極力シリアスは避けようと作者の教訓になりました。
作者は感想が大好物なのでくださると大変喜びます
「カァ〜北東に〜北東に〜向かえ〜」
いきなり声を出したのは小芭内の鎹鴉。
この鴉は不思議なことに人の言葉を話して鬼を狩る仕事を率先してくれる。人語を話せるあたり俺よりも人に近い、いいなあ!俺も小芭内と話したい!
そうして指令を伝えると俺の真っ白ボディに体を寄せてきたので長い舌で羽を整えてやる。
コイツはコミュ力お化けで一人で居るのを見ることの方が少ない、そして俺と何事もないように仲良くしている…コイツは真の陽キャだ!
「行くぞ、鏑丸」
りょーかいです
鎹鴉に頬を寄せてお別れの意を示すとすぐに飛び去っていった。
小芭内は裂けた口を隠すように白い布を口元に巻き、やたらとグネグネした日輪刀を携えている。
刀鍛冶の遊び心が爆発したのかと最初は思ったが小芭内の呼吸にはこの形状がぴったりらしい
鬼殺隊に入隊してからというものの、鬼を食べられる機会に恵まれたので『ミシャクジ』への進化はあと半分くらい。
さあさあ!鬼を滅っしておいしく頂くぞ!
▲▲▲
「此処であっているかな」
「しゃー」
「そうか、じゃあ住民に話を聞いてみよう」
目的地は山奥の集落、少し耳に意識を傾ければ虫の音が聞こえ、まさに田舎と言った印象を受ける。
鎹鴉が言うにはここ最近に行方不明者が多発しているらしい。
「つまり貴方達の息子さんが消息不明という事で良いですね?」
「そうなんです!あの子は日頃から本ばっかり読んでる真面目で……親孝行で…」
小芭内が話しているのはこの集落の長的な人物
この人達の家族の息子がどうやら被害者の一人らしい。
その後も様々な家に聞いて回ったが被害者に共通したのはまだ幼い子という事だった
「鏑丸はどう思う?俺は思い過ごしだとは思えないが…」
流石に子どもだけだったら怪しいと思うな、その鬼からしたら子どもの肉が好みなのかな?
「やっぱりか、俺もそう思う」
え?なにナチュラルに会話してんだって?
よくぞ聞いてくれました!いや、そう特別な話じゃなくて小芭内が俺の言葉を理解しつつある。以上
え?何?嘘だッ!だって?
いやさ考えてみ?何度も命がかかった任務を一緒にこなしてきたんだよ?そりゃ否が応でも意思疎通出来るようびなるよ。
いやーやっぱり分かんないか!無理もないよね!だって鬼殺隊に入った事無いもんね、いやー分かんないかー
とまあ謎マウントを取っていると何時の間にか空が暁色に染まってきている。
さてさて、こっからが本番だ
♦︎
「どうやら本当だったみたいだな、行くぞ」
俺は眠っていた木の上から静かに降り、蜷局を巻いた鏑丸を首に巻く
鬼は朝日を浴びると死ぬため夜にしか行動はしない。
辺りからは子どもがはしゃぐ声と不気味な笛の音が木霊する
子どもたちの後を音を立てぬように移動していると奇妙な事に子どもたちの列に人がどんどんと増えているような気がする。
そうして後をつけていると不意にその列が立ち止まった
「やあよく来たね、約束を守っていい子たちだ」
そう言って姿を表したのは一匹の鬼、口に笛をつけていて上背は子どもと殆ど変わらない。そして何より目に数字が刻まれている
――十二鬼月か!
それは鬼の始祖に近く、強力な鬼である証拠だ。遠くのためはっきりとした数字は分からないが俺が敵う相手じゃない。引き返し、明日に救援を頼もうとした しかし
「君はもう年をとっちゃったんだね、じゃあ――死んじゃえ」
「ッ…!蛇の呼吸!」
とっさに刀を抜き放ち鬼の脇腹を削ぐ。
さっきまで正面に居たはずのその鬼は何時の間にか背後に回り込んでいた
「痛いなあ…酷いじゃないか、これだから大人は嫌いさ」
そう言って鬼は塗りつぶされたような黒髪を払う、そしてその目には下参の文字がしっかりと刻まれている
(下弦である事が唯一の救いか…やるしかない…!)
