最初にプレゼントを遅らせた理由は原作と異なります
「……。」
「一旦休憩にしよう」
「あー疲れたー」
「五月ちゃんは? 放課後になった途端に見なくなったけど」
「用事があるって行った…。」
「五月ちゃんはいないのか…。ふーん」
次の日の放課後
昨日の件で風太郎にしこたま怒られた『帰るなら一言言え!』
あいつも勉強に力を入れたい時期だ…。それを俺は逃げるように、実際逃げたが、それで風太郎に全部押し付けてしまった…。
あれからずっーーとだ、三玖と名乗った彼女の言葉が頭から離れない
今日だって三玖を見ては、避けてしまい。一花の顔もまともに見れない状況で不審がられる1日
放課後の勉強会も、全然頭に入らず、ぼっーと考える
『重症だな』と弟は呆れている…。
「すまん…。少し席を外す…。 風太郎も一回外の空気吸ってこい」
「おう…。気分転換はしないとな…。」
重症なのはこいつも同じ
目の下に特大のくまだ何時倒れてもおかしくない
昨日は何も出来なかったんだ。気を回すくらいはしてやんねーとな…。
席を立って適当に休める所を探した。
風太郎の誕生日に、全国模試、姉妹達の家庭教師
しっかりしろ俺が、こんな調子でどうすんだ…
このままだと俺はあいつらの元から去らないといけなくなる
自分で言った言葉には責任を持て、失敗は許されねーんだよ…。
どさりとベンチに腰を降ろし口から出たのはため息と生気
仏頂面には更に拍車が掛かり通りすぎていく人は、俺を見るなりその場から逃げるように去っていく
考えうる最悪の事態を避けるべく、働かせる脳内では、状況判断すらままならないと赤信号で止められる…。
「はぁ…………。」
「あっ コータロー見つけた」
「…。三玖か…。」
まともに顔を見てないせいか…。今更気づいた
昨日は着けてなった髪留めを今日はきちんと着けてくれている
あれは…。ただ単に忘れていただけなのかもな…。
何か安心出来た…頭は回らないが、彼女の姿を見て弱々しいながらも笑みが、零れる…
ただそんな俺を余所に朝からのあの態度だ。三玖さんはご立腹と言える
「うぅーん!」
「えーっと…………俺はその」
少し頬を膨らませ…ぷんすかと擬音も聞こえてきそうだ
そっと視線を逸らすとすぐにそちらに体を動かす
俺から目線を離さないように、絶対にと強い意思を感じる…。
そんなやり取りが、暫く続くと彼女の方から再度言葉が、飛んでくる
「朝からずっと避けてるよね」
「避けてないよ…。うん、さ、避けてません。」
「嘘…。コータローは必ず目を逸らすから…。」
「俺の事情に詳しい人間がどんどん増えていく…。 はぁそれで何だ。風太郎の件かぁ?」
このやり取りを何時までも続けていては、せっかく探してくれた。この子にも申し訳が立たない
せめてちゃんと会話は成立させんとな…………。
ため息を出しつつも前を向き、彼女を見る
「うん 実はさプレゼントの件なんだけど私とコータローで…。」
「俺もさ…。お前に聞きたいんだ、昨日の事をさ」
プレゼントを渡す話は五つ子達との話で当日に決行される
何か進展があれば知らせてほしいと自分から言っておいて…。すたこらさっさと逃げていた…情けない
けどちょっとばかり冷静になろう…今は俺と三玖の二人だ
これは、彼女に聞くチャンスではないだろうか?
『一花が俺を好きってマジ』とか、脈拍もなく聞くのは、可笑しい先ずは、昨日俺と話したのは、本当に目の前にいる彼女だったのかそれを確認しなければ、姉妹間での冗談とは思えないほど昨日俺にあの言葉を伝えた…三玖と名乗った少女は真剣だった。避けるだけでは、何も始まらない……。
「昨日? なんの話」
「えっ…。昨日 お前が…。」
「ねぇー 二人して何の話してるの?」
「!?」
おかしい…。昨日は昨日だ、三玖が俺に言ったんだろうし
忘れるには早すぎる…。聞き返そうと再度質問を試み俺は咄嗟に言葉に詰まる
一花が横からひょいっと顔出す
突然の事で一瞬たじろぐ…。
様子のおかしい俺の顔をじーっと見つめてくる一花…
こいつは…。本当に俺が好きなのか、絶対ありえない、そんな訳ないだろ
一花は風太郎が好きだった筈…。だからあれだけそわそわしていた。そうじゃないのか、まさか俺の思い違いか?
