本編の手直しやら何やらしていたらあっという間に今年も半分に
と言うわけで前回?(三ヶ月前投稿)の続きシスターズウォーです
ここもだいぶ違いますし、三玖がホテルに向かうまでの内容をオリジナルで書きました
ではでは、次回も気長にお待ちください
あと誤字報告などあれば
一体…何がどうなっている
山頂まで登ったまでは良い…でも何かがおかしい
登り終えた直後に俺の耳は確かにそれを捉えた
『三玖から、お兄さんへの告白!!』
緊迫した空気を漂わせるこの場で俺の動きは、確かに鈍っていた、
待て待て、今あいつは、なんて言った??『三玖から俺への告白』だと?
一瞬動きは、鈍るも確かにその言葉は俺の耳へと入っていた。
(三玖が、俺を)
まさか、もしかして何て幾つか、巡る考えを隅に置き
現状へと目を向ける、後ろを振り向いた四葉と目が合い、静かに視線を逸らすが、この場をどうにかするべく弱弱しく言葉を紡ぐ
「あの…これは、違くて…あぁでも」
まずい、これは何かまずい事が、起き始めてる、いや違う既に状況は拗れに拗れている
どうすべきか、少しばかり悠長に構えすぎたのかも知れない。
悪手がすぎる、後手に後手、俺が四葉に言葉をかける前に彼女は、言葉を続ける
「お兄さん…もしかして、今の聞こえて」
「!…。」
『今の』とはまさしく先ほどのやり取りの事を示唆している
聞こえていたかと、その問いを俺へと投げかけた時だ、ふと俺の視界へと映っていた隣の少女が、一瞬揺らぎ、パッと姿を消した。
「おい、三玖!」
「三玖!」
彼女は、『中野三玖』は走り出した、こちらを向くでもなく
顔を伏せ、一花の横を通りすぎ、反対側まで普段の彼女から想像も出来ない、速さでかけ下りていった。
「っ………!三玖?なんだこれっあぁー!待て三玖!!」
ぽとりと、彼女が向かったと同時に下に小さな紙袋が落ちている事に気づく、あの子の持ち物だろう
拾い上げると共に俺も反対側へと向かって行った。
「はぁはぁ、やっと頂上ついたわ…。 一花をとめないとややこしいことに…。」
「一体なにが起こってるんでしょうか?」
「早く見つけないと、って、ん…三玖どこに!」
「あれ?」
下ると同じくここまで登ってくる五月と二乃の姿を確認
すぐに五月へと曖昧な指示を飛ばすが、突然の言葉で彼女は、ぽかーんとしている
「五月!頼む三玖を!」
「えっえ?幸太郎君、、?」
「!!」
反対方向から登ってくる五月たちに声をかけるが、間に合わず
彼女たちには目もくれず 三玖はそのまま下まで全力で駆けおりてしまう
このまま三玖を一人にしておく訳にも行かない
目の前の長い階段に一歩を踏み出した時だ…。
後ろで二乃の怒号が聞こえる
振り向いた先では、一花の首元を掴み上げる二乃とされるがまま 止めにはいる四葉にこのままで良いと言葉を述べる一花の姿…。
「悪い五月は、三玖を追ってくれ」
「はい、分かりました…。」
「どうやら…。風太郎にお前の正体を明かすどころじゃなくなってきた」
「大丈夫です、それより今は三玖を追います 何かあればすぐに連絡をします」
何が どうして 誰が 状況が読めない俺には三玖を追いかけてもかける言葉はない
姉妹である五月の方が俺より効果は大きい筈だ…。
取り合えず今は二人を止めないと
「あの子を泣かせて これで満足! あんたと違って正々堂々やってるのよ…あんたはどこまで…」
「二乃だけには言われたくないなぁ…、温泉で言ったじゃん 他人を蹴落としてでも叶えたいって…私と二乃の考え方さ何が違うの?教えてよ」
「確かにそう言ったわ 他の誰にも譲れない 今の関係よりも優先したいって でも
私たち五人の絆だって同じくらい大切だわ
たとえ あの子じゃなくて あんたがコウにぃと結ばれても 私は祝福した! 」
「…っ」
俺と…三玖が? それに一花だと…。
やっぱりあの偽三玖が言っていた事は本当だったのか…。
それにあの子の正体は、、、
(っくそ、情けねぇ)
まさか、坂下の言っていた言葉が本当だったとは
『八方美人の屑野郎』 さっきの会話だけじゃない
以前にあいつが俺に対して罵った言葉が、今更突き刺さる
『周りに合わせて良い顔をし 他人の気持ちもくみ取れない』
『自分の置かれた立場と言葉に責任をとれないようなら君は一人になるべきだ』
イギリスで俺はそう言われていた まさしくそれだ
(こんなんで良く年上ぶってたな、俺は、、なんでこいつ等をちゃんと見て無かった?)
