月島柊
旅行のパートナー
以上2名
俺は胡桃とはまた別の人と旅行した。当然旅行は全員と──ではなく、この人とだった。
「楽しい?」
俺はその人の名前を呼んだ。
、一緒に旅行しに来たのは絢梨だったのだ。絢梨は俺と話している内に、「一緒に旅行に行きたい」と言っていたから、クリスマスの今日、一緒に旅行に行くことにした。
「楽しい。私、北行ってみたかった」
雪は深谷でも降ることはあるが、実際に行ってみたかったらしい。そして、今いるのは宮城県。仙台空港アクセス線仙台空港駅。飛行機で仙台まで来たのだ。
【約30分前】
俺は飛行機のなかで、もうすぐ仙台空港につく頃だった。絢梨は窓にへばりついて外を見ていた。何を楽しみにしてるんだろう。
やがて地面が見えるようになると、絢梨は頬を窓につけて外を見た。しかし、少ししてから俺の方を向いて言った。
「雪、ない」
「え、雪見たかったの?」
絢梨はこくりと頷いた。マジすか…
「まだ都心部だから降らないよ。ただ、これから行くところは降ってるかもな」
「仙台って雪降らないの」
「降るときは降るけど、そこまでじゃないぞ」
絢梨は少し残念そうだった。これから行く山間部は大雪かもしれないな。
飛行機から降りて仙台空港駅の券売機で仙台までの切符を買った。絢梨も買ったのを確認すると、俺は改札をくぐった。
「絢梨、今度の電車何分?」
「11:39発仙台行き普通。というか、後ろからハグしないでよ、恥ずかしい…」
「いいだろ、旅行なんだし」
俺は絢梨をもっと強く抱きしめた。絢梨はいつもの剣道と同じように手で俺の腹を打ってきた。
「ぐはっ」
「許可無しに、過激にくっつかないんだったら許す」
「くっつかないから、許してくれ…」
絢梨の力忘れてた…こんなことされるだったな、そういえば。
【現在】
11:39発普通仙台行きは、途中、美田園、杜せきのした、名取、南仙台、太子堂、長町、仙台に停車。名取からは仙台空港アクセス線から東北本線に入る。美田園、杜せきのしたからは人が乗ってきて、名取では関東の通勤ラッシュ並みの混雑になっていた。電車は2両編成。過激にくっつかないと言ったそばから強制的にくっつけられた。
「んっ」
絢梨が色っぽい声を出した。俺は満員電車で起こり得ることを片っ端から考えた。痴漢、痴漢冤罪、騒ぎ。ほとんどが痴漢関係。俺は絢梨のスカートを見た。そこにはシワのある手があった。俺ではない。誰か痴漢してるんだ。俺はその手をたどった。そこには、気持ち悪い顔をしたおじさんがいた。年齢は70代後半くらい。俺はすぐに動画を撮り始めた。証拠を残すためだ。そして、手を掴んだ。そして、捻る。
「いってぇな!なんだ貴様!」
おじさんが怒鳴り声をあげた。俺は落ち着いた様子で言った。
「痴漢してる奴が何を言う」
「痴漢?証拠はどこにあるんだい」
俺はさっき撮った動画を見せた。顔まで撮っていてよかった。動画内に、「次は南仙台です」と放送が流れているし、この路線だということは分かる。顔まで映っている時点でこいつだ。
「な…」
「次の南仙台で降りてもらおう。駅員さんとお話ししような」
俺は11:53、南仙台につくとおじさんの手を掴んだまま駅員のいるところに向かった。
「こいつ痴漢です」
「あ、はい」
「証拠これです。転送するんで、見ておいてください」
俺はそういって駅員から離れた。駅員は事務室につれていった。俺は後続の電車に乗ることにした。12:02発、常磐線からの仙台行き。南仙台は東北本線、常磐線、仙台空港アクセス線、一部阿武隈急行線も入ってくる。昼間の高崎線くらいの本数はある。
「柊くん」
絢梨は俺を寄せた。
「なんだ、絢梨」
「ごめん。あと、ありがとう」
並ぶことのない2つの言葉が並んだ。
「どうして」
「くっつかないでって言ったこと。あと、痴漢から守ってくれた」
「別にいいよ。くっつかない方がいいだろ?」
「ううん。なるべく近くにいて」
なんだろう、一瞬遠ざかった思いがまた近づいた気がした。俺は12:02発仙台行きで仙台まで向かった。
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