風太郎のプレゼント関連など
時間は少し遡る…。
中野マルオが彼らの結果を見る三日前の4月20日 金曜日
ちょうど模試の答案が返却される日
流石に上杉兄弟も緊張している
全国学力模試の結果で今後の二人の動きも変わってくる
今にも吐きそうな顔で机に突っ伏す風太郎と呪文めいたものを口走る幸太郎
姉妹たちは少々苦笑いを浮かべる
担任の園田が教室へと入り
彼が抱える複数の紙の束…。それは紛れもなく 模試の結果が記載された答案用紙
二人の緊張は限界を迎える…。顔色は一瞬で真っ青に変わり
頭を抱えだす『大丈夫だ 大丈夫だ』『ミスはない 完璧だ』と机に話しかける
気が付いた園田は深いため息と共に生徒一同に『お疲れ様』と労いの言葉を述べ
早速答案用紙の返却を開始する…。
勿論の事トップバッターは彼…。上杉幸太郎だ
「上杉幸太郎…。こい」
「はっはい」
声が裏返っている…。
教卓まで向かう足取りもおぼつかない…。両手と両足が同時に動く
何ともぎこちない
結果が言い渡される彼を見て
姉妹たちは手を合わせる
(どうか 幸太郎君を)
(お願いします。 コータローは頑張ってます)
「上杉…………ほら結果だ…。 須藤に報告してやれ…。」
「えっ…。…。!?」
園田の一言で一瞬だけ緊張の糸が解れた
渡された紙を確認した彼は小さくガッツポーズを取る
「お前は立派だよ」
「ありがとうございます。先生」
上杉幸太郎
全国学力模試 総合点数5科目合計1000点 順位一位
どうなったのか気になっている彼女たちは…。首をあげ視線を向ける
それに気づき 小さくサムズアップをし
五月と三玖は今にも泣きだしそうに顔を手で覆っている…。
そして同じく 次に呼ばれた風太郎も教卓まで向かう
先ほど彼と同じく足は覚束ないが…。兄の表情を見れば覚悟も決まる
「上杉…。お前も流石だな…。」
「!!…。まじか」
上杉風太郎
全国学力模試 総合点数5科目合計980点 順位二位
この瞬間彼ら二人は全高校で最も頭のいい兄弟となった…。
「風太郎…」
「幸太郎…」
『『お疲れ!』』
ばちん
互いに手の平を合わせる…。
彼らの努力は身を結んだ
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ーーーー
ーー
「コータローおめでとうーー」
「おっと三玖!」
「おめでとう…。おめでとう」
答案が返却され
全員が図書室に集まる
彼らが無事にノルマを合格 最大の難関に挑んだ二人だ
実際は彼女たちの方が気が気では無く
五月は緊張のあまりご飯が喉を通らず 三玖は昨日からずっとお祈りしていたらしい
不安もなくなった幸太郎は先に姉妹が待つ
図書室へと入ればすぐにだ 三玖が抱き着いて来た
嬉しさを抑え込んでいたが…。彼の顔を見て耐えきれなくなった様子で
『ありがと』と彼女の頭を撫でる
一方風太郎の方には四葉と二乃が向かい
彼の健闘をお祝いしている まんざらでもない顔だが…。やはり実感はない様子
あそこまで緊張していたのに渡されれば呆気ないと言った感想だった
「上杉さんが二位で お兄さんが一位」
「これならパパも文句は言えないわね」
「しかし…。すごいね二人共さ フータロー君も惜しかったね」
「結果は結果だ…。 それで終わり」
「フー君あれだけ緊張してたのにねー」
「忘れろ…。と言うかその恥ずかしいからその呼ばれ方…。」
ふふ…。意地悪そうに笑う二乃にやれやれと言った様子で風太郎は未だ腰に三女が抱き着く
兄に手を伸ばす
「立てるか…。不良少年」
「問題はないぜ がり勉少年」
多少はトラブルがあったが…。今回の兄弟対決は幸太郎に軍配が上がった
