上杉幸太郎と六等分の思い出   作:Aikk

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どうもお久しぶりです。暫く開けてからの投稿になりました
お気に入り登録も270突破し 本当にありがとうございます
拙い文章が続きますが、頑張って行こうと思いますのでよろしくです

今回からシスターズウォー編です
一花が風太郎を誘う理由が違ったり
幸太郎関連であれやこれやと何時もの軽い騒動などです。



第八十七話 不良少年とシスターズウォー①

五月七日月曜日

 

パン屋こむぎの店内では

真っ黒な何かが置かれており その前に座る中野四葉は

うーーんと唸りこんこんと叩き強度を確かめる『石屋?』と冗談では言ってない

それ程までにこれが『何』なのか彼女には分からない

 

この物体の製作者である中野三玖はだんまりを決め

そっと四葉の方へそれを動かす

物体の正体は三玖が作った、クロワッサンらしく本人も自信なさげにそう口にする

 

 

彼が5月まで戻れないと言ったあの日から、今日まで幸太郎の代わりにパンの試食を頼まれ

四葉もその時のパンの出来が良く頑張る姉妹の為にこくりと頷いた…。

 

と意気込みは良かった だが徐々に出されるパンは形を変え

最初に出されたものから乖離し始めていた

見守る店長も額に汗かき目を細くする

 

「ま、まぁ…。中野さんはバイト始めたばかりだし」

「うぅ…」

「パン作りは難しい、最初は誰でもこうなるよ…。幸運にも向かいケーキ屋はそれほど脅威じゃない出来る限り私もサポートするから中野さん頑張ろうね!」

「はい!」

「やると決めたからには私も最後まで付き合うよ!」

「ありがとう、四葉」

 

 

その日から更なる特訓が開始された

来る日も来る日も試行錯誤…。時には液状化したパンらしきものを生成した

『不思議な力で何故か失敗する』手順通りで何でこうなるのかは店長ですらわからず

壁に寄りかかり何が行けないのか自問自答を始めだす

 

 

 

五月十一日 金曜日

 

遂に明日12日に彼が戻ってくる

自然と彼女の纏う雰囲気も普段とは違い…。本気の文字が伺える

テキパキと手順通りに動き 下手なアレンジはせず一番大切な

食べてもらう人の笑顔を思い浮かべ 最高の材料である彼曰く『愛情』をしっかり丁寧に

パンに込める…。そして待つ事数時間…。

 

三玖のパンが遂に完成

店に出されるパンと比較してもやはり不格好さは否めない

店長も『頑張りは出てる、ここまで作れるようになってうれしいなー』とやつれ気味で答えていた

 

「パンだ…。4月に見たのは幻じゃなかったんだね」

「ふーーん、えっへん」

 

作り上げた本人も自慢気な表情で四葉に見せている

見た目はほぼ完ぺきだ 味の方もこの調子なら大丈夫と四葉も太鼓判を押す

今日まで親身になって教えてくれた店長にぺこりとお辞儀

自分の頑張りは無駄ではないと店長の瞳から小さな水滴が流れていた。

 

「これを持っていくの?」

「まだ美味しいパンじゃない…。」

「三玖ちゃん修学旅行までにとか言ってなかったっけ?」

「はい一日目のお昼が自由昼食のはず…。 

 侵略すること火の如し そこでコータローに取って置きのプレゼントを渡す」

「きっと、お兄さんも大喜びだよ!」

 

彼女が今日まで頑張ってパンを作っていたのはアルバイトでもあるが、

一番は先週誕生日を迎えた彼へのプレゼントとして最高のパンを彼に食べさせてあげたいのだ

彼がいないこの二週間少しは作る練習には最適だった…。

何を気を使う事もなく練習が出来ている 失敗はあったが、

次こそはもっと美味しいパンを作れると豪語…。しかし 彼女にはちょっとした不安も残っている

 

 

「たぶん来週までコータローとは会わない…。会うのは月曜」

 

「みんな忙しいからねー私も土日は家にいないかも」

 

「パンを作って食べてもらう為には、修学旅行はコータローと同じ班じゃないとお昼を一緒に出来ない」

 

「あぁー…。自由時間はそれぞれ同じ班でってお兄さんが書いてくれた資料にあった気が」

 

「パンも渡したいけど…。何よりもコータローと一緒に京都を見て回りたいんだ」

 

「よし! 三玖ここは私に任せて私と上杉さんと三玖とお兄さんで一緒の班を作ろう

 お兄さんに頼みやすくするため上杉さんにも協力してもらう!」

 

