ここから暫くは、オリジナルシリーズが続きます
本編では一気に八月まで飛んでいたのでこの間
風太郎たちがどうしてたのか気になって妄想で補います。
後ご都合主義もありあり
第九十四話 不良少年と心機一転
五月のある日
上杉風太郎は登校時の中一人の女生徒と出くわした
やっほーと声をかけるその人物を彼は良く知っている
数日前に行われた 修学旅行で色々と騒ぎを起こしその一旦を担う形になった
中野一花だ
彼女が自分を待っているとは、まったく予想も出来ておらず
曰く『本当に偶然だよ』
その中野一花も二乃の手前 風太郎と過度な接触は避けて来たが、一花には風太郎に伝えなければ行けない重大な話があった………。
学校まで会話も交え歩く二人 最初は面倒で軽く聞き流していたが
彼女が言った一言で風太郎の脳も活性化した
「あの日さ 京都の夜 宿でフータローくんと一緒にトランプをして遊んだ子覚えてる?」
「何故 その話を今するんだ?」
「否定はしないってことは覚えてるんだね」
「お前に何の意図があるかは分からないけど 騒動の種になるようなことは」
「あれさ 私」
「えっ……………………」
「ついでに言えば、フータローくんが宿に来るまで一緒にいた子は私以外の誰かだよ」
「嘘か?」
「コータローの件があったんだよ もう懲りたよ これは本当のこと ごめんねこんな子が遊び相手で」
「まぁー 今となっては良い思い出だしな……。 別に疑ってはいない」
「急なタイミングでごめんね ちゃんと話しておこうとずっと考えてたんだ」
「そうか……一花 ありがとな あの日遊んでくれて」
「どういたしまして 私も楽しかったからね」
二乃は言った 上杉風太郎と出会わなかったら幸太郎に恋をしていたかもしれないと
一花もそうだ あの日話した少しの時間 目つきの悪い少年と過ごしたあの日々は彼女とって
かけがえのない思い出として今でも頭の中に残っている
そっとしまい込んだそれを風太郎に話す事で一花は再度 自分の気持ちを理解できた…………。
(やっぱり君が好きだよ…コウ君でも…私は…)
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5月25日 金曜日
修学旅行も無事に終わり 後は平和な学園生活………。
そんなもんはない 6月の半ばには学園が誇る大規模な体育祭が行われる
何故6月なのか…。 普通なら秋ごろに行う行事だが、10月は我最大のイベントである日の出祭が行われる 8月には夏休みもあり9月にはテストや10月の下準備で教職員も忙しく
5月は修学旅行となっており その間 一番空きがあるのは6月~7月 何とも過密スケジュールな一年間となっており 修学旅行の余韻もつかの間に 来月6月に行われ体育祭の実行委員を決めなければ行けない この話は以前に風太郎と話 学級委員や体育委員と違い
この為に新しく体育祭実行委員をクラスで二人男女ペアと全くどんな奴もそう言った習わしと言うか、決まりごとが好きだと見える
「まぁー6月も6月でジメジメしてるけどな」
「今年は雨漏りだけは、勘弁願いたいな」
ボヤキ交じりに机に突っ伏し俺であるが、とくに関わる事のないイベントだ
深く考える必要はない 俺は俺で日々生きて行く為の日銭稼ぎに勤しむ必要がある守銭奴ここに極まれるな発言だが、執着はなく どちらかと言えば、風太郎が当てはまりそうな単語だ
「失礼な 俺は守銭奴ではなく 節約家だ」
「へいへい」
「それで新しいバイト先でも探してるのか?」
「以前働いてたところが諸事情あってな 暫くは暇な日が続くんだ だからその日にバイトでもと」
「また ぶっ倒れるぞ」
「大丈夫だ 真の地獄は7月~9月だ まぁ6月は梅雨の季節で涼しくてバイト出来るが、8月とか考えてみろ?暑い中で着ぐるみとかまじで 一瞬母さんが見えてくるかな?」
「お袋もびっくりだろうな」
息子が来たと思いきやバイトでぶっ倒れてやってきたよ
ダメだ会わせる顔がない…。
後ろの席の弟も他人事ではなく ヘビーなバイトがあれば何度か倒れたこともある
節度をもってバイトに勤しもうなんてしてたら 借金問題の解決なんて夢のまた夢
五つ子の家庭教師での収入も加えれば、今のペースを崩すことなく
学園生活も行っていける筈だ
「そう言えば 来週には体育祭実行委員決めるんだろ?」
