上杉幸太郎と六等分の思い出   作:Aikk

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お久しぶりの投稿第二です今回でシスターズウォー編完結となります、色々と間が空いてしまい申し訳ありません
拙い文が続きますが今回もお付き合いのほど宜しくお願いします
当然ながら風太郎君のポジションや動きが異なります‥



第九十三話 不良少年とシスターズウォー⑦

「修学旅行最終日 Eコースを選択された皆さま 本日の目的地 映画村に到着でございます」

 

 

(ここにいるのは一花のはずだったのに……………

 私と選択コースを取り替えるなんてなんで言いだしたんだろ)

 

Ⅾコースを選択し直ぐ 姉である一花は自分の持つEの紙と彼女の持つⅮの紙の交換を頼まれた

突然のことで困惑し 答える暇なく取り替えられ

気づけば一人 近くでぼーっと眺めている

 

Ⅾコースは武将や歴史に関連したコース 

三玖がそう言った物が好きなのは彼も知っている故に、あの一件を通して彼がこれを選ぶ確率も低いと予想していた

二乃と話 幾分か楽にはなっているが、いまだ幸太郎とどう向き合い彼と話せば良いのか決心がついていない 加え具合の悪そうな彼を見てると話を切り出して良いのかも不安になってきた……。

 

 

(それに…本当はここには来たくなかったな…あの日を思い出す)

 

 

 

ある程度鑑賞が終わり 別の場所へと移動するべく足を動かす

この広い中で彼らの班と自分が出くわす事もそうそうない 

ここにきてため息ばかりだ

 

「はぁ…………だるい」

 

「先輩大丈夫ですか?」

 

「無理するなよ?」

 

「分かってるさ…………」

 

 

「あっ……」

 

「中野さんだまた会ったね!」

 

 

「!」

 

「って 三玖なんで逃げんだ!」

 

「先輩嫌われてんじゃね?」

 

「前田もひで~こと言って来やがるな…」

 

偶然とは必然とも言う

次の目的地を何処にするかと…。その場で話し合う彼らとばったり出くわし…。三玖はすぐさま逃走を図る……。

 

彼女とは話しておきたいと思っていた。矢先に突然すぎる行動

彼は一瞬出遅れる 三玖はそのまま走りって行こうとするが、ドンと前の人にぶつかってしまい、その場で尻餅をついてしまった。

 

 

「三玖大丈夫か? 立てるか」

 

「///」

 

(まぁー 聞かれとなれば、逃げたくなるだろうな)

 

(二乃ごめん……。 やっぱ無理だよ)

 

その場で態勢を崩した彼女に手を差し伸べるが、自分で立ち上がり

一礼すれば、再び逃走を開始

追いかけっこかよーと心で叫ぶ彼は負けじと彼女を追いかける

 

遅れてやってきた風太郎も様子を窺うように周りを見渡し

幸太郎と共に三玖を追いかけようと足を動かす

 

 

「戦国武将の着付け体験はいかがですかーーー!」

 

本気で走れば追いつくが、どうにも調子の悪い彼には追いかける程の体力はない

どうしたものかと思えば、何処からか声が聞こえ ぴたりと目の前の少女は足を止める

 

戦国武将と言う単語につい 足が止まっていた

 

 

着付け体験にコスプレだと言いだす 前田

一方武田は郷に入っては郷に従えと上杉兄弟や三玖にも着付けを進め

こういった事には興味を示さない風太郎も何を思ったのか『幸太郎も着てみろよ』

普段の彼から出てくるとは思えない言葉選びに幸太郎は本当にこれは弟なのかと疑ってしまう

 

「うるさい 偶にはって話だよ」

 

「俺は別に断ってねーよ んじゃ行くか」

 

 

ーーーーーー

 

ーーーー 

 

ーー

 

 

 

「何で 誰もいないんだ? 前田たちは、おろか風太郎まで消えやがったぞ」

 

まさか風太郎まで着付けに乗り気だったとは意外な一面だ

俺の背中を押し 店の中に共入って行く

おかしな事に 武将の衣装なんては取り扱ってはおらず

時代劇に関するものしか置いてない

先ほどの『着付け体験』と聞こえた声も何でか店とは別の方向から聞こえていた 

 

他にも前田や武田 加え風太郎

外で待つと先ほど言っていた三玖の姿すら見当たらない

 

まぁ…。あんなことがあって普通に接している俺が可笑しいんだろうけど

 

 

「三玖には風邪を移さないようにしないとな」

 

 

昨日の雨でどうやら風邪を引いてしまった

やはり俺と学校行事は相性が宜しくないな 大した風邪ではない

林間学校のように倒れる心配も皆無 あれを反省して風邪薬も持ってきて正解だったな

 

 

「誰もこねーな……………………。ん…はぁ」

 

「じーーー……………………。」

 

 

俺がいる位置から少し先で、着物姿の綺麗な人物がこっちを見ている…。

向こうから注がれる視線に気づきその方へ向けば、三度逃走を開始しようとするが後ろから来た人物に押され

前に出て来た……………………。 ん? 今のぶつかった人 何処かで……………………。まぁ今は、三玖のところに行かんとな

 

 

 

「よー 似合ってるな」

 

「ありがとう………何故か店の人がノリノリ気づけば、この格好に」

 

「センスが良いな」

 

外で待つと言っていた三玖だが、これまた不思議な事に彼女は店の中に連れられ

頼んでもいない着物を係の人が既に選び終え あっという間に着物姿に

 

(?どういうことだ……まぁ今はいいか)

 

恥ずかしいのか、やや俯き加減で、視線は中々合わせてくれない

髪につける簪も良く似合っている この姿を見れないとはあの三人も損をしてるな

 

「そう言えば フータローたちは?」

 

「それがいねーんだよ まじで何処いった?」

 

「でも さっき着替えて外に出てきてたよ」

 

「何で 何も言わず出て行くんだ…。たくよ」

 

悲しい事実だ、風太郎 前田 武田の三名は年長を置いて先に出て行っている

置き去りとは良い度胸してんな……。

 

まぁ…散々迷惑をかけた俺が言えた義理じゃねーけど

取り敢えずは、適当にぶらついて探して見るのも悪くないな

 

「三人と連絡しないの?」

 

「残念ながら俺のスマホは初日以降はただのガラクタだ たくあの野郎」

 

「あっ…………そうだったね」

 

「ん? 三玖に話したっけ」

 

「えっと 四葉がそんなようなこと言ってた気がする」

 

「あぁー 話した気がするな 四女には でもあいつらに連絡は良いよ」

 

「どうして?」

 

「歩き回ればそのうち見つかるだろうしな 三玖手伝ってくれるか?」

 