「えっいいの?」

 

「お兄さんもだけど上杉さんも林間学校では色々と大変だったから二人であの二人に最高の思い出を作ってあげよう」

 

「ありがとう、四葉」

 

 

こうして中野四葉による第二の上杉兄弟思い出計画と幸太郎へのプレゼント大作戦を宣言

自体はどうなるのか…。不安や期待もある中で彼女たちは5月14日への気合を入れ直す

 

 

「それでこのパンはどうするの?」

「何時もと同じく 四葉が味見して良いよ」

「あむ…。普通に美味しい」

「フータロー見たいな事いうね」

「えっ…。あぁー」

「四葉もさフータローと回れるね」

「あっ、あくまで上杉さんは協力者だからー」

「はいはい」

 

 

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ーーーー 

 

ーー

 

 

 

5月14日 月曜日

 

黒板の前で上杉風太郎と中野四葉がせまる 修学旅行での注意点や必要事項などを

各自に説明…。 事前に配布済みのパンフレットにも大切な事は記載されていると修学旅行前に一度目を通しておくよう話す

 

「ではその修学旅行の班ですが…。明日までに決めといてください」

「当日はこの班ごとに行動します定員は五名までです 

 決まりを守って楽しい修学旅行にしましょうー」

「朝から元気だな 四葉…。」

「あっ、上杉さん後々お話があります」

「時間が空けばな…。ではこれにて修学旅行の事前説明を終わります。何かあれば自分たちに聞いてください」

 

元気な彼女の姿は何時もの事だが、彼が感じる四葉のやる気は普段の倍

そこまでして修学旅行が楽しみなのか…。

自分の兄とは正反対ど未だ顔を見せない 兄の事を思い出す

 

そう……上杉幸太郎は、いまだ家に戻ってきていない

事情を知っている風太郎と違い…。彼が海外にいるなど知らない五つ子は朝から困惑気味だった

 

2日前の12日だバイト中の風太郎の携帯が鳴り出した

画面に映る知らない番号から掛かって着ており恐る恐る電話に出た

『俺だ』と知った声が聞こえ彼も変な人間からの電話でないと分かれば一安心

『飛行機が遅れる。月曜の昼か夕方には帰る』

どうやら向うでトラブルがあったらしく飛行機が何便か遅れており

彼が乗る予定の日本行きも二日まで出せないと話していた

『事故だけは気をつけろ あと何か買ってこいよ』電話が切れる前に風太郎は少し要求を述べる

へーへいと抜けた声を最後に電話は切れ…翌日である今日は一人で登校だった

 

 

空白の席をじっと見つめる数名の視線やれやれ面倒事でも起こるのか?

彼から渡された胃薬に頼らざる負えない状況だけ避けて欲しいと風太郎は切に願う

 

 

 

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ーーーー 

 

ーー

 

 

 

「えーっと……上杉さん、上杉さんは何処かな?」

 

クラスでの話し合いが終わり

それぞれ休み時間を満喫中…中野四葉は先ほど教室を出て行った風太郎を探している

きょろきょろと周りを見回すが風太郎の姿は見えず、既に廊下にもいないのかと少し先まで歩く

修学旅行の際に彼の兄である幸太郎と三玖を同じ班にする為 風太郎にも協力を頼もうと考えている

同時に前回の反省も兼ねて今度こそ風太郎にも最高の思い出をと気合も入る

 

「あっ!上杉さんだ!」

 

事前に話があると伝えたあった筈だが、風太郎は数人の男子生徒と会話をしており

四葉の存在には全く気付かない…。

 

「上杉さー……」

「四葉ちょいちょい」

「一花…。どうしたの?」

 

彼の元へ行く前に自分を呼ぶ声がする

後ろでは手招きをし空いている教室に入るよう促す一花の姿

 

ここ最近の一花は何処か様子がおかしく、今朝も幸太郎の姿が見えずキョロキョロしていた

 

 

 

 

 

「修学旅行楽しみだね」

「うん楽しみ!」

「私たち京都って初めてだっけ?」

「違うよ。小学生の頃も行ったじゃん」

「そうだったね 四葉はまた行きたいところとかある?」

「うーーんベタだけどお寺とかかなー………あぁー食べ歩きもありだね。悩む、うむむ」

 

小学6年の際に彼女たちは京都へと修学旅行で訪れていた

その際に色々な思い出が生まれ あの三日間は姉妹にとって因縁のようなところとなっている

それが理由だろう。ここ数日何処か姉妹の中の空気は重い

誕生日の和気あいあいな雰囲気は微塵も感じられず…。周りをよく見る

四葉はそれを一番に察知していた…。

 

