上杉幸太郎と六等分の思い出   作:Aikk

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今年最後の投稿です。
予定としては年明けから暫く経ってからと思っています

今回は原作でいう 中野父との会話と中野姉妹のアパートの内容
一花からの告白がないのでモテ気関連は二乃の告白と四葉との噂で悩んでいる形です

五月ちゃんが壮大に壊れます


第八十三話 不良少年と彼らの今後

「見事と言う他ないね…。」

 

ギコギコ

 

「君が十位以内に入ったとしても勝つつもりで挑んだ、全国統一模試、5位というのは僕にとって願ってもない順位だ。まさかその上をいかれるとは…。それに先輩も宣言通りに…。一位と二位おめでとう…。さて、もうすぐ修学旅行だけど」

 

「ちょと待て…。」

「どうした風太郎…。ブランコ嫌いか?」

「そうじゃない…。何故俺らはこんな昼間から公園でブランコを漕いでいるんだ」

「俺は漕いでないぞ」

「ははっ…。昨日の敵は今日の友…。これが青春なのかもしれないね」

「武田が青春を謳歌してる」

「ひどいですね…。僕だって」

「帰る!」

 

その一言と共にブランコからジャンプし前に着地する

危険な行為と親御さんが騒ぎそうだが…どうにもこの空間が彼には苦手なようだ

着地をしても何処か納得のいかない顔で首を傾げる

弟は何時の間にブランコでジャンプする楽しさを見出したんだろ…。

因みに俺は近くで突っ立ってる…。ブランコに三人は乗れん

やろうと思えば風太郎の後ろに乗れたが高三にもなって流石になと躊躇った

 

用事がなければ帰って勉強だ…。

模試が終わってもぶれない弟に関心するしかない…。

もしもこいつがベストコンディションだったらどうなっていたか同率1位なんて快挙も合っただろうな

まぁ…。用事が無ければここには来ない

武田に呼び止められ…。足を止める『ご到着だよ』と彼が公園の入り口に目を向ければ

似つかわしくない高級車が停まり…。ガチャリと開かれたそこから あの男が顔を出す

無表情は何時もと同じ…。少しはにこやかに微笑んでも罰は当たらねーんだよ…。

 

 

 

「まずは武田君…。全国5位おめでとう…出来の良い息子を持ててお父さんも鼻が高いだろう。医師を目指していると聞いた。どうだろうか君のような優秀な人材ならば…。」

 

本人の意思はある程度あっただろうが武田も災難だったな

理事長とこの男の板挟みか…。 実は一番にプレッシャーと戦っていたのはこの青年かも知れん

彼に労いの言葉をかけつつ 自分の経営する病院への推薦も考えるとこの男は口に出す

一瞬俺の方に視線を向けたが…。理由を知ってるくせに嫌がらせか…。

 

この話を武田は受けるのか…。大人たちなら

首を縦にふるだろうが…。武田は違った…。ベンチに座る彼に深々と土下座をし

その誘いを自ら断る…。中野先生の微かな表情の変化、そりゃ驚くだろうな

 

「申し訳ございません…。大変光栄なお話ではありますが…。僕の進路についてはもう少し考えたいと思っています。」

 

「そうかい…。良い返事を期待しているよ」

 

武田には夢がある…。

こいつとは中学2年からの交流があるが…。俺がそれを知ったのは数日前の模試での時だ

俺が知らないだけで元から持っていた物なのか…。その後自分で宇宙の壮大さに感銘を受けたのか

本人にしか分からない事だが…。 きっとあの頃の俺と武田では夢を語り合う何て

先輩後輩らしい事は出来なかっただろう…。こいつもいい方向に変わったな…。 

 

彼の話が終われば切り替え…。無表情のまま俺たちの方に視線を動かし

たんたんと口を動かす

まじでこの人ロボットなんじゃねーかな…。

 

「上杉君…。」

「はい」

「君に…家庭教師の仕事を再度頼みたい」

「えっ…。」

「報酬は相場の5倍アットホームで楽しい現場だ」

「よーく知ってます」

「また君に依頼するのは正直不本意だ…。本来プロですら手に余る…。だが君にしかできないらしい。やれるかい?」

「勿論!言われなくてもやるつもりだったんだ…。給料が貰えるなら願ったり叶ったりですよ」

「それと…。やはり君一人では不安も負担もあるだろう…。 知り合いに優秀な人材がいれば、『誰か』を補佐としてつける事を許す」

「っ…………へいへい」

「一人います とっておきの人材が!」

 