「うん…………わかった」 

 

 

二人で行動するのも気まずい

でも今は少しでも彼女と共にいたい それは本音だ

まさか異性と一緒にいたいと俺が思えるなんてな

 

消えた三人を探す傍ら(建前) 映画村の中を捜索し半ば観光だ(本音)

流石に映画村と言うだけはあってセットの作りこみは凄く 何処を見てその時代の人々の格好が目立つ

途中に甲冑を着た 人物が通り過ぎ じーーーとそこから離れない三玖を見て

その人を呼び止めた せっかくだ写真を撮るのも悪くない

 

凄く嬉しそうに写真を撮っている彼女の姿にふと胸の奥が温かくなる

三玖と過ごすと心が安らぎ気持ちも落ち着く…何故だろうな

 

「コータロー あそこ射的もやってる」

「中にいるかもな 行くか?」

「うん!」

 

弓の体験コーナーかこれまたこいつが如何にも食いつきそうな奴だ

中に入るが、勿論三人の姿は見当たらない

出て行く気はないし 彼女はどんどん中へと進んで行く

生き生きしていて見ている俺まで楽しくなってくるな………。

 

何度かやって見るが中々難しく

指先が、不自由な俺には厳しい 手手間取っていると先に始めたからか慣れ始めた三玖から俺にレクチャーがはいる

 

「ここを抑えて」

「おう」

「私が支えるから やってみて」

「了解だ…………………おっ 真ん中に当たったな」

「やったねコータロー」

「三玖の教えが生きたし 支えてくれたからな ありがとよ」

「どういたしまして」

 

最近は人に教えてばかりだったから

教えられる側と言うのも新鮮だ 勿論のこと学校の授業は例外 あれは通ってれば当たり前だ

 

暫く興じれば満足したのか次の場所へと向かおうと三玖の方から俺の手を引いて来た

残念な事に的の真ん中に当てた所で特に景品などはなかった…まことに残念だ

 

「見てコータロー あそこに何かいるよ!」

 

「何故に恐竜が、いるのか映画村という名は伊達ではないのか…」

 

「ねぇー 写真撮って! 引っ込んじゃう」

 

「ОK 待ってろよ」

 

ドン 

 

「おっとっと」

「きゃ!」

 

どぽーん

 

「三玖 ごめん」

「大丈夫 でもせっかくの着物がびしょ濡れだよ ちゃんと周りを見ないとだめだよ?」

「悪かった……言い訳になるけど誰かに押された気がしてさ」

 

シャッターを押そうとした時だ

誰かに背中押された 手で押されたのかどうかは定かではないが、押されてバランスを崩し

目の前で待っていた三玖にぶつかりそのまま川へと落としてしまった

何度何度…彼女に謝る

足がつく場所ではあるが、彼女も言う通りせっかくの着物が水に濡れ色々と台無しになってしまった…。

 

 

(うーん 気のせいなのか?)

 

 

ーーーーーー

 

ーーーー 

 

ーー

 

 

「係の人に説明してくるわ その間に着替えててくれ」

 

「うん…。」

 

 

っていつの間にコータローと普通に話せてる…。

あれだけ色々あったのに不思議だな コータローといると嫌な事も忘れてる

私が逃げてばっかりなのに 彼はずっと私と話す機会を探していた

 

今日だって風邪を引いてるのに中を見て回る時も文句も言わず付き合ってくれた

 

楽しいこともいっぱいで、細かい事も忘れてるな

 

例えばそう

 

(下着まで水に濡れちゃったこととか…。どうしよう

 本当にどうしよう こんなの着たまま歩けないし 係の人にって 呼べないよ

あ タイツがあるならそれで…。って無理無理無理 あぁどうすればいいの)

 

川に落ちた時に全身がびしょ濡れで、浴衣の中まで水が入り

案の定下着もびしょびしょ…。 この格好でコータローとは会えない

そんな度胸はないよ 着替えなんて用意はないし うーん

 

 

 

(! 何これ)

 

焦りに焦り 頭が限界に来た時にカーテンの下から小さな箱が入れられた

『お困りでしたらお使いください』と上に書かれている

この文字の書き方 どこかで見たような気がするけど 今は中を確認しよう

きっと係の人が貸してくれたはず……

 

 

(うーーーーん 何これ…)

 

 

 

ーーーーーー

 

ーーーー 

 

ーー

 

 

 

「風太郎たち全然見かけねーな… まぁそのうち会えんだろう」

 

「///うぅん」

 

「どうかしたのか三玖? 着替えが終わってから様子がおかしいぞ」

 

「な 何でもないよ ///」

 

「ずっと歩きっぱなしだしな あそこに座るか」

 

「それが良い 早く座ろう」

 

係の人にはどういう経歴でこうなったのかきちんと説明し

頭も下げた 怒られるかと覚悟はしたが、お気になさらずと何とも心の広い人だ

 

その後は俺も着替え

暫くすれば顔を真っ赤にし何故か内股の三玖が現れた

事情聞こうと思ったが、手を前に出され何も言わない様制止される

 

 

着付け体験から今まで2時間近く 歩きっぱなし

三玖の体力を考えてあげるべきだったな

近くに休める場所を探しおあつらえ向きに座れる所を発見 見つけるな否や三玖は小走りで移動

こういう時は物凄くはえーな…。

 

 

「目まぐるしくて あっという間の三日間だったね 」

 

「確かにな色々あり過ぎた……………………」

 

「私は実質二日間だったけど」

 

「おっおう……」

 

「でもいいんだ 最後にコータローと過ごせた それだけで」

 

「俺もだ三玖と色々と回れて良かった…。 ん? なぁ三玖 その紙袋 お前のだろ持ってきてたのか」

 

「えっ? えー 何で私のパンがここに」

 

「おー お前が作ったのか すごいな」

 

(そうだけど 何でここにあるの? あの時なくしたはずだよ)

 

三玖の隣には、修学旅行の初日で彼女が落とし

俺が四葉に渡した紙袋が置いてある… 個人的の秘密で四葉からも二度ほど聞かれたが

中身は知らん…。 三玖の口から『私のパン』と単語が出て来た事でやっと正体がわかった

 

パン そう聞けば自然とお腹も鳴る

少々恥ずかしいな

 

「なぁ三玖……一個貰っていいか?」

 

「それは、もう…!」

 

「あむ……あむ もぐもぐ………うまいな」

 

「えっ…」

 

「言っただろ…俺は味覚音痴で味何て分らん、それに愛情で判断するって……でも不思議な事に何故だろうな これはそれとは関係なく美味しいと感じれたんだ

 三玖がどれだけ頑張ってこれを作ったのか、うん 愛情を差し引いてもこれは最高の出来だよ

 ごちそうさまでした 美味しかったよ」

 