もう二度とこんな勝負を兄と出来る機会はないだろう
悔しい気持ちはあるが…。やはり兄は自分が思っていた以上に勉強が出来る不良だった
「三玖さーん そろそろいいですかー」
「あっー ごめん///つい嬉しくて」
「ふふ…。良かったね コータロー君」
「おう…。一花もおつかれさん」
「幸太郎君…。おめでとうございます お疲れ様です。 やはりあなたは不良ではなく
正しい人物です…。これでみんなも分かってくれる筈です。」
「まぁーうん…。全国だしな…他の奴らも嫌でも名前知るだろうな
五月もおつかれ…。下田先輩に成果見せてやれよな」
「はい…。今の自分の成果をあの人にも知ってもらおうと思います…。
少し緊張はしてしまいますけど…。」
姉妹たちも70点代をキープし無事に自分自身に課したノルマをクリア出来ていた
流石に二人には見劣りするがそれでもあの頃と比べれば…。頑張りはきちんと成果として出ている
「さて…。今日はこのまま帰るか 幸太郎はどうする?」
「っと 風太郎君よー ちっと付き合えよ…。連れて行きたい場所があるんだ」
「へぇーお前がな珍しいこともあるもんだ」
各々成果を教え合えばあとは解散と相変わらず風太郎はそういう所は淡泊な青年だ
帰ろうとする弟の肩に手を乗せると
如何にも絡まれてる学生と絡んでいるヤンキーと言う絵ずらに見えてしまい 二乃は口元を抑える
『笑ってはいけませんよ』と注意されるがやはり髪色の都合上そう見えてしまうのは仕方のない事
相手が二乃なら幸太郎は何も言わない…。
何処に連れて行かれるのか…。
模試から解放され後はあの父親に報告するだけ…。別段忙しい訳もなく
断る理由もない…。幸太郎に手を引かれ風太郎はその場所まで連れて行かれる
姉妹たちも目的は同じ 共に同行を開始する…。
「はい 着いたぞー」
「って…あいつらのアパートじゃねーか」
「そのツッコミも懐かしいなー 五月開けてくれ」
「はい…。二人共入ってください」
「今更遠慮はしないけど…。一体何のようだ?」
連れてこられたのは中野姉妹が住むアパート
先回りしていたのか…。中から五月が顔を出す
扉を開け二人を中に案内
何故か強引に連れてくる兄やニコニコしている五月に不信感を募らせる
この二人は何がしたいのか…。 考え込む間に 彼はリビングまで連れて行かれ…。
ぱーん ぱーん
大きな音が耳を刺激する
突然の事で風太郎は目を丸くし辺りを見回す
中には既に待機していのか クラッカーを持つ 中野姉妹と御呼ばれしたのだろう
須藤真弓まで笑顔で風太郎を出迎える
『『上杉風太郎 お誕生日おめでとう&全国学力模試突破お疲れ様でしたー』』
「た 誕生日…。 おめでとう? 俺のは少し前だぞ」
「まぁ…。実は前々から全員で企画してたんだ…。
模試も近いからって一花の提案で今日に変更してな」
「お前…。どうりで家での時は様子がおかしかったのか…。」
「あぁー気づいてたのか」
「兄弟だからな…。流石にわかるさ」
ここで種明かし
元は15日に行われる筈だった風太郎のお祝いだが
模試も迫る中で気を緩めれば…。本番での成績にも関わるとして
一花の提案で今日まで全員で黙っていた…。家での誕生日会も普段と違い
『はいおめでとうー』と軽い返事で終わり 風太郎は少し違和感を覚えていたと話す
結局今日まで何事もなく…。自分の思い違いとして頭の隅に追いやっていた…。
得意げに笑う兄にため息の風太郎…。
四葉が近くまで歩み寄り…。彼の背中を押し
中央まで連れてくる
「次はなんだ…。」
「上杉君これを」
「フータロー何時もありがとう」
「フータロー君…誕生日のお祝いだよ」
「上杉さん…。お疲れ様!」
「はい フー君受け取って」