本当に嫌味な男だな…。

雇うなら雇うとちゃんと言ってくれればいいのに何故わざわざそんな…。遠回しな言い方しかしないんだ…。

けど、認められた事は素直に嬉しく思える。そしてとっておきの人材を風太郎は知っている…。その男は既にここにいると言えば

『ほー』と無関心な声と共に俺を見下ろす…。相変わらず高校生相手に大人げないね、

 

「では…。当初の予定通り卒業まで…。」

「あっ悪い…。風太郎」

「わかってる…。そのことで一つお伝えしたいことがあります

 成績だけでいえばあいつらは、もう卒業までの力を身につけています」

「頼もしいね…。でも何かあるんだね?」

 

こくりとうなずき風太郎は一呼吸をあける

 

「それでいいと思ってた、だけど五月やこいつ武田の話を聞いて思い直しました、次の道をみつけてこの卒業俺は、あいつらの夢を見つけてやりたい」

「上杉君…。」

 

夢を応援しそれを全力でサポートする男は俺だけではなかった

弟もまたその答えに至った…。昨日家に戻り姉妹からのプレゼントを空けながら

ふとこいつは言いだした『あいつらは将来何がしたいんだろう』とな…。

一花は先に動き…。自分のしたい事を見つけた

五月もまた進路希望に書いたあの夢を自分なりの方法でたどり着く事を選んだ

武田だって宇宙飛行士を夢見てる…。

全員が全員…。きっと夢を持つはずだ だから 風太郎はあの子達が全員

やりたい事をするまで見守って見るのも悪く無いと…。顔を伏せながら俺に話してくれた

 

あれだけ他人との交流を拒んだ風太郎は変わった…。

こいつも一歩を踏み出した 想定外な事なのかあの男は黙った

まぁ…。言われっぱなしも性に合わないのだろう…。一度伏せた顔をあげると

物凄い殺気をゴゴゴゴゴゴゴと漂わせ風太郎に詰め寄る

 

「どのような方針を取ろうが自由だ…。間違っているとも思わないしね。だが…。忘れないでほしい。君たちはあくまで家庭教師と補佐だ、娘たちには紳士的に接してくれると信じているよ」

「も…勿論です。一線を引いています!俺は!俺はね!」

「まぁーぼちぼちに…。その威圧やめてもらえますか」

 

本当に大人げない…。紳士的とは…。当たり前だろ

俺たちはちゃんと分別着けて接してる 向うが色々世話焼いたりなーんか意味深な事言ってきたり

ややこしいんだよ…。 この人の前で一花の事でも話せば俺は解剖されちまうな

 

 

「ふん…。君たちへの話はこれで終わりだ…。武田君送っていこうか?」

「いえ…。僕は自分の足で帰ります。では今日はご足労いただきありがとうございます。」

 

最後まで爽やかな男だったな

また会おうと俺たちに言葉を残し彼は去って行く お前もお疲れ様武田

今度は先輩後輩じゃなく…。普通に友人として接しようぜ

 

 

残された風太郎も俺を連れさっさとこの場から撤退を開始するが

『待ちたまえ』と威圧混じりの声が三度捉えてくる

そっちの方向を向けば江端さんが車に乗るよう促している

 

 

「娘たちに知らせるといい」

「えっあの…」

「乗りたまえ上杉君…。」

「あ ありがとうございます。お父さん」

「君にお父さんと呼ばれる筋合いはないが?」

「はっはい」

 

まるで小動物を威嚇する大型動物 振り返る事はなく逃げ込むように車に乗り込む風太郎

どれだけ父と呼ばれるのが嫌なんだ…。俺も勇也さんが五月に『お父さん』と呼ばれた時も

似たような反応だったが…。ここまで殺気は込めないぞ…。

 

へーいへいと俺も車に乗り込もうとするが中野先生に止められた

ぎろりと睨むが無表情相手だ効果はない

 

「なんですかー 俺だけ歩きですか」

「君に話がある…。」

「車の中じゃだめなんですかー」

「弟君に知られたいなら…。僕はかまわないけど」

「わかりましたー 風太郎ー少し待ってくれ」

「おう…。早く来いよ 気まずいんだ」

「へいへい 江端さん…。弟を頼みます」

「ほっほほ お任せください」

 

江端さんに任せもう一度公園ベンチまで戻る

 

 