だめだ 俺が、熱くなってどうする
兎に角今は、二人をどうにかしねーと最悪 あの日の再来だ
「お前ら、一旦落ち着け」
「フー君、ごめん冷静じゃいられないわ、それにあんたもあんたで私たちに何て気を遣わずに
三玖を追いかけなさいよ!」
鬼気迫るような彼女の圧で風太郎は、手が止まる
今の現状でこいつも相当混乱しているが、それでも二人を止めたいと動くが、当事者がそれを拒否してしまった。
「そうさせてもらう…。風太郎 一緒に来てくれ」
「おう…。」
「わ、私も捜します!」
ここにいても二乃も一花もまともに話も聞けそうにない
五月を先行させている…。
どうにか三玖を捕まえいていて欲しいが…
最悪な事態は避けたい 誰もが悲しまず 誰もが笑顔で終われる
それが一番なんだ……。
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ーーーー
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中野三玖は走り抜ける…人とぶつかっても気にせずただひたすら前に前に
今は誰とも顔を会わせたくない
自分を知る人間と…一花や彼とどう向き合えばいいのだろう
今はただ逃げ出したい…何もかもが怖くてたまらない
後方では自分を呼ぶ 中野五月の声が聞こえているが、余計に顔を会わせずらい人物だ
彼女を見れば自然と彼を連想してしまうのだから…。
走り抜けた先 気づけば見知らぬ場所だった…。
「私は、コータローに自分の気持ちをでも一花も………私はどうすれば 」
「三玖! 逃げないでください 彼が待っています」
「五月…ダメ 今は会えない 会いたくないよ」
「何故ですか? いったい山頂で何があったのですか? 一花の行動と関係があるのですか」
「ごめん…。何も言いたくないよ」
「三玖…。わかりました…。では一旦ホテルに戻りましょう…。このまま皆と合流するのも酷ですから」
「……ごめんなさい」
「きっと あなたは何も悪くありません だから悲しい顔はしないでください」
事情を知らない五月にはこれ以上なにも言えることは無い
ただ今は彼女を休ませて上げよう せっかくの修学旅行で何が起きたのかが分からないが
疲弊した姉を連れまわす程 彼女も呑気ではない…。
一旦 ホテルに戻るべく 近くのバス停まで向かう
自分たちが来た時には既にこの時間帯のバスは出てしまい 追いかけようにも今の三玖を走らせる訳にもいかず、次のバスまで約30分弱 待機しようかと考えていた
ただひたすらに自分を責めるような事ばかり言い続ける彼女を落ち着かせるため
そっと頭を撫でる 今出来るのはこれくらいだ…。
中野五月は彼のいない 数週間の間 三玖に支えられていた だから今度は自分が彼女を支えよう
きっと…。母ならばと ふいに浮かんだその考えに これは自分の気持ちだと言い聞かせる
二人でバスを待っている間
クラクションの音が聞こえる
車同士のトラブルかと気にも留めない五月だったが、その音は何故か自分たちに向けられているように感じ その方向を向き直す
「やぁー お困りかなー」
「紡木さん…。何故ここに 先ほど下山した筈では」
「まぁーまぁー 気にしないで、バスが来ないなら私が君たちを送ってあげよう」
「それは…………」
「大丈夫…。 君たちが会話を聞いていたのは私知ってるし 別にとって食おうなんて考えてない
私は良いんだけどさ…。三玖さんはいいの? このままだと彼が来るよ」
「!」
「三玖…………では 紡木さん ホテルまでで構いません お願いできますか」
「喜んで…。ふふ」
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下まで降りたが三玖どころか五月すら見つからない
連絡をくれると言っていたが、…。自分のスマホに予備のバッテリーなどなく
ここ最近は置物という名称に改名した方がいいのではと真面目に考えている…。
一旦取り出したスマホをポケットに仕舞う
もう一度見て回ろうとしたが、四葉の声で止められた
「お兄さん… あの五月からの連絡 三玖は無事確保したんですが…。
そのホテルまで戻るみたいです」
「そうか…。俺達も一旦向こうまでいって」
「えっーとその二人が乗っているのはバスではなく 紡木さんの運転する車だと」
「ううううううううん」
「また、あの女か…。神出鬼没だな とりあえず追いかけよう 幸太郎。嫌な顔してるなよ」
「あいつ、、なんのつもりだ…。」
「お兄さん…あの人はいったい?」
