そんなこんなでオリジナル体育祭編始めます
5月28日 月曜日
「ではこれから 来月に行われる 体育祭の実行委員を決めたいと思います」
席替えから 約三日 休日明けとバイト明け 眠気が抜けないままに学校へ
うとうとしながら学級委員である 風太郎の声を聞き流し
夢の世界へと旅立とうすれば、お隣の末っ子さんが、俺の眠りを妨害するのか
何度も声をかけてくる………。
「ふぁー なんだ」
「幸太郎君 寝てないんですか?」
「2時間は寝た」
「それは寝たとは言いません 以前も言いましたが8時間以上の睡眠と」
「へいへい 適度な食事ですよねー」
わーわー追い打ちはしてこないが、俺に向ける言葉は絶えない
これは心配から来るものだといい加減理解しているし なにも彼女の発言を俺は否定はしない
ただまぁ…、こっちにも事情と言う物があり バイトとなれば俺は融通が利かない部類だ
自覚している 自分の限界まで働いてしまう
これに関してはどうにか改善しないとは俺だって考えているんだけどな 長年染みついたもんは簡単には治らない
それでも俺には、「俺たち家族」にはお金が必要なんだ……。
「えぇ諸事情がありここ二年間は、体育祭は行えませんでしたが、
今年度から再開されます。それに伴い体育祭の実行委員も決めようと思います。
それぞれの役員にかかる負担の軽減も兼ねているので、体育委員のお二方もご理解のほど宜しくお願いします」
(まぁ、そうしないと風太郎がぶっ倒れるしな)
経験者から語らせてもらえば、平行して行うものではない
生活の規律やクラスをいい方向へと導く学級委員とたった一度とは言え
その一度の為に全てを注ぐ体育祭実行委員は同時並行するには体力がいりようだ…………。
加えバイトまで合わされば、かかる負担も二重三重で、いつ休めば良いのかもわからない。
「そんな面倒なこと 誰が好き好んでやるんだか」
「コータローはやってたんだよね?」
「すげー面倒だった。二度度やるかよ」
右隣の三女は先週の俺達の会話を聞いてたらしい
どんなことをする必要があるのか、何故だか異様な食いつきを見せ俺に何度も聞いてきていた
「まぁ…。誰かもの好きが勝手に立候補するだろ 終わったら起こしてくれ」
「あっはは 寝ちゃったね」
俺は二度とやらないと心に決めている
と言うより 俺を推薦するような輩はまずいない
学級委員はダメだったが、人を導く事にかんして言えば武田が適任だ
いやーこの時に武田を推薦しておけば本当に良かった
何故行動に出さなかったのだろうと 俺は数分前の自分に呆れちまうよ
彼女たちに終われば起こせ そう伝え机に突っ伏し 小さな寝息をたてて夢の世界へ
あれだ寝ないよう言って来た五月だが、意識を夢に投げだす前に『良い夢を』と何ともいい子だよ
俺へのお世話がなければな……………………。
「かぁー………………」
ーーーーーー
ーーーー
ーー
「ー…くん…こ…た…くん」
「うぅん……………………。」
何故だか聞きなれた声が、ノイズ混じりに聞こえだす
夢の世界へと旅立った筈の俺の意識はその声に導かれいとも簡単に現実へと引き戻された
「あぁー………………なんだ?」
引き戻されたと言ってもいまだ夢現
ぼやける視界で辺りを見れば視線は俺に集中し 俺の名前を呼んでいたであろう五月も何処か安心した表情で俺に前方を向くよう促す
いったい何が起こったのか…。眼鏡を付けなおし 黒板の方まで視線も向けると
俺は自分の目を疑った……。
いたずらにしても度が過ぎるし 嫌がらせと言ってもいい
俺がどれだけ嫌っているか、それは友人たちには周知の事実だ
得意げにニヤリとしている学級委員(風太郎)はこれ以上推薦がなければ
体育祭実行委員は『上杉 幸太郎』を任命すると堂々と言っている
「おい、まて!俺はやるとは言ってねーぞ!」
「諦めろ、幸太郎。既に数票入ってる」
何たるデジャヴだ
風太郎を学級委員にした時と全く同じ状況で、黒板に書かれた俺の名前の横には9票入っており
それ以前に武田の名前すら出ていない
本人の方を向けば、あの武田スマイルだ こいつも俺に表を入れやがったな………………。
(誰だよ この九人!)
