連続オリジナル回で次回から本格的なシスターズウォーです
五月ちゃんや姉妹の誕生日などなど
上杉幸太郎が日本を離れて10日が経った 5月3日
時間は進み日常は代わる代わる変化しゴールデンウィークに突入していた
上杉風太郎は彼の不在の中、家庭教師の仕事のみであの家に顔を出しては
彼女たちと定期的に簡易テストを行ったりしている
学力模試から成績の低下はなく、塾講師の下田の元で手伝いをする五月の成長は予想よりも大きい筈なのだが、やけに静かで察した風太郎はあえて触れずにいる。
仕事と勉強の板挟みの一花も彼女に負けず劣らず70点以上を常にキープ
この分なら何の問題もなく卒業を迎えられる…。あの父親にもそう宣言している
残るは彼女たちが進む道を見守ることだ風太郎は再認識していた
「じゃ、俺はこれで」
今日は、バイトがある為少し顔を出しただけで。時間が迫れば
彼は足早に去って行く
『ファイトでーす』と四女は声援を飛ばす
同じ勤務先の二乃も風太郎を追いかけるように走り去り
残ったのは 三玖、四葉、五月の3名
清掃のアルバイトも今日はなく
三玖も今日は非番ではあるものの練習はあれから毎日続けている
五月も暫くは時間に余裕があり…。下田からも
『あんまし無理はすんなよー嬢ちゃんが倒れたら…。不良少年に怒られるからさ』と注意を受けた
何でかあの元ヤン講師は幸太郎を引き合いに出せばニヤニヤと自分を見ている
その彼の事を思い出せば…。五月は深いため息だ
隣で座りこむ三玖は、彼女の背中を摩る…。最近はこの光景も見慣れ
誰から見ても五月が幸太郎に抱く感情 あれだ 本人は頑なにそれを認めようとはせず
『なんですか…。からかっているんですか わ 私が? 学生での恋愛はふ 不純です…………』と
何処か、歯切れが悪くなる
認めてしまえば楽なんだと思いつつも一花はあえてそれを言わずライバルを増やさない方針
二乃は長女の策略を知って呆れていた
重くなる空気をどうにかする為 場を和ませようとする四葉
何か話題はないかと…。彼から逸らす様にと頭を働かせる
ばんと量の手を叩けば明後日に迫る 一大イベントを改めて残った3名で話し合う事を提示
しかし…。それもまた地雷だという事を四葉は知らなかった
明後日五月五日は中野姉妹の誕生日…。だがそれはあの男も同じだ
「幸太郎君の誕生日も明後日です…。お祝いしてあげられません」
「えっ…。お兄さんって同じだったの?」
「うん…。昔は一緒にお祝いしてたんだよ…覚えてない?」
「あっ…言われてみれば…そんな記憶がちらほらと、どうしようお兄さんの用意してないよ!」
「用意しても幸太郎君の居場所が分からなければ渡しようもありません…食品関連なら日持ちするものではなくてはいけませんし…。」
「お兄さん何処に行くかぐらいは言ってくれてもいいのになー」
「12日まで待つしかないよ…。でもちょうど土日挟むから会えるのは週明けだね」
「更に遠ざかってしまいました…。どうすればいいのでしょうか」
「よしよし…。五月も私も待っていれば良いよ コータローを心配させないようにさ」
「みくーー」
(…。うーーーん 五月は絶対に何かあるんだよね?
でも三玖も…うーん 私はどうすれば良いんですかお兄さん!!)