 

「クラスの皆は五人班で悩んでるみたいだけどわたしたちにはお誂え向きだよね」

「あっ!はは…。 五つ子でよかったね…。その一花」

 

五つ子にお誂え向きな最大5人の班、彼女がそう告げた時に四葉は、大事な事を思いだし

先に話を切り出そうと会話を試みようとしたが…………。

 

 

「でもさコータロー君とフータロー君はどうだろう?」

 

「えっ…。」

 

「フータロー君は学級委員として周りに顔が知られてるけどさ コータロー君は

 あの噂で今でも浮いたままお姉さんは心配だよー…………」

 

「えーっと…。それなら」

 

「それにさ14日なのにまだ学校にも来てない…。彼が置いてきぼりも食らってしまう

 うん…。そうだねここは私たちが人肌脱ごうよ」

 

「え、一花?」

 

嫌な予感を彼女は察した

すぐに話を切り出すべきだったと彼女は後悔している

 

「私と四葉とコータロー君の三人それに彼の弟であるフータロー君も誘って四人で一班

  いいよね?」

 

「!」

 

 

「あっ、ごめん電話だ…。じゃあ四葉よろしくね」

 

「えーー待って…。、まだ、どうしよう…。三玖にああまで言ったのに」

 

最悪の事態が発生した

上杉幸太郎不在の中で、彼を班に加えるべく動く人物が四葉以外にも確かにいた

少し考えれば分かる事だったのもかしれない…。

 

姉妹のためと動いた自分がまさか二つの頼まれ事で頭を悩ませるとは思ってもみなかった

去って行く一花にかけた声も弱弱しく…。止める効力など皆無

ポツンと一人教室に取り残されていた…。

 

 

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ーーーー 

 

ーー

 

 

一方その頃

四葉との話を終え何処かえと向かって歩く一花

勿論のこと電話とは嘘だ…。あの場で四葉が自分を止めようしているのが彼女は分かっていた

 

ただ彼が不在の中で話が進むとなれば必然的に弟の風太郎に回される

二乃の恋路を邪魔する形にはなるが、友人と呼べる存在が少ない彼と同じ班になるためには

風太郎の存在は不可欠『ごめんね』と小さく口に漏らす

 

そそくさと足を進める中で彼女が向かうのは、図書室だ

そこである人物を待たせてある

 

「一花どうしたのですか?話があると言っていましたが」

「うん…。 五月ちゃんにさ聞きたいんだけど、コータローくんはこのままで良いのかな」

「どういった意図があるのかわかりませんが、彼の現状は少しでも改善すべきですね」

 

待たせている人物とは末っ子である『中野五月』

何時もピンと立つ アホ毛も何処か元気なく倒れ…。五月の心情を表している

 

この五つ子の末っ子は、一花にとって 三玖以上の天敵と成りうる可能性があった

第一に彼女は上杉幸太郎の事を知りつくしている

彼が何故事故に遭い 何故孤立しているのか そして彼には言わない様頼まれているが彼女も事故現場に居合わせていた…。 ある意味で当事者と自ら語る彼女は、この学園に来る前

 

高校一年の初めから様子がおかしかった

全員が全員追試を行い…。四葉のみ落第という結果になっているが

あの時に落第ぎりぎりの人物が二人もいた 三玖と五月だ

 

ここに来るまで…。正確には12月の初め頃まで二人の様子は明らかにおかしく

五月は勉強にも身が入らない状況が続いていた

『これが自分の実力です、甘んじて受けます』と話すが、あの時でもそれなりには点を取れた筈だ

 

 

でも自分の限界だと彼女は何度も口にしては、何時もややネガティブな発言が目立ち、最後の悪あがきのテスト勉強すら彼女は身が入ってないようにも見えた

当時は何故そんな事ばかり口に出し上の空が続くのか、見当もつかなかった一花だが、この学校に転校し、あの少年とのかかわりと彼が遭った事故を知って納得も出来た

 

 

上杉幸太郎の事が気がかりだった

 

 

それが大きな理由なのだろう…そして三玖も一度口にしていた

『自分だけではなく五月にも負けない』と

けどその本人は姉妹の前では否定をし彼をただの友人だ主張

何も思う所はないの一点張り

 

だが、一花にはどう見てもそれが事実とは思えずいる

今朝だって彼が未だ帰宅していないと知れば血相を変え『警察を呼びましょう』の慌てよう

 

