色々手直ししながら見てると誤字が多くて修正に時間が…………。
あと五分とギリギリまで机と向き合う風太郎を必死に引き剥がす
遅れたら今日までの苦労は水の泡だ…。
そのハングリー精神は見習いたいものがあるな…。
「幸太郎…。自分を信じろ」
「ありがとうございます。 誰が相手とか気負いません
俺は俺の全力で挑みます」
声援を受ける横で風太郎はパンを口に突っ込まれている
諦めがついたのか…。筆記用具一式をしまう
「お兄ちゃんたち ファイト-!」
「バカ息子ども気張ってこいー!」
「行ってくる」
「行ってきまーす」
さていざ決戦の舞台へ
「おい らいは 俺の牛乳どこ行った?」
「あっ! まさかお兄ちゃん持ってた」
知らぬ間に崩壊への一歩は始まっていたり…。
ーーーーーー
ーーーー
ーー
「ごくごく…。」
「お前何時の間に牛乳なんて持ってきた」
「机の上に合った奴を適当に」
「勇也さんのだろ 飲んで大丈夫か」
「味は普通だ…。」
「そういう問題じゃない…。」
パンを咥えていたと思えばいつの間にかパックに入った牛乳片手に隣を歩く
呑んでいるのは父である勇也さんが良く飲んでいる期限切れの牛乳…。
あの人は体が丈夫だから良いけど 俺や特に風太郎はお腹を壊しやすい
前回なんて自分で作ったパイ食って腹を下してたぞ…。
適当にあしらっているが…。本当に何ともないのか?
鞄から胃薬を出し手渡すが…。今更だろうな
「おはようございます!」
「よう…。おまえ…。すげー顔だな」
「いよいよ試験当日ですね」
「頑張りましょう!」
「ってか 片方は凄い隈ね 酷いわよ」
「人の事言えない…。コータローは何かスッキリしてる」
「ふぁーどう…。フータロー君は十位以内 コータロー君は一位は入れそう」
「まぁぼちぼち」
「勿論だ…。」
ふり返った先には今からテストだと言うのに風太郎に負けず劣らず
目の下に隈が出来た中野姉妹達…。弟と同じく徹夜明けだろうな
勿論の事彼女たちも結果を残さないといけない
勉強会ではひどい成果だったが昨日の折り紙を思い出せば不安も消える
「幸太郎君は珍しく…。眠そうじゃありませんね」
「おう しっかり8時間睡眠してきたぞ」
「どうりでコータロー元気な訳だ…。」
「でもいいの? 一位でしょ 勉強しないと」
「大丈夫だ…。頭には入ってる 後は体調管理だ…。大事なテストで寝落ちはもうー勘弁だ」
「…。そうですね 睡眠は大切ですから」
何処かの誰かさんが熱弁してたしな…。
彼女たちもに話したが…。大事な日にテストの最中で寝るなんて失態だけはしたくない…。
あんな思いは二度とごめんだ…。
一年前の手痛い過去を思い出す あの事が教訓になった 後は実力あるのみだ…。
いざ会場たる…。学校へ…。一歩足を動かした時に 何処からか笑い声が聞こえる
「上杉君…。先輩 逃げずにここに来たことをひとまず褒めておこう!」
「出た…。」
「だがしかし 君たちは後悔することになるだろう! あの時逃げておけば良かったと!」
「朝からうるさいわね…。」
「上杉さんもお兄さんも負けません!」
「君たちには話してない!」
武田は今日も今日とて元気な事で腕を組んではこちらを見降ろし
未だ変わらぬその態度にせっかく取った睡眠も何処へやら飛んでってしまいそうだ……。
何も言わない 俺たちとは違い 二人が反論するもきつめの言葉で彼女たちを怯ませる
すこーしカチンと来そうになったが、後ろで五月が首を横に振るう
(冷静にだな………………了解)
気分爽快で最高のコンディションで挑む事が出来るんだ いちいち構ってる暇はない
だらだらと言ってるなら こっちは先に進ませて貰う
「ここが僕と君たち兄弟との最終決戦…。一騎打ちで雌雄を決し…。」
「お前ら急げ」
「ちゃんと忘れ物がないか確認は怠るなよー」
「はーーい」
「悪いな一騎打ちじゃないんだ…。こっちは7人だ」
「それに俺たち二人に一騎打ちってのもおかしな話だぞ…。」
「ふふふ…。それが君たち兄弟の弱さだ」
弱さ その弱さが時には勝利への道へと突き進む大きな鍵になる
それに構ってる暇が、あるならお前も悪あがきくらいはしておけ それが慢心って言うんだぞ
散々教えただろ武田…。