 

素直な感想だ 以前三玖に言われた『コータローは愛情で判断する。だから本当に美味しいと言って欲しい』 お世辞は言わない 料理に必要な物は食べてくれる人間への愛情だ

それは何にも勝る最高のスパイスでこれさえ磨けば、誰でも喜んでくれる母さんが良く話していた

 

味覚音痴な俺だけど作りての気持ちを考え それが判断基準になっていた

正直言えば、曖昧過ぎて作った側を困惑させかねない

 

でも今食べた 三玖お手製のパンは 美味い その言葉が適切だ

美味しいと言うのはきっとこんな感じなのだろ 

俺が19年生きてきて初めて家族以外の料理で味わえた 美味しいと言う感覚だ

 

 

 

 

 

「……うん …… ありがとう ありがとね 私頑張ったんだよ」

 

「偉いな 流石は三玖だ……」

 

「それと遅れたけど誕生日おめでとう コータロー これはコータローへの贈り物でもあるんだ」

 

「そうだったのか……俺は自分の事にはとことん無頓着だからな 

貰えるとは思わなかったありがとな でもさ何でパンなんだ?」

 

「えっと コータローって気づけな何時もパンばかり食べてて好きなのかなって」

 

「そうか……うん 俺はパンが好きだ それは事実だ 風太郎も好きなんだ」

 

「二人ともに好きなんだね」

 

「あぁ…………昔さ 死んだ母さんがよく焼いてくれてたんだ……。

 毎日毎日 俺が7才になったあの日まで……それが忘れられなくて 忘れたくなくて…未だにパンを食べ続ける そんな男だよ」

 

 

 

俺が学食でパンのみと言う侘しい昼食を過ごすのは、あの人を忘れない為だ

笑顔が素敵で、誰からも好かれ お調子者でそれでいて子供っぽい

けど どんな時も家族を思う母

そんな彼女を忘れたくない一心で俺はパンを食べていた……。

亡くなった あの人との大切な絆の一つである 覚えていたから 笑顔を温もりを思い出せるように…。

弟と違って俺は一度過去を忘れてしまっている それ故に敏感になっていた

 

 

 

「! コータローたちのお母さん」

 

「小さな個人喫茶を出すのが夢だったんだ あの人が作るパンは絶品でさ 勇也さんも大好きで

 って この話は別に今は良いか……」

 

「ううん!もっと教えて欲しい 小さい頃からずっと一緒だったのにそんなこと全然知らなかった

 コータローを見ていたい 守っていたいって自分本位な事ばかりで知ろうともせず

 もっと知りたい コータローの全部! そして私のことも全部知ってほしい」

 

 

「お前のこともか……。ならさ 三玖だけに教えてやるよ もう一つ俺の秘密をさ」

 

 

 

小さい頃あれだけ一緒にいて俺は彼女達の事は知っていても彼女には、俺は自分の家族の事をあまり話した記憶はない。

当時の事を思うと俺は俺であまり触れられたくなかったんだと思う

風太郎との関係性は言わずもがなだ、特に母さんの一件があった事も大きな要因だった

 

深く知っているようで知らない俺の過去を彼女は知りたいと言ってくれる

俺を見て俺を助けてくれる彼女は俺がどう言った人物なのかをもっと知りたいと見つめている

その瞳も言葉も嘘も偽りもない、真っ直ぐな気持ちに誠意を込めて俺が話せる俺の事を少しばかり語ろうか…………。

 

 

「教えてコータロー」

 

「あぁ…………実は俺の名前には複数候補があったんだ

 一つは金太郎」

 

 

ドスン

 

「今何かぶつかった音が……。」

 

「な 何でもないよ続けて」

 

「おう…………それともう一つがさ 幸平って名前だ」

 

「!」

 

「俺さ……。今はバイトばかりの運動馬鹿だけどさ

 生まれる前は医者に言われたらしい この子はとても体の弱い子です

 産むにはそれ相応の覚悟を持つようにと… そんな時に勇也さんが考えた名前が

           金太郎さ」

 

「…それは知らなかった…体が、弱かったなんて、そんな風に見えなかった」

 

「まぁー……子供なりのやせ我慢とでも言いますか、これはおいおい」

 

「わかったよ。コータローが話したくなった時で良いからさ、それになんで金太郎なの?」

 

「金太郎ってのは元気な男の子の代名詞だ、金太郎飴まであって健康にそしてすくすくと成長して欲しいって意味合いがあったんだ」

 

俺の名前の由来を軽くだが彼女に教える事にした。 

勇也さんが俺の名前を決めた日の事だ。偶然通った路地裏で占い師が彼を呼び止めたとか

その占い師曰く『生まれてくる子供の人生は波乱万丈、今考えてる名前は控えた方が吉、名には幸福を意味するものが重要だ』とか何とか…………。

 

柄にもなく勇也さんは、信じ込んでしまい来る日も来る日も考えた、だが中々いい案が浮かばずそこで母さんが言ったのだ『みんなに公平に幸せを与え』『同時に自分も幸せになれる子になって欲しい』

ただ自分だけが幸福になるのではなく、他者にも幸福や幸せを振りまける元気な子になって欲しいとあの人は口にし『幸平』と言う名前を考えてくれた…………。

 

「色々と凄い過去だね……。」

 

「まぁーな……。 んで、羽陽曲折がありながらも

二人の考えた 『太郎』と『幸』をくっ付けて 今の名前

『幸太郎』って名前の出来上がりだ……今思うとマジで金太郎じゃなくて正解だったぜ

 

「?」

 

偶然だろうが、占い師の言ったことは当たった

あのまま金太郎として過ごしていたらある意味で大変な事になっていただろ

噓から出た実だ…。まぁ……そん時は金太郎とは別の名前をあいつは出して来そうだけど

まさか キンタロー君という架空存在が弟や二乃に大きく関わってしまうとは、本人達以上に実は緊張しては複雑な気持ちを味わっていた……。

 

 

 

 

俺が三玖に教えたいことは話したつもりだ

何故体が弱く 今は元気に過ごせるのか、それについては後日改めて教えてやるか

今話すには少しばかり長くなってしまう。今はさけるとしようか…………。

 

 

「それで、三玖の事をさ教えてくれよ?」

 

「うん良いよ。先ずはあれだよ!」

 

「あの建物がどうした?」

 

「お奉行所として 時代劇に使われてる名スポット 今日はあそこを見れただけで満足

 Ⅾコースほどじゃないけど ここにも私の好きな物がたくさんある」

 

「お前は大好きだもんな歴史がさ」

 