「そうだった」
「学級委員さーん 大丈夫ですか」
「普通に記憶から抹消してた…。あぁ やりたくない 学力に注ぎすぎた俺には辛い」
「一応忠告な 学級委員と体育祭実行委員は、二人三脚があるからな」
「はぁ?」
「強制参加する種目は、多才だったなー…懐かしい」
「学級委員の辞退を…。」
「諦めろ 二学期まで交代は認められん」
「わいわいがやがやとその中でペアで走るのか…。」
「まぁ お前を推薦したのは俺だけどな」
「本当だよ 鬼か!」
小言が煩く 軽く嫌味も聞こえるが、学級委員をやっている風太郎の姿はとても嫌々でやってるとは思えない 実を言えば、入院する前の良い子ちゃん時代の俺よりも向いてるとさえ思える
「その体育祭もあるけどさ…。次のホームルーム前に まだイベントあったな」
「めんどくせぇ~…案外今の席には満足してんだよな…」
「くじ引きでランダムとか…。一応 昨日四葉と番号の準備したな」
「よし 風太郎 俺を窓際にしてくれ 幾らで買える?」
「不正はやめろ くじを引いた時点でお前の運命は決まる」
「それはお前もだ はぁ…………嫌な予感しかしねーよ」
先ほど俺が、ぼやいていた理由は何も体育祭のことではない
それと同等か下手すればこの一年を左右するもう一つのイベントが後程行われる
その名は 席替え
それは誰しもが望む一大イベントであり
自分の周りが大きく変わり スクールカーストにより自分の席なのに息苦しい生活すら送る可能性すら秘めている 何とも恐ろしいイベントだ
まぁ…。人から避けられてばかりの俺にはクラスのヒエラルキーやその他云々は全くの無関係であり
何時もと同じく気にしなければ良いだけの話…。
勝手にどうぞだ…。
別段今の席で困る事って言えば、後ろから声をかけられてばかり
うたた寝してれば、教師の目に付く 正直言えば、最悪な部類だな
思い返せば、嫌な事しか出てこない…。
それでもだ、俺は、席替えって風習自体が苦手である
理由はあの女 坂下だ 小~高一まで俺は何者かの策略を感じる程に 坂下が必ず隣だった
どんな手段を講じているのか、聞いても『そう言う巡り合わせさ』
あいつがあんなロマンチックなことを言うとは、更に胡散臭く感じていたのさ
それに天災と呼ばれる人間の隣で過ごす どれだけ精神を削られて無駄にストレスが溜まった事か
もう坂下はいない、高校生活では無縁の存在に怯えるくらい
席替えが、トラウマにも似た何かになっている…。
改めて修学旅行に体育祭 その間には席替え
本当に過密スケジュールに程がある 何故二学期の始めに行わないのか?
「はぁ…………あとは天に任せるか お互い健闘を祈ろう」
「気にならない席なら万々歳だな…」
固い握手を交わす 少しすれば担任の園田先生が入り
他の生徒も表情が一気に変わる 席替えが面倒な俺がいれば、それが楽しみな奴もいると言う事だ
物好きなやつも多いこった…。
ホームルームでは早速とその話題に変わり
教卓の上に箱が置かれ 一気に沸き立つ生徒を園田のおっさんは落ち着かせる
中には勿論 風太郎と四葉が書いた 席順がかかれている紙が入っている
後ろからは『ランダムだから知りようもないぞ』とダメ押しの一言
俺もいい加減諦めるか…。
深いため息に混ざり魂まで抜け出しそうだが、戻しておこう
くじは合計40枚あり 順番は名前順から引いて行く
俺から風太郎とその次の生徒と引いていき 全員が引き終わった所で一斉に席を移動する
40人の大移動だ その為か今日のホームルームは席替えのみだ
「上杉 先ずはお前からだ」
「へぇーーい えっと」
教卓まで歩き 迷いを捨て躊躇なく 中に手を入れる
ランダムなんだ どうとでもなれ最早投げやりなだった
突っ込んだ手は、一枚の紙を掴む 俺には分かる これが最高のキーカードだ
しゅっと手を引き
紙を確認した
(12番か…中心辺りか、今よりも教師の目は来ないしまぁまぁだな)
記載された番号は12番 個人的には5番か7番の窓際の一番後ろというまったり出来る所謂主人公席を狙ったが、そうそう上手くは当たらないな…。
ぱっと見た感じは、三玖が座ってる位置の隣だ
さぁーーーーて 後は全員が引き終わって新しい席につけば、今日の俺の学校はある意味終わりだ
「はえーよ」
鋭いツッコミを入れる風太郎さん
お前は一体どこになったんだ?