去って行く俺たちを武田は苦虫を噛むが如し表情で見ていた…………。
ーーーーーー
ーーーー
ーー
「机の中は空にして着席してください 問題用紙は合図があるまで裏にしてお待ちください
では…。 全国統一模試を開始します 」
遂に開始された全国統一模試
たっぷりの睡眠と軽い食事を済ませた幸太郎の顔には緊張の二文字はなく
開始と同時に出された問題を次々解いていく
その姿は普段見せる面倒くさがりな彼の面影は一切なく かつての学園主席候補の顔だ
些細なミスも認められない…。何処が間違いか何度も見直し
すらすらと進める…。既に答えは頭の中…。睡魔の無い彼に怖いものは何もなかった
そして第一科目の終了を知らせる鐘がなる
ーーーーーー
ーーーー
ーー
「風太郎…胃薬は」
「飲んだが…。遅かったようだ」
「次はいけそうか」
「何とかな…。良いからお前は自分の心配をしてろ」
「了解だ…。」
「コータロー君…。彼 大丈夫?」
「弟を信じてくれ…。あいつなら出来る お前も自分の問題とちゃんと戦うんだぞ」
「はーい まかせてコータロー君も頑張ってね」
「任せろ…。」
科目終了と同時に解放された生徒たちが教室から去る
トイレに駆け込む生徒もいれば友人と何処か不安か話し合おう生徒など様々だ
テスト開始前に腹に異常感じ始めた風太郎は兄から薬の効果の程を聞かれるが
時すでに遅し…。お腹の中は大変な事になっている ここで彼は学んだ
安易に机の上の飲み物は飲まないでおこうと…。
「武田なら200点満点いったんじゃね?」
「ははっどうだろうね…。漢文に少しばかり時間を取られてね一問くらいはおとしてるかもしれない」
「いや…。ワンミスでも十分凄ぇよ…。」
「って事は今回も武田がこの学校のトップで決まりだな…。」
「…。所詮は猿山の大将か…。」
「えっなんて?」
「何でもないよ」
(ん…?)
彼等の後方では武田が如何にもな発言で周りのの生徒達を驚かせる
これはおごりではない…。彼の本音だ
ここまで勉強してきた自分と複数の生徒を抱え
学園トップ10点に入ろうとする二人で心の余裕にも差が生まれる
一方は今にも倒れそうなほど苦しそうな表情…無理して徹夜をしたんだろうと嘲る
もう一方は普段みる眠そうな表情は一切なく…。かつての彼を思い起こさせるが
所詮は過去の人物…。たった数日であの点数から一位を取れるほどの急成長は遂げる事は先ずない
少しの慢心も出てしまう
それ程まで彼は自分が圧倒的優位に立っていると自負している
周りに生徒も武田ならばと太鼓判
第二科目も迫る中で…。武田の携帯がなり 画面を確認した彼の表情が少し歪む…。
ーーーーーー
ーーーー
ーー
理事長室
この学園を経営する彼の父親が息子である武田祐輔を部屋まで呼んだ
早速と息子の成果が書かれた答案用紙を手に持つ…。
『手が早いですね』と苦笑気味だ 同時にもう一枚の封筒を手に持ち
それを息子の前に出す…。中身は今回の模試の答えだ
まさかと武田も驚いている…。何故それを自分の方に渡すのか…。
理由を語る
武田祐輔 200点中三問不正解で190点
父は落胆した…。信じた息子と彼を推薦した中野院長の顔に泥を塗る。
加えこの位置を保つためにはどうしても息子には、全問正解をして貰わないと自分の立場が危うい
母と同じく医者になりたいと語っていた息子、このままではそれすら難しい
ただ、医者と言う言葉を聞いた時…。武田の表情が何処か苦々しげだ
「あまり…。父を心配させるな…。祐輔、お前は出来る子だ…。
何をすればいいかは分かってるね?」
「父さん…。僕は…。」
「さぁ…。早く戻りなさい…。期待しているよ」
彼が慕った杉幸太郎が嫌う。期待と言う言葉が武田にも伸し掛かる
余りにも重いそれに彼の気持ちは揺れていた…。
答えは受け取るが…。果たして武田がどう動くのか…。
ーーーーーー
ーーーー
ーー
時間は流れ 残り2科目…。
食堂に集まる中野姉妹の表情には疲れが出始めている
徹夜明けの影響もあるが…。ここまで緊張して模試を受けるのは何時以来だろう
学期末でもここまでのプレッシャーはない…。でもあの時よりも実力は出ているという自負もある