「まぁ…。今は、あいつを信じるしかねぇーか、置いて行くぞ」
「まってくださーい」
何故よりにもよって 五月と三玖は坂下の運転する車なんて選んだ
信じると口に出しながらも俺には不安しかない…。
変な事吹き込まれなければいいが…。
あぁ こういう時に自分のスマホが使えないとは何とも歯がゆいな
一花と二乃はまだ来てないが、任された以上はまずは二人との合流が先だ
前田と武田には申し訳ないが一時離脱させてもらった…。
バス停まで向かえば、丁度のタイミングでホテル方面に向かうバスが到着している
さっさと乗り込み三人で五月たちが待つ ホテルまで向かう
「……」
「あの 上杉さん それにお兄さんも さっき頂上で私が言ったこと…聞こえてましたよね?」
「聞こえてねーよ」
「あ ! その反応は絶対聞こえてます!」
「だから 聞こえてねーって つうか幸太郎はノーコメントかよ」
「悪い四葉…聞いちまった」
「謝らないでください…私の不用意な 発言が原因ですから、 そのせいで三玖を傷つけてしまったのは事実です…ずっと…あんなに一生懸命頑張ってたのに… それに一花も家族旅行の時に私が言ったせいで…」
「そうだな お前が悪い… あんなこともっと周りを見てから言え」
「上杉さんも聞こえてたんじゃないですか…」
無言で居続けるのも居心地が悪い…。
最初に口を開いたのは四葉だった あの時の会話を聞いていたのかと聞いて来る
風太郎は適当に誤魔化していたが、俺はそのまま『聞こえた』と述べる
あっははと力なく笑う四葉は、今回の一件の責任を感じているのかひどく疲れているように見えた
彼女の会話から察するに一花はあの温泉旅行から様子が変わったらしい
そのあと直ぐだ俺に姉妹のアルバイト先を一緒に探して欲しいと頼みの電話をくれたのは…。
今思えば、何かしら覚悟を決めていたのか
俺ももう少し慎重に動き 彼女たちと接していくべきだった
四葉の隣に座る 弟は四葉の軽率な発言が事の発端だとバッサリ切り捨てる
自分の言葉には責任を持つべきだと誰かが言っていたが、ある意味今回はそれを痛感させられた
四葉だけじゃない 俺もだ
無責任な言動が多すぎだ…。 頼れ 任せろ 友人だから 家族だからと恥ずかしげもなく言っていた
それが今回こうやって自分に戻ってきた…。
「三玖が俺に対して接していたのは 罪悪感から来るものだとずっと思ってた」
「あの事故か…。 三玖を庇ったのか」
「上杉さんは知らなかったんですか?」
「こいつが誰を庇ったとか俺には興味がなかった」
「上杉さんらしいですね…。」
「でもまぁ…。あいつの気持ちを気づいてないと言えば、嘘かも知れない」
「えっ…。」
「ずっと『俺なんか』『誰とも』なんて思ってたけどさ…。三玖が俺に向ける笑顔や言葉が少しづつだけど、変わってきたんだ…。これを好意と捉えるべきか、違う。お前らの兄貴分だと俺は自分に言い聞かせて来た」
「お兄さん」
俺は、何処かで、三玖が向ける視線や言葉の意味を理解していた。
幾ら幼馴染と言っても異性に抱き着いたり 自分が飲んでいる飲み物を渡したり
頬にキスでもしようか…。なんて大胆な行動をする訳もない
あの行動一つ一つが彼女が表している精一杯の表現方法だったのかもしれないな
(三玖の気持ちか…。)
でも、それが本当に好意なのか?なんて色々と考えてるうちに周りは知らぬ間に動き出していた
ふと見わたした時には、修正が効かない程に状況は、悪化の一途を辿って
何時も何時も、俺は判断が遅すぎる、彼女が俺に向けてくれていた思いを自己解釈して勝手に『友人』として今を受け入れていたんだ、そのせいで四葉にまで余計な負担をかけていたなんて
兄貴分としても家庭教師としても最悪だ。
「悪かったな四葉」
「いっいえ!私は自分が好きでやっているだけで」
それにあの偽物三玖からの言葉だ
自分に好意のような感情を向ける彼女が、何故応援しているのか…。
少々困惑してしまった
でも今ならハッキリ言える やはり あれは三玖ではない
今回のやり取りを見た限り 『一花だ』 何故あんな事をしたのかまったく見当はつかんけどな
「お前も大変だな」
「えっ…。」
「幸太郎じゃないけどな 四葉 お前は気を遣い過ぎだ 度が過ぎる程な」
「あはは…。それはいいんです。落第の話 お兄さんは知りませんでしたね
説明しましょうか?」
「いや ある程度は接しはついている…。お前が全員にあれだけ気を遣う理由も俺なりに考えている
その落第が原因でお前は姉妹に負い目を感じているんだろ?」
「流石です なんでもお見通しですね…。はい 私のせいで不幸にしてしまった
