ポケットモンスター Re:Union   作:可惜夜ヒビキ

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試験も無事(?)終わったので活動再開です!
今年の夏休みまでには15話ぐらいまで行けるといいなぁ…


第二章 -Hello, new … -
第六話 雨に打たれた白百合


俺は目の前の人物から発せられた言葉に、しばらくの間絶句していた。

ただ驚いただけではない――信じられなかったのだ。エーテルパラダイス次期代表取締役ともいわれていたあのリーリエが、こんな人気のない森の中で静かに暮らしているという事実が。

 

「ほ、本当にあなたが、あのリーリエさん、なのか…?」

「えぇ、間違いなく。証拠ならいくらでもありますよ。ほら――」

 

そう言って、リーリエは部屋の壁を指さした。そこにはたくさんの写真が飾ってある。近づいてみてみると、それはリーリエとグラジオ、そして元エーテルパラダイス代表取締役であるルザミーネの姿も映っていた。

 

「これは――」

「私が以前、エーテルパラダイスに遊びに行った時の写真です。あの頃は楽しかった。スクールの友達やお兄様、お母様もみんな笑っていて…」

 

リーリエは天井を見上げた。

 

「…それなのに、あの事件は突然起こってしまったのです。お兄様とザオボーの2人がウルトラワープライドの調整をしていた時でした――」

 

リーリエは俺たちに背を向けた。その背中が小さく震えているのを、俺は見逃さなかった。

 

 

 

 

「突然ウルトラワープライドが暴走して、お兄様が向こう側に飲み込まれてしまったのです。そのことを知ったお母様は大いに嘆きました。それをザオボーは見逃していなかったのです。完全に精神が崩壊してしまったお母さまをその手にかけ、次は私もとなった時、お母様の最後の足搔きで、私はここに一人、エーテルパラダイスの居住スペースの緊急脱出用エンジンによって、ここまでやってきました。現在、エーテルパラダイスは完全に彼が掌握し、部下も全員、彼の傘下となっています」

 

 

 

 

リーリエは顔を上げた。少し目頭が赤くなっている。

 

「私ったら、一体どうしたんでしょう?会って間もない人に、ここまで自分の過去を話すなんて――」

「それは、俺たちから同じ匂いがしたからじゃないのか?」

 

リーリエは驚いて目を見開いた。

 

「えっ?それは、どういう…?」

「私とカイは、カントー地方から逃げてきたんです。RR団の追手から」

「そして、俺達は幼馴染を一人、あいつらに連れていかれた。大切なものをやつらに奪われ、許せないのは俺たちも同じだ」

 

俺はリーリエに手を伸ばした。

 

「リーリエさん――俺達と一緒に来てくれないか。俺たちに必要なのは、頭の切れる仲間なんだ」

「私は…」

 

リーリエは少し迷っているようだが、やがて俺の手を――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

払いのけて、こう言った。

 

「私は、あなた達とはいけません」

「えっ――」

 

俺は思わず、驚嘆の声を漏らしていた。

 

「どうしてなのか、理由を聞かせてほしい」

「私は、もう何の力もありません。家族も、外に出る気力すらも失ってしまった――私には、この世界を変えることはできない…ッ」

「そんなことないですよ」

 

声の主はトレニアだった。

 

「私たち、別に世界を変えようなんて思っていませんもん。私たちはただ、消えてしまった幼馴染を連れ戻して、また昔みたいに三人で笑いあえる日常が欲しいんです。我儘で動いてるだけですよ――リーリエさん、あなたはどうしたいんですか?」

 

リーリエは酷く迷っているようだった。

 

「私は…私は――ッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう一度、お兄様と――きゃっ!?」

 

リーリエが突然可愛げな悲鳴を上げたもの無理はない、突然建物全体が揺れたのだから。次いで、外から声が聞こえる。

 

「こっちだ!急げッ!!」

「まずい――奴らだ!!」

 

部屋の窓から外を見ると、黒服の集団が俺たちを取り囲んでいた。その数、およそ50人。

 