残った科目に英語と歴史に打ち勝つために今は食事を優先に…。
末っ子は大盛ライスを頬張っている
朝から様子のおかしい風太郎を心配する一同
全国統一模試を乗り切ったあとには…。みんなで一斉に彼に誕生日プレゼントを渡す算段でいる
勿論それは彼の兄にも伝えており…。無事に終われば彼も弟に渡すと言っている
ただまぁ…。その二名の姿はない
「お兄さんと上杉さん…。どこだろう」
「えーっとね…。それがさ」
理由を知っている一花は顔を逸らす 気になった一行は理由を問い質す
「フータロー君…。トイレに行ったきり戻らなくて…。コータロー君が心配になって向かってる」
『『 え…………!? 』』
「あっはは…災難だよね」
笑って済ませられればどれほど良いか
大事なこの日に上杉風太郎はお腹を下していた…。
ーーーーーー
ーーーー
ーー
「風太郎…。やばいか」
「やばいってレベルじゃない…。俺が悪いけどさ…。親父もあんなところにぃいいい」
「薬を飲ませてこれか…。いや確かに 勇也さんもいい加減期限切れを飲むのはやめて欲しいな
風太郎…。一応は薬持ってるから飲んでおけ」
「悪いな…。お前が何時も常備してるお陰で…。な なんとか うぅぅう」
トイレの中では今まさに上杉風太郎は窮地に立たされている
出先に飲んだ牛乳は…。彼の父がよく飲むものだ…。安物で期限ぎりぎりの特価品
家の現状買い溜めも必要最低限…。父である勇也は何個か買い置きし
それを月で飲んでいる…。ただでさえ、期限切れ寸前をあの男性は放置し
何の躊躇いもなく飲み干す…。体の作りが他と違うのだろう…。
悪い予感がした幸太郎は第一科目が始まる前に薬を飲ませたが、それでもお腹は大乱闘だ…。効き目の効果は薄く、未だに風太郎は腹を抱えトイレに籠る
他にも効き目がありそうな薬も兄は持っており…。次の科目前に飲んでおくよう。弟に伝えると『うぅ』と苦しげな声に兄も表情が強張る
外で待つ幸太郎もまさか…。こんな事になるとはつくづく上杉家の人間は行事事と相性が悪い。皮肉交じりと本音九割だ
(誰か、来たな。っまじかよ)
コツコツと…。歩いてくる音が聞こえ 幸太郎は退けようと動くが入ってきた人物を見て表情をかえる…。
「はぁ…………。幸太郎? ん」
「やぁー随分長かったね」
「何故だろうな…。いる気はしたよ」
やっと腹痛から解放された風太郎
扉の前には兄ではなく 自称ライバルの武田祐輔が爽やか笑顔を崩さずにっこり微笑む
当然…。横で腕組みする幸太郎は微妙な表情で武田を眺める
次まで時間もない中で…。自分たちと会う余裕があるのかと一応は忠告する風太郎
ただ武田のにこやかな表情も見せる余裕も何処か普段と違って見える
幸太郎が彼の左手を見れば…。謎の封筒だ
『気になりますか』と安い挑発に彼は乗りはしない…。どうぞご勝手にと風太郎と出ようとするも
武田の発した言葉で歩みを止める
「この封筒の中身は…。模試の答えだ ここに全て書いてある」
「!?」
「流石理事長の息子さんだ…。きたねーなおい」
「負け犬の遠吠えですか先輩?」
「って…!!。待てよそれさえあれば…。」
「そう…。これがあれば確実に君たちに勝てる どれだけ点を稼ごうが、一問でも落とせば、君たちに勝利はない…。」
「めちゃくちゃ不正じゃねーか!」
「まさか…。お前がな…。そんな事するとは見損なったぞ」
理事長を父に持ち…。同時に絶大な期待と信頼を寄せられる武田に敗北は許されない
既に第一科目の時点で190点 目の前の二人がミスをしてなければ…。一科目は負けている
だが勝利の女神…。いや悪魔の囁きか
一科目が終われば 父が彼を呼びつけ 1枚の封筒を手渡した
勝利への一石…。たとえ不正でも誰にも気づかれない…。
この二人がどう騒ごうが…。一方はただの学級委員 一方は学校最悪の不良少年だ
誰も彼等の言い分を信用はしない…。 あの姉妹たち以外は…。
かつては尊敬した…。白髪の青年からも見損なったと一声受ける
武田を眼中入れていない風太郎にとっては彼の品性よりもその紙だ
自分たちの点数を知らない二人にはただただプレッシャーになりうる
このままでは負ける…。信用してくれる あの五つ子とおさらばし