簡単に取り戻せるものではありません 姉妹の皆が私より 幸せになるのは当然です」
「なーんか 何処かの誰かさん見たいな考えだな 幸太郎」
「うるせー…。真面目に聞け」
四葉の生き方と考え方 聞いていて耳が痛くなる…。
一花からある程度は聞いていた、でも四葉が原因とまでは知らなかった
それをこいつはずっと負い目に感じ 自分が不幸にした分他を幸せにしてあげたいと純粋に願う
その為に四葉は周りに気を配り その都度トラブルに巻き込まれる
行き当たりばったりに見えるその生き方は確かに彼女の中で一番に最適化された道しるべ
誰もが不幸にならず誰もが幸運になるために 中野四葉はどんな苦労だって惜しまない
そんな彼女の生き方を俺は否定は出来ない
黙ってしまう俺とは別に誰もが幸福になれる方法を風太郎は知っていた
それは何なのかと問われ彼は口を開く
「人と比較なんてせず 個人ごとに幸せと感じられる
もしそんなことができたなら それはお前の望む世界だ…。」
「そ そうですよね それじゃあ!」
「だが 現実的には…誰かの幸せによって 別の誰かが不幸になるなんて珍しくもない話だ
競い合い 奪い合い そうやって勝ち取る幸せってのもあるだろう」
「そんなこと言ったら 私のできることなんて…。」
「何もない 限度があるんだ おこがましいことじゃねーの?
全てを得ようなんてな 何かを選ぶときは 何かを選ばない いつかはきめなくちゃいけない日が来る
いつかはな…。」
正論で何も言い返せない
生きて行く限り人間は何かを選択し もう一つを除外する
選択された存在は幸福を得る 除外された存在は幸福を得られない
俺たちはそうやって生きて来た
今こうして三玖を追いかけるのだって
俺が五月に三玖を任せるという選択をしているからだ
もしあのまま三玖を追いかけていれば、彼女と話し合えた筈だ
でも 会ったところで俺に何が出来たのか、あの時の選択は正しかったのか…。
わからねーな 情けないぜ
俺たちを乗せたバスは、静かな音を立て目的地まで進んで行く
数分もすればホテルから離れたバス停まで到着
ここから更に歩いていく必要があるが、距離的に大した問題にもならない
「さて 行くか」
「はい 行きましょう」
「うーん」
「さっきはかっこいい事言ってたんだ 走っぞ風太郎」
「上杉さん 置いて行きますよー」
「お前ら二人に追いつけるか 体力馬鹿!」
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ーーーー
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上杉兄弟がバスに寄られる
少し前 雨宮紡木は、上機嫌な様子で鼻歌混じりに車を走らせる
後部座席に乗せられた 三玖と彼女に付き添う 五月は一切口を開かず
ただ目的地である ホテルを目指していた
車の中に漂う空気とムードは楽しいと感じるものではなく
どんよりとしており何処か、重く それが原因だろうか五月は何も言えずにいる
ミラー越しに見える 雨宮紡木の表情は普段からみる 気さくなお隣のお姉さん
その筈なのに…。 今日一日で、見て来た彼女という存在のせいで
色々と疑念を抱き始めていた…。
上杉幸太郎との口論に 彼との接点 そして 山頂までに向かう際の彼女の忠告
突然現れ 自分たちをホテルまで送っていくと優しく微笑むその表情
何かも怪しく思える程…。 五月は彼女を信用出来なくなっていた
もしかしたら隣で顔を伏せる 三玖 彼女がこうなった原因の一端を担っているのでは…。
自然と彼女の目から光は消え 鋭い目つきに変わり出す
ただここは、三玖の事を考えよう 自分の問題とこの人物の事は後回しで構わない…。
一旦 冷静さを取り戻そうと 入っていた力を抜き
今起こる問題に集中と頭に浮かべた時 ふと鼻がある匂いを捉える
くんくんと…。静かに鼻を鳴らす
この微かに甘い香りを五月は、何処かで嗅いだことがあった
そう 誰かが、これと似たような匂いを…。 香水らしきものを…。
「!」
ばっと目が見開く この香りは 間違いない
彼が戻ってきた時にこれと似た匂いが服に付着していた あの時は彼に適当にあしらわれ
彼女は引かざる負えないと食い下がった
ただの偶然と流すべきだ でも そうはいかない
彼と話していた時のあの会話を思い出す
『お前は俺の荷物を!』
あれは一体どう言う意味だ? 彼は何処かに行っていた それは確かだ
でも何故彼女が、彼の所持品を持っておりスマホに細工を施したのか?