「話って何ですか?」

「幹雄君が帰国した」

「えっ…。確か何処か外国ってみずき姐が言ってたような」

「イギリスだよ…。休みを取って先ほど空港に着いた」

「ほー…。言いましたか俺の事」

「勿論だ…。予想以上だと驚いていた」

 

2年程日本から去っていた坂下幹雄さんが…。ついに日本に戻ってきた

ある意味で今回の元凶の一人だが 何処か憎めない

兄のように慕ってるってのも大きいけど みずき姐の旦那と言うのが大きい

先日もあの人は『元気だよー』 会いたいとは言ってはいないが彼の事を話す みずき姐は何処か寂しそうにも思えた……………………

案外早くに再会出来そうで俺は安心だ 等分愚痴は聞かずに済みそうだし

 

恩人であり 俺に宿題を課した彼曰く 今回は意外だったと

10位前後で止まると予測していたと教えてくれた

あのまま。まともに勉強しなかったら…。そこにはいれるかも不安だったけどさ

 

 

「まぁ…。あんな本気は10年に一度ですよ」

「少し誇ったらどうだ…。君は曲がりなりにも高校生で一番の人物だ」

「俺よりも風太郎の方が数段凄い…。腹を壊さなければ一位確定だ」

「それは結果論だ…。彼は二位 それは変わらない」

「本当にアンタは結果しか見ねーんだな…。母さんの時と同じだ

 それで話はこれだけか…。悪いけど 俺は自分の足で行きます」

 

 

この人は正しさと…。結果しか見ない…。

どんな時でも言い訳は許さない自分にも厳しいから扱いに困る

どれだけ勉強しても得た順位以上の評価はしない…。

本当に嫌になる…。母さんの事を思い出せば、断りを入れ自分の足で向かうと意地を張り、足早に去ろうと試みた…。

 

『待ちたまえ』…再び彼の声が俺の足を止めた

嫌々ながらも振り返り会話を再開する…。

 

 

「君には今から幹雄君と会ってもらう…。」

「はぁ? 五つ子はどうすんだよ」

「上杉君がいるだろう…。君は補佐だ…。いた所で変わらない」

「あのー 一応は成績一位なんですけど?」

「それはそれだ」

「うわー 本当にあんたが嫌いだ」

「お互い様だよ…。拒否権はないよ…。幹雄君も水木君と会うのをやめてまで君を選んだんだ」

「えっ…。何で おかしいだろ みずき姐の気持ちはどうなんだよ! 2年もおいてさ」

「彼女も承諾したよ」

「ふざけんな!…。俺なんかの為に時間を使うな」

 

どれだけみずき姐が幹雄さんと会いたいと思っているのか…。

この人は知らないのか…。何時も何時も元気に周りを笑顔にする傍らであの人は

本音を言わず耐えている…。親が離婚までして妹と離れ離れなんだ

それに加えせっかく戻ってきた旦那とも会えない…。何でだよ

 

 

「くっ…………。」

 

流石に怒りを抑えられない…。

勝手に俺の事を決めて 周りを巻き込んで

巻き込まれた人の気持ちも考えず…。

この人は何も変わっていない

 

なんでそんな無表情でいれるんだよ…。仮にもあの人の夫だった男だろ

 

くそ…。自分の事だから余計に腹が立つ

 

 

「駄々をこねるな…。これは君の主治医としての責任だ 上杉幸太郎君 君には彼と会ってもらう」

「っ…………わかったよ 五つ子は風太郎に任せて俺は幹雄さんと会います」

「理解して貰えて助かる…。」

「みずき姐が我慢してんだ…。俺だってな」

「背伸びとは子供だね…。」

「うるさい」

「…………」

 

背伸びなんて理解してる 大人ぶってるなんて俺が一番分かってんだ

 

 

「それと…。君が乗る車はこれではない…。向こうに乗ってもらおう」

 

 

これで止められるのは何度目だ?

車に近づく前に男性は別の方を指さす そこには一台のオープンカーが停まっており

一人の女性が運転席に座りこっちに手を振っている…。

 

その女は紛れもなく…。雨宮紡木だ 

 

 

「おい どれだけ嫌がらせすれば気が済むんだ」

「ある程度は事情は知っている…。ただ娘たちのアパートから幹雄君の場所まで君を送る時間がない

 僕も仕事がある…。水木君もこれからオペだ。そこで紡木君に依頼した」

「事情知ってるのに…。良く俺を乗せれるな」

「苦情は受け付けない…。一度家に戻って 荷物を纏めなさい」

「えっ?! マジで何をさせるつもりなの」

「後は幹雄君に聞くと良い…。では、よい旅を上杉幸太郎」

 

 

よい旅を?荷物を纏めろ?