ただの学生に戻るのか…。今から復習しても結果は変わらない
相手は答えを持っている…。どすればいい 焦る風太郎を見て
武田は持っていた その紙を
ビリビリと破り…。トイレへと捨て去る
「お前…。」
「上杉君も先輩も…。安心してくれ前半の科目でもあの封筒は開けてない
勿論信用してくれとは言わないさ」
「何でだ…。武田」
「僕はね…。…。宇宙飛行士になりたいんだよ!」
『『!?』』
突然過ぎる展開に二人の脳はパンク寸前…。
兄の方は既に頭から煙が出ている
額を抑える風太郎は…。なんで それで こうなのか 1から順に説明を要求
どこか素直になっている武田は嬉しそうに話をしだした。
出ばなの時点で意味不明過ぎる言葉に風太郎は止めるよう言うが…。武田は止まらない
生まれ落ちてからずっと武田少年は父と医者の重荷に耐える日々…
そんなある時………彼は見た いや 魅入られた…………。
宇宙と言うなの広大な世界に
何にも縛られない あの壮大な存在に何時しか武田少年の心は
医者と言う決められたレールから自分自身で歩むべき道を見始めていた
自分の目指す道にたどり着くためにはどんな妥協も許さない…。
一握りの人間のみが選ばれる…。そこに行くまで 彼にとっては全てがライバル 全てが対する敵
だから…ここで こんな小さな国で終われない 負けられない…。
宇宙飛行士 それが武田祐輔の夢だから…。
その言葉に幸太郎は反応した…。
夢と言うワードは彼に取っては禁句でも…。それを描き夢見る存在を彼は否定できない
否定する事もしない…。
何故自分が…。武田にここまで敵意を持ち 同時に武田が落ちぶれと言いながら
自分に突っかかってくるのか…。やっと彼は理解した…。
「夢のためには…。実力で君たちを倒す! 不正して得た結果なんてなんの意味も持たない!」
「武田…。うぅううう すまん 」
自分の行動理念と目指す目的を言い切った武田は何処か満足げだ
風太郎も何かを伝えようとするが三度の腹痛…。武田の到来で貰った薬はまだ飲めていない
すぐさまトイレに駆け込み扉を閉める…。
中からは風太郎の悲痛な声と悲鳴を上げる彼のお腹の音だ
ただ…。それでは終われないのが彼だ…。去って行こうとする武田に風太郎は言葉を贈る
「受けて立ってやるよ…。お前の全力に…。 うぅ」
「ははは! 何を今更! 当り前さ 僕らは永遠のライバルなのだからね!
それと…。あなたは僕が尊敬する人物です…。」
「武田…。俺もお前と向き合おう…。全力でな…。それとさ夢叶えろよ」
「当然です…。先輩も もう一度 夢を追ってくださいよ あなたはまだ終わってはいません」
本当の意味での男たちの戦いが始まった
風太郎 幸太郎 武田の3人の戦いは残された2科目がすべてを決める…。
ーーーーーー
ーーーー
ーー
そしてあれから一週間程が経った…4月23日。
前回行われた全国統一模試の結果が発表されている
何時もと同じく黒のリムジンに乗り込む中野マルオは自分の持つ端末を操作し
娘たちの結果に目を通す…。
成績不振に陥り結果的にこの学園へと訪れたあの頃と見比べればその成長はすさまじく
上位まで食い込めなくても誰一人として70点を下回る点数を取る事はなかった…。
「お嬢様方は個人差はあれど前年より 大幅に成績を伸ばしております」
「……」
「家庭教師という 選択は結果的に大成功と言えるでしょう…。
勿論お嬢様方の努力あってのことです」
「そうだね…。彼女たちは良くやってくれている…。」
「武田様は…。全国5位の快挙でございます。」
「それで…。彼は?」
「惜しい事に上杉風太郎様は…。2位…。旦那様には残念な報告となりますが…。彼の宣言通りとなりました」
「おかしな答案だね…。 前四科目はノーミスの満点 最後の科目はラストの数問だけ
書いた形跡はあるけど…。 これは読めない」
「報告によれば…。 ちゃくちゃくと解いていたようですが…。突然気を失うように眠ってしまったと
試験勉強で根を詰めすぎて最後の最後で…。」
「だが…。確かに彼の言う通り…。10位以内だね」
武田は全国5位と凄まじい快挙を成し遂げた
だがそれを更に超える風太郎の二位…。彼は模試の最中に腹を痛め