あの数週間、自分のアパートの隣の部屋からは、何の生活音もしていなかった。
(まさか、)
嫌な予感が、五月の脳内で導き出される
彼は不在だった あの二週間近くの間 この女性と共に行動していたのでは?
勿論そんな証拠はない 聞き耳を立てて盗み聞ぎした内容だ
まぁその事自体彼女には気づかれていた、とことんそこが知れない人だ
その会話と彼らと買い物をした際に 発した彼の言葉
新しい眼鏡は友人から送られた
そして
彼女が言った 『早めのプレゼント』
彼に眼鏡を贈った人物は、この雨宮紡木ではいだろうか…。
ギュッと胸が押さえつけられたような痛みが走る
だめだ、この感情を抱いては、こんなものと自分は無縁の筈だ
抱いてはいけない
一人葛藤する五月を見て 雨宮紡木はニヤリと口元を変える
「五月さん、どうかしたの? 今にも飛びかかって来そうな表情だよ」
「えっいえ…。何でもありません。今回は助かりました、車を出していただいて」
「あはー 良いんだよ 私も『偶然』京都にいたからねー あぁー会話きかれてるんだった
でも『偶然』って事にしておこうか、その方が都合がいいね」
「……」
「姉が気になるのか、幸太郎が気になるか…ハッキリしたらどうだい?」
「…………一つだけ 質問させてください」
「私は何でも答えるよー さー聞いてくれ」
「あなたは……雨宮紡木さんは、何者ですか?」
「へぇー やけに冷静だね……的確な質問だ いやはや…君は怖いね 中野五月」
「五月…………」
「答えよう……。 私は君たちの通う高校の元生徒で所謂先輩だった人物
以前は坂下紡木と呼ばれていた………。」
「坂下…あなたが水木先生の妹さんだったのですね」
「あぁ 知ってたんだー 何処で聞いたかは知らないけど うん 妹だよ
そして……上杉幸太郎とは幼馴染といった 関係 これで良いかな 五月さん?」
「コータローの幼馴染……」
「何を驚いているのかな? 幸太郎が君たち以外幼馴染はいないと あの偽善者が言っていたかい?」
「彼は、偽善者ではありません 訂正してください」
「はぁー怖い…。 けどね 訂正するつもりはない 彼は偽善者で何もかも欲張る 強欲な男だよ」
何処まで信用して良いのか今の彼女には判断がつかない
ここまですらすらと言うこと自体怪しくも思える……。ただ彼の幼馴染と語った時の
雨宮紡木の瞳は何処か物悲しくも見え 切なさを感じていた
そこからはホテルまで三人は無言
聞けるのは一つまでと言う条件だ。これ以上聞き出せる事もそれにこの女性が話すとも思えない
あの彼も自分の過去を話そうとしないようにこの女性も彼に似ている
物越しや仕草はまるっきり違うのに何故か…。
そんな疑問が五月やそして隣で蹲る三玖の頭に残っていた
ーーーーーー
ーーーー
ーー
「見えたぞ ほら風太郎ラストスパートだ」
「上杉さん ファイト」
「ハァ ハァ…息が」
俺たちがついた頃には夕方で、五月と合流は出来たものの
結局三玖とは話す事も出来ず、その日は解散となった
去り際に四葉に三玖が落とした紙袋を彼女返しておいて欲しいと預けて来た
俺が持っていたことがまずかったのか…二回程『中は見てませんよね』と大事な事は復唱だ
勝手に人の物をみるような性格はしてないし、詮索する気は全くない
三玖の手元に戻れば、十分だ
聞き終えた後にちゃんと渡す様に念を推し 一旦風太郎たちと合流する事になった
前田や武田には謝らないと……。
今日の状況を整理しながら部屋まで戻る最中だ
あの聞きたくもない声を俺は耳にする
『無視かな?』 その声にこたえる気はない
振り向けばまた厄介な事になりかねん……。
車に乗せられた五月は『何もありませんでしたよ?』と素知らぬ顔で答えていた分余計に怪しい
この女が、何もしないとは俺には思えない……。
自分が知る 坂下紡木と言う人間は、とことん周りを翻弄するトリックスターのような厄介な女だ
「無視をするなら、うーんそうだね」
「はぁ、何だよ?」
「おっ やっと話を聞いてくれたね。どうだった私が言った通り 最悪な事が起きたでしょ?
