ISの世界に来た名無しがペロちゃんと命名されてから頑張る話   作:いつのせキノン

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あけおめ!(今更)


考えてみれば適当とテキトーの違いがわかっていなかった自分がいた気がしないでもない

 照り付ける太陽の元、ペロちゃんと命名された俺はISを展開しでっかいコンテナをぶら下げて空高く漂っている。

 

 やぁ。久しぶり。

 

 旅行3日目の今日は束さんたっての希望でビッグイベントやるそうです。お空の上で待機しているのはそのため。

 昨日のほんわかした空気から一転、現場は少し緊張した雰囲気です。俺しかいないけど。束さんはいつも通りフリーダムに、くーちゃんも落ち着いて待機しているところだろう。

 昨日はと言うと夜遅くまで束さんと色々話し合いつつちょこっとお酒を嗜んでた。カクテル美味しかったです。そうそう、実は2週間前くらいに成人してた。初耳? うん、今初めて言ったからね。束さんがちゃっかり買ってきてたおつまみを貰いながら今日の計画を練っていたのだ。俺は殆ど何もしてないけど。因みにくーちゃんは早々に寝落ちしてた。海で泳いだ疲れがあったらしく、起きようと必死になってコクコクと船を漕いでいたのは可愛かった。結局途中でグッスリだったけどね。

 

 現在の時間は10時前。もうそろそろ束さんから合図が、っと思ったところでシグナルを受信。コンテナを落とさないように降下開始。降下と言ってもギリギリまでは自由落下するんだけど。

 このコンテナの中身は例の『紅椿』。妹さんへのプレゼントだ。箒さんと言ったか。姉が束さんなら妹はどうなんだろうと気になるところである。

 

 地面が迫ってきたところで再度ブースターを点火して調整。束さんと他数人が待機している話の中へ向けて慎重に着地し、背負っていたコンテナを降ろした。

 

「ありがとー、ペロちゃん」

『いやなに、余裕のよっちゃんよ』

 

 待機してた束さんとタッチ。あとは束さんのお仕事だ。あ、因みにボイスチェンジャー使って声変えてるんで男だとはバレてないです、恐らく。

 と、後ろから視線を感じる。ハイパーセンサーで見てみると先生代表候補生の方々とあと2人。男子が織斑一夏くんだとすると、もう1人の女子は箒さんかな。

 

 …………え、マジで? 雰囲気めっちゃ違うやん。マジでこの人の妹かよ、義理って言われる方が信じれるレベルなんだけど。まぁ束さんが言うんだから嘘はないんだろう。

 

 で、その人達とても驚いた表情でこっち見てる。何でだろうって思ったけど闖入者というよりはあれか、多分だが俺が束さんと話してる状況に驚いているんだと思う。

 束さんは、曰く特定の人物以外とは口をきかないらしい。以前コミュ障かなってボソッってすんごい小さい声で言ったのに光の速さでジャーマンスープレックスされて床に頭からめり込んだ覚えがあるので間違いない。あの後でくーちゃんに一部始終の様子がどうだったか聞いたらはしたない上に嬉しくない光景だったとのこと。パンモロもTPOを弁えないといけないと学んだ瞬間だった。どうでもいいか。

 

「…………束」

「なんだいちーちゃん。質問ならどーんとこの束さんにお任せあれ!!」

 

 厳しい視線で俺を見るちーちゃんさん。なるほど、彼女が要注意人物か。

 

「その人は、知り合いか?」

「ノン。束さんのナカーマなのだー。ね?」

『応ともさー』

 

 めっちゃ怪しい視線で見られてる俺。女王様に見られてるみたいでゾクゾクしますな、主に命の危機的な意味で。

 

『そんじゃあ配達終了したんで帰りまーす』

「待て」

『えー。ほらここは帰らせて下さいよー、怪しい人物は怪しいままにしてー、後で大々的なフラグ回収がーってやらなきゃ。ね?』

「……逃げたいだけか?」

 

 バレテーラ。

 

『ほいじゃ!! 束さんわっちは帰りまーす!!』

 

 さっさと離脱しましょう離脱。いのちだいじに!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 空へ飛び去って行くISの影を見つつ、織斑千冬は何とも言えない嘆息を1つした。とにもかくにも篠ノ之束が自分の知らない未知の人物を戦力の1つとして保有していることが判明したのだ、警戒しないに越したことはない。

 

「まぁまぁともかく~、箒ちゃんには束さんから一世一代のプレゼントを進呈致しまぁ~っす!!」

 

 指パッチンを1回、コンテナの上面が吹き飛んで側面がばったり倒れる。

 

「これが、『紅椿』……、」

 