騙し騙し試験に集中し…。兄から貰った薬で何とか最後までやり遂げた
ただラストの科目で疲れから来る睡魔に襲われ 残った問題を解き始めた頃には夢の中へと意識を飛ばした。
目を覚ました時には回収済み…。残った問を解けば確実に一位になっていただろう
そしてまだ一人残されている
自分に宣戦布告し…。友人からの手紙を受け取った あの少年 上杉幸太郎だ…。
『全国一位を取ります…。でなければ下ろしてくれて構いません』
その目に迷いはなく…。妥協を許さない…。 一位以外は取るつもりは無いと言ってのけた
彼の点数は……。
「最後に…上杉幸太郎様は…。
全国一位になられました…。
こちらも旦那様には残念な報告になりますが
あの少年は実現なされました…。」
「ふふ…。」
上杉幸太郎 全国学力模試順位1位
彼は成し遂げた…。学校で不良少年と呼ばれるあの男は今…。
全国で一番の成績を誇る高校生の称号を手に入れ 記載された彼の点数はオール200
何のミスもなく全国強豪を押しのけた…。
想定外か想定内か…。 中野マルオは笑みをこぼす
兄弟揃って全国一と二になった…。普通では考えられない事態だ
それだけあの二人はこの模試にすべてをかけた…。 彼女たちと共にいる為に…。
「旦那様? どうかされましたか」
「あの兄弟…。彼らには悉く邪魔されてばかりだ…。彼らと関わる度に僕の予定は狂わされる…。
困ったものだよ…。 でもその覚悟は見事なものだ」
「それでは…。目的の場所へと…。」
煩わしい二人…。毎度毎度自分たち親子に立ちふさがり
その都度彼の思い描く計画は崩される…。修正している矢先また一つとうるさくて仕方のない二人組
でも彼らに嘘はない…。虚勢ではなく実際にやってのけるのが あの上杉兄弟だ
報告が終わり次第 上杉兄弟と武田に合流する予定であり 江端が車を出そうとするが
中野はそれをとめ…。ある人物に連絡を取るよう指示…。
少しすればその人物との電話が繋がる…。
「おーっと…。マルオくんかい 何かな…。僕はさっき日本に戻ってきたばかりなんだよ」
「…。幹雄君…。君もだが 【マルオ】と呼ぶのはやめろ」
「ごめんごめん…。学生時代の癖が抜けなくてさ…。それで用事はなにかな?」
「日本にいるなら好都合だ…。 幹雄君…。
上杉幸太郎が全国一位になった
君の予想は外れたよ」
「…………」
幹雄と呼ばれる男性と会話をし
何処かまったりした話し方のその男にうんざりしながらも彼の模試の結果を伝える
電話越しでは『へぇー以外だね…。今の彼なら10位以内ぎりだと予測してたんだけど』と
驚きの声と満足したような頷きが聞こえる…。
「これで第一試験は合格と言ったところかい?…。本人が知れば怒りだすだろうね」
「あっはは…。大人が勝手にだからねー…。せっかく戻ってきたのに まーた向こうに戻るか」
「今から彼に会いに行く…。 今日には彼を連れて出発して欲しい」
「了解ー…。勇也には僕から伝えるよ…。君は彼と話そうとしないからね」
「世間話をする仲でもない…。」
「同じ生徒なのにさー…。まぁ良いか 彼の頑張りも見れたしね はぁ…水木ちゃんに会いたいな」
「悪いね…。家族との時間を取ってしまって…。」
「気にしないで…。マルオこそごめん…。思い出させる形でさ じゃ一旦切るよ」
海外から帰省してきたばかりの彼は電話の向こうで愛する妻の名前を名残惜しく呼んでいた
…。一瞬中野の顔も何処か影を落とし『悪いね』と謝罪の言葉を入れる
今回の1件は幹雄も1枚噛んでいる…。寂しいがそれもまた仕方ないと割り切って気持ちを入れ替える
かつての友人は電話を切れば早速何処かに移動するようで…。
中野も同じだ 今からあの兄弟と武田に会いに行かなくてはならない…。
想定外が続く中…。きっとこれからもこの二人は自分たち親子を振り回すだろう
そう考えると ふいに笑顔も出てくる…。
目が笑っておらず…。秘書江端も苦笑い
(上杉幸太郎君…………ここから君はどう動く?)
今から向かうその場所で自分を待つ彼はこれから起こる自体など何も想定できる訳もなかった………
「さぁー 上杉君も乗りたまえ!」
「露骨に嫌な顔だなー 風太郎ー」
「ブランコって…………はぁ」