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「ぶっーくしょん」
「幸太郎…。風邪かい? 移す恐れがある部屋に戻ってくれ」
「お前が俺の部屋から出て行け…。ナチュラルに侵入してくるな」
「鍵なんて勝手に開けれる」
「何回 幹雄さんがここの鍵を変えてくれてると思ってんだ! つうかまじで出てけ…俺は今忙しいんだ」
「忙しい? あれは まだ先だろ? あるとすれば幸太郎の誕生日だけだ」
「俺のはどうでもいい…。」
場所は一度変わり 上杉幸太郎がいるイギリスのある建物の彼が借りる一室だ
ここに来て一週間程…。当たり前だが、出会う人すべてが英語だ
今まで使って来た日本語はほぼ通じない
坂下幹雄の元で発音を勉強したり…。英語の文章を自ら製作したりと試行錯誤の毎日だ
確かに面倒事は多いが…。不思議と楽しくもあり 言葉が通じれば嬉しくなる
毎日が発見の連続だ
今日も今日とて彼は何か手紙のような物を書き始めていた
この旅の同行者 雨宮紡木は、部屋に侵入し彼の書くそれを奪い取れば
ニヤニヤと笑い 彼を嘲る
「あの姉妹にお手紙かー 幸太郎らしいね 実に馬鹿らしい」
「うるせーよ…。 返せ」
「電話をかればいいんじゃないか? きっとすぐに出てくれる」
「スマホは死んでる…。初日にあれだったしな」
「何かあったかい?」
「お前はそういう人間だったな…。」
とことんそう言った事に興味を示さない彼女に呆れ
視線を部屋の隅に向ける…。そこには焦げた電子機器の残骸 彼の持っていた充電器だったもの
ここに来て初日に彼は、危機感なく 充電器を部屋の隅にあるコンセントにはめ込んだ
幹雄が止めようとした時には既に遅し…。 ばっちんと音を立て 持っていた機器は
黒い煙を上げ使い物ならなくなっていた…。
幸太郎も刺した時点でそれを思い出した…。日本と海外では電圧が違う
変圧器盤を使わなければ、キャパシティーをオーバーし電化製品はあっという間に壊れてしまう
運の悪い事に彼の持っている 充電器はワイヤレス対応 それ自体が機械だ
一気に電機が流され 悲鳴を上げる暇なく壊れた
勿論のこと 坂下が持つ充電器は彼と型番が合わない それ以前に幸太郎をいじる事を楽しむ
雨宮紡木が、貸す訳もない
残った 坂下幹雄はスマホではなく 携帯人間…。貸す貸さない以前の話だった
街に出て合いそうなものを探したが見つからず、結局そのままスマホは放置
旅に出て4日目で音信不通だ
五月の事を考えれば、どれだけメールと電話が来ているのか
想像するだけで恐ろしい…。連絡したくても出来ないとは彼女からしたら言い訳だ
散々なじるこの女もどうせ自分にスマホを貸す気はないと彼も諦め、貸してくれるにしても長年の感で分かる。
『さーて条件だ』と嬉しそうに言うに決まってる。高いリスクは避けて行こうと借りる気はない
そんなトラブルもあり 幸太郎は手紙で自分の無事を知らせようと考え
幹雄から一式を借り…。中野姉妹の宛名と上杉家の宛名を書いた二枚を用意
それぞれ書いている…。 中身を見た雨宮紡木は苦笑し すぐに彼は取り返す
「中身はっと………出だしは日本語で途中から英文になってる。君も器用な事をするね」
「まじだ…。全く気づかなかった、つうか返せ」
「あの子達が読めるとでも?」
「うるせー…。いちいち茶々をいれんなー」
「それにさ、この荷物はなにかな、私気になるな~」
「お前には教えん」
「義兄さんと昨日出かけた事が関わっているんだね?うーん何かなー」
「それがどうした…。お前には関係ない話だ、さっさと自室に戻れ、しっし」
一週間もいれば自然と習慣も身につき
手紙の中身は日本語と英語が入り混じっている…。嘲る彼女に文句を洩らし
机の上にある 大きな包みを持って彼は坂下幹雄のいる部屋まで足を運ぶ
彼の行動時一つ一つが面白い 彼女が見過ごすわけもなく
後をつける…。
とんとん
「はーい 誰かな?」
「幹雄さん 俺です」
「幸太郎君か入って良いよ」
「失礼します…。 お仕事中でしたか?」
