上杉幸太郎と六等分の思い出   作:Aikk

9 / 96
第八話 不良少年と歴女な三女

「おっす三玖」

 

「コウタロウ来てくれたんだね」

 

「あぁ、あの手紙はお前ので間違いないんだな」

 

「うんあれは私が入れた手紙 中身も私が書いたもの」

 

「それで俺を呼んだ理由は何だ?教えれくんねぇか?」

 

昼休みの屋上

ここに来た時には誰もいなかったが、何時もと同じクールな表情で三玖が扉を開けて

外にやってきた。

こちらを訝し気に見るが、安全と安心を保障する為 両手をフリーと朝と同じく教えれば彼女は、安心したように息をする

一応だが手紙の主が本当にこいつなのか尋ねれば

入れた人間も書いた人間も自分だと言っている

 

「しっかし 良く入れたな誰にも見つからなかったのか」

 

「コウタロウの席に近づくのは五月だけだから誰も気にしない」

 

「はぁ…虚しいね」

 

「ごめん、そう言う意味じゃ でも」

 

「フォローしなくて良いぜ そこは自覚してるんで早速で悪いが

   俺を呼んだ理由を話してくれ後 俺も三玖に聞きたい事があんだ」

 

「私に聞きたい事」

 

「お前が話そうとしてる事を聞けば、それなりに答えは出るとは思うけどな」

 

しっかし 人望がないねぇ俺は

誰も俺の席に興味を示さない 俺が来れば嫌でもひそひそと話し出す癖に

でもよく五月にバレなかったな? あいつ教室でフリーズしてた筈なんだが

少々疑問は残るが、今は三玖との話が先決だ

少しでも彼女を知れば、それが信頼獲得への道になり風太郎の助けになるし

こいつともっと話したいと思っているんだ

…………俺が人と話すか、少しは心境の変化があったのかねぇ

 

 

「誰にも聞かれたくなかった コウタロウあのね ずっと言いたかったの」

 

(四葉の言う 恋  そう言った事じゃなぇ気がすんだよな)

 

 

「陶晴賢 朝のコウタロウが出した問題の答え」

 

そう来たか

しかしこれが朝人前で言えなかった事なのか

俺と風太郎が朝方 彼女達姉妹に出した

一昨日の問題その復習の答えだ

誰も答えず終わっていたが、三玖は一昨日の時点で正解だと言う事に

俺達兄弟は気づきその理由を聞きだす為 彼女に証言を得ようとし

普段しない 人を待つという慣れない事までやっていた

四葉の乱入や一花の恋バナで結局聞けず仕舞いだったが

やっと答えを話してくれた…………

 

 

「三玖………。」

「どうコウタロウ」

「正解だ やれば出来んだよお前は」

「うん知ってたからこれくらいは」

「じゃよ 三玖俺からの質問良いか?」

「コウタロウが私が答える前に聞いてきたから聞いてあげても良い」

「ありがとな んじゃ教えてくれ 何で朝それの事を言わなかった どうしてそれが恥ずかしいと思った?これは脅しじゃねぇからな 俺は純粋に知りてぇだけだ」

 

日本史の問題だ別に答えるくらいどうって事ないだろ

ハズレていれば、それはそれ『勉学やれ』と俺たちは言うだけだ

だが三玖は答えを知っていた だが何も言わず

屋上に呼び出し話したと思えば 『誰にも聞かれたくない』と言ったのだ

今と朝の状況の違いを考えれば自ずと分かってくる

 

ここにいるのは、三玖と俺の二人だ

朝は中野姉妹としての三玖とそれに向き合う俺たちという構図

人前で言いたくないつまりは、そう言った事を他の姉妹に聞かれるのが

嫌なのではないのか?俺にはその理由は分からんがな…………。

 

 

「コウタロウ…………コウタロウは誰にも知られたくない事とか秘密にしておきたい事ってある?」

 

「誰にもか…………まぁそうだな人は誰でも秘密はあるよな 俺も知られたくねぇ事は何個かはあるぜ

  風太郎とかにも言えねぇこととかな」

 