目の前の鬼はおそらく今までのどの鬼よりも強い。
首に巻いた鏑丸がそれを戒めるように低い声色で威嚇している
「蛇の呼吸 壱の方『委蛇切り』」
一息に間合いを詰め、鬼の首筋を狙う
鬼はその一撃を尺八で防ぎ、辺りにはガキンッという金属音が鳴り響いた
「ふーん呼吸使えるんだあ。ねえ君今何歳?」
「…お前に答える必要はない」
「ふーん、やっぱり大人ってやだよね。子どもが言うことは全部否定する」
「…お前は子ども以前に鬼だ」
「そーいう所だよ、子どもは綺麗なのに大人は汚い」
刀と笛、娯楽と戦という真逆とも言える用途の双物が幾度とぶつかり合い、火花が空気に散る
「まあ良いや、少し話を聞いてよ。」
「…蛇の呼吸――」
「ちえっ勝手に話すね」
俺の剣を躱しながらその子鬼は勝手に語り始めた。
俺の剣など眼中に無いとも言うようなその態度に心を煮え切らせながらも刀を振るう。時折に俺の斬撃がソイツを掠めるが十二鬼月だからだろうか、異常な再生速度で傷が塞がる。
「僕はねえ時々あのお方と一緒に海を渡るんだけどさあ…そこで大人の醜さを知ったんだよお」
「そこは鼠に作物を食べられてて困っててねぇ。鼠を殺してくれって言うから殺してあげたのに約束の物はくれないし……だから子ども達が大人になる前に貰っちゃったんだぁ」
「…悪趣味だな」
「わあ!返事をくれたね!でも僕は悪趣味じゃないよ、大人が悪いんだよぉ。子どもは誰かの為に一生懸命になれるけど大人は自分の事しか考えられないもんねぇ」
「それがお前が子どもを食う理由か?」
「大正解だよぉ!子ども達も汚くなる事が無くなって感謝してるんじゃないかなぁ?」
「そんな訳がないだろう」
「は?」
俺は憤りを隠せないくらいに激昂していると自分でも感じた
体が熱い、ひんやりとした鏑丸の感触が心地よい
「もう良いよ、君に話すことも無くなっちゃったし…そろそろ死んじゃえ」
――血鬼術『独之笛吹男』
「ッ…!これは…」
笛を一際強く吹くと何処からか何十何百、いや何千という鼠が現れ、覆いかぶさって来る。
♦︎
かつて、独国のハーメルンという地域では鼠によって作物を食い荒らされる被害に困っていた。
そこである笛吹き男に依頼をし、鼠を退治してもらう事にした。男が笛を吹くと村中の鼠が男の後に続き、男は鼠を川へと落とし、鼠を退治する。しかしいざ金を払うのが惜しくなった村人は払う金をごまかした。それに憤った男がもう一度笛を吹くと今度は村中の子どもがぞろぞろと現れ、男の後に続いた。
そうして子どもがいなくなってしまった村は滅んでしまった、という逸話がある。
ハーメルンの笛吹き男と呼ばれるその童話に出てくる笛吹き男。それはこの鬼、独童子だった
「蛇の呼吸 伍ノ型『蜿蜿長蛇』」
小芭内は左右に蛇行しながら剣を振るい、鼠を両断していく。
鏑丸はその異常な食欲を此処ぞとばかりに発揮し、鼠を呑んで行くが如何せん数が多い。鼠の山はどんどんと膨らんでいき、だんだんとその山に呑まれていく
「蛇の…呼k…」
やがて小芭内の体の一端も見えなくなってしまった。
「あははは!僕の力ってすごいなぁ!」
月に向かって新しい玩具を手に入れたような口振りで独童子は笑う。
鼠を操るという一見地味な血鬼術だが独童子は子供のような柔軟な発想で改善した。
鼠に自分の血を飲ませたのだ。
決して強い生き物ではない鼠だから半数以上は血に耐えきれずに死んだが少しは残った、その鼠を使った小さな軍隊。それこそが下弦の参、この鬼がこの地位に漕ぎ着いた大いな要因であった
しかし――
「キシャー!!!」
鼠の群れから一匹の蛇が唐突に飛び出した。
真っ白い躰が夜空に映え、月光を一瞬だけ反射させる。その姿は神々しさすらも孕んでいた
「助かった…鏑丸…!」
「しぶといねぇ」
蛇が飛び出した穴からさらに一人が飛び出した。
所々を鼠に食われたのか血が滲み出ていて、息も絶え絶えだ
「まあ良いやぁ、さっさと食べちゃえ」
独童子がそう命ずると再び鼠達は伊黒達へと襲いかかった
「蛇の呼吸――陸ノ型」
小芭内は襲い来る鼠を眼下に収める事なく目を瞑った。
蛇の呼吸は伍ノ型までしか存在しない。しかし十二鬼月という強大な敵は小芭内に確かな変化を与えていた
「『鏑丸』!!」
剣先を真っ直ぐに鼠たちに向ける。
そして瞬きをするような――一瞬
小芭内は日輪刀を縦に一回、万力の力で振るった。
蛇の呼吸には存在しない直線の動き、それを小芭内は他の誰でもない鏑丸から学び取り、一瞬で型にして見せた。
その斬撃は目の前の獲物を残らず食い尽くす、まさに『鏑丸』と呼ぶに相応しい型が完成したのだ。
「くうっ!」
しかし急激に作った荒削りな呼吸の反動が小芭内を襲った。
頭に血が回っていないかのような痛みが走る、手足もじんじんと痺れて動くこともままならない。
(駄目だ…!堪えろ…!意識を保つんだ…)
小芭内は自信を鼓舞して今にも飛びそうな意識を保つが虚しく――落ちていった
♦︎
(何だあれは!ふざけるな!)