「うーん?どうしたのかなー」
「悪い…。用事を思い出した」
情けない…。ここで逃亡とは
俺は腰抜けだ…。一花の前で『昨日一花が俺を好きだったって話さー』とか言えるか。一花が困るだろう…。変な目で見られる…。
「コータロー…どうしたんだろ…。昨日も来なかったし、やっぱり何かあったのかな?」
「大丈夫だよ…。コータロー君は強いでしょ…。」
「うん…。抱え込まないと良いけどな」
「私たちにできるのは少しでも負担を軽くすることだけ…。コータロー君も忙しいし、プレゼントの用意も遅れてるだろうしさ…。だから一旦は忘れよう」
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一花side
ずきんと胸が痛くなる。こんな事許される筈もない
でもあれが私のやり方だ、自分のやり方に後悔してちゃダメ
昨日の時点でプレゼントを渡す機会を遅らせた
フータロー君への感謝の気持ちは大きい
彼が家庭教師の仕事を受けなければ、こうしてコータロー君と再会してこの気持ちに気づく事もなかった…。 だから学力模試には全力で挑んで欲しい
他に気を逸らして十位以内に入れなかったとなれば、今後の動きも厳しくなる
それはコータロー君も同義だ…。彼の場合は更に一位という途方もない条件を彼自身が提案している
フータロー君には悪いけど、誕生日の当日は避けておきたい
「あれ…。一花じゃん」
「二乃…。昨日の連絡は見たよね?」
(やばい…。忘れてた二乃のブレーキは壊れてるんだ)
「あぁーあれね でもあげたいものはあげたいわ」
ここで私は大きなミスを二つ犯した
一つは二乃の行動を予測し忘れたこと
一つは一番重要な 誕生日の当日の話をしなかった事の二点だ
『一度この話は白紙にしよう』では伝わらない
特に今の二乃の足止めを止めるのにたった一列の文字で効果がある訳もなく
ニコニコしながら両の手で彼に送る それを大事にそうに抱える
羨ましいな本当に…。ここまで素直になれたならどれだけ楽か…。
自分の気持ちに気づくのが遅すぎた
「でもさ 朝見たのよね あんたもプレゼント用意してたでしょ」
「あっ、これは…。言い訳になるけど一応は持ってきました」
もう一つ問題があった、それは自分自身だ
やはりフータローくんへの恩はある 誕生日とはその人にとって重要な日だ
どんな人にだって祝ってもらえる権利はある…。
何だかんだと言いつつも私も当日に祝ってあげたいと欲が出てしまった
流石に今の二乃は鋭い…。得意げな表情で私を指さす
彼女には隠せない、 左ポケットから彼へのギフトカードが入った封を二乃にも見えるよう取り出す
『やっぱり』と呆れている…。たぶん二乃以上に本人が呆れてるよ
あぁー情けないな
「そう言えばさ…。あの日のこと弁解はある?何でパパを足止めしなかったのか」
「ないよ…。あれは純粋に私の嫉妬だから…。二乃はフータロー君が好き?」
「好きよ」
「私は…。コータロー君が好き」
「!…。なら何で パパの足止しなかったのよ!」
「言ったでしょ…。あれは私の嫉妬だって…。 二乃が羨ましくてさ」
「…。本当に今のあんた 昔に戻ったみたいね…。でも少し性格悪すぎるわ」
「自分でも自覚してるから…。」
弁解はしない…。あれは私の嫉妬だ フータロー君への愛情をストレートに言える。彼女が何処か疎ましく…。現状維持で我慢していた自分が歯がゆかった…。
どれだけ真剣に妹が私にアドバイスを求めたのかも考えず
『その気持ちは一時的なものだよ!』と誘導しようとしていた
そのくせ一番落ち込んでいたのは自己嫌悪に陥った私とオチまでついている
あの雨宮紡木という女性の言葉で確かに自分の心に動こうと考えた
でも一番は二乃がフータロー君へ行った告白だ。
彼女の告白を聞かなければ、きっとここまで意識する事もなかった…。
適当な言葉で今は二乃を説得し今は一旦気持ちを落ち着かせようと提案
実際に落ち着くべき人物は私だと特大のブーメランまで戻ってくる
「わっ!? 一花と二乃か…。」
「?」
「びっくりしたな…。上杉さんたちが帰ってきたのかと思ったよ」
勉強を行っている場所まで戻れば…。四葉が声をあげ驚いている
キョロキョロと周りを見てはフータロー君たちが来てないかを確認
話を聞くと彼等の為に千羽鶴を作っていると…。
「上杉さんもお兄さんも…。あれからずっと疲れてるように見えるんだ
言わないだけで私たちに教えながらってのが凄い負担になってるんだよ だからせめて体を壊さないように…。出来た!」
「でもプレゼントは中止だし…。何よりあいつの誕生日は別の日でしょ」
「あっ!言われてみればお兄さんの誕生日と上杉さんの違うんだ」
今更過ぎるけど…。四葉らしくて笑っている
この子は周りを元気づける…。四葉のお陰で私は自分の行動に後悔なく動けるんだよ…。
二乃に言われ当日に渡す計画がなくなった事を思いだし
四葉はわんわん泣きだす
私たちにごめんと謝罪の言葉まで…。
「自分で自分が許せないよーー これじゃ私だけずるしてたみたいだもん!