「それは私も同じ 私が朝一昨日の問題を出されて答えなかったこと それがコレ」

 

「武田菱 武田信玄の事か だけって事でもねょよな」

 

俺にスマホの画面を突き出し

中身を軽くだが見せてくれた三玖

そこに映し出されていたのは、あの名だたる武将であり

風林火山で有名な 武田信玄の その家紋だった

だが何故これが、彼女の秘密にしたい事なのだろうか

 

一瞬考えたが、脳内でバイト先での客同士のやり取りを思い出した

    『歴女』だ所謂 戦国版のオタクとでも言えばいいだろう

店で働く中で客の一組がそう言った話をしていたのだ

 

「歴女って奴か…………」

 

「きっかけは四葉の貸してくれたゲームでね 野心溢れる武将達の姿に惹かれたの

  でもそれは私だけクラスのみんなはイケメン俳優とか美人なモデルとかの話

  それに比べて私は髭のおじさん 変だよ」

 

珍しくすらすらと言葉を並べ

自分と歴史の出会いとその大切さ 同時に周りとの違いでこいつはそれを比較し

『変だ』と思い自分が好きな戦国武将の事をひた隠しにしていたと言う

 

だが俺にはそれが変な事とは思えなかったし

『変だな』そう言った言葉で切り捨てる考えもなかった

三玖が隠していた事を俺が知りたいと言った事で話してくれたんだ

今も自信なさげに俯いてんだ

 

俺も少しは自分の事を話す必要があるかもなぁ

うぅんと喉を鳴らし 俺の頭の中を散策した

錆びるなよ俺の記憶…………。

 

「ヒポクラテス 紀元前460年 華佗 生年不詳不明異説あり 杉田玄白 1733年」

 

「?!っ コウタロウあの急に何を言いだすの」

 

「あぁ 混乱させたか、今の三人は医者だ 俺は高名な医者の事を気に入っててな

 それを調べるのが好きなんだよ 戦国と違って有名どころは限られるがな 変だろ」

 

 

急に謎の名前を口走る人間に彼女も頭が混乱したのか

その場で固まってしまうが、何とか意識を保ち俺に声をかける事で

呪文にも似た名前の連呼から開放された

今もこいつは何処か不思議な面してるが、そういうもんだ

 

昔から誰も俺の話す事理解しない 興味も持たない

俺は医者特に 医療関連に関する知識が好きなんだ

それが俺の秘密だ この事は風太郎も知らない 知ってる人は今はいねぇ…………。

 

「ん? 何かおかしいか」

 

きょとんとしたと思えば、三玖はくすくすとその場で笑っている

けどそれは馬鹿にしたような笑い方ではない事を俺は理解出来た

 

 

「はぁ…ごめん  コウタロウ 別に変じゃないよ コウタロウの好きな物は」

 

「ならさ お前もそうだよ。歴女でも戦国武将好きでも俺は変に思わねぇよ

  だから…三玖お前は自分に自信を持っても良いんじゃねぇか?」

 

それはあまり触れられたくねぇ事だろうし

家庭教師それも補佐である俺が立ち入る事でもないんだが

如何せんそう言う訳にも行かねぇと来た…………。

こいつが「歴史や武将が好き」そう言った時

彼女はその好きな事に対する自信を持てずそれをひた隠しにしてると危うく思い込む所だった

でも実際は違うんだろう…………。

勉強は出来ずとも あの姉妹は全員個性的だ

それぞれ得意不得意も分かれてきてると思うし 姉妹だからと割り切るのも考え物だ

けど三玖は何処かで思ってしまったのではないだろうか?