勿論のこと 武田を推薦する声はなく それ以前に武田が俺に票を入れた以上は、これにて閉廷
何ともやる気のないクラスだ もう少し自分の意見と言う物を持った方がいいぞ
超弩級のため息で、男子の実行委員として決まってしまった俺
ただ 俺一人が、やらされる そんな鬼見たいな展開はなく
女子の実行委員の名前も下に記載されている 再び自分の目を疑い
同時に先週の答え合わせになっていた
体育祭女子実行委員 中野三玖
あの三玖が、自ら体育祭実行委員に立候補
「まじかぁ……………………。」
予想以外だった
自分が推薦されていたことすら予想してもいないが、あの運動が苦手な三玖が自分の意思で
全クラスで競う 運動大会の雑用に名乗りを上げていたとは…………。
間の抜けた顔で名前を眺め ぼーっとしていれば、
『我クラスの体育祭実行委員は上杉幸太郎と中野三玖の二人で決定いたします』
満足げな表情の四葉の声で占められた
余談だが、某末っ子も立候補を考えていたとか お前もぶれねぇーな…………。
そして時間は進みお昼休み
あれから風太郎や四葉とも連携し 来月へと意識を向け 実行委員として何を行うべきかの簡単な話し合いが行われた
因みにだが、俺の名前を推薦したのは何を隠そう 上杉風太郎だ
こいつ根に持ってやがった 曰く『経験者の方が俺達も安心出来る』 それらしい言い訳だぜ
「はぁああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
「幸太郎君 すごいため息ですね………。大丈夫ですか」
「あいつ俺への当てつけか、ったく」
「でも 幸太郎君は、以前の実績もありますから上杉君の言い分は正しいかと思います」
「いやまぁ そうだけどさ 俺はこう言ったことは二度とやるつもりはなかったんだよ」
食堂での会話
さも当然かと言うかのように俺の前に座る五月さんはホームルームからずっと不機嫌オーラを漂わせる俺に労いや心配にも似た声をかけ何とか俺を宥めようと試みる…。
先ほどまで三玖はいたが、一旦席を外している…
「はぁ…。まじで辞退したいなぁ」
「やはり あの事が原因ですよね…。」
「おいおい お前は何も悪くねぇんだよ 落ち込むな 何でもかんでもやろうとした…あの頃の俺が悪いんだ」
ここまで学級委員を毛嫌いする理由は簡潔に言えば、前回のクラスでの出来事
人に散々持て囃され その結果裏切られた俺にとって役員や実行委員とは簡単にうなずけるものではない
口に出した辞退と言うそれは本音8割だ 当時の事故を未だに気に病む五月さんはテンションが駄々下がり こいつが気に病む要素は一切ない あの事件にこいつは関わっていないんだしよ…。
和ませようとするが、逆効果なのか『私がきっちりしていれば』と本当に責任感が強い奴だ
暫くは落ち込む末っ子と共にテーブルを囲んでいたが、用事を終えたのか、三玖も戻ってくる
「五月 どうしたの?」
「そっとしてといてやって欲しい」
「そ、そうだね…。それでコータロー ごめんね何の相談もなく推薦して」
「お前が、俺に体育祭実行委員の話を聞いてきた理由がやっとわかったよ はぁ」
「うん 少しだけ興味が出てきて」
「大変だぞ…準備物や当日でのクラスの先導 それに選ばれた俺たちもそれなりの競技に出ないといけない……実行委員は肩書だけじゃないんだ」
「うっ…」
クラスの連中との連携も大事だが雑務雑務!そのまた雑務だ
まぁ…体育祭自体の内容はシンプルではあり他校とは、さほど代わり映えはしないと言える
ただ事実を1つ述べるのならば、運動部が多いクラス程有利と言うのは、言わずもがなだ。
「確か、須藤さんのお兄さんも同じクラスでしたし、幸太郎君の世代は何かと有利だったのですか?」
「まぁ、だいたいの事は、俺や須藤と……で何とかなってた印象だな」
スポーツだ いわゆる競い合うものであり、クラスそうでとなれば指揮もあがり、まさにお祭り騒ぎと言った方が、宜しいか、当時は余計に坂下もいたし、無駄に戦力が固まっていた。
「詳しい話は、風太郎や四葉との会議ですればいいさ はぁ まじか 何でまた俺が選ばれるんだよ?」
嫌嫌と言いつつもだ、何時まで駄々こねるのは如何なものかと、半ば強引に役員となってはしまったが、半端な気持ちでは入れないしな…。
それでもだ、どうにも俺は気が乗らんと言うのが本音であり、運動事態はどうでも良い人前で動くのは構わないが…問題はそれ以外にある。ようは心の持ちようだ
クラスの為となると。どうにも体には不可視の重りが圧し掛かってくる…。
「やっぱり コータローはあの事が気になってるんだね」
「お前らのお陰で幾分かはましになったさ でもよ クラスのためにもう一度何かをやりますか?って問われれば、俺は何もしないって言うぜ でもまぁ 今回は以前と違う」
「何が違うのですか?」
「そりゃ勿論 今のクラスで俺を信頼してる人間はいねーってこと あの頃よりひどくはならねーだろ」
「コータロー…。私たちや真弓だけじゃない フータローだって失敗しても見捨てないよ」
「分かってるよ でももし失敗したらって思うとどうにも身動きが取れなくなりそうでな