「それにね…………ずっとここにコータローと来たかったんだよ」

 

「俺とここに?何故」

 

「今は秘密だよ」

 

 

少々意地悪っぽく話す彼女は、再び周りに視線を送る

あれやこれやと自分が気に入っている物や好きな物、ここには数々点在していると楽しそうにはなしてくれる

 

 

「えーっと他にもあれとか、さっき渡った大きな橋もだよ」

 

「あれもそうなのか……。ドラマに出るのか?」

 

「そうだよ それにあれとか あれ そして あれなんかも好き それに」

 

「おいおい ずいぶんと好きな物が多いな まぁー お前の好きなもんでここは溢れてる

 当たり前か……。」

 

 

とんとん拍子にあちらこちらを指さしては、好きだと言葉を並べる

 

幾つか紹介し終われば、俺の方に向き直る  ぴたりと止まり

指先をを俺に向けた……。 いったん閉じた口を彼女は開き 覚悟を決めたようにその言葉を告げる

 

 

「好き」

 

「もちろん……知ってるよ」

 

 

俺もまた彼女が好きな者の一つだった

頬を赤らめる 目の前の彼女に俺は答えを返す必要がある

と言いつつも 果たしてこれを彼女に告げるべきか、あの日からずっと迷っている

この言葉は正しいのか静寂の中で俺は気持ちを整理する…………。

 

 

 

ーーーーーー

 

ーーーー 

 

ーー

 

 

 

 

彼と彼女が過ごす2時間前に時間を戻す

そこには素顔を隠した一花が三玖にぶつかることで

走る彼女の動きを止める 

その拍子に転んでしまうも三玖に駆け寄り手を刺しの述べる幸太郎の姿があった

 

 

そうあの時に三玖にぶつかった人物の正体は一花だ

そして『『着付け体験』』と声を出したのは 一花とまた彼女と同じく素顔を隠した二乃本人

何故ここにいるのか、一花も二乃もそれぞれ質問を投げる

 

彼のお節介が移ったのか、ここまで来たら二人を見守っていこうと考えた二乃

一花も同じだEコースから抜け出し 二人の様子を見守ろうと彼女はそれを選択した

 

今まで邪魔ばかりして来た自分が信じてもらえるとは思っていないと語るが

これは自分の意思だと強く主張 彼女の表情に二乃は何かを悟り

その言葉をかけようとしたが、ふいに後ろから物音がした……

振り向いた 方向には、 二人と同じく素顔を隠す 五月と四葉

そして 何と須藤真弓までここにいた……。

 

「真弓まで」

 

「先輩が心配でずっと見回っていたんですが、先ほど姉妹の誰かが三玖さんにぶつかるのを見て

追って来たんです まさか4人ともいるとは驚きでした」

 

「誰もルールを守ってないじゃない……。 お節介は伝染するのね」

 

「それよりも幸太郎君達が移動します どうにか着付けコーナーの中まで二人を入れなくては」

 

「うーん」

 

「どうかしましたか二乃?」

 

「どうにもあの二人が邪魔ね……。フー君まで来たがるのは意外だった…。てっきり一人で何処か行くのかなって思ってたから… さて何とかして フー君たちを引き離さないとね」

 

「何とかってどするの?」

 

「せっかくだし 一花は三玖に着付けさせるように仕向けなさい」

 

「し 仕向けるってどうやって……。」

 

「そりゃもう……。 得意でしょう? 三玖の変装」

 

「いじわる……。」

 

「はいはい 今は文句は受け付けないわよ 真弓も一緒に来て 武田と前田

 それにフー君を何処かに誘導するわよ」

 

「それならいい場所があります! ついてきてください」

 

ここからは種明かしの時間

ニヤリと表情変えた二乃は一花に三玖の変装をさせる

偽三玖が係の人と話をし どの着物がいいかを選ばせていた

 

三玖本人が知らぬ間に話が進んでいた謎がこれだった

彼女に似合うだろう服を選び終え 一旦店から退出

 

その後は様子を見に来た 三玖が店の中に案内される形で話がとんとん拍子に進んでいく

 

お次は武田 前田の二人で着替えが終わると店の外から風太郎を含む三名が登場

遠くで眺める二乃は風太郎の姿にうっとりし 真弓の声で我に返る

 

言いだしたは良いが、どうやって二人と風太郎を真弓が話したお化け屋敷まで連れ込むか…。

なるべく幸太郎と三玖の二人で過ごさせてあげたいと考える二乃にとってここが鬼門だ

 

うーんと考えるうちに意外な人物が動きを見せる

 

「武田、前田……。あの中で幸太郎が待ってる筈だ、入って行こうぜ」

 

「まじかよ」

 

「先輩ってああ言ったものが好きなんだね」

 

「良いから入るぞー」

 

 

上杉風太郎は二人を近くのお化け屋敷まで連れて行く

彼の行動でうまくことは運んだが、何故彼が自発的にそういった行動に出たのか疑問があった

 

風太郎の機転で無事に幸太郎と三玖は二人になれた

自分たちも一旦 一花たちと合流しようと真弓に言われ その場を動こうとした時だ

ふいに声をかけられる……。

 

「やっぱ お前らだったか……。さっき 四葉や五月を見かけた時になんか怪しいと思ったんだ」

 

「風太郎さん」

 

「フー君 何でここに! っていつの間に私服に戻ったの」

 

「だるいから着替えた……。前田たちなら等分戻ってこない筈だ まさか真弓まで関わっているとはな」

 

「あっはは 本当に風太郎さんがいるのは意外です」

 

「それぞれが選択コースの列に並ぶ時さ 偶然一花の前を通ったんだ

 その時聞いたんだ『あの二人を一緒にさせないと』……。そんな話聞いたら動かない訳ないだろ」

 

「フー君……。素敵」

 

「二乃さん! 二乃さん!」

 

風太郎もずっと二人を気にかけていた

ただ自分がどう動けばいいのかもわからず、昨日彼女らの部屋を訪れた際にも

少しばかり話を聞くつもりでいた……。 間の悪い事にシャワーを終えた四葉とばったり出くわし

何も聞けず、今日を迎え 武田や前田とEコースまで向かう際にふと耳にした

一花の思い……。 ついた矢先に 不審な動きをする四葉と五月の姿

オマケに何処かで見た事のある 須藤まで変装してコソコソとついてきている

 

自分が動くなら今しかないと幸太郎と三玖を二人にさせるため

前田達をお化け屋敷まで誘導し 自分はさっさと着替えを済ます

やるべき事は終えたなら 後は邪魔にならないよう何処かで待機と彼なりに気を遣っていた

 

 

「二乃が固まってるな……。 どうする?」

 