ただの過保護な後輩と言うには少し度が過ぎている

 

 

二乃は上杉風太郎に三玖が自分と同じく上杉幸太郎に好意を寄せる

これ以上のライバルは作りたくないが…やはり一言確かめなければ気が済まない

 

 

今は一花と五月のみ…彼女の本心を聞くにはいい機会だ

 

 

「ねぇ… 五月ちゃんは、本当にコータロー君を好きじゃないの?ただの友人だって言い張るの」

「何故…それを聞くのです?…以前にも話しましたが、彼は恩のある人物です それ以上の感情は持ち合わせていません…。話はそれだけですか…なら私はみんなを呼んできます」

 

 

唐突すぎるとは口にした一花自身が思っている。

その言葉を聞いた途端に五月は一度視線を彼女へと向ける、そこか冷めたようなその目

そして五月は変わらず『何もありません』そう告げれば、他の姉妹を呼びに席を立った

 

 

 

「五月ちゃんは知ってる…コータロー君の初恋の話?」

 

「…………」

 

 

ぴたりと足が止まる

 

 

 

 

「彼さ…私たち、五つ子の中に初恋の人物がいるらしんだ凄い話だね」

「それが何だと言うのです?…彼が誰を好きだと思っていてもその中には私は含まれていません

 私は彼の友人であり『彼を見捨てた』それが事実です………」

「うん…。わかった …コータロー君早く戻ってくるといいね。みんなが来る前に少し外すね」

 

彼とはあくまで友人関係…何があるともそれは揺るがない

真っ直ぐに自分を見つめる。その真剣な表情だった

けどあの一瞬、足が止まった事は事実 何処か思う所はあっても気持ちに出す気はない

   これ以上、敵が増える事はない、彼女はそう受け取った

にこやかな笑みで一花はその場を一度足り去っていく

 

 

「一花…。あなたはきっとわかっていません…でもこの気持ちを私は認める訳にはいかないんです…

 上杉…上杉幸太郎君を思うこの気持ちはきっと…」

 

 

ーーーーーー

 

ーーーー 

 

ーー

 

 

 

 

「お、今日は珍しく三玖がいるな」

「この後バイトだけど、ちょっとだけ参加する」

「全国模試以来の全員…あぁ幸太郎君がいませんでした」

「上杉さん、お兄さんはまだ戻ってないんですか?」

「明け方に連絡来たけど、まだかかるらしいな」

「あれ?あいつ電話に出れないんじゃ」

「知り合いの携帯借りて電話かけて来たぞ…忙しい奴だ」

 

図書室での勉強会、彼らがこうして全員集まるのは先月の大掃除があった4月23日以来、三週間ぶりだ

全員集合と言いかける前に五月の言葉は止まる

そうここには何時もの七人はいない

風太郎 五つ子の合計六人 あの目つきの悪い少年は未だ不在で連絡を取り合う風太郎でも今日の何時に戻るかまでは分からないと話す

 

「なーに 落ち込んでるのよ」

「えっいえ さっ勉強を始めましょう!」

「その前に 修学旅行の話がしたい」

 

「え?」

「!」

 

「フータローは誰と組むか決めた?」

 

『『!?』』

 

 

開戦の合図、火蓋は突然にきられる……。

中野三玖は、彼と彼の兄が迫る修学旅行でどのように動くのか尋ねた

 

 

「俺と幸太郎はセットだ…。あいつの扱いは先生から任されてるしな

 それでさ 俺たちなんだけど」

 

『あぁー』と口に洩らし、彼は兄と自分は同じ班で動くと姉妹に教えた

ここは予想通りと三玖だけではなく、一花も視線を向けた。

二乃も『やっぱり』と小さく零す。

 

それさえ分かれば、後は行動あるのみだ、中野姉妹の長女が続いて動き出す

軽く四葉に目配せし、彼女はその場でスッと手を上げた……。

 

「待って……。四葉が話したいことあるって」

 

「えぇ!」

 

「そう言えば、そんな事言ってたな」

 

「えーっと…」

 

「ほらね」

 

「何?」

 

「早く言えよ」

 

「うぅ…」

 

「四葉大丈夫ですか?」

 

「あ、あのですね…三玖も一花も一緒に、だけど五月も二乃は…姉妹は皆一緒じゃなきゃ…」

 

「?何のことだ」

 

「あ、そうだ!この際、皆で同じ班になろうよ!上杉さんたちも一緒に」

 

