ポケットモンスター Re:Union   作:可惜夜ヒビキ

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前回の後書きを見てくれた方は分かったかと思いますが、タイトルを変更しました(一気に話を進めると一話分の量が多くなるから…)。
という訳で予定変更して2話分に分けます!前編と後編に分かれているようなイメージでお楽しみいただければ嬉しいです。

それでは本編どうぞ!


第九話 氷獄

俺達の目の前で、アーカラ島キャプテン――スイレンは微笑を浮かべた。

 

「君たち、見ない顔だね。もしかして先月ここに配属された新人さんかな?」

 

どうやら俺達の正体に、彼女は気づいていないようだ。俺はすかさず口を開いた。

 

「あぁ、そうだ。まだここでの仕事が分からないから、俺達の上司であるあんたを探してたところだよ、スイレンさん」

 

すると、彼女は一層笑みを強めた。

 

「分かった、じゃあ教える。こっち来て」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――ここ」

 

数分後、今まで黙って歩いていたスイレンが突然指をさした先は、通路の一番奥にある、小さな部屋だった。中から漂ってくる冷気のせいだろう、俺もトレニアも、そしていつもキュウコンと一緒にいるであろうリーリエでさえも震えている。

 

「君たちの仕事は、この中に入って掃除すること。先代の人がだいぶ前にいなくなっちゃったから、埃とか余分な氷とかいっぱい溜まってて――だから、お願い」

「分かった、やっておくよ」

 

部屋の中に入ろうとした俺に、スイレンがもう一言付け加えた。

 

「あーあと、部屋に入った後は必ずドアを閉めてね。ずっと開けてると、この階の植物たちに影響が出ちゃうから。扉はいつ開けてもいいけど、あんまり長く開けないようにね。それじゃあ、頼んだよ」

 

そう言うと、スイレンは廊下の角を曲がって行ってしまった。そのタイミングを見計らい。俺は二人に合図する。

 

「トレニア、リーリエさん――気づいてるよな?」

 

俺の願い通り、二人は頷いた。

 

「えぇ、もちろん」

「とっくに気づいてますよ――これが明らかなワナだってことぐらい」

 

2人に頷き返し、俺は反対側――スイレンが去っていった方向に向かって歩き出した。

 

「それじゃあ行こう、二人とも。一刻も早く、ザオボーのもとに向かうんだ」

 

2人は頷いて、俺の後ろをついてきてくれた。俺は再び歩き出す。一歩、二歩、三歩――そして四歩目を歩きかけたところで、俺は足元から嫌な予感を感じた。

 

(――!?まずい、罠か!!)

 

そう思い、慌てて足を引こうとしたものの、下がり始めた足は、まるで地面に吸い寄せられるがごとく俺の言うことを聞かず、地面をしっかりと踏んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

直後、俺の足元から鉄格子が飛び出し、俺をぐるりと囲んだ。

 

「カイ!?」

 

慌てて駆け寄ってくるトレニアに、近寄るな、と口を開こうとしたが、

 

 

 

 

 

ガゴン!!

 

 

 

 

 

直後、トレニアも俺と同じように鉄格子の中に閉じ込められていた。

 

「そん…な………」

 

冷え切った顔でトレニアがこちらを見つめる、返す言葉の見つからぬまま口をぱくぱくさせていると、不意に後ろから声がした。

 

「あーあ、捕まっちゃった」

 

驚いて振り返ると、そこにはさっきどこかへ行ったはずのスイレンが、今度は怪しげな笑みを浮かべて立っていた。

 

「どういうことだ…最初からこうするつもりだったのか?」

「えへへー、それはどうだろうねー。でも、一つだけ言えるのは――」

 

途端、彼女の顔が歪んだ。そこから放たれる殺気によって、俺は危うく尻もちをつくところだった。

 

「君たちの目論見は、ここで潰えるということだよッ!!」

 

突然口調の激しくなった彼女が、一つのモンスターボールを投げた。そこから出てきたのは――

 

「――フリージオ…?」

 

水タイプ使いであるはずの彼女が、氷タイプのフリージオを操っている。これは一体どういうことなのか、と俺が首をかしげる間もなく、

 

「フリージオ、《こごえるかぜ》!」

 

トレーナーからの命令に無言で答えたフリージオの冷気が、俺達の動きを瞬時に止めた。

 

(くっ…これは――!?)