「生徒の書いた論文のチェック…。中々興味をそそるもよが多くてね それで幸太郎君は何用かな」
「荷物を日本に送りたいんです」
「あぁー 準備が終わったんだね…。僕が出しておくよ」
「ありがとうございます…。 一応は知らせないと心配するんで」
「そうだね 一報があってもいいだろう それで プレゼントは選べたかな?」
「はい…。喜んでくれるかどうか不安ですけど」
「君も律儀だね…。遠く離れてまで」
上杉幸太郎が持っている大きな箱は中野姉妹への贈り物だ
彼は覚えている 彼女達の誕生日が明後日であることを…。去年は誕生日を祝えず
今年は祝ってあげられると思い込んでいたが、幹雄の提案でイギリスに短期旅行をしている
どうにか出来ないかと…幹雄に相談し…。 昨日街の方まで出かけ
彼女たちへのプレゼントを選んでいた
お金は勿論彼が…。と言いたいが、こっちの通貨を持っていない
幹雄が立て替え、彼は、何度も頭を下げた
連れて来た人間は彼自身準備を怠たった自分にも責任はあると口にしていた
「幹雄さんもみずき姐に毎年贈ってるんですよね?」
「おっと 反撃か…。どうやら 立ち直ったようで安心だ」
「自分が、まだまだと改めて実感させられました…。幹雄さんの推薦を頂いたのにすみません」
「まぁ…。君の実績はここも知っている…。チャンスもまだ残ってる 僕としてはあれでいいとは思ってはいたんだけどね、取り合えず次の期間まで気持ちを切り替えようね」
「了解です…。次回で最後なんです。落ち込んでばかりはいられません…じゃ お願いします」
「ОK…。任せてくれ」
小包と手紙を幹雄に預け
部屋を出る…。入口前では雨宮紡木が満面の笑みで彼を出迎える
『盗み聞き野郎』とぼやき部屋まで戻って行く…。
彼の姿が見えなくなったあたりで雨宮紡木の表情は一気に暗くなる
さっきまで見せた笑顔はなくただ一言『またあの五つ子か』と一言呟く
上杉幸太郎が日本に帰国するまで後8日…。
幹雄から言い渡されたとある試験…。当初の彼は緊張故にそれに不合格と失態を犯した
しかし今の彼の表情には緊張も不安もなく…残るチャンスに全てをかける…。
(プレゼント届くのかそれが激しく不安だ…。)
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5月4日金曜日
帰宅した一同はそれぞれバイトに向かう
明日は自分達の誕生日という事もあり…。それぞれが一個づつプレゼントを用意し
ランダムで一個選ぶロシアンルーレット方式を採用した
5人で生活していくには出費は必要最低限尚且つ…。貰って嬉しいものと言うのが大前提
一人一人買っていてはお財布が一気に空っぽになってしまう。
最近は色々と不穏な空気が漂っており誕生日の日くらいは穏便に楽しく過ごしたいのが
彼女達の考えだ…。
「はぁ…。」
「おいおい、嬢ちゃんそんな辛気臭い顔されたら生徒達に悪影響があるんだけど?」
「すみません! 少し考え事を…。本当に申し訳ありません」
「そう思うならよぉ…。ちゃんと心の整理をしてから来てくれるか? そんなんじゃ目指すもんも
永遠に掴めねーぞ」
「……」
「あの不良少年なら大丈夫だ…。 事情は知らねーけど 幹雄といるんだし」
「その幹雄さんと言う方は、下田さんのご友人なのですか?」
「一応な…。 あいつはくっそ真面目な男で、まぁーなんだ先生からの拳骨を受けずに済んだ一人だな」
「と言うと…幸太郎君のお父さんのご友人でもあるんですね」
「あぁそうだな…馬鹿じゃねーが…。勝手に話を進める。面倒な男だったなー」
「あっはは…そうなんですね」
「そう言えば…あいつも結婚してたな…。相手は坂下水木っていう 医者だった…年の差婚で私らも驚いぜ ロリコンかよ」
「坂下先生の旦那さんなんですか…ご結婚されているとは聞いていましたが意外です」
「意外ねー…あいつは教師だし 案外不良少年の担任だったのかもな?」
どういった経緯で彼を連れて行ったかは友人である下田が知るところではない
帰って来たなら何か言えとは文句は言いたい、愚痴も出る