「風太郎さん! おめでとうございます」
「お お前ら…。 おっおう あり ありがと」
「上杉さんがありがとうって言った!」
六名の女性陣からプレゼントと言葉を貰う
戸惑いを隠せないが…。思いが籠ったそれを受け取らない選択はなく
顔を伏せながら小さく口からお礼の言葉を告げる
普段は見れない…。彼の貴重な一面に四葉は大はしゃぎ
二乃も渡せて満足と言った顔で風太郎に熱い視線を送っている
彼らの姿に幸太郎は感無量と言った表情だ…。
と…。ここで急遽参加した 須藤真弓はある事に気づく
「先輩は…。風太郎さんにプレゼントあげないんですか?」
「そう言えば…。幸太郎 くれ用意してんだろ」
「おっと…。忘れるとこだったー」
「コータロー君も抜けてるね…。ある意味で君らしいかな」
「はいはい…。えっと鞄のなかに……」
真弓に言われ 鞄の中を漁り出す幸太郎は…。用意していた弟へのプレゼントを探し始める
何処だーと中を触るが 確かに準備した あれが 入っていない
目で確認しても…やはりそれは見つからず
幸太郎は模試の答案を渡される直前のように顔は真っ青になっている
「すいません… 家に忘れてきました… 本当に悪い いや本当に
ふははは…笑えねー」
「えぇ…お兄さん あれだけ楽しみにしてたのに」
「本当にあんたは…ある意味期待を裏切らないわね」
「先輩…気抜きすぎですよ」
「準備はしてたんだ…ちゃんと包みにもいれてさ」
「それなら朝…お前の机に置いてあるの見たな…」
「幸太郎君…色々な意味で台無しになるところでしたね」
「コータロー…。」
「いやー…模試で緊張したんだよ…。」
言い訳のしようもない
肉親である彼がプレゼントを忘れた…。下手したら風太郎にバレていた可能性もあった
無事に行えたとは言え…。彼も少々気を抜きすぎていた
両の手で弟に謝罪『まぁ…。帰ればあるし いいよ』と彼はあまり気にはしていない
「あまり…。いじめないでねー コータロー君も気を張っていたんだし」
「一花さん…。ありがとう」
「ふふ ファン一号くんは大切にしないと」
「別にコータローを責めてるつもりは無いよ」
「そ そうです だから幸太郎君も拗ねないでください」
色々と気にしがちな彼は少しテンションが落ち込み
一花はそれを見逃さず直ぐにフォローに入る
自分に正直になった彼女は本当に抜け目がなく
彼女の真意を知る二乃は『うわー』と声を出す
「それで開けて良いのか?」
「ダメです…。上杉さん お家まで秘密なので」
「お前のは…。予想がつきそうだけどな」
「おーっと 何の事かわかりませんねー 取り敢えず家まで開けてはいけませんよ」
「今開けたら…。持っていくのも面倒だしな」
プレゼントは帰ってからのお楽しみ
中身は一体何なのか…。興味は尽きない…。
その後は軽い誕生日会と模試お疲れ様会も開催された
今まで全員勉強漬けで気を張っていた
今日くらいは息抜きもいいだろうとテンションを上げている
「はぁ…。」
「先輩もいい加減機嫌をなおしてください」
「兄として最低だなーと」
「兄もそうですが…。家族のは大切ですからね」
「和之か…。あいつの誕生日 今年は祝ってやるか」
「兄もきっと喜びますよ」
「あいつは今…。一人暮らしなんだよな?」
「はい家からだと大学通えないのでアパートを借りてます 確か先輩には伝えたと」
「あっ…………メール見るの忘れた…。和之に謝らねーとな」
「次いでに 今回の報告もしましょう 流石先輩 一位は凄いですよ」
「真弓ちゃんもな…。 全国で10位だぞ」
勉強が得意というのは嘘ではない
この少女須藤真弓は全国学力模試で十位の成績を収めている
