高校生からの物語 完結   作:月島柊

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今回の登場人物
月島柊
葉元胡桃
丸山彩
姫川杏
桃瀬心春
美海零
有栖柚
先生2人
以上9名


第55話 吹奏楽部

 俺と胡桃の結婚式は年明け1月7日にやることに決まり、今日は12月29日。ライブは31日であと2日だ。彩が鴻巣の中学校に、16時くらいに来てと言われたため俺は彩が先生をしている学校に向かった。神保原15:07発上野東京ライン小田原行きで鴻巣に向かう。

熊谷15:34

鴻巣には15:49。胡桃は冬休みに入っていたため一緒に来た。来校者扱いで2人とも来ていた。

 

「あ、柊くん。音楽室4階にあるから来て」

「あぁ。」

 

音楽室?なんで音楽室なんかに行かないといけないんだ。俺は音楽室に向かう。音楽室の中には男性女性それぞれ1人ずつがいた。

 

「柊くん、入って」

 

俺は彩に押されて音楽室に入った。先生の名前はそれぞれ、女性の先生が谷中先生、男性の先生が夜冝先生だった。俺は2人の先生に挨拶をする。

 

「こんにちは、月島柊っていいます」

「早速なんだけど、吹奏楽部の顧問だけをしてくれないかな」

 

吹奏楽部の顧問?急だな。

 

「いいですけど、なんで急に」

「うちの学校、人数、楽器共に多いんだけど、先生だけが少ないの。だから人数を増やしたくて。そのときに丸山先生から月島さんがいいと聞いて」

「なるほど、俺も中学は吹奏楽部ですが、ユーフォニアムくらいしか教えられないですよ?その他は基本のことしか」

 

俺は中学の時だけ吹奏楽部だった。そのときの担当楽器がユーフォニアム。どうやらこの学校のユーフォニアム担当生徒は4人。全員女子生徒だった。男子生徒も全体で数人いるが、パーカッションや、チューバに寄っていた。

 

「大丈夫ですよ。ユーフォニアムは2年生までいるんですが、1人なので」

 

俺が入ってたところは1楽器あたり3人だったかな。

 

「じゃあ、始めようか」

 

俺は吹奏楽部を始めた。1年生から2年生まで、3年生は引退済みだ。

 

「……」

「……」

 

点々が4人から浮かんでくる。

 

「みんな?まず自己紹介いいかな」

「…1年、3組…姫川(ひめかわ)(あん)です…

 

段々声が小さくなっていく。デクレッシェンドみたいだった。

 

「…1年2組…桃瀬(ももせ)心春(こはる)です…」

 

少し区切りが多いけど音量は保っている。

 

「1年4組…美海(みうみ)(れい)です…」

 

今までで1番よかったけど、もう少しかな。人見知りかもしれないけど。最後に2年生の先輩が自己紹介する。

 

「2年1組、有栖(ありす)(ゆず)です。」

 

全員人見知りか。けどまずは演奏を聞いてみないと分からないな。胡桃は俺の背中によじ登っていた。

 

「あの…背中…」

「あぁ、俺の妻」

「葉元胡桃でーす!」

 

背中に乗った胡桃が言った。おりてくれないかな。

 

「おりてくれない?」

「重いとでも?」

「いや、そんなんじゃなくて」

 

4人は見合ってクスクスと笑っていた。俺が笑って見ていると、4人は我に返ったように笑うのをやめた。

 

「ごめんなさい…」

「いや、これでいいんだよ。笑っていい」

 

俺は吹奏楽部の準備室脇にあったユーフォニアムを1つ持って戻った。

 

「みんなで吹いてみて。1、2…」

 

4人一斉に吹き始めると思ったが、アタック(音の始め)が4人バラバラだった。テンポを設定しなかった俺も悪いが、入部から8ヶ月たってるはずだ。

 

「ストップ。俺は吹くから聴いてて」

 

俺はさっきと同じ、B♭(低いシ)からB♭(高いシ)までを1拍ずつ吹いた。指番号は、B♭から

B♭ 0

C  1,3

D  1,2

E  1

F  0

G  1,2

A  2

B♭ 0

の順番。4番ピストンで4つ管があるが、教えるために使うのは3番まで。吹き終わると、4人は俺をずっと見ていた。

 

「これが手本だ。あと、俺の方針を確認しておこう。」

 

俺は黒板に書き始めた。1~3までの3箇条だ。

 

「1つ目は、俺が厳しすぎる練習はしない。例えば、16拍4拍のロングトーンを今すぐやれとかは言わない。2つ目は笑って部活を行う。無表情でするより、さっきみたいに笑って部活をやろう。たまにふざけたり、ボケたりするから。最後は俺が来れない日だ。俺にも他に仕事がある。来れない日があるが、そのときは4人だけで練習しよう。先生はいらない。自分たちだけでやる貴重な時間だ。以上のことが俺の方針だ。」

「先生、厳しくしないと、上手くならないんじゃないですか?」

「厳しくしすぎると相手との信頼がなくなってしまう。俺は「厳しいけど分かりやすい先生」より、「優しくて分かりやすい先生」の方がいい。言うんだったら、「優しくて面白いけど、少し分かりづらい」でも構わない。俺は、面白い、優しいと思ってくれればいいんだ。楽器はそれでよくなる。」

 

俺は別に熱血先生ではない。分かってもらえればそれでいい。それで、俺は笑ってもらいたい。こんな堅苦しい話だけを聞いてても飽きるだろう。

 

「胡桃?いつまで乗ってるんだい?」

「部活終わるまで?」

 

そうじゃないんだけど。ネタじゃなくて本気で。

 

「先生の奥さん、面白いですね。」

「そうか?全くふざけてるだけだけど」

「ふざけてるってなによ!」

「あはは!」

 

4人が笑ってくれる。偽装じゃないだろう。そういう笑いかたじゃない。

 

「じゃあ、吹いてみて。こういう風に…」

 

俺はわざと息が抜けたhiBをならした。ピーッと音がする。

 

「あ、間違えた。まぁ、吹いてみて。低いB♭から」

 

俺は指示して準備室に向かう。胡桃は背中に乗っている。

 

「胡桃、ありがとう」

「ふふっ、気づいてたか。」

 

狙ってやってくれたのにはちゃんと気づいていた。

俺がライブ準備で忙しくなるときにはどうなってるだろう。楽しみだ。

 




次回はライブの話になります。12月31日ですね。次回も胡桃は出てきますよ。

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