牙狼×鬼滅の刃-陰我断ち切る日輪の輝き-   作:安倍御楠

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この二作は少し似ていると感じ親和性があるかなと思ったのが、これを書こうと思ったきっかけです。
拙い文になるかと思いますが、よろしければお付き合いください。
では、よろしくお願いします。


創牙

 大正時代、東京府。戌の刻、午後八時。とある屋敷街に建つ一軒の邸宅。

 そこは一般的な家屋と比べると豪邸と呼んで差し支え無い立派な造りをしているが、豪奢な邸宅が並び立つ中では質素な造りをしておりそれが逆に存在感を放っている。

 それ以外にはこれといって特筆すべき点もない普通の屋敷にも見えるが、その地下には普通とは言い難い光景が広がっていた。

 

 この屋敷の地下室は、扉の左右にか細い火の灯った燭台が二つ置かれただけの薄暗い部屋。その暗室に一人の青年が立つ。

 下げた右手には鍔の無い両刃の剣が握られており、腰には黒塗りの鞘。その両の眼は閉ざされている。

 

「……」

 

——ヒュン、と空気を切り裂く音。暗室の何処かから、一本の槍が青年の胸めがけ飛来する。胸に刺されば命はあるまい。

 しかし青年は眼を瞑ったまま、それを避けようともしない。

 穂先が青年の数cm前の距離まで迫り、その胸を貫く……と思われた次の瞬間。

 彼はカッと眼を見開き、大きく身を反らして躱す。青年の胸を貫くと思われた槍は、背後の薄闇へと消えてゆく。

 間髪を入れず四方から無数の矢が放たれ、雨の如く青年に襲いかかった。

 

「はああっ!」

 

 青年は気合を発し、回転すると同時に剣を一閃。四方より疾風の如き勢いで降りかかる矢の雨を全て薙ぎ払った。

 

「ふう……」

 

 全ての矢を打ち落とした青年は一息つき、剣を腰の黒鞘に納める。

 彼の名は神城 創牙(かみしろ そうが)。小規模ながら様々な事業に着手する“神城財閥”の頭首。

 しかしそれは“表向き”の話。彼にはもう一つ裏の顔があった。それは、魔界より現れ人に取り憑き血肉と魂を喰らう魔獣“ホラー”を狩る使命を帯びた“魔戒騎士”であるということ。

 

『うむ、上出来だ。腕は鈍っておらぬようだな』

 

 ふと、やや掠れた老人のような声がした。しかしこの部屋の中には、創牙以外には誰もいない。

 では、この声は一体? その正体は彼の左腕に着けられている、龍を象った銀色の腕輪だった。

 

「いくら指令がないとはいえ、いつホラーが出るか解らないからな。腕を鈍らせないのは当然だろ? というか……お前はいつも見てるだろ」

 

 左腕を顔の前に持っていき、創牙は声の主である腕輪に言葉を返す。

 腕輪の名はギルバ。魔戒騎士が操る“魔戒剣”などの武具にも用いられる“ソウルメタル”と呼ばれる特殊な金属で出来た装飾具に、人に害意のない友好的なホラーを封じ込めて作られた魔導具。

 ギルバは優れた探知能力に、ホラーに関する豊富な知識を持ち、それらを用いて創牙を支援している。

 

 地下暗室……鍛錬場の扉を叩く音が三回響き、その少し後に扉が開く。

 

「ごめんください、創牙様」

 

 その言葉と共に入ってきたのは、白髪に白髭をたくわえ燕尾服に身を包む、如何にもという風貌の老紳士だった。

 彼は創牙の父の代から神城家に仕える執事で、名を藤巻という。

 

「藤巻、どうした……ってそれは」

 

「お仕事でございます」

 

 ふと、創牙は藤巻の手元を注視する。彼が持っていたのは赤い封筒。

 各地に存在する魔戒騎士を統括する組織“番犬所”から下される指令を記した指令書だ。番犬所は東西南北の管轄に分かれており、創牙は“東”の番犬所に属している。

 

「指令か……珍しいな、ここ最近なかったのに」

 

 そう言って指令書を受け取ると、眼のような奇妙な意匠が施された掌に収まる大きさの細長い箱のようなものを取り出す創牙。

 その蓋を開けると、そこから燐光のような青白い炎が灯る。これは魔界の炎である“魔導火”の蓄えられた点火器(ライター)型の魔導具だ。

 創牙が魔導火で指令書を燃やすと、空中に奇妙な文字が浮かび上がった。どの国の文字にも該当しない、彼ら魔戒の者が用いる”魔戒文字”だ。

 

「“災いの兆しあり。力への渇望が生みしホラーの陰我、直ちに断ち斬るべし”……か」

 

 空中に浮かび上がった指令書の内容を読み上げる創牙。このように、番犬所からの指令書は魔導火で燃やすことによって内容の確認が出来る。

 

「じゃあ、俺の留守中は頼んだよ」

 

「承知致しました」

 

 鍛錬場から退室する創牙の背を、頭を下げて見送る藤巻。

 創牙は上階の広間で深い青色の外套(コート)……“魔法衣”を羽織り、その中に腰に帯びていた魔戒剣や、先程の点火魔導具などをしまい込む。

 

 魔法衣は魔戒騎士の正装にして戦闘服である。

 特殊な加護によりあらゆる損傷を軽減するだけでなく、その裏地は“内なる魔界”と通じているため、様々なものをその空間に収納できる。

 魔戒騎士の魔法衣の背や肩にはその騎士を象徴する紋章が刻印されており、創牙の魔法衣に刻まれた紋章は十字型をしている。

 

「さて……行こう」

 

 創牙は魔戒騎士の装備を魔法衣に収納し身支度を済ませると、屋敷を出ようとする。

 

「創牙様」

 

「うおっ! いつの間に……」

 

 背後から藤巻の声。いつの間にか屋敷の正門には鍛錬場にいたはずの藤巻が立っており、創牙は驚いて声を上げる。

 

「行ってらっしゃいませ、ご武運を」

 

「あ……ああ、行ってくるよ」

 

 深々とお辞儀し見送る執事にやや動揺しつつ片手を上げて返し、創牙は屋敷を後にする。

 

 彼はまだ知らない——この世には、ホラーの他にも人を喰らう悪しき化生(けしょう)、そしてそれを狩る者が存在していることを。

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