魔理沙がコスモに連れられて修行を始めてから1週間。
霊夢はなぜかいつにも増して修行をしている。
そのやり方があまりにも焦ってるように見えたので八雲紫は神妙な面持ちで尋ねてみた。
「霊夢、何を焦っているの?」
そう尋ねられた瞬間、博麗霊夢は汗だくの体を紫に向けることなくギョロっと視線だけを向けた。
その目には焦りだけじゃなく、憎しみや苦しみといった負の感情が宿っている。
「私は焦ってる。魔理沙は私にとってライバルであり親友なの。その魔理沙は咲夜とアリスの話だと最近まじめにやって強くなってるらしい。その魔理沙に置いていかれるのはとても気分が良く無いの」
その話を聞いて紫はおかしいと思った。
今までそんな素振りは一切見せてこなかったからだ。
魔理沙は確かに霊夢とライバルで、互いに高め合っているように見えていた。
それが今は霊夢の方が確実に置いていかれて差が開いてきている。
それが刺激になって霊夢の心に影響を与えたのかもしれない。
「あいつは人からの信頼も得てるらしい。そのせいでうちへの異変解決の依頼は減って、代わりに魔理沙の方が増えてるそうよ。許せないわねぇ。幻想郷のバランスを壊すなんて」
この言葉を聞いて紫はハッとなった。
霊夢の言う通りで異変解決は巫女の大切な仕事。
それを魔法使いに持っていかれたとなれば幻想郷中の博麗の巫女の評判は地に向かって落ちていく。
それは幻想郷のパワーバランスの崩壊を意味することになる。
「なるほどね。確かにあんたの言うことも一理あるわ。魔理沙があんたの仕事を奪えば奪うほど博麗の巫女の看板に泥をかけられることになる。それは今まで博麗の巫女を上に置いた幻想郷のシステムの停止に繋がってしまう」
「最後は人々が私達の必要について議論を始める。博麗の巫女についていくら説明しようとも分かってくれることは少ないに決まっている。挙句に私達は結界の管理だけをすればいいと言う話になる。それだけは避けなくちゃいけない」
「霊夢が焦る理由がようやく理解できたわ。私は魔理沙がそこまでの存在になれるとは思ってなかったけど。でも、親友がそこまで言うなら危険なんでしょうね。後で藍を調査に行かせるわ。でも、あんたにもやってもらうことがあるわ」
霊夢は紫の『やってもらうこと』に反応して体をそっちに向けた。
「やってもらうことって何よ」
「私が手を貸してあげるから真面目に修行しなさい。魔理沙がこの短期間で強くなったのなら、あんたでも強くなることは可能なはずよ。やる気があるならついてきなさい。今回は私も本気になってあげるわ」
「なるほどね。紫は私に強くなってもらって信頼を取り戻してもらいたいわけね。乗ったわ!魔理沙を叩き潰すためにもあんたの力を借りる!」
「なら、しばらく博麗神社を空けるわよ。心配しなくても橙と藍に管理は任せるからお賽銭が盗まれることはないわ」
ならいいかと思いつつ霊夢は紫が開けたスキマに足を踏み入れた。
その瞬間から自分が自分じゃなくなる気がしたが、このままだと色々ダメになるのは霊夢が1番理解している。
だから、魔理沙を叩き潰すことを目標にして紫が用意する修行メニューを受けに行った。
2人がスキマを通ってどこかに行った数分後に藍は魔理沙の調査に、橙は博麗神社の掃除を含めた仕事に送り込まれた。
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一方魔理沙は霊夢が魔女狩りのための修行を始めたことを知らずに魔法の研究に励んでいる。
コスモはあまりにも弟子が優秀すぎて、すでにやることをなくして魔理沙が質問をしに来るまでだらける生活を送っている。
「魔力の性質変換によって自分のための空間を生成する。それを出来るようになれば独壇場にして魔法でいくらでも攻撃できるようになる」
こんな感じのことをぶつぶつと呟いて魔理沙は魔法の習得に励んでいる。
その魔法のせいなのか今まで盗みを働いたりと最低な人間の臭いがプンプンとしていたが、今では超真面目で優しいみんなのお姉さんになってしまった。
「魔理沙、たまには息抜きも...してるか。なら、たまには友達と遊びな...そういえば友達いないんだっけ」
コスモは一応弟子の体を心配しているが、魔理沙はそんな心配も無用なくらいに生活習慣を修正している。
今の魔理沙は何に置いても完璧と言って差し支えない。
「お師匠様、心配の必要は無いので静かにしていただけますか?」
「あっ、はい」
どっちが上なのか正直言ってよくわからない。
しかし、コスモのお陰で強くなっているので魔理沙は気を使ってあげている。
そんな魔理沙はまじめに魔法の勉強をしながら霊夢のことを想っている。
魔理沙がどんなに霊夢のことを想おうと、相手は今まさに魔理沙のことを嫌って狂乱の道へと進んでいる。
手が届かないものを想うことは無駄でしか無い。
しかし、そのことに魔理沙は気付けないままに霊夢と戦うことになる。