約束を破るなんて人として最低だーー!」
うわー…。突き刺さるな…。
「ごめん…。私も 給料日割りで貰ってて…。スポーツジムのチケット
お世話になってるから渡そうかと…。ごめん 抜け駆けみたいになって」
四葉の言葉が刺さったのは私と二乃以外にもいた…。
まさか三玖もとは思わぬ伏兵、きっと感謝の気持ちは誰もが同じく抱えている
抜け駆けなんて考えず正々堂々とすれば良かったかな…。
やることも好みもバラバラなのにこういう時は結束する…。改めて五つ子だと実感できる
「じゃあ…。こうしよう やっぱり模試前に渡すのは勉強の妨げになっちゃうから…。
この模試をフータロー君が無事に乗り越えたら…。みんなで渡そう コータロー君には私から話しておくよ」
「そう言えばコータローに伝えてない…。言わないとね」
(なに勝手に決めてるのよ…!)
(元々こうするつもりだったからさ…。二乃こそ頑張ってね)
(ふん…まぁ色々予定外だけど…。四葉に免じて許してあげる)
(寛大だね…。お姉ちゃんは嬉しいな)
散々邪魔をしたせめて渡す日は同じにしよう…。
私と違って二乃は純粋にプレゼントを渡そうとしてるんだし…。
今回の教訓は送る前に内容をちゃんと確認しておこう
「じゃあ当日は何もなしか…。」
「うーーん こんなのはどうかな! 次のテストで全員で高得点とってそれで鶴を折って
上杉さんをびっくりさせよう」
「確かに…。フータロー君も疲れが吹き飛ぶかもね」
「まぁ…。乗ってあげる」
本当にこの子は…。おバカだけど…。とっても真面目で私には勿体ないくらい過ぎた妹だよ
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4月15日 上杉風太郎の誕生日ぱふぱふー
盛大なお祝いが家で行う予定だが…。らいはに言われて本人には秘密である
そして前日には一花からメールで『誕生日プレゼントは全国模試が終わってから渡すから』
その方があいつも驚くだろうから俺も賛成だ…。
まぁ…。俺はプレゼントを未だに決めていない 18にもなる弟に何を上げれば良いのか
俺は去年何を貰ったか…。 昨年の事を思い出す
あいつは物凄く悩んでいた…。確か貰ったのはノートとボールペンだったな
『学力向上が一番だと思った…。』 他から見れば豪華な物とは言えないけれど…俺に取っては大切な宝物だ…。
「勉強用具一式もありだな…。」
「何がだ?」
「何でもねーよ…。数式のチェックしておくか?」
「いや…。今は頭に入れる方が先決だ…。お前もニアミスしないようにな」
「了解だ…。」
外は真っ暗で…。今日は五つ子も不在
俺たちは二人で全国模試の猛勉強中…。
非効率的だが睡眠も必要最低限に済ませている…。本番で寝たら全てが台無しだな
「お二人共 まだ帰ってなかったのですね…。こんな時間まで自習とは…。
ご苦労様です…。差し入れです」
「五月…。」
「悪いなわざわざ…。」
眠気覚ましのドリンクを机に乗せ
おまけに労いの言葉のアフターサービス付きだ
今日も一体どこで何をしてたんだろうな? ここ二日ほど放課後になれば何処かへ行ってしまう
ぐびぐび飲み干す弟は『俺を誰だと思ってんだ?』と強気の発言
頼もしくもあり…。同時に手強いライバルだ
「先日 塾講師をなされてる 下田さんというかたの元へ出向いて来ました
幸太郎君は存じてますよね」
「下田先輩か…。」
