

 

三玖…。それに五月ちゃん 恨みっこなしだよ 私は自分勝手なガキ大将だからさ

 

 

ーーーーーー

 

ーーーー 

 

ーー

 

 

 

「コータロー…。」

「なんだーー 早くいくぞー」

「教えてあげる…。」

「何をだ? 一花の映画はお前が昨日話してたろ」

「一花の話なのは当たってるよ…。でも違うよ」

 

こいつは…。本当に三玖なのか…?

体に走るこの寒気はなんだ…? まるで坂下と話してる気分だ

 

ただ何処かそれは純粋で故に黒く淀んだ何かだ…気づけば手が震え 自分の意思とは無関係に彼女の方から視線を外せずにいる……。

 

何かを伝えようとする彼女…。 ダメだ ダメだ  俺は今すぐにここから離れるべきだ

 

そうしないと…。何か取り返しのつかない事が…。大切な今が壊れる気が…。

 

 

 

「…。お 俺は行くから…」

 

逃げるよう踏み出した一歩はとても重い、ただこの場から逃げるよりも早く

彼女の口が開かれ言葉が紡がれた…………。

 

 

 

 

 

 

「一花はコータローの事が好きだよ」

 

 

 

 

 

 

 

「!?」

 

 

 

 

 

「凄くお似合いだと思う…。ずっと昔から一緒だったからね 私は応援するよ」

 

 

 

「嘘だろ…。あの一花が…。俺みたいな奴を好きだなんてあるわけが…。」

 

 

 

「嘘じゃないよ…。良かったね…。コータロー……。」

 

 

 

足元が今にも崩れそうだ…。

この子は何を言ってるんだ…。一花が あの子が俺を好き?

そんな事ある訳ない…。だってあの頃の俺と一花は親友だった…。

 

そう言ったのは一花…。他でもないお前だった筈だ

 

『コウくんと私はずっと一緒だよ…。 大切な友達だから!』

 

 

混乱する俺とは対照的に目の前の少女はニッコリと微笑み

『また 後で』そうとだけ呟き 俺の前から去っていた

 

 

 

 

 

その日の勉強会を俺はサボった

一位を狙う事以上に俺の頭を悩ませるそれが…。俺の頭の動きを鈍らせる…。

 

 

 

「お前ら早くノートを開け たく幸太郎の奴何処で道草食ってんだか?」

「上杉さん ここ分かりません!」

「一花もどこいるのかしらね? あれだけ周りの生徒にいられちゃ直ぐは来れそうにないか」

(コータローまだかな…………)

 

 

 

 


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