「あっ 先輩たちです どうにか二人を接近させないと! 風太郎さんここはお任せします」

 

「って 真弓 お前どうするつもりだーーー」

 

 

普段は見れない彼の姿に二乃はときめきその場で目をハートに石化

自分たちが話しているうちに二人はまた別の場所へと移動を開始した

二乃を背負い 走って行く風太郎

 

暫く彼女を追いかけ 兄の動きを観察していた

そんな時 何を思ったのか先頭を走る 真弓が幸太郎を突き飛ばすように背中を押し

バランスを崩した 彼は前にいる三玖とぶつかってしまう

 

ばしゃんと水の跳ねる音 浅い川の中にずぶ濡れの三玖と頭を下げる幸太郎

あわわわと口元を抑え こっちまで逃げてくる真弓

 

 

「お前は何がしたかったんだ」

「先輩がじれったくて 背中を押したらそのまま突き飛ばしてしまいました」

「まじでパワフルだな お前は……。」

 

 

遠くでそのやり取りを見ていた 一花 四葉 五月も何が起きたのか判断がつかない

彼女を引き上げる幸太郎を見て 三玖が川に落ちたことだけは分かりあのままでは動く事も出来ないと

近くで作戦会議 服は着替えれば良いが、大きな問題があった

 

「下着どうするんだろ」

 

「このままじゃ 三玖がノーパンデートだよ!」

 

「ここって売ってるんでしょうか?」

 

「ふ ふんどしとか……?」

 

「よ 四葉の俊足でお店見て来て!」

 

「でも ふんどしはさすがに……」

 

「最悪 隠せたらなんでもいいよ!」

 

 

「あ あの  その……私……変な話ですが 何かあるといけないと思って

        下着を一セット持ってます 」

 

 

 

『『   なぜに……………………  』』

 

 

下着の貸し出しが出来るのかはたまた ふんどしを渡して誤魔化すのか

二人が言い合いになっているなか今にも噴火しそうな程耳まで真っ赤に染めた五月が体を震わせ

意見具申  何故なのか五月はとてもきわどい下着を持ったまま選択コースに参加しており

それを三玖の元まで運ぶことで急場しのぎ

 

箱に詰める際に 四葉『えぇー 五月なんでもってるの』と物凄く困惑している

何故だろうか五つ子の中で本当に怖いのは一番に考えが読めないこの中野五月ではなかろうかと一花は思い始めていた…………。

 

 

 

その後は二人が休んでる通りに立入禁止立て札を置く事で外部からの侵入とお邪魔虫を近寄らせない様に配慮 二乃を除く3人が近くで待機していると二乃を担いだ風太郎と真弓が現れる

 

「上杉君!」

 

「なんでフータローくんが」

 

「色々だ……二乃を連れて来たし 俺と真弓は周りを見てくる 邪魔が入らない方がいいだろ?」

 

 

「上杉さん……………ありがとうございます!」

 

 

「では風太郎さん 行きましょう」

 

 

暫くすれば二乃も目が覚め『フー君はフー君』と声を出す為

しーっと指で口元を抑える 今は二人の真後ろ下手に騒げば気づかれてしまう

はっと我にかえれば、作戦は最終段階に…。

 

ここでまさかのトラブルが発生

幸太郎に頼まれた 三玖の落とした紙袋を四葉は部屋に置きっぱなしだった事に気づく

 

「大丈夫 それなら持ってきてる ささっと置いてくるね」

 

悪知恵が働かない一花程冷静でちゃんと周りを把握しているものだと

二乃は改めて実感する

助けに船とお礼を言えば、二人に気づかないよう そーっと迫り 三玖の横に紙袋を置き

すぐに撤退 ふぅーと息を整える

 

「あのパンって三玖が作ったんでしょ?」

「うん…修学旅行初日にお兄さんのために 私もずっと味見役をやってて

 あんなことが、なければ……………って ごめん! 一花を責めるんじゃなくて…………」

 

「……………………」

 

「とにかくごめん」

 

「?」

 

「私は全員が幸せになってほしくて いつも消極的になってる子の応援してたのかも

 こうなるって少し考えればわかるはずなのに……………だから一花の本当の気持ちにも気づいて

あげられなかった  だからごめん」

 

「私………………謝られてばっかだ 一番謝る必要があるのは………私なのに……………」

 

 

 

ーーーーーー

 

ーーーー 

 

ーー

 

 

 

 『もっと知りたい コータローの全部! そして私のことも全部知ってほしい』

 

 

 

  三玖ごめんね

  ずっと邪魔して ごめん………………。

 

コータローくんもずっと私を信じてくれてたのに嘘をついて困らせてごめんね

 

 

だけどね  あの日のこと  それに出会った今までの全て

 

 

 

そして 六年前に君に伝えたかった この想いは嘘じゃないんだよ……………。

 

照れくさくて どうしていいか分からなくて 友達でいよう

そう答える事しか出来なかったんだ………。

 

大好きなのに………

 

 

「実はさ あんたの気持ち少しは分かるんだ…………

 もし フー君と出会わずにコウと再会してたら 

 私とあんた タイミングが違えば逆の立場だったかも………」

 

 

二乃…………そうだね

ずっと彼を思ってたのは私だけじゃない 兄と慕い 彼の傍に何時もいたこの子も

もしかしたら………私や三玖と…

 

 

「偉そうなこと言ってごめんなさい」

 

「そんなこと…………そんなことない」

 

「三玖は最後まで一花は悪くないって言ってたわ」

 

「うん……………それに 五月ちゃんもごめんね あんなひどいこと言って」

 

「いえ……どうにも私は中途半端が過ぎていたんです 一花が謝ることではありません」

 

「私もごめん 五月だって本当は!」

 

「今は彼と三玖を見守るべきです…………それで良いんです」

 

 

 

 

「抜け駆け 足の引っ張り合い この争いになんの意味もない

私たちは敵じゃないんだね………」

 

 

「私もさ 間接的には 三玖の邪魔をしてたし  ちゃんと謝らないとね

好きなものって ほどじゃないけどさ 私たちにしては珍しく共通の話題が出来たわけだしね」

 

 

 

あの人の言葉で止まる事をやめ 一人焦って

誰の言葉も聞かずにただ進んでいたその先は見渡す限り何もない更地

 

ずっと私に語り掛け 気にかけてくれた姉妹やあの二人 彼らにもっと寄り添ば

気づけたのかもしれない……………………。

 

 

 

 

ーーーーーー

 

ーーーー 

 

ーー

 

 

 

「好き」

 

「もちろん……知ってるよ」

 

ジッとこちらを見据える彼女のその瞳に迷いは見えず

けして逸らす事のない姿と同時に自分の胸の内を俺に教えてくれた。

 

 

今の彼女の言葉と行動を少しばかり整理してみよう

俺と訪れたここには、彼女の好きなもの興味を引くものはいっぱいでこの時間が大切で好きで、そして彼女は、最後に指をさした。

 

それは他でもない俺だ、『知ってるさ』と俺は口に出してはいるが、本当に俺が思う様な意味合いが込められているのか、嫌違うだろう 『上杉幸太郎』 彼女がこのタイミングで言葉選びを間違う事があるだろうか? 