だからさ忠告したんだよ。君はホテルで縮こまって震えて居ろってさ」
「やっぱてめーが、何か仕掛けたのか?」
「残念ながら……。今回は私はノータッチさ、今回はね」
「そうかよ…。ならもう俺に近づくな『それにあいつ等にもな』車のことは感謝する
それだけだ…………あばよ坂下」
「おやすみ 幸太郎 また会おう」
俺は、会う気はない…。
聞こえていてもこいつは、素知らぬ顔で俺に言葉をかけてくるだろう……。
あの頃はまだ少し 坂下紡木の考えが分かっていたと思う
けど今の雨宮紡木の考えは俺には全く読めない
お前は何がしたいんだ…………坂下
ーーーーーー
ーーーー
ーー
「皆聞いて……。最悪な事態よ」
「?」
「盗撮犯に追われているわ」
「もぐもぐ」
「えっどういう意味?」
「そのまんまの意味よ……。 京都駅にいたころからずっと感じていたの 間違いないわ
修学旅行生がターゲットにされるって 前にニュースで見たもの」
「だとしたら なぜ二乃なのですか?」
「ど、どいう意味よ!」
カシャッ
「!! やっぱり」
二乃は後ろを振り返る
彼女が見たのは楽しそうに料理をSNSにあげる 女生徒たちだ
盗撮犯ではなかった……。
考え過ぎでは?と五月はやや他人事だが、京都に来てからずっとカシャッと言う音を耳にしている
あれは自分の勘違いなどではない…。少しの不安を抱きつつ 盗撮犯の事を頭の隅に置いた
会話の流れは盗撮犯の話題から昼頃に起きた
一花と三玖の騒動に転換されている
あの後 一花と二乃は無言のまま過ごし
三玖は五月と共にホテルに送られれば部屋に閉じこもったっきり応答なし
彼女と最後に行動を共にした五月曰く『何もありませんでした』の一言のみ
余計に怪しいが、下手に詮索しても彼女の性格上、口に出すことはないのを二乃は痛い程理解している
一方騒動の発端の一人である 一花もホテルにつけば、そのまま部屋に戻ったと四葉は聞いたらしいが
二乃にはどうもあの二人が同じ部屋で過ごしてるとは思えない
あの長女の事だきっと何処かで一人で過ごしていても不思議ではない
今の一花はどうにもこうにもおかしな行動が多い……。
(あいつのことを気に入ってる素振りはあったけど……今日まで見る限りそれだけじゃない気がして来た…一花 あんたは本当にこれで良かったの?)