今ここには全国 1位 2位 10位というハイレベルな人間が集まっていた
「真弓…。あんた頭良かったのね」
「真弓に裏切られた…。」
「須藤さんはこっちの味方と思っていたのですが…。」
「えーっと 何て答えれば良いでしょうか…。」
信じていた友人は遙か彼方の存在と分かり 姉妹は距離を開ける
呆れ気味の真弓だが…。笑顔は崩さない この楽しい空間の中に彼が溶け込んでいる
それが彼女にはとても嬉しい 彼女たちが来るまでは彼はずっと一人で戦っていた
半年前の出会いが彼を変えた…。嬉しくあり少々焼けてしまう
「なー真弓ちゃんってさ 何でそこまで勉強頑張るんだ 元が良いんだしさある程度でも」
「頑張らないと…。先輩に追いつけませんから…。それにあの人にも勝てませんから」
「俺に?…まぁそれは置いといて…。あいつに勝てる人間はいない…。今回の模試にあいつがいれば俺は負けてた」
「坂下先輩…。少し怖いですからね…。時折何を考えてるのかも見えません」
「俺は今でもあいつが何を考えているのかわかんねーよ…。」
「坂下先輩…。何処にいるんでしょうね」
(お隣ですとは口が裂けても言えねーよ)
彼女が目指すのは彼の背中…。本人は全くその意味を理解していない
この少女は彼にとっては親友の妹で大事な後輩…。気持ちを伝えない限りこの関係は永遠に続く
須藤真弓はそれを理解しながら彼の傍で笑顔を振りまく
とても痛々しく…。切ない…。
一方その彼は真弓が話した…。坂下先輩 事現 雨宮紡木の事を考えていた
苗字を変え隣に住んでいるなどこかの後輩は知らない
幸太郎もここで過ごす中で彼女と出くわしたのあの一回のみ
大学に通っているのかも教えず去ってしまい何も知らない
それに関して言えば今も昔も変わらないと何処か皮肉交じりに彼は口に出していた…。
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ーーーー
ーー
「じゃ…。そろそろ帰る 真弓ちゃんも近くまで送って行くから」
「えぇー大丈夫ですよ」
「後輩を一人で帰したって和之に知られてみろ…。俺が怒られる」
「あれからも須藤先輩とは連絡を取っているんですね」
「仲直りしたしな…。元から喧嘩する理由もなかったし…。」
「きっと彼も喜んでくれます あなたの事を大切な友人と話しているんですから」
「まぁ…。ぼちぼちやっていくわ…。じゃ お前らもお疲れ」
「今日は…。そのお疲れ帰るぞ…。」
「みなさんお招きいただきありがとうございます。さようなら!」
時間が経過
そろそろ上杉兄弟も須藤も家に帰宅をする
いつまでも居て…。あの父親に知られでもしたら。言葉には出さないが無言の威圧は発しそうで
風太郎も幸太郎も顔を会わす事を憂鬱に感じていた…。
ガチャリと玄関を開け外に出る…。
「おや…。凄い大人数だね 五月さん」
「げっ…。」
「誰だ?」
「えっ…。そんな」
外に出た一向はある人物と出くわした
長い髪を一本の束にしラフな格好で手にはレジ袋を持つ女性
噂の雨宮紡木だ…。
露骨に嫌な顔をする幸太郎と全く面識のない風太郎
そして彼女の顔を見て目を見開く須藤…。
雨宮の存在に気づいた五月も顔を出す
「こんばんわ 紡木さん…。お帰りなんですね お疲れ様です」
「ありがとね 五月さん…。侘しい独り身だからね」
「っ…………」
「あぁー この方は隣に住んでいる 雨宮紡木さんと言って女子大生の方です」
「どうもこんばんわ…。学生諸君…。私は雨宮紡木だ よろしくね」
「あぁはい…。上杉風太郎です」
「?君は…」
「上杉幸太郎です は じ め ま し て」
「えっ 幸太郎君?」
「コータロー?」