周りの動きは、俺の予想なんて遥かに超えていた

呆気にとられつつも今さらどうこう、できる状況ではないと肌で感じ、先に待つ風太郎に軽く説明をしに向かう

 

 

 

 

 

「風太郎…。悪いな、事情が出来た。お前だけ行ってくれ」

「えっ」

「端的に言えば あの手紙関連だ…。会わないと行けない人が来てるんだ。詳しい事は五つ子にも電話で伝える。だからあいつらにはお前から復帰したと話してくれ」

「わかった…。でも隠し事はするなよ」

「了解…。じゃー 江端さん後はよろしくお願いします。」

「承りました…。」

 

 

風太郎を乗せた高級車は中野姉妹の住んでいるアパートまで向かう間……

あの男と同じ空間とは…。俺でも耐えられねぇ。窓の換気してもあのオーラは消えんだろう

目指す五つ子の家まで苦行だが…。生きてたどり着け

大丈夫だ、俺は更に地獄だから…………はぁ

 

 

 

「弟よ…。あとは任せたぞ」

「任されたねー弟君もさ」

 

後を任せ…。さて自分の現実に向き合うべきだ

嫌がる俺をこいつは愉悦に満ちた表情で眺め、軽口も合わせ俺に言葉を投げかける

 

 

 

 

「っ…………何でお前なんだよ?」

「詳しい話は幹雄義兄さんがしてくれると思うから、先ずは幸太郎の家に向かおうか」

「お前は何を企んでいる?」

「別にーそれと 昨日はごめんねー知らないふりして」

「へいへい、たく猫かぶりが…………。」

 

悪いとは微塵も思ってないだろ。坂下とは、そういう奴だ

適当に流そうにも向こうからの言葉は、止まらない。

 

「人の顔色窺っておべっかするのは大変だよ。幸太郎も良くこんな面倒な事を今まで続けて来たね」

「俺はそんな事思った事はねーよ」

「でもさ…。その見返りが集団でのいじめで君は精神ストレス障害だ…最高だね」

「うるせー…。つうかお前何時の間に車買ったんだ?」

 

本当にこいつは、触れられたくないところを的確に抉って来やがる。遠慮やそう言った類いの言葉や考えをこいつは持っておらんのか?しかもこの態度は基本的に俺ばかりに向けられる。

被害は少ないが俺の頭は痛くなってくる…。

 

「あの女だよ…。免許は持ってたから車レンタルで済ませてた。本当に余計な事ばかりさ」

「おばさんとまだ喧嘩してるのか?」

「なーーんだ。幸太郎はやっぱり…私が心配なんだね?嬉しいなぁあ」

「はぁ…………。疲れる」

 

こいつが目的地まで同伴する。始まる前から体は拒否反応だ

全く前途多難すぎる。それに風太郎やあいつらが心配だ…………。

 

 

 

 

ーーーーーー

 

ーーーー 

 

ーー

 

 

 

 

場所は変わり中野姉妹のアパート前

上杉風太郎は車から降ろされるとお辞儀をした

何も言わず中野院長は車を出し…。今の今まで物凄く気まずい空間

外の空気が美味しく感じるのはきっと不思議な事でない

 

「上杉君!」

 

彼が最初に出くわしたのいつも兄に付き纏う中野姉妹の末っ子

中野五月だ…。私服姿で買い物中だったのか手提げ袋を持っている

父の乗る車から彼がおりて来た事を不思議に思っている彼女に現状を報告

今後は正式な家庭教師として中野姉妹と紳士的な付き合いを続けていく事が出来ると……全部話すと要らぬ誤解を招くため、一部かいつまんで説明『変わらず家庭教師だ』と彼女に必要な所だけ抜粋して話した。余程嬉しいのか末っ子はにっこりと笑顔を浮かべるており

風太郎も少しばかり込み上げてくるものがあった。

 

ここまで彼らは父から嫌われる対象で何かにつけて嫌がらせまがいなノルマばかり

今回も下手をすれば…。別の家庭教師が家に来ていた

せっかく家を出て5人で生活した意味もない五月は胸を撫で下ろす

 

 

「あれ?幸太郎君はどこですか?あと何故避けるんですか……!」

 

 

 