 

知っていると自信ありげに得意げに答えた お前なら彼女の伝えたい言葉の意味を知っている

知らなければならない

俺と真剣に向き合い、答えを待つようにしている少女に俺は伝えなければ行けない言葉がある筈だ。

 

 

だが、どうだろうか、果たして上杉幸太郎は中野三玖を満足させられる答えを持ち合わせているのか?

 

俺にとって中野三玖はどういった存在だ…………

幼馴染か?生徒か?助けた知り合いか?巡り巡る答えは、現実の俺の動きを鈍らせる

 

ここ二日三日はあの四葉の発言を聞いて俺はずっとその答えを探してたんだ。

 

 

        好きか?嫌いか?

 

 

その言葉を俺は口に出来るのか?

あの一件が尾を引いている、あの少女との数年間と別れを思い出すと胸がずきりと握られているような痛みを走らせる。もし言葉を誤れば、この気持ちを彼女に味合わせ俺はまた同じ思いを味わう事になる

 

素直に言える素直な言葉が、今の俺にはあるのか、きっと2年前の俺ならもっとスムーズにやってのけていた『やれてしまう』

だが、これは今の俺の問題で俺が決断する答えなんだ

 

 

 

       俺を見る彼女は誰だ

 

     あいつか?あの子か?あの人か?

 

    この一瞬で2年前のあいつを思い出す。

    この一瞬で6年前のあの子を思い出す。

   この一瞬で半年前のあの人を思い出す。

 

 

 

俺は誰が好きだ……………………違うだろう俺よ

お前が見るべき人物は彼女たちではない、自分が誰と話しているのかを認識しろ

 

 

今は三玖を見ろ 俺は……………………僕は三玖をどう思う?

 

 

手のかかる生徒の一人で大切な幼馴染で、話していて驚かされる事は多いけど「僕」は、彼女といる時間がとても心地よく感じている、この気持ちだけは噓偽りない気持ちなんだよ

 

お前が感じて思った気持ちは、紛れもない真実だ。

抱える思いと伝える言葉を俺は躊躇っているんだと思う

 

 

でも確かにこの胸は静かにそれでいて力強く鼓動を走らせている

緊張しているんだ、誰かに好意を向けられ、それに応える事を…………………・

 

 

そう 中野三玖が口にした言葉には、『好意』がある

彼女の行動と彼女の今までの言動とそれはとうに気づいていた筈だ

 

 

俺は、三玖の告白に答えを出さなければいけない

鼓動は更に早くなりでも確かに暖かいんだ。

 

 

 

 

ビシッと俺に人差し指を突き立て 凛とする彼女はとても綺麗だ

一言言うなら見惚れてしまう……………違うな

 

この一瞬俺は、中野三玖に見入っていた

 

 

上杉幸太郎は逃げる訳にはいかないんだ……………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺は……………」

 

 

 

 

「やっぱり 私は家族の皆が好き………」

 

 

「えっ……………」

 

 

『『えぇえええええええええええええええええええええ』』

 

 

「えぇえええええええええええ」

 

 

ビシッと立てた指は俺の方を向いていたと思ったが、微かに上の方を指さした

家族と言う 単語が聞こえ その意味を理解した時に 後ろから大きな声が聞こえだす

 

はっと 先ほど謎の物音を思い出し 後ろを見れば

民家の中からこちらを覗き込む 五月や四葉の姿

そして 民家の左付近で様子を眺める 風太郎や真弓ちゃんまでここに集合していた

 

「あぁあの音はやっぱり 誰かがいたのか……。」

 

「悪い 幸太郎」

 

「すみません 先輩」

 

「三玖も気づいてたの」

 

「やっぱり 一花と二乃の声が聞こえた時からおかしいと思ってた」

 

 

恐ろしい 恐ろしすぎる

見られていたのか、今までの全ての事が、やばいどうしよう

柄にもなく恥ずかしくなってきた……。

 

 

「いっその事殺してくれ……。」

 

「先輩顔が真っ赤です」

 

「俺だってなぁ!恥ずかしいって気持ちはあるわ!つまりは三玖が言いたいのは、『俺ではなく』……………………。うん そうだな 後ろで覗き込んでいた 中野姉妹と うんそうか、げっほ げっほ」

 

「幸太郎 考え過ぎると熱が上がるぞ?ほれ水飲め」

 

「わ、悪いな」

 

「何と思ったのコータロー?」

 

にんまり笑みを作る三玖

 

でも まて冷静になろう 初日の事も思い出し

今までの事も整理しよう 確かに彼女は後ろの柵を指さし そこには覗き込む姉妹たちがいた

何処か真剣で俺と向き合う 彼女を浮かべるとやはり不自然だ

 

何かの遊びで俺を騙した それはない

彼女は俺に対して何処までも真面目に考え 害になるようなことはけしてしない

それ程まで徹底している  

ならば今の 家族と言う単語 それはきっと……………………。

 

 

「まぁーうん 色々と分かった 先に帰ろうか 風太郎」

 

「急にどうした」

 

「俺にも猶予が出来た そんなもんだろ」

 

 

 

 

ーーーーーー

 

ーーーー 

 

ーー

 

 

 

「三玖いいの? せっかく伝えたのに誤魔化して」

「いいんだよ。私は誰かさんみたいに勝ち目のない特攻するほど馬鹿じゃない」

「班決めのことまだ 根に持ってるのね」

「それに…………コータローはそれほど鈍くもないよ」

「そうですね 三玖さん さっきの戦いは勝ち目のない特攻ではなかったかもしれません」

「えっ、それはどういうこと?」

「私には先輩が何て言おうとしたか、わかります」

 

 

くすりと小さく笑みを作る須藤真弓には長年行動を共にした彼が何を選ぼうとしたのか

凡その推測は出来てしまう、分かってしまう

その陰りを二乃は見逃してはいなかった………。

 

「真弓もありがとね 私が隠れようとした時 背中を押してくれたよね」

「あっ気づきました? 私にはそれしか出来ませんからそれでは私はこれで失礼します」

 

「須藤さん ありがとうございます。」

「真弓もさ、自分に正直な方がいいわよ」

「正直ですよ、私はこう見えて全敗ですからー♪」

「うわー、経験者の言葉は重いわね」

 

