ポケットモンスター Re:Union   作:可惜夜ヒビキ

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こっから2人と1匹の大冒険が始まる…はず。わからん、まだカントーにいるかも


第四話 全て捨てて、2人で

〈side カイ〉

 

「我々の大切な──労働力だからな!ハッハッハ!」

 

瞬間、俺は奴らの裏の顔がどんなものかを確信した。トレニアの方を見ると、彼女も同じらしく、いつになく真剣な目付きをしている。

 

「オラッ」

 

ゼラオラが静かに、俺達を建物の二階の最奥の部屋へと手招きした。恐らく先の火事の影響だろう、その部屋の中央には外へと通じる大きな穴が空いていた。

 

「なるほど、ここから脱出すれば、奴らに見つからずに済むって訳か!」

「じゃあ、急いで──」

 

 

 

 

 

「――ここから逃げられる、とでも思ったか?」

 

トレニアが言い終わる前に、聞きなれない男の声がした。

見下ろすと、その大穴の先で黒服に身を包んだ男がこちらを見ている。あの火事の日に見た黒服のやつらと同じ格好だ、とすぐにわかった。

 

「そのポケモン、脱走個体だよな。何でお前達と一緒に行動してるんだ?」

「俺たちを助けてくれた。それ以上でもそれ以下でもない」

「そうかい、ところで俺たちは今、ちーっとばかし人員が足りてないんだよな」

「――何が言いたい?」

 

 

「言わなくても分かるだろう!お前達は俺と一緒に来てもらう!!」

 

 

その言葉と同時に、その男――レインボーロケット団の団員――は、俺たちに向かってモンスターボールを投げた。中から現れたのは――。

 

 

「やれい、アリアドス!そいつらの動きを止めるんだ!」

 

 

アリアドス――もちろん知っている。その体から放たれる糸と毒針で獲物を捕まえ、動けなくなったところをゆっくり頂く虫ポケモンだ。

 

 

「捕まえろ!」

 

男の大声とともに、アリアドスはその口からトレニアに向かって糸を吐き出した。

 

「トレニア、避けろッ!!」

 

だが目の前の状況にまだ困惑していたらしく、トレニアはその場から1歩も動かずに、アリアドスの糸にがんじがらめにされてしまった。

 

「次はお前だ、小僧ッ!!」

 

もう一度、アリアドスが身構えた。

 

(来るッ!)

 

奴の動きに合わせ、俺は横へ飛んでアリアドスの放つ糸を避けようとした──が、やつが放ったのは糸ではなかった。

 

 

 

 

 

俺が横に飛んだ直後、やつの放った糸は四方に広がり、俺の動きをガッチリ止めた。

 

「これは──ネバネバネットか!?」

 

身動きの取れない俺たちに向かって、その男はこう言った。

 

「今から、お前たちの上司となる人を連れてこよう。決して逃げることなんてしないようにな。まぁ──その状態で逃げられると言うなら別だが」

 

男はニヤリと笑うと、どこかへ去っていった。アリアドスは、未だ警戒をとかずに、口から糸を出しながら俺たちを見張っている。

 

「くそっ、何だこれは!?トレニア待ってろ、すぐ助けに行くからな!!」

 

俺は体に絡まった糸をほどこうともがいた。が、そう簡単に抜け出せるはずもなく、俺は悪戦苦闘していた。その横でトレニアは心配と恐怖が入り交じった顔でこちらを見ている。焦る俺を、アリアドスが嘲笑うかのように──

 

「オラァァーッ!!」

 

突然、アリアドスの体が吹き飛ばされた。そのお陰でアリアドスが出していた糸が切れ、俺たちがこれ以上糸に襲われることはなくなった。俺は何故アリアドスが吹き飛んだのかと辺りを見渡し──

 

「ゼラ──オラ?」

「オラッ!!」

 