まるで初めて会ったかのような素知らぬ態度
白々しいにも程がある…。ある意味では好都合と幸太郎は
強調するように大きな声で雨宮紡木に挨拶をする
彼の姿ににやりと表情を変え 右手を差し伸べ握手を求めているが彼はそれを拒否
ここまで彼が他人は拒絶する姿に五月も三玖も困惑している
「あっはは…何か嫌われてるね…よろしくね
上杉幸太郎君 風太郎君
それと君は…」
「わ 私は…その 須藤…須藤真弓と言います 紡木さんと言うんですよね」
「うん…。初めまして…小さなお嬢さん」
「先輩…すみません…。私先に帰ります」
「真弓ちゃん!…。っ じゃさいなら」
「おい 幸太郎-- 真弓ーー どうしたんだ急に!」
怯えたように彼女の顔を何度も見る須藤真弓は自分の名前を言い終わると彼らに別れを告げれは走り去って行く
彼女が逃げ出した理由を知っている幸太郎はそれを追いうよう走り去る
状況が飲み込めない風太郎は渡されたプレゼントを持って彼らを必死に追っていく
その光景に更に雨宮紡木の頬が緩む
「ごめんねー何か…。」
「こちらこそすみません」
「良いってそれでさ…。なんの集りだったの?」
「えっと実は今日全国学力模試の答案の返却日だったんです」
「ほほー四葉さんは何位だったの」
「企業秘密です…。」
「残念…。」
「でもさっきは走って行った 上杉さんは2位でお兄さんは1位何ですよ
須藤さんは10位とハイレベルです」
「凄いねー彼ら…。頭が良いなんて 生きていくのがさぞ辛い」
「辛い?」
「だってさ…。みんなから期待されるわけじゃん…。私なら適当にすませるな
っとごめんね 終えたばかりのあなた達に言う事じゃないねー じゃーまた今度」
「はい…。紡木さんおやすみなさい!」
謎が謎を呼ぶ中で…。ミステリアスな紡木は手を振って隣の部屋へと入って行く
中から ゴロゴロガシャンと大きな物音がするが…。隣に住んで数ヶ月慣れたものだと目を細める
「それにしても…。須藤さんの様子と幸太郎君の様子が変でしたね」
「五月ちゃん何かあったの?」
「いえ 今しがた…。紡木さんとお会いして」
「雨宮さんがいたの…。コータロー君は」
「何やら怒ってると言いますか…。機嫌が悪そうでしたね
須藤さんも顔見た途端に帰ってしまいました」
「コータロー君…。やっぱり…」
「一花?…。何か知ってるの」
「えっ…。別に さあー部屋の中片付けようかー」
様子がおかしいのはあの二人だけではなく
姉妹の姉も同じだ…。彼女はあの日雨宮紡木からある意味で最悪な呪いの言葉を授かってしまった
それゆえか彼女もまた雨宮紡木と会う事を嫌っている
元から何処か隣人である彼女を不気味に思っていた…。あの人を見下したような目と
知り尽くしてるかのような態度がどうも苦手なのだ…。
三玖と五月は顔を見合わせるが…。答えは分からず仕舞い
後にこの出会いが修学旅行で大波乱の一端を担う事を誰が予想出来ただろうか…。
ーーーーーー
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ーー
「真弓ちゃん!」
「ひっ…。」
「俺だよ…」
「先輩…でしたか…。ごめんなさい」
「俺の方こそ…。黙ってて悪かった」
「知ってたんですか…。坂下先輩がいること」
「3年になってすぐに出くわした…。余り詳しくは言えないけど 今は雨宮だ」
「そうなんですね…。すみません 楽しい場を壊す形になって」
「悪いのはあいつだ…。さっさと行けばいいのに何だよ」
「あっはは…私が悪いんです…。」
「まだ苦手なのか…。あいつが」
「やっぱり顔を見えると…。足が震えますね」
「あいつは無意識に殺意飛ばすからな…。意味分かんねーよ」