       姉妹だからこそ…………その考えにいたった

        【全員出来てしまうのでは?】

 

きっとそれは自分の足元が崩れるような何か大切な物がすり減るような感覚を覚えた事だろ

その事は姉妹に限った事ではないと俺も覚えはあるんだぜ………。

 

「コウタロウはエスパーなの?」

「んな 能力あればお前に聞かんでもわかっから 姉妹って訳でもねぇけどよ

 自分と同じく知ってる人間が自分と同じく学んだ奴が

自分よりそれが断然得意でよ 優秀だったってだけの話だ………」

 

エスパーならお前ら全員を勉強させるのは苦労もしねぇよ

この世界はそんなとんでも能力が徘徊する世界ではない

 

「過去系?何か変だね その話」

「まぁ ちっとした昔話見たいなもんだし 別段面白くねェ事だ ただ

  どんな奴でも劣等感を抱く でもな それでその事を無かった事にする必要は

  俺にはねえって思えるんだ 」

 

何を説教くさい事言ってんだろな

折角三玖が打ち明けて 俺の話もしたのに何でか言葉が止まってくれない

彼女に言っているようでそれを俺自身が自分に言い聞かせてるようだった…。

 

「それに俺や風太郎もお前には期待してる あの中でお前は一番に点を稼いでいる

 そこは誇っていい だから自分を落ちこぼれとか言うな」

 

「コウタロウは優しいね」

 

「優しかねぇよ………でも お前が出来る事が全員出来るとか思って

それを人前では無かったような事にはすんな  

それはお前には出来てんだ 今のお前はその時点では姉妹の中では確かに上なんだよ

だから俺は三玖を認めるし お前の為に俺は全力を出す!面倒とか言うか

 それに俺もあいつもお前らを諦めない 赤点候補だ構わん 

  俺はお前達全員が笑って勉強してそれで卒業するその姿が見たいんだわりぃか」

 

 

今の姿はクラスの連中にも学園の奴らにも見られたくない

俺が熱血少年見たいな事言ってる姿とかまた変な噂を立てられるだけだし

でも 三玖には言っておきたかった、俺がどう思っているのか

あの時の『何で此処にいるの』その答えになったとは思えないけど

俺がこいつらに接して家庭教師の補佐を続ける理由だ

 

「勝手だね…でもコウタロウは知ってるでしょ?全員合わせて100点って事」

「さっきも言っただろ 姉妹だからって 『全員できる』出来るのではと

 それは何も戦国武将の事だけじゃねぇだろ 勉強全般に置き換える

  お前が出来る科目を他も出来るようになり他の出来る科目をお前が出来るようになる

 俺はそれが可能なんじゃねーかと思ったんだ」

 

「!! そんな考えした事なかった」

 

それもそうだろうな

三玖の中での考えは 「自分が出来る=姉妹だから全員が出来てしまう=落ちこぼれ」

ネガティブな面で捉えていた

でもそれは違うんだ 

 

例えば「三玖が日本史が出来る」「他は出来ない」

 

そこを良い面でも捉えれば話は変わってくる

これは俺と風太郎も兄弟だから気づけた事だろう。

三玖が出来る事を他に覚える それを勉強での科目に置き換えるだけでいい

そして三玖の不得意な科目を他の姉妹と同じように勉強に置き換え

覚えればいいのだ理屈だけ聞けば『あぁ』そうかとなるが

実際やろうと思えば途方ないし 聞いている三玖も頭がパンク寸前と言った感じだ

 

『赤点候補かよ』と言いながら風太郎はきちんと見ていた

俺もテスト用紙を見て驚いた

この姉妹 器用な事に全員が全員 誰一人として

正解が被っていないのだ 狙ってやろうとしてできるもんじゃないし

これが偶然なら何という奇跡だろうか

だがこんな奇跡のような事を彼女達なら出来るのではと可能性を見出した

 

「お前ら全員が 100点を取れる可能性を秘めてんだよ 一人が出来れば全員出来る!」

「何それ 屁理屈? コウタロウは五つ子を過信し過ぎだよ」

「過信しすぎ結構な事だ お前らでも可能と分かればそこを磨くだけのこった」

 

 

何処か呆れたように

でも彼女は俺の話を最後まで聞きじっとこっちを見ている

ここに来た時と同じく少し深呼吸して息を整え気持ちを整理する

それくらいの余裕はある…。視線は下に逸らしつつ『考えてみる』とだけ口にした

表情は見れなかったが、嫌なら考える事はしないだろうしいい返事を期待はできそうだ

 

 

