それでは本編どうぞ!
「うぅ、いてて…」
背中をさすりながら、よろよろと立ち上がる。隣で倒れているトレニアは、着地、もとい落下の衝撃からまだ復帰できていないようだ。
俺達とリーリエがビッケの策略によりバラバラにされ、俺達が床に空いた穴に落とされてから、早くも十分が経とうとしていた。そろそろ行動を起こさないと、リーリエがどんな目に遭うか想像もつかない。
「トレニア、立てるか?」
俺は足元で倒れているトレニアに声をかけた。が、「うぅ~ん…」という返事が返ってきただけで、彼女は全く動かなかった。
「しょうがない――トレニア、ちょっと失礼するぞ」
俺は彼女の華奢な両腕を掴んで立ち上がらせると、そのまま自分の背中へともたれかけさせ、彼女をおんぶして歩くことにした。背中に乗せる時「あ゛ぅっ」と声がしたのは気のせいだろう。彼女の体はお世辞でなく軽かった。
そのまま俺はトレニアを背中におぶったまま無言で歩いた。どうやら俺達は地下牢の一つ上のフロア――研究フロアに着いたようだ。
「エレベーターはどこだ…?」
が、歩けど歩けど現れるのは無機質なデザインの部屋ばかりで、エレベーターらしきものは見当たらない。各フロアに設置されているエレベーターは、フロア中央にある巨大な正三角形のもの一つのみだから、フロアの中心部まで行かないとエレベーターに乗ることはできない。だが、俺は今、フロアの中心部へと向かっているのか、それとも端へ向かっているのか分からなった。ただ今は、自分の勘を信じるのみ。
そうしてしばらく歩いたころ、トレニアが「んぇぁ…」と変な声を出しながら伸びをした。背中から降ろしてやると、彼女は目をこすりながら立ち上がって辺りを見回し、まだ眠気の残る目で俺と目が合い――顔が瞬時に耳の先まで赤くなり、目がかっと見開かれた。
「なっ…私…カイ…おんぶ…」
ふらふらと再び倒れそうになるトレニアを何とか立ち上がらせると、俺達は再び歩き出した。そうしてさらに三十分は迷っただろうか、俺達は遂に、他とは明らかに違うものを見つけた――エレベーターではないが。
「カイ、これ…」
不意にトレニアが指差した先には、まるでこの空間だけ別世界から引っ張り出してきたかのような違和感があった。
制服のようなものを着た男女が多数、何やら筋トレや走り込みなどをしている。その周囲では、恐らく彼らの手持ちだろう、ポケモン達が同じようにトレーニングに励んでいた。
そして彼らの中央には、朝礼台のようなものが設置されており、その上には女性が立っていた――特徴的な、ピンクと黄色の鮮やかな髪。
「プルメリ――!?」
驚きのあまり思わず発した声は、どうやら彼女の耳にも入ってしまったようだ。彼女の体がピクリと震え、次いで俺達を、猫のように鋭い目が睨みつけてきた。
「まったく、あんた達かい。ザオボー様の鼻先を飛び続けてる害虫ってのは」
「害虫、だと?」
俺の返答に、プルメリはフンと鼻を鳴らした。
「そうさ、あんた達は害虫だ。鼻先を飛び続けるくせに力もない――ザオボー様の、そしてあたしの手下になるとここで誓えば、ここで面倒を見てあげるけど」
「ザオボー様、だと――お前には、あんな外道より大事な人がいるんじゃないのか!?」
俺の叫びに、またしてもプルメリはフンと鼻を鳴らすだけだった。
「知らないね。あたしに家族なんて、誰もいないさ――お前たち、やっちまいな」
彼女の一声と共に、周りの男女とそのポケモンが、声を荒げながら一斉に襲い掛かってきた。同時に、背後の扉が音を立てて閉まった。どうやら、俺達はこの場で始末するらしい。
「くっ――ゼラオラ!!」
「お願い、テールナー!」
俺とトレニアはすぐさまゼラオラとテールナーを繰り出し応戦した。ここの力で見ればこちらが有利だが、それでも相手は数の多さで仕掛けてくる。先頭が終わった時には、俺達は疲弊しきっていた。
「へぇ、意外と骨があるじゃないか。あんた達は害虫ではなかったようだね」
「そうかい、それじゃあ訂正してくれよ、さっきの言葉」
「あぁ、訂正するとも。あんた達は害虫じゃない――」
そしてプルメリは、一つのモンスターボールを投げた。そこから出てきたのは――エンニュートだった。それも、かなり大きい。きっと"ヌシ"に匹敵するほどの大きさだ。
「――あんた達は、私たちの計画を邪魔する"叛逆者"だ。ここで始末させてもらうよ」
同時に、凄まじい圧が俺達を襲った。テールナーはこれに耐えきれず、その場にがくりと膝をついてしまった。
「テールナー!?」
「トレニア、テールナーはモンスターボールの中に戻しておいてくれ。万が一何かあったら危険だ」
俺の言葉に、トレニアは首を縦に振った。
「…分かった。カイ、負けないで」
そうしてトレニアはテールナーをモンスターボールへと戻すと、少し下がって入り口辺りまで来た。当然扉は閉まったままなので、脱出することは叶わないが。
「こいつを倒したら、あんたとも相手してやるよ。それまでせいぜい、自分の仲間の灯が消えていくのをそこで見ているんだね――スモッグ!!」
突然、エンニュートが仕掛けてきた。技は《スモッグ》――広範囲に毒を混じらせたガスを放出し、相手を毒状態にする特殊技だ。
「ゼラオラ、プラズマフィストだ!!」
対して、俺は《プラズマフィスト》でスモッグをかき消し、カウンターの攻撃を狙った。見事に俺の狙いは的中し、紫の煙は爆散した。そして視界が晴れた時、エンニュートには確実にダメージが入っていた。
「よし、いいぞ!!そのまま続けて――」
言いかけた時、俺の視界が歪んだ。軽く頭を振って試合を続行しようとするが、
「なっ…何が起こって――」
そのまま何もできず、俺は膝をついて倒れた、意識が遠のく直前に俺が見たのは、勝ち誇ったかのようなプルメリの笑顔だった。
今回も読んでいただきありがとうございます!
今回はかなり短めとなってしまいましたがストーリーの進行上ここで区切らないと話が面白くならないのでごめんなさい許してください。代わりに次のお話は少しボリュームを並盛りからちょい大盛り程度に増量しますから…
それでは次回予告!
「いい加減、あなたにはお仕置きが必要のようですねぇ…」
カイ達とはぐれてしまったリーリエ。ポケモンも奪われた彼女は成す術もなく、ビッケに連れて行かれた先は――
次回[RE:EDUCATION]
お楽しみに!