三玖の背中を押した彼女もまた同じ経験を味わっていた

どうにもこうにも上手く行かず今の自分に出来るのは、彼を想う彼女たちをサポートする

何処かの四女や何処かの長男と似た思考を持っていた

それでもなお 須藤真弓の心には消えぬ炎が灯されている

 

去って行く二人を追うように 中野姉妹へ 手を振る

 

残った五つ子はそれぞれ照れくさそうに顔を見合わせ

三玖が言葉を紡ぐ 今何を伝えるべきか どうすれば良いのかやっと答えを得たんだ

 

「四葉、パンありがとう」

 

「にっしし 一時はどうなることかと思ったよ」

 

「五月………… 多分 これ 五月だよね?ありがとう」

 

「すみません どうか彼には他言無用で…………」

 

「二乃…………フータローとの時間を削ってまでありがとう」

 

「別に……私がしたいと思っただけよ」

 

「コータローみたい………………それと一」

 

 

自分をここまで支えてくれた

姉妹にそれぞれお礼の言葉を述べる どうにも照れくさいのか二乃はぷいっと顔を背けた

ははっと久々に姉妹の前で笑みがこぼれ

気持ちを切り替えると共に 最後に残された 彼女 中野一花にも自分の気持ちを伝えようとした

だが 体には温かい何かの感触が伝わる

誰かが自分に抱き着いて来た

 

擦れ合う頬に感じる小さな水滴 

それは自分に抱き着く彼女の物か 自分が流すものなのか……………………。

 

 

「三玖………。 ごめんね 」

 

「いいよ ねぇ 一花 恋ってこんなに辛いんだね ありがとう一花」

 

 

ーーーーーー

 

ーーーー 

 

ーー

 

 

 

どうにも釈然としない終わり方だが、三玖が伝えよとした言葉の意味を俺はちゃんと理解した

これにどう答えるのか、それが今後の大きな課題の一つだ

 

言葉に責任を持てず 八方美人なkz野郎とあいつには何度も罵られ

その都度俺は思い返す 何が正しい行動だったのか、誰もが傷つかない 誰もが公平

そんな未来を願っているが、どうにも世界とはうまくは行かないもので、

俺が再び 恋に対して悩んでしまうとは全く予想がつかないよ

 

 

中野先生には あぁ言ったが、また俺は嘘をついたようだしな

 

 

「コータローくん!」

 

「よう……一花」

 

「コータローくんにも迷惑かけちゃったね ごめんね」

 

「それは俺も同じだよ……。 あんなこと言って お前を置き去りにしたからさ

 今回の選択コースでどうにかお前とも話が出来ないかと考えた」

 

「それでここにしたの? 女優だからEコースの映画村?」

 

「当たらずと雖も遠からずだ きっとお前とはもう一度会える その確証だけはあったしな」

 

選択コースの際 高熱でなにを選べばいいか、全然頭が回らず

如何すればいいかと悩んだ末にEコースを選択した

女優だからとそう言った意味も確かに含まれている

 

もう一つ理由を上げるとするならば6年前にここを訪れた際に

高熱でぶっ倒れ 映画村へは来れなかった……。 過去へのリベンジも込められていた

 

三玖を見た時に他の姉妹もいるかと思ったが、やはりバラバラで動き

一花にはちゃんと話す事もないまま終わるところだった

 

 

「一花 ごめん 血が昇ってた そんな理由では駄目だろう

 俺はお前が言いきる前に 勝手にいなくなって置いて行ってしまった ごめんなさい」

 

「君はさ……。 コウくん 昔から生真面目で律儀で でもさそんなところが良かったのかもしれないね」

 

「一花………………?」

 

「本当にさ あんな目に合えば 私でも怒るし すごく悲しかった 」

 

「すまん……………………。」

 

「なーーーんて   全部」

 

 

チュッ

 

 

「嘘だよ  全部」

 

「えっ…………一花」

 

いたずらっ子のようなその笑みは 俺が初めて恋をしたあの子そのものだ

 

頬に感じた優しい感触 近づきざま 確かに彼女は俺の頬に唇をつけた

何事もなかったかのように 今までの全部が嘘だと言い張り彼女はそのまま歩いて行ってしまう

数歩歩いた時だ、ぴたりと足を止め こちらにふり返る

 

 

先ほどの笑みは消え 何処か真剣な面持ちで俺を見る

何かを呟いた後 彼女はある言葉を俺に伝えた……………………。

 

 

 

「コータローくん あの日、連絡をくれたあの時‥あの家には私しかいなかったよ」

 

「!!」

 

 

ーーーーーー

 

ーーーー 

 

ーー

 

 

 

それから一日が経った

俺たちはそれぞれ自分の家に帰って行く

帰りのバス中では面白い話も耳にしていた

 

ホテルで噂になっていた 盗撮犯 その正体は何度も姿を消していた

前田だった 呆れたような武田と何処か上の空な風太郎

ぽつりと呟いた一言『俺が頼んだんだからな』

犯行は前田で主犯は風太郎と何とも予想以外なオチがついた

 

最後に立ち上がった彼は疲れて眠る五つ子を写真に収めると満足したのか

自分の席へと戻ってきた……。 何故彼がこのようなことを思いついたのか、見当はつかず

理由は話してくれず 修学旅行は終わりを告げた

 

そのままなら話は終わるだろう 続きがある

 

 

 

 

街に戻った翌日 5月22日 火曜日 俺はある人物に呼ばれ

近くの茂みに隠れ気を窺っていた

 

 

そこには零奈(五月)と風太郎が何やら会話をしており

弟は鞄から一冊のアルバムを取り出した

 

彼曰く 誕生日のお返しで 未だ零奈が誰かは判別が出来ない

ならそれでいい考えるのはやめて彼女に代表として渡して置こう

 

中身は修学旅行で撮影された 彼女たちの写真だ

前田に依頼していた理由がこのアルバムへ入れる写真だった…………。

 

ページをめくる度に五月は驚いた表情で風太郎は真顔のまま

これが自分に出来る精一杯だ 自身なさげに伝える

 

「てっきり お前も京都で何か仕掛けてくるかと思ったんだが………。」

 

「わ…………私なりに仕掛けていたんだけどな~……………」

 

 

全くその通りだ

二人でどうにか風太郎に伝えるべく試行錯誤を繰り返し四苦八苦

京都で五月がこの格好をすることはないまま終わり

俺と顔合わせた時には何度も謝られた 五月は何も悪くねーのにな

 

 

最後に風太郎は自分の思いと零奈への感謝の言葉を伝えれば

何処かへ歩いて行ってしまう………五月が正体を明かすなら 今だ

 