ーーーーーー

 

 

ーーーー

 

 

ーー

 

 

 

「コウタロウ……これあげる 友好の印」

「でたよ抹茶ソーダ先輩」

「だってずっと見てたからそれに私が好きな物だし」

「ありがたく受け取るよ サンキューな」

「それと 鼻水なんて入ってないからね なんちゃって」

「三玖それも戦国の逸話か、今度教えてくれ俺も知らねえ事多いからよ」

「うん分かった…………それとコウタロウも教えてね 医学の事とか医者とか」

「それに関しては気が向いたらな」

「むぅ コウタロウの意地悪」

「ふくれんな そんなに知りたいなら教えっからよ」

 

俺と三玖の屋上での話は終わった

上杉兄弟による『全員100点取れるんだ大作戦』に関しては

三玖は『考えておく』と話してくれたし

俺の努力は無駄ではないと信じたい

帰り際に三玖が何時も飲んでいる抹茶ソーダを渡され

誰か有名な武将の逸話に基づいた話を言っていたが、知らない俺に

彼女は教えてくれると約束してくれた

 

(お茶に鼻水ねぇ…戦国は色々とアブノーマルだな ん?)

 

 

彼女からもらった抹茶ソーダ片手に教室へと向かう中

俺はふと廊下を走って行く人影を目にした

 

「コウタロウ?」

「今向こうを…………気のせいだろうな さて俺達も戻るか」

 

 

ーーーーーー

 

 

ーーーー

 

 

ーー

 

 

「違う 何度言わせれば分かるんだ ライスはⅬじゃなくRだ お前はシラミを食うのか」

「はわわわ」

「まぁ ライスもシラミも白いしな」

「幸太郎も余計な事言うな こいつが真に受けるだろ それと何でニコニコ出来るんだ」

「いや 家庭教師の日じゃなくても上杉さんとお兄さんが勉強見てくれるのが嬉しくて」

「あぁ 風太郎涙いいっすか」

「気持ちは痛いほどわかる けどな残りの四人もお前くらい物分かり良ければ良いんだがな」

「俺は声をかけたぞ『絶対いやですー』『はぁ話しかけんな』『うーんやっぱいいよ』」

「お前のその妙に特徴捉えてるものまねはやめろ でもお前が学園でも手伝うのは意外だな」

「まぁ 5人相手にお前一人を行かせるほど鬼ではない」

「そうか…………」

「さて四葉 ここだがおーい風太郎」

「あっ でも残り四人じゃなくて三人見たいですよ お兄さん!」

 

放課後に図書室で軽く勉強会が行われていた

それは昼に俺と風太郎に見せて来た四葉の英語の宿題についての事だ。

何度も間違えながらもこいつなりに頑張って問題に挑む姿勢に俺の涙腺は少しばかり緩んでいた

ここまでちょろかったかな俺は………。

一応俺は昼に話した三玖以外の全員に話をしたが

五月も二乃も一花も全滅だった それが現実だ

だから今は少しでも四葉の勉強を見てやろうと思ってたのだがどうやら

俺達は3人ではなく……4人になった

 

「うっす 三玖来てくれたか」

「おお 幸太郎お前説得したのか!」

「特にこれといっては何もしてねぇけどな」

 

余程来てくれたのが嬉しいのかテンション上がっている

それにあんなに熱く語る姿 お前に見せられねぇよ……

 

「コータローがあんなこと言うから 考えちゃったよ 私にも出来るんじゃないかって

 だから    責任取ってよね」

 

「言ったからには投げ出さねぇ 責任とってやるよ!」

 

 

 

自信がないと言っていた少女はそこにはいなかった

俺の目に映るはこれからの難関に挑もうとする決意を固めた姿だ……。

 

  

(ねぇ もしかしてこの前隠してた三玖の好きな人ってお兄さんなんじゃ…………)

 

(!! ないない…………)

 

(えぇーうそー)

 

 

「なぁーにこそこそしてんだ始めっぞー!」

 

 

(ねぇコータロー 私はねコータローが医者に詳しいって事は実は知ってたんだよ。)

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。