「やっぱり心配だよ 私見てくるよ」
「待ちなさい………もうすぐ食べ終わるから 一緒に行くわよ」
「二乃…!」
「私はもう食べ終わっています!」
「待っててね 一花 三玖…………」
今はそっとして置くより 少しだけで良い彼女と言葉を交わすべきだ
それが今出来る 自分たちの精一杯…。
もくもくと箸を進め 食べ終わった二乃
食器を運び終わり 四葉と五月を連れて、二人がいる自分たちの部屋へと向かう
(三玖のところに行くのか…………)
「上杉君これもどうぞ」
「またかよ」
「何度もすまない トマトも苦手なんだ食べてくれるかい おや上杉君どうかしたのかな?」
「あいつ……前田はどうした?」
「長いトイレだね 先輩も姿が見えないし」
「俺もトイレ行くか…………」
「ということは僕もだね」
「ついてくんな」
ーーーーーー
ーーーー
ーー
コンコン
「三玖ー 一花ー いるんでしょー 鍵開けなさーい」
「やはり 今は無理そうですね……。」
「電話も無視と…私たちの部屋でもあるんだけど」
薄暗い部屋の中三玖は一人布団を被り蹲る
外から聞こえる全ての音を遮断し 誰の声も聞き入れない
今誰とも話したくない…。
「三玖!ごめん! 私のせいで! でもまだ修学旅行は二日あるんだよ これから私に取り返させてほしんだ」
扉の先で必死に自分に呼びかける四葉の言葉
自分の為にずっと練習にも付き合い 今日も気にかけ声かけ必死に励ましてくれた
長い道で、疲れ果てた自分を背負い『全然へーき さー お兄さんが待ってるよ』
どんな時でも周りの為に元気に振る舞う…………四葉
謝罪の言葉だって述べている
(………… 四葉は何も悪くない………… 私が私が悪いんだ 見てるだけで、彼が元気ならそれで良かったんだ…………)
あの時の場面が今でも頭の中に残り続ける
声を出す 四葉 それを制止しようと一瞬 彼女の名前呼んだ一花
そして後ろから聞こえた彼の声……。
聞かれた いや 以前にも彼にその言葉を伝えたが、彼には冗談だと伝え
なかったことにしている 今度こそ今度こそ 思い続けて 彼女が発したその言葉を彼は聞いていた
どんな顔で聞いていたのかも確認する暇すらなく
中野三玖はあの場から逃げ出した……。 呼ぶ声も止まって欲しいという声も全て振り切り
あの女性の車に乗せられ 部屋に籠りっきり 何も言わず
ただ外で自分の名を呼ぶ 彼女たちの声を聞くのみ…………。
はぁーと深々とため息をこぼす三名
三玖の様子も心配ではあるが、ここは五人の部屋だ引きこもるだけならどうにでもなる
鍵を締め切られれば入る事すらままならない…。
どうしたものかと、頭を悩ませていると
カシャッとあの音を再び二乃は耳にした
今度は自分一人ではなく 四葉と五月もその音を聞いていた
「は、はは………二乃が変なこというから私まで幻聴が聞こえてきました……」
「そ、そうよね幻聴よね いくらなんでもホテルの中まで…………」
顔を見合わせ 気のせいだ やはり考え過ぎだと言い聞かせる
きっとまた誰かがインスタにでも上げる写真でも撮っているのだと冗談まじりにその場を振り返る
「そんなわけ…………え」
カシャッ…………
『『きゃぁああああああああああああああ!』』
カメラのシャッターがきられ
同時に三人は大きな悲鳴上げ その場から逃走
確かにいた 中野二乃が聞いた音は幻聴でも聞き間違いでも無かったのだ…。
「なんだ 今の悲鳴!」
「何かあったの!?」
『『あ…………』』
「一花かお前さ」
「フータローくんだ お兄さんは?」
「あいつはどっか行ってそれっきりだ スマホも連絡つかないし」
「そうなんだ……あのさ フータローくん 彼に伝言を頼めるかな?」
「幸太郎にか…」
「うん 明日お話があるって」
悲鳴を聞きつけ その場に駆け付けた風太郎はばったり一花と出くわした
顔を会わせ辛い一人だが、少しは話を聞いておくべきだ
兄を見習ってという訳でもないが、偶にはお互い話すのも悪く無い
あの現場の当事者として友人として彼女たちが心配なのだ
話を切り出そうと声をかけるが、彼よりも先に一花が風太郎に兄である
幸太郎に伝言を伝えて欲しいと言って来た
今回の問題は姉妹だけが原因ではない あの男だって少しは、いや十分にかかわっている
武田と前田に一言詫びたあと急に姿を消して 電話すら出ないあの兄は一体どこに行ったのか
