ISの世界に来た名無しがペロちゃんと命名されてから頑張る話 作:いつのせキノン
やってきましたイギリス。正式名称はグレートブリテン及び北アイルランド連合王国である。長ったらしいね!! いわゆる英国、紳士の国である。俺の主観的な思い込みだが。
隣には俺の腕にしがみつく形でキョロキョロと辺りを見回すくーちゃんと、読みづらそうにガイドブックらしきものを睨む束さん。この人本来ディスプレイで何でも済ませるから紙媒体のものが嫌いなんだろう。俺は小説とか紙媒体じゃないと読めない人だ。マンガはそうでもないが。
さて、何故我々が英国にやってきたのか。単純に引越しである。
くーちゃんが生体同期型IS、俺の妹(後輩?)になったのは前回述べた通りで、やっぱり俺のようにISコアの反応を自然と発してしまうらしい。身体に馴染むまで時間がかかるからだ。その為極力外には出ないようにしてたくーちゃんだが、拙い事にイタリア軍に嗅ぎ付けられた。戦闘沙汰になるような事はなく無事脱出出来たものの、流石にイタリア内にはもういれないとのことなので今回は海を渡って英国に来たのである。
そして現在、嬉しいことにくーちゃんの身体にコアも馴染んだようで同じ生体同期型ISを使う俺でも反応を感知できなくなった。お陰でもう追手も来ていないので、これからまたのんびりできるだろう。
「束さん、英語わかる?」
「科学英語なら完璧」
「ごめん、人と話したがらない束さんに聞いた俺がバカだった」
仕方ない。俺もカタコトだが英語は喋れる。全部コアが訳してくれるから。最近コアの用途が全部日常生活に使われてるんだけど。これって今本来なら殆どが兵器に運用されてるんじゃなかったっけ?
「すいませんお兄様。私も日本語とドイツ語しかわからなくて……、」
「ああ、いや、くーちゃんは仕方ないっしょ。束さんがそういうの積んでなかったんだし」
くーちゃんのIS“黒鍵”は翻訳機能とか入ってなかったらしい。じゃあ何で俺のは入っているのか。束さんの試作コアで取り敢えず片っ端から機能を詰め込んだとのこと。スゴいいっぱい入れたから束さんも全容を把握してないってさ。
「まぁ取り敢えず良い場所探そうか。出来れば人がいないとこ」
くーちゃんはともかく、俺と束さんは生粋のジパング民だから白人の中にいると目立つこと目立つこと。視線に晒されても俺は興奮したりしないのでさっさとここを抜け出したい気分だ。くーちゃんも外の景色に慣れていないのか俺と束さんの間で少し怯えてるし。
「よし、ペロちゃん、くーちゃん。ここに行こう」
そう言って束さんが示した場所はイギリス北部のグラスゴーの街だ。
「一端ここに行って、それから少し南下。ホワイトリー・フォレストってとこにでも身を隠そうかな」
「結構都市部から離れてるんだな」
「軍に察知されるとまた面倒事になるからね。もうくーちゃんのISも心配ないし、危ぶむこともないけど念の為に。それに、ペロちゃんもいざって時は周りに誰もいない方が動けるでしょ?」
まぁ確かに、俺は色々まだ割り切れてない部分もあるにはあるんだが。
「街との行き来は束さんがさっさと手配しちゃうよ。それにほら、ペロちゃん単機ならステルスで往復できるでしょ? 買い物よろしくっ」
ホント、俺のISって何なんだろうな…………。
ロンドンからグラスゴーに飛び、次いでダーヴェルの町へと南下。そしてまずやることは物件の購入。取り敢えず仮でも良いので拠点が無い事には休むような事も出来ないので不動産屋へ。束さんが言う事をその都度何とか身振り手振りと英語にして伝え、手頃なのを手に入れた。入れるのは明日からなので今日は安いホテルでも取るということになった。
そして俺はというとくーちゃんと共に買い物である。束さんは新研究施設の設計をするだとかでホテルにいて、俺たちの任務は主に日用品とか食材の買出しなのだ。しかし右も左もわからない街、ナビゲーションがなかったら路頭に迷うことだろう。
グラスゴーやロンドンに比べて格段に人は少なくなったので俺も少し安心。腕に掴まっているくーちゃんも幾分か表情が和らいでいた。
「さて、まずは雑貨だな。なになに、シャンプーとトリートメントとボディソープ……ティッシュもか。ホームセンターってイギリスあるのかな」
「さ、さぁ。私も流石に……、」
「うん、まぁそうだよねぇ」
あることを願うしかないのか。
あった。ナビさん流石。俺のIS流石。てかコイツの名前決めてなかった。後で決めよう。
「お兄様、これで全部です」
「おー了解。束さんが好きなお菓子でも買ってOKだとさ」
どんなのがあるのか知らんけど。あれかな、紅茶とスコーンとか買ってけば良いのか。
俺が生粋のジャパニーズだったので色々説明してもらえた。おのぼりさんの特権って素晴らしい。
手頃な作りやすい紅茶とショートブレッドを購入。スコーンは作り方を調べて自分で作ることにした。どうせ暇になるのでやることはそれなりに残しておいた方が良いと思った独断である。基本束さんは自由放任主義なので何やってもオーケーである。自由万歳!!