「13だ」
弟とはとことん縁があるな また俺の後ろだ
前と変わらず相談や話をするには十分過ぎる場所だった
勉強大好き風太郎くん的には俺の番号が羨ましいと口に漏らすが、恨みっこなしと言ったのはこいつだ
「では 全員引き終わったな… それぞれ指定された席に移動しろー」
「…………………………………………」
「えへへ~」
これは悪夢か……………………
いったい何が起きた 席替えだと後方から声が来る
勿論のこと以前と同じで風太郎がそこにいる
そして自分より右前の席は真弓ちゃんで近くなったのが嬉しいのか手を振ってくれている
まぁ…。これくらいなら不自然ではない
所詮は確率で見知った後輩なら俺も大歓迎
うん 問題は そこじゃないんだ……………。
俺の前 右横 左横 の席の人物だ…。
もしかしたらと可能性は考慮はしていた………。
「はぁ……………………」
「よろしくね コータローくん」
「隣だね コータローよろしく」
「幸太郎君! やっと隣ですね! よろしくお願いします。」
前方は一花 左は五月 右は三玖
なんでこうなるの? 色々と気まずいし それを差し引ても裏しか感じない布陣だ
五月なんてずっとニコだ あの時食堂で俺の隣になれず、ずっと落ち込んだ分の反動が出てきている
「てか 五月 お前なんで五番引いてんだ 俺が座りたかった席なのに」
「五番と言えばやはり私なんですよ 幸太郎君!」
「自信満々に語るな くっそー」
エッヘンと胸を張る五月に俺は文句の一言も出てくるよ
因みに風太郎の隣の席は五月の後ろだが、これまた偶然だろうか、四葉で三玖の後ろが二乃
余程嬉しいのか二乃はずっとニコニコだ
「誰だよ 仕組んだの!」
「幸太郎 諦めろ……だめだ これが俺たちの新たな席だ」
「くっそ おちおち昼寝もできねーよ」
「幸太郎君がちゃんと出来るよう 私は全力でサポートします」
「お前は自分の勉強を頑張ってくれ……………………まぁ 何だ 三玖もよろしくな」
「うん よろしく 近くだから話も出来るね」
「私には何もないのかな?」
「宜しくな 一花」
色々と不安もあり ドキドキだ
再び隣を陣取る末っ子に新たに前と右まで固められた 何とも怪しさぷんぷんだが
一度決まった席替えだ 心機一転 俺もいい加減腹をくくるか、
まぁ……退屈しないと思えば気楽だな
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ーー
「ねぇーコータロー?」
「なんだー」
「少し聞きたい事あるんだけど良いかな………?」
「…………」
「どうかした?」
「いや 別に…………」
「変なコータロー…何かあったなら言ってね?」
お昼休みの図書室だ…。
見慣れた光景 学食で五月が相席するなら。図書室では三玖が俺の前に座っている…。
別段予定はない ただ単に足が図書室へと向いただけ…。
まぁ…第六感が『食堂は危険!危険』とその場でくるっと方向転換だ…。やけにテンション高めな末っ子が、センサーに引っかかり危機回避能力で戦線開始前に離脱さ
とそんな俺は、図書室で適当な本を手に取って 羅列された言葉を視覚で捉え脳で理解する
読書タイムに勤しんでいたら…。 トントンと肩を叩かれた
ふと後ろを振り返れば、今日からお隣さんの三女さんが『お話しよう』とそのまま席に腰かけた
拒否する理由は、無いし 害もない 修学旅行の件を思えば、少々意識してしまうが
何と申しますか、彼女は何もなかったかのような態度……。
もしや 映画村の一件は俺の白昼夢だった? 記憶障害もいい加減にしろ
そう言ってやりたいが、今は三玖の用事を先に済ませてしまおうか…。持っていた本を閉じればいざ本題
「それで何が聞きたいんだ?」
メンタルリセット! 切り替えようか…。
話を切り出せば、『うーん』と考え込む三玖
その姿は何処か四葉と重なって見えた……。
もしや言いにくい事なのか? でも俺に聞きたい事だしな…。
「その…来月から体育祭があるよね」
「あぁー…あったねー てか聞きたい事ってそれ?」
あの日本史大好き三玖から予想出来ない言葉が出て来た
インドア派な彼女からアウトドア勢な単語…。でもスキーとかは普通に滑ってたし
なんだろ…。
「色々大変なのかなって」
「そりゃ全校生徒が、参加する学園行事だしな…………三玖は出た事ないのか?」
「えーっと」
「すまん…。前の学校の話はNGだな」
「ごめんね…。あまり良い思い出がないから……」
黒薔薇女子の話題は三玖や四葉の前ではNGだ
誰しも昔を詮索されるのは、気分が良い事ではない
デリカシーに欠けている…。
一瞬だが、塞ぎ込むように視線を下に向けた三玖は『そう言った行事は基本でない』
それだけ教えてくれた…。
「おう…。そんだけ聞ければ十分だ…それで何で体育祭の事聞いてきたんだ?」
「そ それは…………」
「良いよ無理に言わなくて…。まぁ今週には実行委員やらなんやら決めないといかんし あーやだやだ」
「コータローは体育祭が嫌いなの? 運動得意そうだけど」
「嫌いって言うか…。何だろうな…」
『学園行事』その単語は俺を鈍らせるだけで十分な効力を発揮する
俺も俺で思うところは、あるし…なんだかなーって気分だ
運動自体嫌いか好きか、その定義で決めるなら『普通』
体を全力で動かすのは好きだし 走れば気分も爽快で、…うーん 好きなのかな?…どっちだよ!