経験があるって言うのはわかるけど なんでまた俺なんて選ぶのか風太郎の考えが分からん」
なんて なんか そう言った例えはやめたつもりだが、どうにも自然と口から出てしまう
人に頼られ それに応えることは苦手ではない
俺が何より嫌なのは、誰の期待にも応えられず、周りからの信用を無くす事だ
踏ん切りはついた、と俺の勝手な思い込んでいただけかもな…。
少しばかり自分の心境や思いを語り 水の入ったコップに口をつける
ぐびぐびと飲む中で視線を感じ彼女らの方へと目を向けた
何故だろうか、五月と三玖は何処か驚いた表情で俺を見ている…。
「幸太郎君が自分の気持ちを語るのはとても珍しくて」
「何時もは、誰かって例えで話すから 自分の考えを言ってくれるのが嬉しいな」
「お前らは…信用してるからな それに」
「信用! 幸太郎君がついに私を信頼してくれました」
「前から信頼はしてるさ ただ 俺も不思議だ 何故だかお前ら二人の前だと自然と気持ちが言えるんだ 」
「コータローに信頼されて信用される 何か温かいね」
「あまり言うな 恥ずかしくなってくる」
「顔が赤いよ コータロー?」
藪蛇だったな…下手に言葉を並べればこうやって不意打ちまがいな笑顔をくらっちまう
五月とは、何だかんだと良くつるんでいるし こいつを心から嫌いにはなれない
三玖とは修学旅行の一件もある ある意味では本当に打ち解けたと言えるだろう
それに あれを考え過ぎとは思わない 三玖のあの言葉はれっきとした告白だ
本人はあれ以降何も言おうとはしないけど、答えを出すべき時は訪れる
「とにかくだ 俺はあまーーり 乗り気ではないが せっかくの推薦だ
それに三玖がバイトと掛け持ちやるって言うんだ うだうだ言ってる暇はねーよ」
「私も出来る限り 二人のお手だいをさせていただきます!」
「私が言えることじゃないけど 五月も無理はしないでね 重労働 重労働か」
「三玖さーん 今更ですよー 二人でやるんだ気負うな」
「わかった 頑張って最高の体育祭にしようね」
「そうだな 最高の体育祭にしてやろうな 今年こそは……………………」
去年何故 体育祭が行われなかったのか、理由を知っている二人はあえて聞こうとはしなかった
噂だけとは言うが、上杉幸太郎が運動部に何をやらかしたのか、学校でも問題視され
そのせいだろうな 俺が入院した年と去年は行われなかった 呆れるよ
ただの噂とでっち上げの動画に踊らされて、それをまんんまと信用しちまうとは
大人ってのはどうにも子どもよりも単純で難解に出来ている
今年から再開されるのは、俺が学力模試で一位の成績を収め
不良少年で素行が最悪と言った印象もある程度は薄まり始めているからだ
三度目の正直 ここで連続未開催と言った悪い空気を一旦リセットしたいそんなとこだろう
何故そんなことを知っているのか、武田がボロっと内情を割り 園田のおっさんが知らせてくれた
全くお節介な奴が増えていきやがるぜ……………………。
「まぁ…。悪く無いな」
「どうかした?」
「なんでもねーよ」
「幸太郎君 これ食べますか美味しいですよ」
「俺はお前が食ってる姿を見てるだけでお腹いっぱいだよ」
「コータローなら これどうぞ 今日も作ってきた」
「おぉ 三玖のお手製パンか サンキュー」
今はお昼時 五月は何時ものように定価1200円少しの丼を満足そうに食べている
小食の俺は彼女が美味しそうに食べている姿を見れれば自然とお腹も膨れ
丁寧にお断り申し上げる…………。
ちびちび水を飲みだせば、三玖が何処かで見た紙袋を手渡してくる中身は彼女が作ったパンだった
好物と知ってからか 以前よりも力の入りようを感じている
手渡されればぱくりと口を開け それを口に含もうとするが、五月が物凄く納得が行かない様子で頬を膨らませる お前は、ハムスターかよ……………………。
「なっ 何故三玖のは受け取って私のは拒むのですか!?」
「別に拒んでるつもりはない 受け取る皿もないのにどう食べろと? 俺は手ぶらだ」
「私の使ってください お構いなく」
「俺が構うわ! あのなぁ 前も言ったけど そんなぽんぽん男子に貸そうとか考えるな」
「えっ?私は幸太郎君だから言うのであって他の方にはしませんよ」
「そういう所が余計にダメだろ……………………。」
五月が俺をどう見ているのか、正直分からんが、俺だって女性徒が使った箸を素直に受け取るほど
鈍感ではない 俺の知る限り五月は男子生徒とはしかるべき態度で接している
何故俺には、甘いのか その理由を話そうとはしないけど、そのヒントに近い物を一花がくれた
『あの日 家には私しかいなかった』
その言葉だけで 彼女が俺に何を伝えようとしたのかも凡その把握は出来る………。
もぐもぐと箸を進める 五月
抹茶ソーダを飲んでいる 三玖
この二人は俺にまだ隠し事をしている……………………。
直感にも似た何かを俺はひしひしと感じていた。
(まぁ…。 体育祭が終われば聞くタイミングもあるさ)
「あむ うまいな」
口に入れたそれは、あの日と変わらず俺に感じられない味を再び教えてくれた…
その他概要
一花の話す、あの日とは、姉妹のうち二人が家出をし幸太郎が中野六花と名乗る女性と再会した日を示す