ただあの男の言葉を思い出し

彼は五月から一定の距離を保ちつつ前を歩く

そこまで心配する必要はないが警戒はすべきと肝に銘じているがこの子が普段から気にかける彼が不在なれば自然と話の向きも変わり始める。

 

彼女の問いに適当にあしらい流す風太郎も詳しくは、知らされていない。

 

「あいつは来ない 用事だってさ」

 

「そ…、そうですか…。」

 

「露骨にテンション下がるな…。」

 

不在と知れば頭に生えたアホ毛もペタリと倒れ込む

実は本体はこれではなかろうか、兄とはその話で良く無駄な討論をしていた

 

 

階段を上って行き、部屋の前まで来ると躊躇いなく扉を開ける

 

「なんだこれ…。」

 

目にしたのは普段のリビング…。なのだが何故か物で溢れており

一花の仕業かと『いらっしゃーい』と挨拶をした長女を見るが

他にも荷物を運ぶ姉妹がいる…。犯人は別または全員なのかと頭を働かせる

 

 

「生活も落ち着いてきたし…。大掃除してました」

 

試験の反省会と思ったが…。やはり上手くは行かない

気持ちは彼も分かる掃除はふとした時にやってしまう…。

それこそあの兄は全力で部屋の隅までと徹底っぷりでらいはも口をあんぐりだ

 

そんな我が家の大掃除事情を考えていると

二乃が目の前に現れる

ニッコリと笑顔で彼にもたれ掛かる様にするので…。風太郎はすっと距離をあけた

 

不満気だが…。意識はされてるとガッツポーズを取る二乃は

先日の誕生日プレゼントの感想を求めてくる

 

「あー…。アロマな!良いよな~アロマ…。ふんふんアロマね、人を選ぶが俺はうまいと思うぜアロマ!!」

「絶対分かってないでしょう…。」

「アロマはアロマだ…。」

「もう!ちゃんと教えるから使いなさいよね」

「おうお手柔らかに…。それと一花もありがとな。変わってるけどさ」

「それで買い物でもしてねー」

「その手があったな…。」

 

家に帰って開けはしたがアロマなんて使った事のない彼にはどうしろと

現在箱に閉まったまま机の上に

一花からはギフトカード…。自分や家族の為に使うよう言われ 彼も納得した

一花の狙いはコータローだが…。フータローへのプレゼントでは負けたと悔しそうにする二乃

『こう言うのが一番だから』と彼女は二乃に軽く助言している

四葉も自分のプレゼントの感想を求めるがあれをいつの間に作ったのか風太郎の疑問は尽きない

 

「ところでさ…。コータロー君は?」

「五月に聞いてないのか、何か用事らしい俺も知らん」

「そうなんだ…。彼からのプレゼントって結局何だったの」

「俺がずっと欲しかった参考書だ!?まさか買ってもらえるとはな」

「上杉さんのテンションが一気に上がったよ」

「何だかんだと言いつつ…お兄さんしてるね。彼も」

「うーん三玖もいないし…。勉強は無理そうだな…今日は帰るわ」

 

何だかんだ勉強が一番好きなんだなと中野姉妹は実感した

あれだけ考えた結果が勉強道具一式と参考書とは

プレゼントとしては飾り気がないと本人はぼやいていたとか

 

風太郎は少し様子を見たあと…。部屋の惨状と全員がいない今勉強をしてる暇はないと

そそくさと家を出ようとする もう少しゆっくりしていくよう言われるが

父親から釘も刺されている 勉強以外で長居は無用だ

 

玄関まで逃げるように歩き

何とか脱出。何故ここまで気を張らないといけないのか…。

理由は複数ある…。ため息をこぼしアパート前で黄昏ていると

 

「隠し事の匂いがします」

ゴゴゴゴゴゴゴと背後からの威圧

扉の隙間から顔を覗かせる五月はどのオバケよりも怖いだろう

本人はあれだけ苦手としているがその手の仕事が向いてそうだ

 

父の事なのかとすぐ確信をつく彼女に兄がどれだけ彼女を避けよと必死だったのかやっと理解できた

中々口を割らない風太郎に五月は一つ提案をした…。

 

「ではこうしましょう…。あなたの隠し事を話してくれたら私も一つお話ししましょう」

「お前の隠し事って…。別に…。あぁー なら幸太郎の事でも良いか何で詳しいのかとか」

「そ それは企業秘密でお願いします あなた経由で彼に知られれば会わす顔がないので」

「?…。まぁ他でもいいさ これもいい機会だし でも引くなよ」

「えぇ!」

 