「あぁ…私は、もうここで――」

 

ふらふらと床に倒れ伏しかけたリーリエの腕を、俺はつかんだ。

 

「ダメだ!!リーリエさん、まだあなたにはやるべきことがある!!そして何より、自分の願いのためにも足掻いてくれ!!あなたがこんなところで死ぬはずないんだ!!だから――まだ倒れないでくれッ!!」

 

俺の叫びに、リーリエの目が輝きを取り戻した。

 

「そうだ、私は――」

 

再び、リーリエが立ち上がる。その目には、決意の色が浮かんでいた。

 

「まだ、死ねません!!私はもう一度、お兄様と――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お兄様と、一緒にいろいろなところを旅したいんだからッ!!」

「あぁ、そうだ!!あんたはまだ死んじゃいけない――ここで諦めていたら、お兄さんも喜ばないだろう?さぁ――」

 

俺の伸ばした手を、リーリエは掴んでくれた。

 

「感謝します、旅の人達。私の目はあの日からずっと、曇っていたみたいだ――」

 

リーリエは、持っていたモンスターボールを投げた。現れたのは、白いキュウコンとピクシー。

 

「ピクシー、シロン、久しぶりのバトルです――頑張りましょう!」

「ピクシー!!」

「コン!!」

 

リーリエの気合は、2匹のポケモンにも伝わったようだ。リーリエと2匹は階段を駆け降り、すぐさま一階へと消えていった。

 

「よし、俺たちも行こう!!」

「うん――テールナー!!」

 

俺とゼラオラ、そしてトレニアとテールナーはグータッチを交わすと、それぞれ別方向に走っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺が外に出ると、外は雲が重い影を傾けていた。そして、俺の姿に気づいたRR団員達が、一斉に各々のモンスターボールを投げる。その数、20人。

 

「ゼラオラッ!!」

「オラァッ!!」

 

俺の呼びかけにゼラオラはすぐさま反応し、俺の前にやってきた。

 

「行くぞ、ゼラオラ――プラズマフィスト!!」

 

ゼラオラの全身に、電気が迸り始める。

 

「ゼラァァ――ゥオラァァァッ!!」

 

ゼラオラの叫びと共に、全身に蓄積されていた電気はゼラオラの両手に移動した。すぐさま、ゼラオラは両手を地面に叩きつけた。

刹那、ゼラオラから放たれた電撃が地面を駆け巡り、相手のポケモンたちを一斉に攻撃していく。そして、余った電気は天に舞い上がり、電気のシャワーが降り注いだ。

 

「チィ…ッ、小癪な真似を――」

 

最早残っている団員は3人だった。流石は伝説ポケモン、馬力が違いますよなどと感心していると、その数人のうち一人が技を仕掛けてきた。

 

「元フレア団幹部の俺に勝てるもんかッ!!マタドガス、ダブルアタック!!」

 

赤髪の男の指示を受け、マタドガスがゼラオラに襲い掛かる。

 

「ゼラオラ、かわしてもう一度プラズマフィストだ!!」

 

ゼラオラはマタドガスの初撃を避けると、再び攻撃しようと近付いたマタドガスに電気を纏った両手を叩きつけた。たまらず、マタドガスは撤退しようとする。

 

「逃がすな!飛び蹴り!!」

「オラッ!!」

 

ゼラオラの放った渾身の一発が、マタドガスにトドメを刺した。マタドガスはふらふらと地面に倒れ、そのまま動かなくなった――戦闘不能だ。

 

「ち、畜生…」

 

マタドガスをボールに戻した後、再びポケモンを繰り出そうとするRR団員に、俺は少し圧をかけた。

 

「まだやるのか――無駄な抵抗を?」

「ひぃっ…!?」

 

素っ頓狂な声を上げた後、奴らは「覚えてろよ!」などとありきたりすぎる捨て台詞を吐いて逃げていった。俺の前に残っているRR団員はもういなかった。

 

