「蘭、お帰り」
「…ただいま…」
「どうした?蘭」
「…ちょっと来て」
蘭が俺を呼び出す。なんだ?俺何かしたか?
「蘭、何かした――」
「私と会ってないのに」
会ってない?どうして
「もっと一緒にいたかったのに」
「蘭、いつでも会えるからさ」
「会えないじゃん!」
蘭が大声を出すのはあまりないのに、今日だけは真剣だった。
「蘭、来ればいいだろ」
「でも!迷惑だって言うかなって…」
「蘭」
俺は抱き締めて言った。
「そんなことない。来ればいい」
「柊くん…分かった」
蘭は歩いて改札を出る。俺は少しあとに改札を出た。蘭はもう見えなかった。
翌日朝7時、妹たち10人は先に新幹線で、蘭たちは上野で会うのを条件に少し後に出ていく。
「帰ろうか。楽しかったか」
「うん!楽しかった!」
ジュンは相変わらず1番に話し出す。帰りは山形蔵王ICから山形自動車道、村田JCTから東北自動車道、川口料金所から首都高川口線、江北二町目付近から高速から降りて、一般道で上野駅前まで。交代は蓮田の1回のみ。俺はと言うと、前日3時間半の運転で、疲れすぎて運転がまともに出来ないと言うことで運転はなかった。
そして、俺の状況は…
1番後ろで横になっている!
なんで?こんなんにされないとダメなの?とにかく落ち着こう。
「はぁぁぁ」
深いため息。眠くなってくるしさ。
「しょうがないでしょ。前あいてないんだから。今でも2人席のところに4人ぎゅうぎゅう詰めでいるんだから」
「苦しいんだよ」
別に俺を横にさせなければよかった話じゃない?
「私…きつい…」
「入れるんじゃない?右」
5人が左右に分かれる。真ん中がちょうど空く。
「あの、この間に入れと?」
「そ。はやく入らないと詰めちゃうぞー」
「入っていいんですかね?」
「いいって。はやく」
俺は前に移動してその間に入る。
右があーや、左がニコルで挟まれている。肩の柔らかさがよく分かる。
それに、俺が静かにじっとしているとあーやとニコルの心臓の鼓動が伝わってくる。
横はかなり狭いけど、俺の体はみんなと比べて太さは変わらない。
「狭くない?」
「あと何時間だっけ」
「あと4時間半くらい」
4時間半この状況なの?地獄でしかないじゃないか。ニコルの心臓の鼓動が伝わってくる。速い鼓動だ。
一方あーやは等間隔な鼓動。落ち着いてる。
「ニコル、大丈夫か」
「うん…」
【斎藤ニコル視点】
柊くんがとなりに座ってきてから最初は大きくゆっくりだったが、ずっといると、小刻みになって速くなってしまう。死んじゃいそうだった。ドキドキしすぎて。
(肩が触れてる…シートベルトも狭いからしてないし…)
キスできそう…って、なに考えてるの!?私!
「ニコル、大丈夫か」
「うん…」
顔でも赤くなってたの!?恥ずかしい…やめてよ…
「なんか緊張してる?」
柊くん…そう言われるの嫌…分かってるでしょ
「分かんないの」
「分かってる。ただ――」
私は柊くんを強く締める。怒りとツンツンしてるような気持ちで。
「ぐっ、ニコル…死ぬ!死ぬ!」
「死んでよ…っ」
思わず泣き出してしまう。
「ニコ…ルやめてくれ…」
いつの間にか話しづらくなるほど締めていた。私はすぐに離す。
「ニコル、嫌われたのか、俺」
今まで何を思ってきたのか急に分からなくなった。私、何してたんだろう。
【月島柊視点】
嫌われたのかも分からずに俺は寝た。なんでだろう、勘違いかもしれないが、本当かもしれない。本当だったら、俺はどうするんだろう。自殺かな、それとも…
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