「さぁ、君たちの仕事場に――私のコレクションルームに戻ろうか?」

 

抵抗するすべもなく、俺達はスイレンと彼女のフリージオに連れていかれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うっ!!」

 

乱暴に部屋の中へと放り出された俺達の後ろで、スイレンの声が聞こえた。

 

「鍵は私が持ってる。まぁ手に入れられたとしても、凍って動かないドアを必死に握りながら凍え死ぬ未来がありありと見えるけどね、ふふっ」

 

可愛げな声とは裏腹に恐ろしいことを言っているスイレンに、トレニアが質問した。

 

「さっき、ここが『私のコレクションルームって言ってたけど、どういうこと?』」

 

スイレンはなおも口元の笑みを崩さず答えた。

 

「いいよ、君たち面白いから教えてあげる。――周りを見てごらん」

 

直後、部屋の中に小さな明かりが灯り、部屋の奥までぎりぎり見渡せる状態になった。俺達はすぐさま辺りを見渡し――絶句した。俺達の周りには、氷漬けになった人ばかりがいたのだ。

 

「これは、一体…」

「すごいでしょ?私のコレクション。集めるのに結構時間がかかったんだから。特にとっておきは――あれだよ」

 

スイレンが指差す方角に目を向けた刹那、リーリエが小さく悲鳴を漏らした。

 

「なんで――なんで、ここにいるのよ――

 

 

 

 

 

 

 

マオッ!?」

 

その名を聞いて、俺は全身が粟立つのを感じた。マオと言えばスイレンと並べて語られるアーカラ島のキャプテンであり、彼女とはとても仲がいいはずだ――それなのに、なぜ彼女はスイレンに囚われ、氷漬けにされている?

 

「何で彼女がここにいるか、知りたい?」

 

不意にスイレンが話しかけ、俺はその場でスイレンの方を向いた。全身をめぐる恐怖のせいか足が冷たくなっているように感じて動けず、やむなく首だけを回すしかなかったのだ。

 

「私はね、美しいものが好きなんだよ。だから、こうしてとっといてあるんだ。私は、彼女のその表情が――希望で輝きかけた目が、絶望に打ちひしがれて再び翳る瞬間がたまらなく好きなんだよ…」

 

頬にうっすら赤みをともして、スイレンは恍惚した表情を作りながら語った。

 

「待って、スイレン!」

 

声を上げたのはリーリエだった。

 

「あなたは彼女のことが好きだったんじゃないの!?だったらどうして、こんなことを――」

「いつから人の話を聞かなくなったの、リーリエ?私はさっき言ったよ、彼女のことが好きだって。今まで曇ることを知らなかった彼女の目が初めて輝きを失った時、私は計り知れない好感を抱いたんだよ――"濡れる"ほどにね」

 

彼女の話を聞いていた俺の目が違和感を覚えたのは、その時だった。スイレンの首元に、妖しく光る紫色の物体がついていた。あれはペンダントだろうか?だが彼女があんなものをしている姿は、俺の記憶では一度もない。とすれば、なぜペンダントをしているのか?ファッションをしたくなるお年頃なのか、それとも洗脳されたことで眠っていた厨二病の人格が現れたのかなどと俺の思考が今の状況から外れかけたその時、

 

「――狂ってる」

 

小さく、しかしこの場にいる全員に聞こえるほどはっきりとした声でリーリエが呟いた。それを聞いたスイレンが、不思議そうに首をかしげる。

 

「うーん、そうかな?私からすれば、私の趣味を理解し、尊重してくれないあなた達の方が狂ってると思うけど」

「違う!私の知ってるスイレンなら、こんなことはしないッ!お願い、目を覚まして――」

 

半ば泣き叫ぶように言い放ちながら、リーリエは彼女に駆け寄ろうと足を動かそうとした。しかし――

 

ぎしっ、と音を立てただけで、リーリエの足は動かなかった。二度、三度と足を上げようとするが、まるで地面に貼りついてしまったかの如く動けない。いや、本当に地面に貼りついてしまったのでは――