「は?」

 

「それが一番だけど…」

 

「定員は五人までって…」

 

「うん、だから私以外の皆でってこと!これなら万事解決だね」

 

「四葉……それは無理だ…お前を抜いても俺と幸太郎の二人で六名で」

 

「あっそうでした!えっーっと、どうすれば」

 

「それに大きな問題もある」

 

「えっ…」

 

三玖の言葉が開戦の合図

それを気に一花も動き、四葉に先ほどの話をするよう先手をうつ

三玖の気持ちと一花の考えに板挟みされ 目が周りどうすればと脳をフル回転させる

何時もの七名でどうやって修学旅行を楽しむべきか…

 

姉妹は一緒でいなければいけない 五月や二乃も該当する

二人をのけ者にしたまま話を進める事も出来ない更なる 負荷が脳にかかり

ショート寸前にまで陥り…そこで彼女は思いついた

 

自分以外の六名で班を作れば何も問題はない これで争いも起きない

安心しきった彼女は椅子にこしかけようと体を動かすが

 

勿論 何も解決していない

 

定員は5名まで何時もの七人で行動を共にしている。そうここから四葉だけ抜いてもまだ一人多いままと誰かが抜けなければ、何の解決にもならないのだ…。

 

慌てふためく中で…。二乃はぎろりと一花を睨む

応援してると言っておきながら、彼女は四葉をけしかけた

理由はどうあれだ…。

 

定員は5名だ、だがそれ以下の人数で行動してはいけないとも言われていない

二乃は考える…。風太郎と二人っきりでの行動が一番だが…。

あの男にも恩がある 何よりも彼に誕生日を祝われ自分がメールのみで済ませるのはどう見ても不釣り合い それにだ一花や三玖が風太郎の名前を出すのなら自分が彼の名前を出しても別に構わないだろう

 

好きな人間は何も異性として恋としての意味合い意外も存在する

それを幼い頃の二乃は何度も味わった、あの男は紛れもないお人好しで同時に馬鹿な兄貴だと…

 

「私とフー君とコウにぃの三人で組むとか」

 

「!」

 

「コウにぃ…?」

 

「二乃…………あなた」

 

「四葉が何を言おうとしてたか知らないけど…決めたわ 好きな人と馬鹿な兄貴の二人と回る 

 あんたたちに拒否権はないから」

 

 

(上杉君の言ってたことは嘘じゃなかったのですね それに先ほどの一花の問いまさか?)

 

(やられた…まさか、その手で来るのか、彼がフータロー君と行動する以上リスクはあったけど

 こうも堂々と宣言されると手の出しようがない)

 

「お、おい?二乃勝手に」

 

「フー君は静かに、コウにぃには私から連絡するから」

 

「コウにぃ…」

 

「何かしら?」

 

「わ…私も」

 

「言いたいことがあるなら今言ってみなさい」

 

「…………」

 

「待ってください」

 

「なっ五月あんた何よ!」

 

「上杉君が一任されているとは言え、やはり勝手に決めるのは良くないかと、それに上杉君も何か言いたい事があるようですし…ここは彼の言葉に耳を傾けるべきです」

 

「悪いな五月…あのな、俺さクラスの男子と班を組むんだ、すまん」

 

「えっ……………」

 

「そう言えば上杉さん、誰かと話していたような気が」

 

「あぁ…。幸太郎も加えて四人で行動することになってる」

 

五月のフォローもありやっと風太郎は自身の発言を許された

先ほど風太郎は前田と武田の二名に修学旅行の班を組まないかと誘われた

勿論 幸太郎も同行だと事前に話している

武田は大喜びで、指を立てる。前田は林間学校の前日に一花の件で彼の名前にビビってしまい、顔を見てはどうすべきか考えていたと話す。それに上杉幸太郎という人間には興味あり

『伝説の先輩と組むんだろ、やってやるよ』と威勢が良かったとか、その伝説とは風太郎は、何か全く興味もないが、兄の知らないところで色々と尾ひれのついて噂が大きくなっているようだ

 

 

やっと話せたのか風太郎は 安堵のため息をもらす

何故班決めでここまでの苦労をしないと行けず 話が勝手に大事になりかけるのか……。

二乃の発言も気になり、慎重に動きすぎるのも考え物だと彼は改めて思っていた

 

 

 

ーーーーーー

 

ーーーー 

 

ーー

 

 

 

ガラガラと図書室の扉が開かれた…………。

 

 

「おーいっす、おひさー」

 