そうだ、とでも言うように、ゼラオラの爪が俺の体に絡まっていた糸を断ち切った。自由の身になった俺は、すぐにゼラオラとトレニアを救出した。

 

「大丈夫か?」

「うん、平気…。けど、これからどうするの?」

 

俺の考えは決まっていた。トレニアの目を見、

 

 

 

「トレニア──ここから逃げよう」

 

 

 

「えっ?」

「俺たちはいつまでもこんなところであいつらに捕まるのを待つ訳には行かない。それに、ここでドンパチやったらこの建物が潰れてそれこそ命があるかどうか、だ。だからもう一度言う──ここから逃げるんだ。俺とお前と、ゼラオラで」

 

トレニアは俺の話を聞き、しばらく黙り込んだ。無理もない、昨日から色々なことが起こりすぎている。一晩で自分の故郷と、母親と、そして友人を1人失った悲しみはとても想像など出来ない。

が、トレニアは俺に向かって満面の笑顔を作ってみせた。

 

「分かった、私も行くよ!カイは昔から、私がいないと何も出来なかったもんなー」

「む、昔のことを掘り返さないでくれ…」

「例えばほら、私がカイの家に泊まりに来た時だって──」

「やめろやめてくれ──ッ!?」

 

 

 

 

数分後、トレニアは俺の前で正座していた。

 

「これからは他人の黒歴史をベラベラ喋らないこと。いいね?」

「はい、すみませんでした…」

「よろしい──そんなことより、だ」

 

俺は外の様子をちらりと伺った。

 

「奴ら、こっちに戻りつつあるみたいだな」

「それじゃあ、早くここから逃げないと──」

「あぁ、行こう2人とも!」

「うん!/オラッ!」

 

 

 

 

「オラッ」

 

ゼラオラが周りを確認したあと、俺たちに向かって手招きする。俺とトレニアは急いでゼラオラに続いた。

あの建物を出てしばらく経つが、幸運にも奴らに見つかることは無い。程なくして、俺たちは森に着いた。

 

「よし、ここまで来ればひとまず大丈夫だろう」

「でも、これからどうするの?いつまでもこの森の中にいたって、見つかるのは時間の問題だし──」

「あぁ、何かしら策を考えないといけない。マサラから──いや、俺たちがカントーから脱出できる術を」

「それじゃあ、歩きながら何かしら使えそうなものがないか探してみよ!」

 

それからは誰も話すことなく、俺たちは歩き続けた。皆必死に森の中で右へ左へと目を走らせている。無論俺も同じく目を走らせている。が、今のところ何か気になるものは見当たらない──

 

「いたぞ!こっちだッ!」

 

突然だった。俺たちの後ろで、聞きなれない声がした。が、当然()()だということは分かっている。トレニアもゼラオラもそれに気づいたのだろう、後ろを警戒しつつもなお走り続ける。

 

「待てやゴラァァァ!!」

「待てと言われて待つ奴がいるかァ!!」

 

後ろに向かって大声で叫び、再び前を向いて走ろうとしたその時、俺は視線の端──俺たちが走っている脇で、何かオレンジ色がキラリと光ったのを見逃さなかった。

 

(あの光り方──あれは炎タイプの技を撃った時の!?)

「トレニア、ゼラオラ、伏せろッ!!」

 

俺とゼラオラはその場で伏せることが出来た。トレニアは「ふぇ?」と聞き返したのもつかの間、運良く足元の木の幹に足を取られてその場にコケる形で地面に伏せることが出来た、直後。

 

「ぐぉぉぁぁぁァァァァッ!?」

 

後ろから先程の声の主が出したであろう悲鳴が聞こえると同時に、背中が焼けるのではと思うほどの熱が襲ってきた。

 

「──何だ!?一体誰が──」

 

と、俺は急に、なにかに背中を叩かれたような気がした。振り返ると、ポケモンのものらしい手が手招きをしている。

 