「誰だよ…。」
「ある意味で俺たちの先輩のような人だよ」
「??」
五月がここ暫く姿を消していた理由は、あの元ヤン塾講師の下田さんの所に出向いていた為だ
彼女とはあの一件以来やり取りは続いており…。バイトを探す傍ら
『少し学んでいかねーか?』と誘いを受けたと話す
本業が出て来た事で拗ねる風太郎はとても面白い
確かに…。一言は欲しかった
「下田さんも人が悪いな…。」
「幸太郎君まで拗ねないでください」
「拗ねてねーよ…。」
「模試の先 卒業の更に先の夢の為に 教育現場を見ておきたいのです…。」
じー
「やはり恥ずかしいので…。見ないでいただけますか…。」
「かっこいいじゃねーか…。」
「お前らのやることは本当に予測不可能だよ…。」
堂々と語る五月は本当にかっこいい…。
確かに零奈さんの真似事で母になるなら手は他にもあると散々
下田さんに言われたが…。それでも彼女は自分の描くそれを再確認したいと口にする
夢を持つ事はとても良い事だ…。五月もやっと前に進める…。
誇ってもいい事だ
「なぁ…。風太郎…。って寝てるよ」
「すぴー…。」
気が抜けたのか爆睡している
頭に入れたもの忘れなきゃいいが…。風太郎だし大丈夫だろ
「以前にも似たような事がありましたね…。」
「あんときは二乃が薬を仕込んでたな…。随分懐かしい話だ」
「もう半年以上前です…。 幸太郎君 明日は大丈夫ですか?」
「なんだ…。俺の実力を疑うのかー」
「いえいえ…。幸太郎君ならきっと…。いえ違いますね 絶対に一位になれると私は信じています」
「末っ子の言葉は励みになるな-…。任せろ 俺はお前らの前から勝手に消えるつもりはない」
「私もです…。幸太郎君から離れるつもりはありませんよ」
「そこはもう少し考えてから言うべきだ…。男が勘違いするぞ?」
「///…。えっと今のは別に」
「冗談だよ…。帰るなら送って行くぞ?」
少し意地悪だったな…。
一花の一件でそう言った言葉には敏感になっている
先日行った温泉旅行で五月が俺に『恋がしたいですか』そんな事聞いて来るもんだから
ついからかってしまった…。
「ふふ…。大丈夫です 幸太郎君は勉強しててください あとこれを彼にどうぞ」
「お前らも芸が細かいな-…起きたら風太郎もびっくりだな
ありがとな…。」
「お礼を言うのは私たちの方です…。きっと変わり始めたのは…。とこれは後程」
「へいへい…じゃ おやすみ五月」
「はい 幸太郎君また明日お会いしましょう」
姉妹からのとっておきの御守りも届いた
風太郎もこれで全力を出してテストに挑める
机に置かれた 5羽の鶴は ただの紙ではない ここ数日で彼女たちが受けたテスト
その中でも特に点数が高いもので作られたこの世でとっても貴重な5羽の鶴
どんな願掛けよりも効いてくれそうだな…。
不安と緊張でどうにかなりそうだが…。俺も何とか全国模試まで気合が持ちそうだ…。
「お兄ちゃん 誕生日おめでとうー」
「風太郎 また一つ成長したな ぷっはー」
「おめー」
「親父また 期限切れ飲んでるのか? 幸太郎もやけに淡泊だな」
「まぁー そんなもんだろ はーい 誕生日会だー」
その日上杉家ではひっそりと風太郎の誕生日会が行われ
彼も彼で少しばかり心のゆとりが出来ていた…………。
(テストで作った鶴か あいつらも頑張ってんだ……俺も負けられねぇ)
(風太郎 良い顔になったな…………俺もしゃんとしねーとな)