坂下幹雄は変わった人物だが…。
何か理由があって彼を同行させたんじゃないのかと
落ち込む彼女に一声入れれば、生徒たちのところに戻って行ってしまう…。
その何かが、自分たちには話せない内容で彼は詳しい事も告げず二週間近く不在
メールも途切れ…。秘密で付けたGPSも彼が、消えて直ぐに反応を消失
GPSに関しては三玖しか知らず、先月四葉にも見られたが深くは追及されずに済んでいる
バレれば彼だけではなく…。姉妹達にまでいらぬ誤解を招く
あくまでも あれは幸太郎の位置を確認しすぐに駆け付けられるようにするため
個人の気持ちは一切介入していない 三玖は悟った目で話を聞いていたとか…。
下田の言葉を思い出し…。今自分に何が出来るのか…。
それは彼に心配をかけるような事がないよう、過ごす事
心配事は尽きないが…。彼が戻ると言ったなら、その言葉を信じよう
少し真似をして頬をぱんぱんと叩き
気合を入れ直す…。 『やはり痛いですね』 以前と同じく力加減を間違えたのか
五月の軽く頬が赤くなっていおり 顔を見た下田はびっくりした様子で講義を再開した
(会えないのなら…。せめて あなたの無事を祈らせてください)
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5月5日 土曜日
今日はいよいよ 中野姉妹の誕生日
その事を知らない風太郎からはお祝いの一言もなく
メールすら送られてこない
『流石上杉さんだ…。徹底してる』
自分たちが祝ったならお祝いの一言も欲しいものだが…。
知らないのなら仕方がないと自分達に言い聞かせ、彼女たちは部屋でケーキや料理の準備を始める
因みに今日が幸太郎の誕生日だという事を知っていたのは
五月と三玖と四葉のみ…。
残りの二人も覚えておらず 四女の口からもれたその内容に二人も少々驚いていた
一花は『…。なんで そんな重要な事を黙っていたの?』と一瞬目が光っており
三人は身震いしたとか何とか。
四葉と違い…。一花なら覚えていた正確には思い出したのでは? 二乃なら真弓辺りから聞いているのではと勝手に解釈していた
案の定そんな事はなく…。二乃は心当たりがなくはないが、彼の誕生日だとは思いもせず
『今はいないんだし…。メールで祝うしかないわね』と申し訳なさそうにスマホを取り出す…。
好きな方は弟の風太郎だ でも 彼には幼い頃の恩がある二乃も憎からずは思っており
ここにいればお祝いぐらいはしていたと口に出す
冷静さを取り戻した一花も同意見…。言われてみれば、幼い頃に彼の誕生日を祝ったような記憶がある
ただ現在彼は不在だ…。プレゼントの用意してない…。今から動こうにも彼自身不在だ
それに今日は姉妹にとって大事な記念日の一つ 台無しには出来ない。今回は諦めて次回に生かそうと自分に言い聞かせる
一応 三玖は彼へのプレゼントを用意しており
四葉にもそれを伝えてある…。『あぁー そう言う事だったのか 任せて』と納得していた
その四葉も彼が戻ってきた時に一声くらい入れないと気が済まないと言いつつ
風太郎の時と同様に千羽鶴をちゃくちゃくと製作中
無事に帰ってくるよう願掛けにもなっている
最後に残った五月はこの中で唯一アルバイトをしておらず 収入と言えるものはない
蓄えはそれなりだ…。けど彼が今欲しい物は何かと問われれば頭を傾げる
ひたすらに考え悩んだ…。彼に聞いても『何でも良いよ』とあしらわれてしまうだろう
結局は答えは纏まっていない…。
物でなくてもいい あの少年が喜んでくれさえすればそれが一番なのかも知れない
手を動かしながらも幸太郎の誕生日への意気込みを込める五つ子
準備も終わり…。今は自分達の誕生日を祝おうと気持ちを切り替えた
この日のため為に…。彼女たちはそれぞれ休みを取っている
同じ日に生まれ 同じ日に祝う 今も昔もそれは変わらない。だから今日と言う大事な一日は、姉妹で過ごそうと前々から計画していた
それぞれがプレゼントを用意
中身の分からないそれを皆で回す、はてさてどうなるのか?