でも 俺には五月に やれ  とサインは送れなかった

 

零奈と言う存在は今の風太郎を形成する大きな役割を担う

ここで五月だと正体を明かし 他の誰かだと言えば彼を余計に混乱させてしまう

 

五月本人も動こうとはせず これで良いと言った表情で風太郎を見送った

 

そーっと茂みから顔をだし 風太郎に気づかれてない事が分かれば

五月の元まで駆け寄っていく

 

「お疲れ」

 

「お疲れ様です 幸太郎君 すみません ずっと手伝ってもらったのに結局は正体を明かせず」

 

「まぁ…。これで良いだろう あの場の空気を壊す選択は俺には出来ない

 悪いな 俺の方こそ役に立てなくて」

 

「そんなことはありません あなたがいたから私はもう一度 この姿で彼の前に立てたのです」

 

「そんなたいそうな奴じゃねーけどな」

 

「本当にありがとうございます」

 

「へいへい………じゃ 俺は帰るから 送って行くか?」

 

「いえ 私は用事があるので もしくは公園の出口で待っていてください」

 

「了解だ 先行ってるぞー」

 

 

何やら五月も用事があると

先に帰っても良いし共に帰るのも俺次第と最近は選ぶ事ばかりだな

まぁ…。ここまで来たんだし 帰るなら一緒で良いだろう

本音を言えば、五月にはそして 三玖には聞かないといけないことが出来ちまったが

これは後日に回しておこう  

 

 

 

「勝手な真似をしてごめんなさい それと幸太郎君は自分で行きつき私に協力してくれました

でも 何時かは打ち明けるべきです」

 

「流石はお兄さんだな………だから何時も気にかけてくれてたんだ でもこれで良いんだよ

 上杉さんには打ち明けず このままで  それにごめんね 五月だって本当はお兄さんと!」

 

「……………………。 私は これで良いんです 幸太郎君が幸せなら私も幸せです

 彼が傷つかず 誰にも責められない 彼が元気で生きてくれる 私は見守るだけで良いのです

 それが私の願いですから……………………。」

 

「五月…………?」

 

 

「彼が待っているので先に行きますね」

 

 

(そうです、私のせいで狂った彼の人生を私は、守らなければならないのですから)

 

 

ニコニコと微笑むその姿は何時もの五月と変わりない

自分の心配も杞憂かと思った四葉もふいに足が竦む

その表情は笑顔と言うには何処か壊れているようにも思え 触れば儚く砕けてしまう程に脆くもあった

 

 

 

「五月の用事って何だろな、まぁ‥気長に待ちますかね」

 

 

 

 

俺は気づくべきだった

五月が秘めるもう一つの秘密と俺が知らない あの日の事件のもう一つの裏話を……………………。

 

俺のせいで歪んだ人間は「雨宮紡木」だけではない 「中野五月」もまた歪みに歪んでいたのだ

 

 

 

 




キャラ設定更新
上杉幸太郎
この話の主人公でイギリスの旅を終えて無事に修学旅行へと参加することに‥
修学旅行早々に中野姉妹の喧嘩や坂下との邂逅などの問題に直面し、それを頭を悩ませるなかで、中野一花との過去を振り返ることに‥

三女行動を共にするなかで、彼のなかで彼女への価値観と見方が変わり始め、彼の中で何が動き出した‥



中野五月
この話のヒロインの一人
上杉幸太郎の事を本人以上に知っている事が多く未だに謎多き人物
姉妹の喧嘩に直面するなかで、坂下と幸太郎の関係性を知り、同時に彼女の中で坂下への警戒心が上がることとなる‥

旅の目的の一つであった風太郎への正体を明かす計画は成功せずに終わるが、彼女の闇を四葉は垣間見ることに‥



中野三玖
この話のヒロインの一人
上杉幸太郎への想いを自覚しそれをどうするかと悩みつつも修学旅行で彼への感謝を伝えるとひた向きに頑張り続けていた。

しかし自分の行動の遅さに加え、信頼していた一花の行動を目撃し逃避に走り、五月と共に坂下の正体を知ることに‥

塞ぎ混む自分を叱咤激励する次女に感化せれつつも修学旅行最終日を迎え
彼女はそこで幸太郎の由来を知ると共に彼への想いを彼女なりに伝えることに成功した‥



中野一花
この話のヒロインの一人
上杉幸太郎と言う人間への想いが暴走する事で今回の修学旅行でとある事件を起こすことに‥

三女変装により姉妹仲に亀裂が走り、次女と衝突し
それでも我を貫き続けると考えるが、幸太郎に一部を見抜かれ、更に坂下との邂逅が、原因と彼に気づかれてしまう

修学旅行最終日では、三女を裏側サポートし
姉妹の絆を再確認することが出来た

しかし、幸太郎へある事を伝え、それが彼を悩ませる事となった


中野六花
上杉幸太郎の恩人で同時に彼女の恩人が幸太郎である
今回は特に現れはしなかったが、一花の証言で幸太郎は彼女の存在で更に考えさせられる事となった。


中野四葉
上杉幸太郎の後輩
何かと幸太郎は彼女を気にかけるが、その理由が自分こそが風太郎の初恋であるあの日の少女だからであると知ることに‥

今回の修学旅行の騒動で自分の生き方の矛盾を風太郎に指摘されることになる
その後に中野五月の少しの違和感に気づくことになった

中野二乃
上杉幸太郎の後輩
幸太郎や風太郎とぶつかる事が多く一番の障害だった
現在は和解し 風太郎に告白している

修学旅行での一件以前から長女警戒し
彼女の行動で一時的に一花と決別に近い状態になってしまう
それと同時にうじうじする三女へ自分の気持ちを伝えると同時に彼女は、彼女自身の存在を彼女に認めさせる言葉を送った
今回の騒動での一番の功労者である


上杉風太郎
幸太郎の弟
勉強馬鹿で何かと姉妹の事で頭悩ませている
今回の騒動で中野姉妹の亀裂や四葉の抱える矛盾に、気づく等々以前よりも人を見る洞察力は高くなっている。
同時並行で起きた、盗撮事件の黒幕だが、それら全ては彼女達姉妹へのアルバムを作ることだと判明することに‥‥
中野次女に続き今回の騒動の功労者の一人である


雨宮紡木
幸太郎の元恋人であり、中野一花を焚き付け、姉妹仲に亀裂を生じさせた、今回の騒動の真の首謀者
中野姉妹に怨みがあるなどはなく、興味本意と幸太郎に告げる事で、彼の逆鱗に触れるが、全て理解しての行動らしい
何故に人を嘲るのか真相は不明‥
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