「俺さ モテ期来たかも」

「うわぁ…。」

 

「まだ驚くのは早い 相手はあの二乃だ…。それともしかしたら四葉も」

「四葉もなんですか?」

 

「俺の思い違いかもしれない…。本人も応援するって言うんだけど何かそんな気が」

「自意識過剰では?」

 

「おい 俺はめちゃくちゃ恥ずかしいこと言ったんだぞ それ相応の物をよこせ」

 

風太郎の隠し事とは…。

二乃からの告白と四葉との噂

前者は確定だろうが後者は彼女自身も否定し…。自分の恋を応援すると言っていた

でも何だかんだと五つ子と接して居る彼は彼女が嘘を言っているように感じたと

流石に考え過ぎかとも思ったが兄は『何事も可能性を考慮すべき』と一言言っている

 

告白とそれに似た何かを暴露した彼は五月にも同じ恥ずかしさを味合わせようと

すぐに秘密を言うよう強要…。前提として 幸太郎関連を言うつもりは無く

風太郎が期待してる応えは帰って来ないと判断した。

 

ただそれ相応であると彼女も話す

 

「じ…。実は私にはもう一つの顔があるのです」

 

「は」

 

「誰にも明かせない…。ずっと秘密にしてましたが」

 

「ま まさか…。」

 

「私が!」

 

その突拍子もない 話に彼は思い当たる節がる

それはあの謎のレビュアーだ…。あの髪型は見間違えようがない

しかしまだ早い…。確信を得るまでは黙っておこう

 

「私がれ!」

 

「私 五月探してくる―」

 

「あっ」

 

何と言う間の悪さだ…。

玄関からは四葉が五月を捜しに現れ…。咄嗟の事だが彼女は口を閉ざしてしまう

やっと事実が聞けると思っていただけにとても悔しい気持ちを味わう風太郎

今更聞ける雰囲気でもなく…。五月は顔を逸らしてしまう

 

不思議そうに二人を交互にみる四葉『お邪魔でしたか?』と反省中だ

 

「こいつが今…。」

 

「上杉君…。携帯が鳴っていますよ」

 

「そんな誤魔化しで」

 

「本当だ…。 上杉さん ポケット」

 

「あっ…………」

 

聞きたい一心でもう一度確認しようとするがまた邪魔が入る

意識を逸らさせるための出まかせと思いきや…。本当に携帯は音を鳴らしており

普段は使わないこの機械に物好きな人物もいるなと…。彼は応答する…。

 

「もしもし」

『おう 風太郎そっちはどうだ』

「幸太郎か普通だな…。それよりお前は今どこで何してるんだ」

「幸太郎君からですか!」

「こいつ物凄い食いつきだな…。」

 

電話の相手は今日来れなかった 上杉幸太郎だ

自分が恥ずかしい思いをしている中…。電話の相手は悠長に電話だ

相手がわかれば途端に元気になる五月を見て風太郎でも彼女が兄をどう思っているか分かってしまう

『中野姉妹のアパートか好都合だ』と彼は勝手に納得している

三人はクエスチョンマークを浮かべ何が好都合なのかと風太郎は聞き返す

すると予想以上の答えが返ってきた…。

 

『俺さ5月までさ 家に帰れないから』

「はぁ?!はぁあああああ」

『………耳が たくよ』

「え 幸太郎君はなんと言っているんですか 上杉君」

「待て待て…。あの父親から許可は出ただろ? まさか何か言われたのか」

『これは家庭教師とは別の話だ…。俺の事情でな…帰るのはそうだな 5月の10日か12日辺りだな』

「まじでお前は5月まで雲隠れするつもりか…。理由は教えてもらえるか」

『悪いな…。他言無用なんだ…。そのうち話す』

「隠し事はするなって言った筈だろ!」

『だから伝えてるだろ』

「理由を言わないとかわんねーよ!」

『勇也さんには既に伝えてある…。お前にまかせっきりで悪い』

「はぁ…………。面倒事じゃないよな」

『………』

「無言をやめろ…分かった…。」

『はい…。弟君から了解も取れましたと…。 あとさ 五月と三玖達を頼む』

「了解…。無事に帰って来いよ 俺が何されるか分からない」

「おう また来月会おう」

 

五月から秘密を聞くどころか兄が来月まで家にいないと衝撃的事実に

風太郎は頭を抱える…。彼曰く家庭教師関連ではなく 父親からの圧力でもない

純粋に彼自身の問題だと言っていた

電話が終われば五月が彼に詰め寄る 今から彼女達に説明と考えれば

今この場にいない兄を少しは恨む…。

ごっほんとわざとらしく咳をする…。これである程度は心も落ち着く

 