独童子は焦っていた。
鬼狩りの一人を確実に殺そうと全ての鼠を一気に襲わせたその結果は――惨敗
自身が操る鼠はもう一匹と残っていない、もう一度あの技を使われたらマズイ…しかしその思いとは裏腹に鬼狩りは地に倒れた。
「ふふふ、僕って神様に好かれてるのかなぁ?」
運が良い
そうとしか言えない。
鼠はもう一度あの数を集めるのは大変だが死ぬよりはマシだ、コイツが気を失っている間に殺そう
「じゃあねぇ」
右手で手刀を作り鬼狩りの頸に振り下ろそうとした――その刹那
「シャアーー!!」
さっきの蛇が頸に噛み付いた。
「っと痛いなぁ!」
蛇の尾を引っ掴んで側に投げようとするが絡みついて上手く引き剥がせない。
すると次第に自分の体が弱っていくのを感じる。慌てて死物狂いで引き剥がそうとするが時既に遅し
「があああぁ!!何で!?何で体が!?」
自分の体の色がどんどんと紫色に染まっていく。次第に立つことも難しくなり、膝を折る。
「痛い!!痛いよぉ!」
そう叫んでも誰の耳にも届かない、誰も孤独な童子を助ける術を持ってはいない
独童子はそうしていると虚空に何かが見えるのを感じた
(あれは?何だかよくわかんない…でも……もう疲れたな…)
独童子は命を枯らし死へと至るその一瞬に鬼と化す前の記憶を見ていた
裕福な家庭に生まれた独童子は
そんなある日、両親が出かけているのを良い事に生まれて初めて家の外に出た。
――友達が出来た
家という名の檻から解き放たれた解放感に舞い上がったが…そう長くは続かなかった。
家族にはすぐバレ、それ以来仕事をするまで家から出る事は許されなかった
何年も経ってようやく仕事が出来る年齢になった時、遂には友達と再会した――しかし
昔のようには行かなかった。
やたら丁寧に話され、それは邂逅と言うよりも接待だった。
自分と昔の友との間に出来た壁は大きく、高い物だと思い知った
行き場のない憤りは両親に向かい、気づけば二人を――
「貴様のように歪んだ人間は鬼になると良い、私の血を分けてやろう」
そうして独童子は鬼へと至った。
人から鬼へと至る時、その姿は自身の望みを強く反映させると言う。
独童子はただ――失われた子どもの時間が欲しかった
(だけど…それももう駄目だ)
自分は死ぬ。嗚呼、子と言うのは不幸なものだ
大人になれば何一つとして良い事などない、それなのに親が望むから大人へと早く至ろうとする。
「それは違うぞ」
「ッ…!」
答えたのは父だった
自分を家という檻に閉じ込め、大人という地獄へと背を押した…
「すまない…私はお前を分かってやれんかった…!」
「…父さん?」
気付けば辺りは山奥などでは無かった
辺りは真っ白な場所で、自分の上背も人間の時のように大柄になっていた
「大人と言うのは確かに大変だ…でも……だからお前には早く大人になって欲しかったんだ…!」
「父さん…」
独童子はようやく父を理解した
子はいずれ大人になり子を残す、そしてその子は大人になりまた子を残す――
(何時までも子では居られない)
だから父は自分を守ろうとした、あの家に自分を縛るという方法で
何時までも子でいようとすると大人になった時、大きく傷付く
――だから親は早く大人にさせたがるのだ
「お父さん!僕…僕!」
自分の重ねた罪を知り、罪悪感から漏れる贖罪の言葉が独童子から漏れ出る
「ごめんなさい!悪い子でごめんなさい!痛いことしちゃってごめんなさい!何にもわかんなくて本当に…本当にごめんなさい!」
少しだけ煙草が臭う父の胸元に顔を埋めて何度も懺悔する。
父は何も言わずにただ自分の頭に手を置いてくれる
――母さんも待っているぞ
父さんがそう言うと同時に僕は――光の粒子となって消えた
オリキャラの鬼の元ネタは言うまでもなくハーメルンの笛吹き男ですね
無惨が外国に行くのかは知りませんがそこは二次創作って事で多めに見て欲しいです
この後、鏑丸は人化します。そこでヒロイン希望を聞いて見ます
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胡蝶しのぶ
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甘露寺蜜璃
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竈門禰豆子
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TS伊黒小芭内(割と本気)
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いらない