好きな物はバラバラだ…。一体どんな品が贈られるのか五つ子全員がドキドキだ
何度か周回をしたのちにコクリと頷いた。
『『いっせーーの』』
全員が同時にプレゼントを開ける…。
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「あっーー また私!」
「二乃はこれで三回連続だー」
「二乃はもう少し考えて刺すべき」
「ゲームなんだから…。いいのよ 直感で」
五つ子のプレゼントが無事終了
片付けなどに入る前に早速 四葉が買って来たプレゼントを五人で遊んでいた
彼女が買って来たのは 黒ひげ危機一髪 偶然見つけ
『これなら絶対に盛り上がる』 と感心しプレゼント交換に
因みにこれを手に入れたのは、今三回連続で黒ひげを宙に飛ばしてしまった二乃である
最初はすごく微妙な顔で…それを受け取ったが、にこにこする四葉の顔を見て文句を言う気も失せた
「次は何か罰ゲームでも設けてみる?」
「具体的に何でしょうか」
「うーん 負けてからのお楽しみって言うのはどうかな」
「えぇー 一花の考えた罰ゲームとか怖いよー」
ただ黒ひげを飛ばすのも芸がない
次からは負けた人物には罰ゲームと長女は話す
嫌な予感しかしないと顔を見合わせ…。手に持つ玩具のナイフにも自然と力が入る
次の手番は三玖…。ごくりと喉を鳴らし
何処に刺せば飛ばないで済むかを考える…。周りが無言になり始める為 余計に緊張してしまう
ここは度胸!と疾きこと風の如く 一点集中で突き刺す
びょーーん
「あっ…」
「四連敗は防げたわね…。」
「今回は三玖かー」
「うーん 罰ゲームは何がいいかなー ふふ」
「一花 手心は加えてあげてください 思い出がトラウマになっては困ります」
「じゃー 三玖には」
「…」
ピーンポーン
「あれ誰かしら?」
「罰ゲームになるか分からないけど…負けた三玖に行ってもらおうかな」
「インターホンに救われた…」
「一花の表情本気だから私まで焦ったよー」
「そう? お姉さん悲しいなぁ・・・」
「…では三玖お願い出来ますか?」
「うん これくらいなら別に大丈夫だよ」
大人げない発想が浮かばなかったと言えば嘘になる
同じ人物を好きになったもの同士思う所もあったがせっかくの誕生日を最悪なムードにはしたくない
タイミングよく インターホンもなっている
今回はそれで良しにすると三玖に告げた…。
一花の顔を見て厄介な事を言われるかと覚悟を決めたが
来客に救われたとほっとする
土曜日の夜に一体誰か? 三玖は玄関に向かい
外を確認…。玄関先には見慣れた 壮年の男性が荷物片手に立っている
「江端さん…。こんばんわ…。どうしたんですか?」
「こんばんわ…。どうしたと申されましても お嬢様方のお誕生日にお祝いの一つも言わないのは失礼」
彼女たちの父に仕える 秘書の江端が彼女たちのお祝いに来たと口にする…。
そーっと首を出し後ろを確認するが、江端一人で 父の姿はない
やっぱりか 父は現れない…。今日だって電話で済ませ 何かあれば準備する
娘の誕生日なのに彼は普段と変わらず一定の距離を開けたまま…。
ちょっとくらいはと期待をしてないわけでもないが…。前回の模試以降更に距離を感じてしまっている
立たせておくのも彼に悪い…。入るよう促すが
彼は首を横に振り 持っていた箱を彼女に手渡した
「この箱は江端さんから?」
「いえ…。これは上杉幸太郎様からです…。」
「!? コータローから」
「こちらの都合で向こう様の住所は、伏せさせて貰っております ご理解のほどを」
「お父さんか…。 でも何でこっちに送らなかったんだろう?」
手に持っていた箱は、あの少年上杉幸太郎から送られてきており
嬉しい気持ちと同時に直接ここを指定しなかったのかという疑問も生まれる
純粋にこの荷物を日本へと贈った人物
坂下幹雄が彼女たちの住所を知らず…。中野マルオにいつも通り送るという少し間の抜けたオチがついてくるが、彼女たちがそれを知る由もない
「それと…。 こちらが旦那様からになります」
「お父さんからプレゼント…。?」
「ご内密にお願いします 『あの少年が贈って僕が贈らない訳にもいかないだろう』と」
「お 大人げない」
こそっりと教えてもらう事実に三玖は眉をひそめる
何かとあの兄弟には当たりの強い父が次はプレゼントで対抗し始めた
素直に贈って来ないあの人らしくもあるが、普通に贈って欲しいと内心思う
これからまた父の用事で車を出すため江端は姉妹に再度お祝いの言葉を送り
アパートから去って行った
二種類の箱を抱え部屋まで戻る
自分の戻りが遅く心配だったのだろう 四葉が顔を覗かせて