「えーっと…。幸太郎だけど」

「はい なんですか」

「来月の12日までいない…。多分学校にも来ないと思う…。何処に行くかは知らないけど」

「えぇええええええ お兄さん!? 何で転校の話は消えたんじゃないんですか」

「俺が知るかよ…。急ぎの用事らしい お前らにも謝って…。五月?」

「何故ですか幸太郎君が電話に出ません…。メールも送っているんですが返事が返って来ません」

「ひぃいいい!」

「い 五月が壊れた! お落ち着いて 上杉さんも怖がってるから」

「幸太郎君幸太郎君幸太郎君幸太郎君幸太郎君幸太郎君幸太郎君幸太郎君幸太郎君幸太郎君幸太郎君幸太郎君幸太郎君幸太郎君」

 

瞳に光はなくひたすらに彼に電話をし…。凄まじい速度でメールを連続で送りつける

その姿に風太郎は…。背筋が凍りすぐに後ろに下がる…。

何度も何度もここにいない彼の名前を連呼する

何処から取り出したのかスマホをもう一台取り出せば

 

「まだ彼は日本にいます…。追いかけましょう」

「ちょ 五月落ち着いて! それに何でお兄さんの居場所が分かるの」

「これは由々しき事態です…。誘拐の可能性も考慮すべきです」

「何でそうなの!?」

「彼は来月の12日に帰ると言ったそうです 18日間不在

 455時間28分39秒いないという事です」

「こういう時だけ凄く計算早くて怖いよー」

 

 

 

 

「ただいまーって…五月どうしたの?」

 

「三玖ーー!」

 

 

彼の居場所が何故か分かり 不在の18日間を高速で演算

流石に四葉もそれには引いてしまう…。

今すぐに会いに行くべきだと行動を開始するが…。まだ部屋の掃除も終わっていない

それに勝手に動けば彼も困ると必死に説得

 

タイミング良く三玖がバイトから戻ってくる

玄関先で四葉に抑えられる五月という物凄い絵ずらに困惑中だ

三玖の姿に五月は反応し 『今からすぐに追いかけましょう』と言いだし始める

主語がなければ理解も出来ない 三玖は混乱する一方

 

「幸太郎君が18日間いなくなるんです!」

「えっ」

「いやいや あいつも用事だって言ってるんだよ」

「そうなんだ…。コータローいないんだね」

「はいですから! 彼の居場所が分かる今のうちに」

「五月…。少し落ち着こう…。四葉も言ってるでしょ 

 大事な用事だったらコータローが困るだけだよ」

「しかし…もしもの可能性もあります 三玖は心配じゃないんですか」

「心配だよ…。でもそれ以上にコータローを信用してるから だから待ってようね」

「むむむ…。」

「あいつが戻るのは修学旅行より少し前だ…。班を決める前に戻れば良いんだがな…。

 もし何かあれば…。電話するから」

「了解…。フータローもお疲れ様」

 

五月と違って冷静に話を聞いている三玖

風太郎も何かあればとちゃんと説明してくれている

内容は伝えなかったが…。自分たちをよろしく頼むと彼が言っている

その言葉だけで彼女は彼を信頼出来る…。

適当に流す事はあっても…。自分たちを陥れるような嘘を彼は絶対につかない

彼女はそれをよく知っているのだ…。

 

「でも…。相談はしてほしかったな」

「まったくです…。幸太郎君は何時も何時も」

「まぁまぁ…。それよりさ このスマホなに? お兄さんの位置が表示されてるけど?」

「あぁーえっとそれは…。では私は部屋の掃除に戻ります」

「ちょー五月 教えてよ」

「そっとしておこう」

(コータローのスマホにGPS付けてるって言えないよ…。)

 

何時ものように相談はなし

三玖が気がかりなのはそれである…。彼の相談なら何時だって乗ると伝えているが

どうも本人にはその声は中々届かない模様…。五月も不満気だ

彼女の暴走は何度か見て来た四葉だが…。

彼を探すときに五月が取り出したもう一方のスマホの正体が気になり画面を眺める

そこにはアイコンで『上杉幸太郎』と表示され…何処かの建物内部にいる事が分かっている

『あっ!』と我に返り 四葉からそれを取り上げ…部屋に逃げていく

 

 