『『幸太郎君・コータロー・コータローくん・お兄さん・コウにぃ!』』

 

「おっ、幸太郎かお前もう放課後だぞ」

 

「悪いな、知り合いとは別れて行動してたから連絡のつけようもなくてさ

 っか何の話してたんだ?」

 

 

微妙な空気が漂う、図書室にあの男が現れた

珍しく眼鏡を着用し 既に学校は終わり放課後というのに何と悠長な登場だろうか…。

呆れつつも彼に事情を説明 修学旅行で行動する班決めの話となっていた

『修学旅行かぁ……』眉間にシワを寄せ目を細めており露骨に嫌な表情にへと早変わり……。

 

「お兄さんー」

「四葉?どうしたすげーやつれてるぞ」

「幸太郎君今の今までどこで何をしていたんですか!連絡もつきませんし

 手紙を一通送っただけで!今日だって遅れて」

「五月のその言葉聞くと戻ってきたんだなーって実感するな」

「そう言う話では無く!」

「すまん、心配かけたな、それとただいま」

 

五つ子相手となれば、彼はついからかってしまう

むすっとする五月の表情一つで理解できる。彼女がどれだけ自分の身を案じてくれていたのかも

詳しい事は言えないし、余計な心配も避けた方が得策と判断、じろりと睨む風太郎をしり目に笑顔でやり過ごす。

ただ戻ってきたなら言わなければならない一言を彼はまだ言っていない

『ただいま』と優しくその言葉を口にする…………。

 

 

「お、おかえりなさい。幸太郎君」

「コータローお疲れ様……お帰り」

「三玖もかわりねーか?」

「コータロー君お帰り―お姉さん寂しかったなぁ」

「へいへい二乃もただいま」

「お、お帰りコウにぃ…」

「やったぜ。昔の呼び方だ」

「う、うるさい!」

 

「それで…修学旅行の班だけど俺とお前はセットな」

「了解…。 行先は京都だっけ?行きたくねー」

「お前……まだ あの時の事気にしてるのか?」

 

「あの事って何ですか上杉君?」

 

「こいつが元々行くはずだった修学旅行先が、前日で行けなくなって俺と同じ京都に来てたんだ」

「まじで学校の行事に参加するとろくな目にあわねーよ」

 

「えっ?あんたは、まだその時は………」

 

 

えっと驚く数名をしり目に彼は、普段と変わらぬ様に彼らに当時を軽く話した。

 

 

「中1でも修学旅行は行くところはあるんだぜ?俺がそうだったな、んで風太郎とも出くわしたな」

「その話はやめろ……」

 

上杉幸太郎の通う中学は1年から修学旅行があり、その当時諸事情あり旅行先が沖縄から京都へと変更となった。せっかくの浮き輪も無駄になったと軽くぼやく彼に苦笑いの数名

偶然日付も被っていた彼と風太郎は京都で出くわし、その当時の二人の関係性故余り弟からは良い印象は受けなかった事を思い出しては、ニヤリと視線を弟へと向けた

 

 

 

 

『四葉君、何をしてるんだい?』

『風太郎ー!ここに居たんだね、良かったぁ……探したよ!!』

 

 

 

 

あの日、上杉風太郎が、ある少女と出くわし行方が分からなった日、彼の兄である上杉幸太郎もまた弟探しへと動いていた…………。

 

 

「お兄さんもいたんですね………少し驚きました」

「まぁーな…………。」

 

 

 

何やら気になる事があるのか、彼に声をかける四葉は、視線を落とす

何故彼女が、そのように目を逸らすのか幸太郎には一応だが、事情は分かっているつもりだ

彼はそれ以上あの日の話題を出さないよう一旦その場で一区切りを入れ、席へと腰をかけようとした

 

 

その時だ…………。 ボトンと何かが落ちる音がした

 

 

「ん?」

 

音の発生源は何処なのか?、一同が見たのは、席まで移動してきた幸太郎本人だ

鞄を机に乗せる際にスルッと下に落ちてしまったらしく『悪い、悪い』と彼等に声をかけた

 

落ちた鞄からは、幾つか小物が散乱していた。

彼自身も到着する頃には、授業も終わっているだろうと教科書の類は家に置いてきたと述べる

 

 

「…………そう言えば、幸太郎も持ってたんだな」

 

「あぁー………、鞄に入れっぱなしだったな、その『御守り』」

 

「大切なもんだろ、大事にしろよ」

 

 