何かあったのと声を出す…。
「江端さんが届けてくれた コータローとお父さんから誕生日プレゼントだって」
「お兄さんちゃんと贈ってくれたんだ…。 私たちは何も出来ないのに…。」
「コータローらしいと言えばらしいね…。お父さんも少し意外だった」
「電話越しだと何て頼んでいいか困っちゃうからねー 何だろうね中身?」
部屋に戻ると『誰だったー』と一花がケーキを食べながら彼女等に問う
彼からの贈り物だよと三人に教え 案の定末っ子はビクッと体を揺らし三玖の方へと視線を向ける
「コータロー君から?」
「うん お父さんのもあるよ」
「パパからって意外ね……今まであったかしら?」
「三玖と同じ事言ってる」
「実際本当のことだからさ…。今だってアパート暮しだから余計にそう感じるのよ」
「では早速開けてみましょう さぁ!」
「五月のテンションが可笑しいんだけど…。」
「割と最近の五月はこんな感じだから…。私は慣れたよ」
上杉幸太郎のプレゼントと聞けば、露骨にテンションも上がり始める末っ子
ウキウキわくわくと肩を揺らし…。本当に子供のように思えてくる
きっと彼から見れば、中野姉妹全員このような感じ見えているのではないだろうかと三玖は深く考え同時に超える壁は大きいのだと改めて考えさせられた、
「綺麗なマグカップだ」
「お洒落ね…。ちょうど五つあるのね」
「あとは…。 これはお菓子かな?」
「他にも手紙が入っていますね、読んでみましょう」
『拝啓 中野姉妹様
まず初めに…。勝手にいなくなった事を謝罪します すみません
少々訳が合って知り合いの教師と街を離れています。
詳しい事は伏せさせてもらいます、個人的な事情と捉えて欲しい
今回は現状の報告とお前たちの誕生日のお祝いだ…。
こっちの都合で戻るのが、5月5日以降になり
誕生日に間に合わないと分かり。こっちにいる間に選ばせて貰った
無事に届けば誕生日当日には届く筈だ
みんな誕生日おめでとう
今のお前達に何を贈れば良いのか、今の俺には分からない
生活するうえで尚且つ持っていても不自然ではない
それに店先で並んだ、その五つの品を見てお前達を連想した。これが大きな理由だな
あとお菓子の方も是非食べてくれ…。向うで進められてさ 多分美味い筈
風太郎やお前らには不安や心配もかけてると思うが修学旅行前には戻る…。
改めて 誕生日おめでとう…。今年もお前らが元気ならそれが一番だ ではまた
上杉幸太郎より 追伸…。 どこぞの末っ子さん大量にメールを送るな軽くホラーだ』
「……」
「五月…」
「五月ちゃん」
「あんたさ」
「あぁー あの…。えっと 綺麗なカップですねー」
『『逃げた!?』』
思い当たる節が多すぎるのだろう手紙を畳み
プレゼントを持っては現実逃避…。
何件送ったのだろうとじーっと五月の方を見る
「と言うかさ…。肝心なことぼかされてあいつが何処で何をやってるのか全然分からないんだけど」
「はぐらかそうとはしてないようだけど…。戻ってくるまで言えないって事なのかな?」
「まぁ…。お兄さんは電話にも出てくれないので確認のしようもないからね」
「手紙で無事が分かっただけでも満足…。」
「三玖のお兄さんへの信頼が厚い…。」
手紙の内容でも 町を離れるとだけ記載され
江端から届け先の住所は消すよう…。言われたと話す
結局は何処から送られたのかも不明…。
ぱっと見て 何処にでも売ってそうなカップだが、送られてきた菓子の方は
英語で書かれた箱に入っている…。日本製の物とは思えず
余計に混乱する二乃
あの男が簡単に口を割るとは思えないが、
来週には戻ってくるその時には、何処で何をしていたのかくらいは聞いておこうと一花は告げる
「彼が戻ってくるのは修学旅行前かー」
「何かあるの 一花?」
「何にもー、二乃の方こそ」
「さーねぇー、ふふふ修学旅行楽しみだな」
「みんなすっかり お父さんからのプレゼント忘れてるよ」
すっかり忘れ去られた父からのプレゼント
あの人がどんな品を贈ってきたのか、実のところ興味はあった
恐る恐る中を確認 ぴたりと四葉の手が止まる
「なんという事でしょう… みて!お兄さんと同じくこっちはティーカップ贈ってきた」
「ぶふふふ…やっぱり お父さんとコータロー君って似てるかもね」
「パパは絶対やな顔するだろうけど プレゼントまで被るなんて」
最後の最後でオチを持っていったのは彼女等の父から
贈られてきた品で、全く同じ物でないが種類は同じだ
彼を毛嫌いしながら、何だかんだとプレゼントまで似たものを贈る父に笑いが起きていた
同時刻別の場所で上杉家にも彼からの手紙が届き
内容を見て風太郎は凄く面倒そうな顔をしていたとか…。