「束さん帰ったぞー」
「ただいま帰りました」
西の空が微かに赤くなり始めたのでホテルに帰り束さんの待つ部屋に。束さんはと言うと窓際のテーブルで存分に空中ディスプレイを展開していた。と言うか、今の今までずっと作業に没頭してたのかあの人。
「束さん休憩にしましょ。紅茶淹れるよ」
「はぁーい」
キリが良くなったらねぇ、と束さん。その後ろからくーちゃんが興味津々といった様子で一緒に画面を覗き込んでいた。
その間に備え付けの電気ポットでお湯を沸かして紅茶を3人分用意。先ほど買ってきたショートブレッドも一緒に添える。
紅茶をテーブルに並べてイギリスならではのティータイムである。優雅だね。因みに俺と束さんはストレートでくーちゃんはミルクティーを用意した。俺も今度ミルクティー飲もう。
「美味しいですね」
「本場の味って言うか、イギリスに来てるって思い込みだけで変わるんかな」
「人の味覚は人それぞれって言うしねぇ」
つまりは美味しいのである。
「ペロちゃんはこの後やることある?」
「んー、そうさねぇ。取り敢えず、束さんの言うホワイトリー・フォレストを下見してくる。夕飯はちょっと遅くなるかな」
「なるほど。くーちゃんは?」
「私は……、特にやることがないのであれば訓練も兼ねてお兄様について行こうかと」
「ふむふむ。じゃあレストランには7時集合にしよっか」
即決。現在午後3時ちょい手前。4時間あれば大体のところは見れるだろう。
「まぁ、もうちょいブレイクタイムを楽しむということで」
俺の間延びした声に、二人も小さく頷いた。
茜色の空を飛ぶ。何ともロマンチックなことか。西の空に沈む真っ赤な太陽が綺麗だった。
「こんなに綺麗なんですね、外の世界は……、」
俺の横を並走する、俺のISと似たような熱光学迷彩モドキを纏って飛びながらついてくるくーちゃんが呟いた。そう言えばくーちゃんはずっと地下施設に篭もりっぱなしで外の景色をこうやって眺めることは無かったんだ。外出する時はずっと周りをキョロキョロしていたし、イタリアからイギリスへ飛行機に乗った時も終始窓の外を眺めていた。その横で束さんは年甲斐もなく涎を垂らして寝ていたんだが……。ともかく、くーちゃんにとっては見るもの全てが興味津々な訳だ。積極的に外に連れ出せば良い刺激になるかもしれない。その辺りだったら束さんも許可してくれる筈だ。
「くーちゃん、今度どっか観光に行かないか? 勿論、束さんも誘って」
「観光、ですか?」
「そ。俺にとっては当たり前だった夕日も、くーちゃんにとっては綺麗なんだ。だったらもっともっと色んな場所で、色んな景色を見てもらおうと思ってね」
さてどこが良いか。やっぱり遺跡なんかだろうか。俺が行きたいのもあるけど。
多分、束さんは「くーちゃんがいればどこでも大丈夫だよっ」と言うだろう。あの人はくーちゃんを本当の娘のように可愛がっているから。
「束さんがさ、くーちゃんが寝てる時に言ってたんだ。世間知らずなくーちゃんをいっぱい外に連れて行ってあげたい、ってね。自分が言うなよって自覚はあったみたいだけど、それでも束さんはくーちゃんが大事なんだ。それに答えてあげるのも、一種の恩返しなんじゃないかと俺は思う」
「あ……、」
思い至った様な表情をするくーちゃん。実は彼女、お世話になりっぱなしなのを悪く思ったのか、度々一人で何かしようと頑張ってはいるが、結果があまり出せていないのを俺は知っている。束さんも見て見ぬふりをしていた、というか、微笑ましい表情で癒されてた。
「あんま気にしないでくれよ。くーちゃんは、言っちまえばもう家族みたいなモンさ。遠慮しないで、俺みたいにガンガン喋ってくれな」
「…………はい。ありがとうございます、お兄様」
くーちゃんが笑う。俺もつられて笑った。
ここまで愛読(?)いただきありがとうございます。そしてお疲れ様です。
たまにはちょっとぐらい真面目なあとがきを、ね? これで一章ラストだし。
取り敢えず記述通り、ここまでが第一章です。次回は何も考えてません。
一週間強の毎日更新は全てその場の勢いとノリでしたので。
本編の次回はさておき、次話は番外編……俗にいいうIFルートを投稿しようかと。一話だけ書き終わってます。大分本編の一話と似通ってます。そうしないとペロちゃんじゃないしね!!(断定)
本編進めやがれって人は遠慮なく感想やメッセージでどうぞ。
特に何も無ければ週末くらいには番外編一話投稿します。因みにキノンの気分で投稿日は変わりますのでご了承を。
意見感想(あと批評)お待ちしてます。
PS
読んでたISモノが鬱過ぎて精神的にヤバい。原作キャラ死亡は認めない訳じゃないけど会長死ぬとか……オロロ(´Д`)ハァ…