「ゼラオラ、トレニア!俺について来てくれ!」

「どうしたの、カイ──」

「いいから早くッ!!」

 

俺たちは手招きをしたポケモンの方向へ、急いで向かった。森の奥深く、道なき道を。

 

 

 

 

 

「ねぇ、どこまで走ればいいの?」

 

疲れと沈黙に耐えかねたトレニアが、俺の背中に呼びかけた。

 

「分からない…けど、確かに何かが俺たちを呼んでいることは間違いないんだ」

 

俺はそう答えるしか無かった。実際、「間違いない」と言っていても自分で不安になる。もしかしたら、もうこの先に先程のポケモンはいないのかもしれない──

 

「ねぇ、何か聞こえない?」

 

声の主はトレニアだった。俺も立ち止まって周りに耳を澄ますが、聞こえてくるのは森の中で木が揺れる音だけだ。

 

「この木々が擦れ合う音か?」

「ううん、違う──何かが話してるの。何かが──私のことを呼んでる──ッ!?」

 

突然、トレニアは走り出した。俺とゼラオラは慌てて追いかける。

 

「おい、一体どうしたんだよ、トレニア!?」

 

俺の問いかけに、トレニアは先刻俺が彼女に対して答えたことと全く同じことを言った。

 

「分かんない──でも、聞こえるの、お母さんの声が。私のことを呼んでるのが」

「呼んでるって──俺には何も聞こえないぞ!?」

「オラ、オラッ!!」

 

ゼラオラにも、何も聞こえないらしい。どうやらトレニアの言う"声"とは、彼女だけに聞こえるものらしい。俺は先日、某転生神サマから言われた事を思い出していた。

 

──私は今、あなたの頭に直接語りかけています。

 

あんな感じでトレニアにも脳内に直接声が届いているんだろうか、ということは彼女の母親が実は神様で、そのトンデモパワーを使ってRR団の本拠地をいきなりぶっ壊してくれないかなどとあるはずもないことを考えていると、不意にトレニアが立ち止まった。俺とゼラオラはスピードを落としきれず、やむなく手ごろな岩に激突せざるを得なかったが。

 

「うぅ、いてて…急にどうしたんだよ、トレニア?」

「あそこ――」

 

と言ってトレニアが指差した先は、不自然なほど開けている場所だった。その一点だけ、太陽の光が差し込んでいる。

 

「あそこに何かあるのか?」

「うん…きっと、あそこにいるんだ…」

 

そう言って、トレニアは歩き出した。俺と、やっとスタン状態から回復したらしいゼラオラも、その後に続く。

そのまま10分ほど歩いただろうか、漸く俺たちの目の前に開けた場所の正体が現れた。

 

そこは、とても不思議な場所だった。まるでここだけが隔離された別世界なのかと思えるほど、その場所は異質だった。

光が差し込んでいるその真ん中に、RR団のマークが入ったプロペラ機がとまっている。そして、そのそばには一匹のポケモン。尻尾に木の枝をさし、耳をぴくぴく動かして歓迎しているようだ。

 

「あのポケモンは――」

 

俺が言い終わる前に、トレニアが遮った。

 

「私を呼んでたのは、あなただったのね…」

「知ってるのか、トレニア?」

「うん、知ってるよ。よく知ってる――」

 

トレニアの目には、涙が浮かんでいた。

 

「だって、いつもお母さんの側にいたんだもん。よかった、無事だったんだね――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

テールナー!!」




結局まだカントーにとどまったままだァ…()
もうこいつら一生カントーに居座らせようかな(駄目です)


さてさて次回予告!

「まずい、落ちるぞ!?みんな、どこかに捕まっているんだッ!!」

RR団のプロペラ機を見つけ、空からの脱出を図るカイたち一行。
果たして、彼らは無事にカントーを脱出できるのか?そして、子供が飛行機の操縦なんて出来るのか!?

次回[逃亡、それは抗いの始まり]

お楽しみに!
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