暫く考え込むと『聞きたい事は聞けた…ありがとうね』
余り重要な事を話したつもりはないけど、あれで満足してくれたなら下手に踏み込むのは控えよう
彼女も彼女で心境の変化でもあったに違いない…………。
「それとさ…………。 大丈夫だよ」
「何がだ?」
「忘れてないから 修学旅行の事…………。」
「おっ……おう そうか」
そのまんま本を読んで時間を潰すかと思ったらここで大きな爆弾一つ
机に体を伸ばしじーっとこっちを覗き込む彼女は『夢じゃないよ きっと』からかう様な仕草を入れつつあの日 あの場で起きた事は現実だと俺に教えてくれた………。
その時だ…。何処か安心したような安堵した気持ちがこみ上げ…。自然と彼女から視線を外していた…………。
(真弓の言ってた事って本当だったのかな?………もしそうなら嬉しいな)
(分からん…………。三玖が何を考えてるのか分からん…………。)
その後は二人静かに本を読み、談笑をし…。
今と言う時間を少しまた少しを噛みしめていった…………。
そして放課後まで時間は進む
帰り支度を進める俺は、一花の言葉を思い出し『また次の機会でも良いよな?』小さく呟く
確かに気になる事ではあるが、三玖と過ごす時間を変な空気にするのも気が引ける
チャンスなんて何時でもどこでもあるんだよ…。言い聞かせるように俺は荷物を纏めた…………。
「お守りかぁ…………。京都には事ごく縁があるな」
あの日にあいつが俺に贈った筒状のお守り…………。
普段なら『僕は別に大丈夫だよ』 せっかくの贈り物でも返してしまっていただろうが
何故かこのお守りに関して言えば、俺は素直に受け取った…………。
「ありがとう……大切にするね…………。似合わねー言い回し」
中学一年の時の俺は、特にいい子ちゃんだった
坂下とは幼馴染だったし……。その事もあったのか。はたまた返す事をかっこ悪いとでも考えていたのかどちらにせよ…………。あの日の事を俺は、余り覚えていない
元の予定から大幅にズレ…。急遽行先の変更が行われた修学旅行
その旅先で風太郎と四葉がそれぞれ行方不明になってしまう
大事になる前にあの人と俺は二人を見つけた…………。
ハッキリ覚えてるのは、ここだけだ…………。
でも何故だろうな。 このお守りを貰ったその日の記憶
坂下紡木の姿を思い出そうとすると、あいつの姿はノイズまみれであいつではない『誰か』が、俺に優しく手を差し伸べている姿が脳裏を走る…………。
(何だろうな…………。 確かに俺は坂下と同じ班だった それは確かだ。五つ子と直接顔を会わせることは無かった筈…………。風太郎じゃあるまいし)
まさかここに来て
「コータロー? 帰ろう」
「おう…あれ一花は?」
「今日はこのまま撮影だって先に帰ったよ…。二乃もバイトだって」
「了解………んじゃ帰るか」
「うん!」
「って 私もいまーす」
「やべ すっかり忘れてた 遅れるなよー 五月ー」
「五月 遅いよー」
「もー二人してー!」
「冗談だ…。ちゃんと一緒に帰ってやるよ」
先に教室から出て行って俺たちを追い
蚊帳の外にポツリと立たされた末っ子さんは、自己主張しながらこちらまでやって来る……。
少しからかい上手が過ぎたのか、そっぽを向いてご機嫌斜め
こうなるとどうにも厄介な末っ子さん へいへいと重い腰を上げるかのように俺は二人に話をする
「パフェでも奢ってやるよ だから機嫌直せ」
「た 食べ物で釣ろうとするんですか」
「五月……涎出てるよ……でもいいのコータロー?」
「大人数でもあるまいし 二人なら平気だ 人間には良心がある なぁー五月?」
「大丈夫です! そこまで大量に頼みませんから!」
「あぁー食べる事はするんだね………」
「毎日は難しいけどさ…たまに奢るくらいの甲斐性はあるさ」
これが青春とでも言うのだろうか?どうにも俺にはその判断がつきにくい
ただ今は、三人で肩を並べて帰る…。そんな今がとても愛おしく大切なものだと俺はそれを記憶に焼き付けた…………。