 鮮やかな赤色の装甲に包まれたISを見上げ篠ノ之箒が小さく呟いた。その一言の中に表された感情とは何なのか。

 

「とんでもない物を持ってきてくれたな、束」

「いやぁ、それほどでもぉ。まぁ安心しなよちーちゃん。第4世代程度じゃロクなことも出来ないから」

「だからな……いや、もう何も言うまい」

 

 コイツのやることなすこと全てで世界の動向が変わる。そのことは痛い程よくわかっている。束の数少ない友人なのだから。

 

「博士の目の前で第4世代を拝める日が来るとは……、」

「一生かかっても叶うことはなさそうだったけど……、」

「取り敢えず喜ぶことはして良いのでしょうか……?」

 

 ドイツ軍所属階級少佐ラウラ・ボーデヴィッヒ、フランス代表候補生シャルロット・デュノア、イギリス代表候補生セシリア・オルコットの3人は未だに目の前の現実が受け入れがたく固まっている。それもそうだ、彼のISの生みの親が目と鼻の先にいるのだから。

 

「箒ちゃんは取り敢えず最適化(フィッティング)しちゃうから乗ってみて。その間にプレゼントの詳細をプレゼンしよっか。まずはこちらのディスプレイをご覧あれっ。ISの名称は『紅椿』、見た目の通り真っ赤に染めてみたよっ、箒ちゃんにはぴったりのカラーだね」

 

 いつの間にかかけたメガネをクイッと上げて知的アピールをしつつ指し棒で空中ディスプレイの1点を指す。

 

「そしてこの第4世代の目玉と言えばこの『展開装甲』!! いっくんの『白式』では限定的かつ試験的に導入した物を正規化した物が『紅椿』のコレなのですっ」

「へっ、俺の?」

 

 と、いきなり指を差された織斑一夏が惚けた顔をする。

 

「そうそう。いっくんの『白式』の単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)に零落白夜ってあるじゃん? アレ。すっごい簡潔に言っちゃうとエネルギーに指向性を持たせて噴出させる機構なんだけどね。燃費が悪くなるって欠点に余りある長所が性能として出てるってワケ。ねっ、ちーちゃん?」

 

 ウィンクをして振り返る束に千冬はそっぽを向いてノーコメント。

 

「むぅ、いけずなぁ、ちーちゃんはぁ。ともかく、性能は束さんの折紙つきだから心配ナッシング!! っという訳で箒ちゃん、最適化(フィッティング)終わったし試験してみよっか」

 

 相変わらずのデタラメな速さに千冬と一夏以外が驚愕する。話の片手間に仕草も見せずやってのけるのは天災と言われる所以であろう。

 

「そう言えばちーちゃん、マニュアル操作の方法って教えた?」

「私がロクに出来ないのに教えるも何もないだろ」

「そっかー、じゃあ普通にトランスオートでいいねー。箒ちゃーん、好きなイメージで飛んでみてー。普通の打鉄とかと同じだと思うよー」

「は、はぁ……」

 

 トランスオートはイメージをそのままISの動きにトレースさせる操作方法である。上昇したければ上昇しろと命令し、右に行きたければ右に行けと命令する。ブースター、スラスター、バーニアの調整は全てISが処理するものだ。

 対してマニュアルとは全ステータスの情報を把握した上で姿勢制御も含め全て自分の意志で行うものとなっている。脳内処理項目が格段に増えるため実戦で用いる人間はまずいないし、そんなことをしていてはIS操縦習得まで年単位の練習が必要になる。基本操作だけでそんな時間はかけられない以上、この操作方法は殆ど廃れていると言っても過言ではなかった。

 

 『紅椿』が加速しつつ上昇していくのを見送りつつ、ふと束が独り言を零す。

 

「いやぁ、折角マニュアル操作作ってみたけどマスターできる人って出てこないものなんだねぇ」

「お前はアレを人間にやらせるのか? 私でも限定的にしかできないんだぞ」

「おお、ちーちゃんは自信満々だねぇ、まるで自分はそれなりにできるんだって、言ってるみたいだ」

「……………………………………………………、」

「おっとぉ、そんなに睨まないでよちーちゃん。人間やっぱり他人より優れている点は自慢したくなる性なんだからさ。そうだね、取り敢えずIS操縦に関してはちーちゃん以上に上手にやってのける人はいるよ。高速戦闘機動に関しては右に出る奴はいないって断言できる」

「嘘じゃないだろうな」

「束さん嘘つかなーい」

 