断る事も出来ただろうが、この話で何かしら 今の状況が好転するかもしれないと考え
少し考えたあと風太郎は頭を縦に振る
安心したのか一花は彼にお礼を述べると部屋の方まで歩いて行く
一方その頃
カメラの魔の手から逃げ切った二乃一行は息を切らし
その場で倒れ込む 何処まで走ってきたのか分からず辺りを確認すればどうやら2階の風呂場付近まで走って来ていた
追ってくる人影もなく 安どのため息をしていれば、突然鳴り出したスマホに五月がビクッと肩を揺らす
誰かから着信が来たのだろう 中を見れば 『中野三玖』と表示され
二乃は応答 電話の向こうの三玖は一度声を止めるが 心配だったのか彼女たちに何があったのか
聞いてきた… 聞きたいのはこっちの方だと 先ほどの現場を思い出せば嫌な汗を掻きだす二乃
はぁ…大きなため息だ
盗撮犯のことは気になるし さっさと解決したい
自分だって修学旅行を風太郎と楽しみたい 何でここまで頭を悩ませているのか
放っておいても別に問題はない これは当事者同士のいざこざだ
ただ 二乃はこれを見過ごすことは出来ない
ある意味では当事者で自分の行動がもう少し早ければと少々後悔もしている
「あいつの癖が移ったのかしら…」
『二乃なに?』
「何でもないわ… ねぇ三玖 明日さ話があるんだけど?」
『私はなにもない…から』
ガチャリと電話は切られプープーと無機質な音だけが鳴り続ける
普段ならもう一度かけ直し 食って掛かりそうなものだが、楔は撃った
宣言通り本格的に動くのは明日…そこであのうじうじしている妹に一言伝えれば良いだけ
それが終われば後は自分のしたいよう過ごせばいい お節介はこれっきりだ…。
「さて、帰るわよ」
「三玖なんて?」
「さー 言いたい事は言ったからいいわ」
「何か二乃 お兄さんに似て来たね」
「えっ…。」
「投げやりな感じなのに そうやって気に掛けるあたりさ」
「うるさい まったく 誰がコウに似てるのよ…。まったく」
「ふぅー って お前ら何でここにいんだ?」
彼と似ているという言葉が気に入らないのか足早に帰ろうとする二乃だが
脱衣所から出てくる男の姿を見てぴたりと足を止め 面倒くさそうな顔で彼を見る
「幸太郎君ここにいたんですか…。でも何で今脱衣所から?生徒が入る時間はまだの筈です」
「この時間なら他の生徒もいないからな 園田先生から言われて 先に入ったんだ」
戻るなり姿が見えず、食堂に顔を出さず 何をしてるかと思ったら呑気にお風呂と
この男も大概だなとじーっと彼を眺める
「えーっと あぁ!お兄さん傷があるんでしたね」
「す、すみません 幸太郎君…。無神経な事を言ってしまって」
「気にすんな…。俺もそろそろこの傷の事気にしない様にとは思ってたんだ それでまじで何してんだ」
「まぁー 色々とあったの あんたは帰るの?」
「いや 三玖と話でもしてこようか 何を言ってやれば良いか分からんけど 一人にはしたくない」
「今はダメ って言うか言いたい事が纏まってないうちは あの子に近づかないこと いいわね!」
「追いかけろって言ったり 次は近づくなか…。了解 何か考えがあって言ってんだろうな」
「さーね じゃー おやすみ」
「お兄さん おやすみなさい」
「幸太郎君 おやすみなさい良い夢を」
「おう また明日…。 三玖の問題もあるし 一花も何を考えているんだ…」
手を振り見送る彼は、部屋に籠る三女と姿を見せない長女を気にかける
何が原因か、自分の名前が出た以上は他人事ではなく
今回の一件は学力模試から既に始まっていたのかもしれないと あの時の三玖を名乗る人物を思い出す
バスの中で結論は出している あれは中野一花 自分が感じた違和感が三玖が普段自分に向ける
彼自身が思う 彼女らしさと言う物があの三玖には感じられなかった…。
変装するのは、中野姉妹特有だ でも何故 遠回しにあんな事を彼女は口走ったのか
それが彼には分からない…。 ここ最近の様子のおかしい一花
彼は気づいていなわけではない そこまで鈍い男ではなく 少しずつだが焦りを見せる一花の表情に少なからず不安を覚えていた…。
何が原因かは分からないが 一人だけ 彼女に何かを言った人物が、この修学旅行に
紛れ込んでいる
雨宮紡木…。 中野一花と話したと言っていた あの女性は何を吹き込んだのか…。
「やっぱ坂下を問い質す必要も出て来たな…。」
怒涛の修学旅行は、それぞれの思惑と共に一日目が終了となった。