「よし、こっちは片付いたな。あとは向こうの様子を――」

「きゃぁぁぁっ!?」

「――!?」

 

声の主はトレニアだった。急いで建物の反対側へ向かうと、トレニアが座り込んでいるのがほどなくして見えた。彼女の腕には、傷だらけで戦闘不能となったテールナーが横たわっていた。

 

「これは――」

 

騒ぎを聞きつけ、リーリエもやってきたようだ。どうやら彼女も、俺とほぼ同じタイミングでRR団員を蹴散らしたようだ。

 

「トレニア、一体何があったんだ?」

 

トレニアは何も言わず、近くの茂みを指さした。目を凝らすと、確かに何かが潜んでいるのだろう、不自然な揺れ方をしている。

 

「ゼラオラ、あの茂みに向かってプラズマフィスト!!」

「オラッ!!」

 

ゼラオラが放った一撃はすぐさま茂みを包み、爆発を起こした。

 

「どうだ…?」

 

が、俺の予想は大きく外れた。茂みからぬらりと現れたのは――1人の少女だった。その姿が完全に見える前に、リーリエが声を発した。

 

「――!!あなた、は…」

「およー?なんか聞きなれた声がすると思ったら、やっぱりいたんだー」

 

そんなあどけない声と共に、茂みの中から現れたのは――

 

「――アセロラ、さん!?」

 

間違いない、目の前の少女はウラウラ島のキャプテンの一人、アセロラだった。彼女の右肩には、灰色のミミッキュが乗っている。

 

「へぇー、アセロラのこと知ってるんだ、嬉しいね。それなら話が早いな――」

 

アセロラは笑顔で両手を広げると、そのしぐさとは裏腹にとんでもないことを言った。

 

 

 

「リーリエお姉ちゃんを、こっちに頂戴」

 

その瞬間、俺は彼女がRR団の一味だと悟った。

理屈ではない、彼女の体から発せられた身体的な恐怖が、俺の体を包んだからだ。たまらず俺は言い返した。

 

「残念だけど、それはできない相談だな。お前たちのとこに、リーリエは連れていかせないさ」

「あららー、残念。それじゃあ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

力ずくでも、奪うまでだねッ!!」

 

先程とはうって変わって、いかにも邪悪な声でアセロラは叫んだ。

 

「気を付けてください、カイ君――彼女はアローラリーグでもトップクラスの実力を誇っていた。今の私たちにとって、相手は間違いなく格上です」

「あぁ、分かってるよリーリエさん。しばらくそっちでトレニアのことを頼む」

 

俺はリーリエがトレニアを建物の影に連れて行ったのを目の端で確認すると、目の前の敵を凝視した。アセロラの方は、いかにも楽しそうにモンスターボールを握っている――まるで、新しいおもちゃでも手に入れたかのように。

 

「リーリエお姉ちゃんは諦めたけど――君は楽しませてくれそうだしまぁいっか!いっけー、ジュペッタ!」

 

彼女が繰り出したのはジュペッタだ。が、俺のゼラオラも先の戦いにより消耗は少ないようだ――相手にとって不足はない。

 

「やるぞ、ゼラオラ――俺たちで、アセロラを追い払うんだ!!」

「オラッ!!」




アセロラ:RR団(アローラ地方)の実力者。ゴーストタイプ使い。大概のトレーナー(特に男)は彼女の可憐さについ気を許してしまいがち。
上の命令よりも自分が楽しいと思ったことの方を優先する。

さぁさぁ次回予告!

「カイ!!死んじゃだめだよ、お願い――応えてッ!!」

RR団によって洗脳され、忠実な部下へと成り下がってしまったアセロラ。彼女の凶刃に倒れるカイ。トレニアとリーリエが絶望の淵に立たされる中、ゼラオラは怒りに体を震わせる――。

次回[はるか昔、人とポケモンとが一つだった――かの日]

漸くこの小説のタイトルらしいことができそうです!次回もお楽しみに!
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