実は彼に隠れて…彼のスマホには小型のGPSが内蔵してある

以前彼が中野六花に会っていた時にピンポイントで五月が位置を割り出せたのはこれが理由

姉妹と言えど秘密で…。三玖にしか教えていない

 

 

「はぁ…。そう言えば三玖 その袋はなに?」

「四葉…。私が作ったパンだけど 食べて」

「えっ…。そ それはお兄さんの担当では」

「ダメ…。四葉が食べて」

 

「私が…。一体私が何をしたって言うの…。

 

 

 

 

 あむ… あれ?美味しいよ!!三玖」

 

普段は幸太郎が三玖の料理の実食担当だ

あの男は味覚が死んでるのに味にはうるさい…。そして三玖の手料理がとても好きで

気にせず食べている…。大事な時にいない 幸太郎に軽い呪詛を唱えつつも

がぶりと思いっきりパンをかじる…。どんな味だと覚悟した四葉だが…。

 

感じたそれはいたって普通のパンだ…。

こんがりしており一口だけと思いつつも気づけば全部食べていた

 

 

「ずっと特訓してた」

「なおの事お兄さんの担当じゃん! お兄さんも来てればな」

「コータローがいないのは好都合…」

「どうして?」

「コータローにはとっておきの舞台で食べてもらう」

「よし お兄さんがいない間は私に任せて!」

「なら味見担当よろしくね」

「あっ…………はい…お兄さん私頑張りますよ」

 

あっと何かを察した四葉今更断れない…。ぐぐと拳を握り気合を入れる

幸太郎が帰還する18日間の間

四葉の苦難に満ちた冒険が今始まろうとしていた…。

 

 

ーーーーーー

 

ーーーー 

 

ーー

 

 

 

「はぁ…………。」

「でもコータロー君も急だねー何処に行くつもりだろう?」

「行先は上杉君も知らされてません…。 おっと」

「五月ちゃん…。これ…この写真の子…。まさか…………」

 

幸太郎が暫くは不在だと一花と二乃にも伝えた

『あいつも何で言わないかなー』と珍しく彼女も心配しており少々呆れ気味

だからと言って掃除をサボる訳にも行かない…。

服が入った段ボールを五月は持ち上げ…。それを持って倉庫に向かう

 

 

幾つかの荷物を待って移動する中 五月の持っていた

段ボールから一枚の紙が落ちる…。彼女はそれに気づく事無く倉庫まで向かってしまい

残された一花が代わりにそれを拾い上げる

 

よく見ればそれは、ただの紙ではなく一枚の写真

後ろを確認すると日付は今から6年程前の物

 

目つきの悪い少年と一人の一花もよく知る少女が写りこむ一枚

 

 

その時期にこの少女や自分が関わった、男子生徒はあの少年

自然と彼 上杉幸太郎なのでは? 一花はそう考えたが

よくよく考えれば、彼が今のように悪ぶる様になったのはごく最近

 

となれば一人…。彼と似た面影を持ち 自分達と年の近しい人物…………。

    

    金髪のこの子は【上杉風太郎】だ

 

興味深そうにそれを手に持つ一花は京都の思い出を振り返る

 

 

 

 

 

「上杉君に言うタイミングを間違えました…。

 流石にこのまま黙っている訳にも行きませんね…。次こそは彼に事実を…。」

 

段ボールを物置まで運ぶ その中には…。一着の服とカツラに加え白い帽子

上杉風太郎がかつて出会い…。再会したあの人物…。

 

【零奈】と名乗ったあの子が来ていた服と全く同じ物がしまってあった…。

 

あの時 風太郎に彼女が伝えようとして秘密とは……一体何か…。

 

 

「…。そしてこの事実を彼にはどう説明すれば良いのか…。

 あなたには何度も嘘つきましたね 幸太郎君」

 

 

 

もう一方の段ボール箱には…。

黒い帽子とヘッドホンに加え短めのカツラが閉まっており…。

それは紛れもなく…。上杉幸太郎が探す 【中野六花】が身に着けていたものと同じ品…。

 

(あなたがいない…。この18日の間に…。私は答えを見つけます

 上杉幸太郎さん…。)

 

 

5月におこる一大イベント

修学旅行…。行先は京都…。 上杉風太郎には所縁があり

中野姉妹にも深い関りがあるそこで…。上杉幸太郎を待つものとは…。

 

 




中野五月の秘密

上杉幸太郎に黙ってスマホにGPSをしかけ日々同行を監視しており
緊急時には動けるようにしている
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