(それは先輩…の周りに女性がいるからですよ)
中野姉妹のアパートから逃げて行った彼女にやっと追いついた幸太郎は肩を叩く
びくっと体を震わせ声を出す彼女…。その瞳は恐怖からか怯えている
何時も元気で泣きごとを言わない彼女をここまで追い詰める事が出来る人物は
彼女…。雨宮紡木ただ一人だ
幸太郎は詳しい理由を知らないが…。幼い頃から真弓は紡木を苦手とし
二人で須藤家に遊びに行っても真弓は何時も兄の後ろに隠れ彼女を警戒していた…怯えていたと言えば良いのか最早蛇に睨まれた蛙
彼女自身は、何をされたわけでもないと笑って済ませるが…。どうにも納得がいかない
「あいつに何をされたんだ…?」
「何もないですよ…。先輩はもう帰った方が良いですよ 風太郎さんが待っていますから」
「うぅ 確かにけどさ 真弓ちゃんの怯えようを見るとさ…。苦手ってだけじゃ済む話じゃないだろ」
「本当に大丈夫ですよ…。先輩…また明日会いましょう それじゃおやすみなさい」
「っ…………何かあれば相談しろよ…。後輩の事くらい俺は面倒見れるから」
自分を奮い立たせ何とか彼に別れの言葉を告げれば
家の立ち並ぶ住宅街まで歩いて行ってしまう
『一人にしてください』と背中が訴える…下手な慰めは逆効果
何も出来ない歯がゆさを噛みしめ…幸太郎も自分の家に帰って行く…。
『君が…。和之の妹か…。普通だね』
『あの…。私は』
『ねぇ…。もしかしてさ 幸太郎が好きかな?』
『!?』
『でもダメだよ…。お前は…。幸太郎にはなるべく近づくなよ 和之の妹で良かったね』
『…私は…。』
『あぁー泣いちゃった…なんでー嫌だなー これだから子供はさ』
(先輩…私はやっぱり…。坂下先輩が苦手です あの人を見ると足が竦みます)
ある日の記憶が須藤真弓に暗い影を落とす
彼女が何故彼と共にいながら一定の距離を保つのか…。その本当の理由を知るのは
彼女と雨宮紡木の二人だけ…。
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ーーーー
ーー
「ほれ…。誕生日おめでとう 風太郎」
「ありがと…。これは本か?」
「まぁ大したもんじゃないさ…。」
家に戻れば風太郎は先に待っていた
追いかけようにも体力馬鹿の幸太郎とそれと同格の真弓だ
どうあがいても追いつけない荷物を持ってなくても不可能だと彼は諦めた
その後暫くして妙に落ち着いた幸太郎が帰宅
面倒には巻き込まれないよう詳しくは聞かず幸太郎も弟の配慮に感謝しつつ
置き忘れた例のあれを手渡した
綺麗にラッピングされたそれは厚い本にも見える…。同時に棒状の何かも入っており
不思議に思う風太郎は取り合えず中を確認した…。
「こ これは…。」
「お前が欲しがってた…。参考書だ…。悪いなそんくらいしか思いつかなくて」
「いやいや…。中々手が伸ばせなくてさ…。うわーやったー」
「お兄ちゃんが大はしゃぎしてる…。」
「それにさ…。このボールペンも」
「これはお前が今年くれたプレゼントのお返しだよ…。二つとも大事に使えよな」
「勉強道具一式か…。最高だな」
「それとな…。一年の頃と二年の前半までに俺が使ってたノートだ 色々為になるだろうし
好きに使ってくれ」
「幸太郎のノートとか下手な教科書より使えるぞ…。」
(それは幸太郎お兄ちゃんが捨てるの忘れた奴だ…。)
色々トラブルもあったが…。
無事に幸太郎は弟にプレゼントを渡し
予想以上に喜んでくれておりあげた本人も笑顔を浮かべる
「では…。今日は全国一位と二位を記念して 二人の好物をつくるよー」
『『いえーい』』
こうして上杉風太郎の誕生日は無事に幕を下ろすのだった…。