近くに座る風太郎の元まで筒状の御守りが、飛んでおり拾い上げては、それをじっと見る

風太郎本人もその品と同じ物を持っており少しばかり思うところがあるのか、深くは聞かず持ち主である兄に御守りを返した。 『大事なもんだろ』と言葉も付け加えてだ

 

大事な物 風太郎が言う様にこれは上杉幸太郎にとって大事な品

今よりも生活が厳しい当時の事、修学旅行先で友人が彼へとプレゼントとして渡したものだ

『大事、大事』と後生大事に鞄へと入れる余りすっかり忘れていた、何とも罰当たりな事だと彼は苦笑いを浮かべる。

 

 

 

『これあげるね………はい』

 

(あいつから俺にプレゼントなんて当時は、驚いたもんさ………6年前か)

 

 

名前に幸福を意味する『幸』がつくわりに何かと不幸な目に逢う彼を常日頃心配していたのか、

『少女』は彼へとそれを渡せば、ある約束を交わし去って行く…………当時を懐かしむように大事そうにぎゅと握る、

ふと彼の方に視線がいった一花や三玖には、彼の表情が何処か悲しげで切なそうにも見えたのは気のせいだろうか?

 

 

 

「幸太郎君…………」

「なんだー中野さん?」

「むー」

「へいへい、五月さん何ですかー?」

「その御守りは大事なものですか……。」

「まぁーそれなりにはな、あいつが人に物を渡すのは滅多にないし、せっかくの思い出の品だ」

「そうですか……。ん? くんくん」

「おい、まじでお前は犬か?急にどうした」

「幸太郎君から…女性物の香水の匂いがします。何でですか?」

「!?  な、何でですかね~、さ、さっぱりわからん」

 

お守りに関する事が気になった五月はすっと顔を出す

三度彼に揶揄われハムスターのように頬を膨らませ、『悪い悪い』とほくそ笑む彼は、自分の所持するその小さな筒の由来を軽くだが、彼女に説明

拍子抜けしたのか、案外素直に聞き入れ普段からこう物分かりが良ければと内心思っていれば、ふいにその末っ子の鼻は何か甘い匂いを感じ取り、彼の周囲で鼻をならす。

 

突然の事に彼も距離を開けるが、ガシッと手を掴まれ動きを阻害された

何処か冷めた目で彼にこの香水にも似た匂いの正体は何か、執念深く問いだす

どうにか適当な理由をつけては、その場をやり過ごそうとするが、側面からも気配を感じた。

 

「コータローどういう事?」

 

ずいっと三玖が顔を覗かせる

 

「なんだよ、三玖まで、俺は知らねーって!」

(たく 坂下の野郎…何が幸運のおまじないだ、すげー疑われてるぞ)

 

 

三女まで参戦と本格的に分が悪いと彼は直感

手を軽く払い除け考える素振りを見せ、この元凶で数時間前まで行動を共にしていた

あの女の行動を思い出した。

『ふふふ、これは厄除けだ、有り難く受け取ってくれ』車から降りる前に徐に小さな小瓶のような物を取り出し、シュッシュッと彼にふりかけた。『てめー、なんだいきなり!』

彼の言葉も聞かずに彼女は車を走らせ何処かへと去って行く、残された彼は『何だったのか?』と頭に疑問符を浮かべながら荷物を纏め一時帰宅し、そのまま学校へと向かう事になった。

 

 

『何が魔除けだ厄除けだ』と今の状況に彼は眉をひそめた。

発端である詐欺師女へと軽い呪詛を唱えつつも、迫る二人にどう対処したものかと頭に浮かんだ、言葉を並べ何とか誤魔化そうと試みる…………なんでここまで必死になって隠しているのか?正直彼自身も理解出来ず解せないといった表情を浮かべていた。

 

 

 

「何処に行ってたんですか? この数週間教えてください」

「残念ながら秘密です。」

「コータロー君が私たちに秘密か、残念だな」

「誰だって、胸にしまっておきたい秘密はあるだろ?俺だってある」

「幸太郎は秘密と隠し事が多すぎるけどな」

 

 

終わった話だと思えば、末っ子は掘り返しこの数週間に自分が何をしていたのか?と顔を近づけて問い質し始める…………。

『はぁ…』と軽いため息を吐きながら視線を軽く逸らす彼はただ一言『秘密』と強めの口調で言い放ち鞄を取っては、彼女から距離を開けた。

弟にも『お前は秘密ばっかだ』と図星を指されたが、踏みとどまり、打開策を練ろうと周囲に目をやり備え付けの時計を確認…………。

 

 

(ん……………そろそろか)

 

 

放課後を利用して行われた、話し合いも何時の間にか時間が過ぎ、運動部以外は帰宅する時刻になり始めている。さて今日は平時で普段の自分は何をしていただろうか?