 誰だろう。腕を組み目を閉じて考えてみる。少なくとも千冬が知り合っている人物ではそんな人はいない。となると最近束が掘り出した人物ということになる。ISに関する情報はIS委員会にパイプがある千冬には異様なほど早くわかる。それでもそんな情報を補足できていないということは隠蔽されていることになり、IS委員会程の組織でもわからない情報ということだ。そんなことができる人物は束以外心当たりがなかった。

 

「……おい、まさか」

「あ、わかっちゃった? だよねー、ちーちゃんならわかるよねー。あ、でも口出しは許可しませんっ」

 

 束が人差し指をそっと千冬の唇に当ててくる。この情報は、世界を混乱させるだけの衝撃を充分なくらいに内包してしまっている。しかも束がその人物を抱えているとなれば尚更だ。

 

「お、箒ちゃん試験高度に到達。そいじゃあ戦闘訓練もやっちゃおう。ミサイル飛ばすから迎撃してみて。武装選択は自由にどーぞ」

 

 と言っても今使えるのは雨月(あまづき)空裂(からわれ)だけなんだけどね、という茶目っ気たっぷりなわざとらしい声に箒は小さく嘆息してから両手に武装を呼び出す。両方とも刀の形状をした物で右手が雨月、左手が空裂というらしい。剣や銃よりはよっぽど使いやすい。

 

「その武装は近接用の他に中距離用のシステムも複合されててね。コマンドは全てムーヴアクション、雨月は刺突時に直進レーザーを発射して、空裂は斬撃をエネルギーにして飛ばせるんだ。まぁ所詮はエネルギー攻撃なんてオマケだし減衰も激しいから期待しない方が良いかもね。じゃ、ミサイル飛ばしちゃうよーっ!!」

 

 ポチッとな、と束が手の中の赤いボタンが付いた良く見た事のあるスイッチを押すと周辺にミサイルコンテナが出現しハッチが開いて中からミサイルがバラバラの軌道を描いて飛びあがった。

 目標は『紅椿』そのもの。箒はまず空裂を構えミサイル群目掛けて一閃。光の帯がミサイルを纏めて()いだ。が、時間差で光の帯をやり過ごしたミサイルが煙を突き破って1つ飛び出してくる。目の前に迫るソレへ、箒は雨月を付きだす。切っ先から飛び出す光の筋があっさりミサイルを真ん中から貫いて爆発した。

 まだ終わらない。ハイパーセンサーが捕えた真横からの熱源反応。左右から再びミサイルの雨が迫っていた。第1陣が同時に『紅椿』へ到達、第2陣は僅かに遅れて届く、中々に面倒な構成だ。

 だが、と箒は不敵に笑みを浮かべていた。この『紅椿』ならば対処は可能であると。打鉄等の量産機とは違うと。

 ミサイルを少し引き付けてから真上へ急上昇。皮膜装甲(スキンバリア)で大きく軽減されたGを感じながらすぐに真下を振り向けば、ミサイルのいくつかが『紅椿』目指して上昇してきているのが見えた。極少数は目標を見失って水平に飛び続け、反対側から飛んできたミサイルの誘爆に巻き込まれていた。

 今度はすぐに迎撃するのではなく追従するミサイルから距離を離しすぎないように逃げる。ターン、チェンジオブペース、サイドブースト、試せる動きを駆使して回避し続ける。

 

 操作性能も機体性能も抜群に高い水準にある。『紅椿』を駆る箒は高揚感に包まれていた。これで他の代表候補生に遅れを取ることはない。それどころか、この機体であれば追い抜くことだってできる。そんな自信に満ち溢れていた。

 余裕を持って更に加速。ミサイルをあっさりと置き去りにし反転、空裂を格納し正眼で雨月を構える。普通ならば捉えるのも難しい速度で迫ってくるミサイルも、今なら遅く見えた。箒は剣道は落ち着いて雨月を構え、突く。

 

「テストモードしゅーりょー。箒ちゃん、お疲れ様」

 

 テスト空域を離脱し再び地上に戻って着地。ISを解除すると鈴の付いたリストバンドが手首にかかっていた。

 

「箒ちゃんのISだから、大事に扱ってあげてね」

「はい、姉さん」

 

 リストバンドを嬉しそうに眺める箒にニコニコと笑いかける束を見て、千冬は一抹の不安を感じ取った。あまりこれはよろしくないと。

 

「おっ、織斑先生ーっ!!」

 

 その不安に追い討ちをかけるがごとく、焦った表情の副担任である山田真耶が慣れない砂浜を危なっかしく走ってきていた。

 

「に、任務コード、特3が発動、至急1年生の専用機持ちを召集せよ、とのことです……っ」

 

 不味いことが立ち続けに起こるものだ、と千冬は心の中で毒づいて何をすべきか考え始めるのだった。

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