そこまで考えて、俺はようやく気付いた。俺の足元から膝の少し下まで、青白い氷が一部の隙間もなく包んでいることを。先程感じた冷たさは恐怖心からではなく、物理的なものだったのだ。足が動かなかったのも、その時すでに床に貼りついてしまったためだと思われる。

 

「クソッ…ゼラオラ!!」

 

慌ててゼラオラに氷を壊してもらおうと声をかけたが、ゼラオラも足を氷に取られて動けないようだ、何度も拳を打ち付けているようだが、薄く広がっているはずの氷にはひび一つ入らない。

その様子に気づいたスイレンが、先程とは違い残忍な笑いを浮かべながら、俺達の目の前にやってきた。

 

「フフ、私の氷は、そんなものでは砕けないよ。この氷はイッシュ地方に住む伝説のポケモン、キュレムの生み出した氷から作り出したものだから――今のあなた達には砕くことも、溶かすこともできない」

 

それを聞いて、俺は全身の力が抜けていくのを感じた。それが相手の思うつぼだと分かっていても、俺は尻もちをつくことを止められなかった。

口を少し開いたまま震えが止まらなくなった俺の隣で、スイレンが囁いた。

 

「君は分かりやすいね。それに流されやすい――君は絶望に打ちひしがれながら、ここでゆっくりと凍っていくことになるよ。体も、心も――そして最後は三人仲良く私のコレクション入りだ。フフッ、君たちのその表情を明日から思う存分眺められると思うと、体の震えが止まらなくなってくるよ――ッ!!」

 

荒い吐息を繰り返すスイレンの隣で、俺は動こうとしない頭を、必死に鞭をうって回転させていた。

 

――リーリエが先ほど言っていた通り、彼女はもともとこれほど非人道的な横行はしないはずだ。やはり洗脳された際、"別の人格"を強制的に宿された、と考えていいだろう。が、問題はその洗脳を解く方法だった。思えばアセロラの時も、よく分からないまま洗脳が解け、もとの彼女に戻った。あの時、俺達は何かをした覚えもないし、彼女に何が起こったかもはっきり分からない。そして今、スイレンは新たな人格を宿されて普段とは違う言動を繰り返しているが、彼女の容姿には何ら違和感など…

 

「……ん?」

 

いや、ちょっと待て。俺は何か、大事なものを忘れている気が――だが、俺の思考はそこで、厨二スイレンの声にさえぎられた。

 

「それじゃあ、鍵はここに置いておくよ。出たくなったらいつでも出ていいから――もっとも、君たちがこの氷の牢獄の中から出られるとは思わないけどね――アッハハハハハ!」

 

 

 

 

 

 

彼女の容姿には全く似合わぬ高笑いが尾を引き、俺の耳にいつまでも響いた。気が付くと部屋のドアは既に閉じられ、部屋の中にいるのは俺達3人になっていた。




今回も読んでいただきありがとうございます!
前書きでも言いましたが急な路線変更すみません…だから小説を見切り発車で書き始めるのは良くないとあれほど((

さて、今回のキャラクター紹介は、今までと変わって(まだ2つしかやってないけど)人物紹介となります!今回は主人公であるカイ君!

<カイ>
・手持ち:ゼラオラ
・性格:一度決めたことは曲げない。すぐに一人で突っ走る。
・今作の主人公。もともとは斉藤圭という名のただの高校生だったが、不慮の事故によりポケモン世界にカイとして転生する。レインボーロケット団(以下、RR団)にさらわれた幼馴染(ポケモン世界での)であるガーベラを助け出すため、RR団との戦いに身を投じる。初めての戦いの中で、ゼラオラとの"Re:Union"の力に覚醒する。

次回は影の薄い女神サマのマリアです!お楽しみに!



それでは次回予告!

「ごめん、トレニア――せめて君だけは、ここから脱出して…くれ……」

スイレンの策略により閉じ込められてしまった3人。脱出は難航し、不穏な空気が漂う中、3人の体に異変が起こる。

次回[心のトモシビ]

急にタイトル変更してすみません!こんなグダグダな作者ですが次回も読んで下さいね!
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