考えるまでもない月曜から金曜まで毎日バリバリ体を動かす彼曰く生活の一部『バイト』だ

 

 

「うるせーつうか、時間だ時間!そろそろ帰るぞー」

「あっいけねーもうそんな時間か、幸太郎、今日からバイト復帰か?」

「たらふく休んだしな、店長も『今日からよろしく』ってさ、んじゃ俺達はこれでまたなー」

 

 

 

五月の横を過ぎ去れば彼はそのまま逃げるように図書室から姿を消した。続く風太郎も彼の後を追いかけて行った、同時に彼らが去った後の室内には静寂が訪れる…………。

 

 

『『…………えぇ…………』』

 

 

嵐のように現れ、嵐にように去っていく

結局は誰も同じ班になれず微妙な空気のみが、図書室内に残り続けていた。

 

 

「あっ、あいつにおめでとうって言うの忘れてた」

「私もだ…プレゼントまで貰ったのに…コータロー君は何も言わないしさ」

「まぁまぁ、後日改めてお祝いすれば、良いじゃん」

「では、修学旅行の班もこの五人という事で異論はありませんね?」

「仕方ない…コータローもフータローも決まってるし」

 

 

翌日には正式に

風太郎 幸太郎 前田 武田 

一花 二乃 三玖 四葉 五月

それぞれ修学旅行の班が決まった

納得のいかない様子の二乃だがこれ以上話をややこしくする訳にもいかない

今は一旦これで落ち着こうと全員に言い聞かせる四葉…

 

早速気まずい雰囲気が漂う 五つ子達は果たして無事に修学旅行を乗りきり

後日開催される体育祭まで無事に過ごす事が出来るのか?それぞれが思惑を巡らせ

刻一刻と時を刻む事に…………。

 

 

 

 

 




キャラ設定更新

上杉幸太郎
この話の主人公で過去のトラウマを何とか乗り越え、自分の道とは何かと問われ
恩師である坂下幹雄と共にイギリスへと3週間の間向かう事になった。
帰国後、自分を待つのは修学旅行と何処か面倒くさいと口にし
何やら思い出があると彼等に話している

中野五月
この話のヒロインの一人
上杉幸太郎を気にかける、後輩兼妹分であり、3年になってからも相変わらず
温泉旅行で彼に『恋』をしたいか問い、何やら覚悟を決めた様子
彼が不在の三週間の間は、気落ちし 普段よりも食が進まなかったとか

中野三玖
この話のヒロインの一人
上杉幸太郎に助けられ以降は恩を感じそれが恋心へと変化した
温泉旅行で起きた事件の実質的な原因で、五月に自分の気持ちを伝え
一花にも改めて宣戦布告をした

中野一花
この話のヒロインの一人
上杉幸太郎をよく揶揄うが、真剣に自分を応援し純粋に憧れる彼に何時しか恋をし
ある人物から彼の初恋は、他でもない自分自身であると教えられ以降密かに動いていたりする…………。


中野四葉
相変わらず元気な後輩でお人好しな四女
全国模試など様々な問題とも向き合い、風太郎と共に三年の学級委員に立候補(風太郎はハメられた)
修学旅行まじかで様子のおかしい姉妹や不穏な空気を感じている


中野二乃
初期の頃から一転し 風太郎にデレデレな乙女
初めて感じたこの思いをどう向き合っていくか真剣に考えている
脱兄をしたつもりが何だかんだ『コウにぃ』呼びが定着しつつある


上杉風太郎
幸太郎の弟
全国模試で二位と言う快挙を成し遂げ遂に正式な家庭教師となった
兄共々心機一転と…その矢先に彼はイギリスに行ってしまい
頭を抱えながらも彼の声を聞き 無事に帰るの条件で承諾
修学旅行は武田、前田、幸太郎の三人で班を組んだ


雨宮紡木
幸太郎の元カノ
性格以外は完璧と言われる才媛
幸太郎が事故に遭った後に両親が離婚し母方に引き取られるもソリが合わず
家出し現在は、中野姉妹の住むアパートの隣で『気さくな大学生』を演じている
彼の旅に姉の頼みで同行したり中野一花にある事を吹き込むなどなど…
人知れず暗躍している 因みに学生時代は令嬢様と周りから慕われていた
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