ISの世界に来た名無しがペロちゃんと命名されてから頑張る話   作:いつのせキノン

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しょぼい展開なんてのはキノンが一番理解してる


素敵なパーティーやりまっしょい

 今頃は束さんが色々頑張っているだろうか。太平洋の真ん中で熱光学迷彩を展開して待機しつつ日本で起こってることに思いを馳せる。

 

 毎度お馴染みペロちゃんです。

 

 今言った通り俺は太平洋上アメリカ寄りの場所に待機中。丁度ここに来るとき入れ違いで白い光が日本へ一直線に飛んで行ったので順調なのだろう。

 くーちゃんが索敵兵装をガッツリ積み込んで(そら)から中継で映像を見せてくれてるので楽だ。

 

『お兄様の足元には及びませんが、既存のISにしては異様に速いですね』

 

 現状くーちゃんとは回線を開いて会話中で束さんとも一応繋がっている。束さんの場合はメッセージによりやり取りになってるけど。

 

「競技用と軍事用じゃチューンも変わってくるからな。それに今ある最新技術を詰め込んだ代物って話だ、競技用ISだと上手い具合に嵌めなきゃ対処は無理だろうよ」

 

 スペックは俺と同等か。まぁしかしこちらには搦め手も策も道具も余りある。

 

「――――っと、やっぱりか。束さん、くーちゃん、俺は足止めに入る。フォローは入れねぇから頼んだ」

『了解しました。お気を付けて』

 

 束さんからはわざわざ顔文字入りで『がんばれ(^o^)=b』と送られてきた。器用な人だ。

 

「さて』

 

 外していたヘッドパーツを再び装着しブースターとスラスターを噴かし、ハイパーセンサーが捕らえた影へ迫る。

 久々に見たぞ、『ファング・クエイク』。今回は武装もフルチューンされてるみたいだ。向かう先は『銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)』だろう。予想的中って訳だ。

 

『失礼、少し待ってくれ』

「ッ、誰だ!?」

 

 『ファング・クエイク』の前に迷彩を解除しながら躍り出る。バイザーに隠れて見えないが相当驚いてる様がわかった。

 

『アメリカ国家代表イーリス・コーリング。世間話をする気はあるか?』

「……どこの所属だ。こっちは作戦行動中だぞ、邪魔するなら排除する」

『そう血気盛んにならないでほしいんだが……、』

「黙れ!! こちとら非常事態で忙しいんだ!! 3秒以内にそこをどけ、どかなきゃ無理矢理押し通る……!!」

 

 交渉決裂らしい。3秒きっかり経ってから突っ込んで来た。近接戦闘は向こうの十八番、まともに組み合ってたら損害も洒落にならない。が、距離を離すと俺を無視して飛んで行きかねないのでここが苦しいところだ。相手の得意とするレンジで相手をしなくちゃ今回の仕事は成功しない。

 突き出してくる拳や鋭い蹴りを最小限で避け、ダメージには期待せず反撃。捕まることだけはないようにゼロレンジギリギリのリーチからちょっかいを出す。

 

「チョロチョロチョロチョロと、この情けない奴(ウィンプ)め……!!」

『相手のペースに乗らず、自分のペースに乗せる。基本じゃないかね?』

Shut up(黙れ)!!」

 

 影が霞み一瞬でスペースを潰してくる瞬時加速(イグニッション・ブースト)、発動直前に真横へ移動して回避を――――、

 

「甘い!!」

『ッ』

 

 個別連続瞬時加速(リボルバー・イグニッション・ブースト)!? なんつう無茶通しやがる、皮膜装甲(スキンバリア)でも軽減の限界があるってのによ……!!

 加速中に無理矢理方向転換するようにまた加速、離れるどころか距離を詰められタックルで吹き飛ばされる。痛いな畜生、ダメージはないが衝撃だけで空中をかなり滑った。おかげで向こうはとっくに離脱してやがる。逃がすかよ。

 

【システム、超々高速戦闘機動モードに切り替えます】

【最適化を行います】

【シールドバリアの耐久性低下】

【カメラ感度調整/完了】

【ブースターを非固定(アンロック)から固定(ロック)へ/完了】

 

 刹那に音を置き去りにして遠くにいた筈の『ファング・クエイク』を背中から踏み抜いて海に落とした。

 小さく悲鳴が聞こえたけど、それ以上に嫌な音がした気がする。骨やってなきゃいいんだけど……。咄嗟にブースター狙って蹴ったけど音速超えの一撃だったし、ちょっとやり過ぎた。

 

「ガァァッ!!」

『ッ』

 

 海が割れたかと思ったら眼前に拳。全力で首を傾け、パーツだけが吹き飛んだ。あと、左耳の鼓膜が今ので破れた。衝撃だけでこれか、脳震盪にならなかっただけマシだと思えよ俺……!!

 追撃を回避して蹴りを叩き込むが腕で防がれ捕まえようとするが素早く反転し逆足で蹴る。これも防がれた、が、体勢は崩せた。それに、

 

『背中を痛めたな?』

「ッ、テメェ……!!」

 

 動きがぎこちない。誤魔化しても無駄だし、キレが無くなった時点でまるわかりだ。

 殴りかかって来るが、振り上げたところで一瞬動きが止まり顔をしかめた。可哀想な話だが有効活用させてもらおう。

 

『無理は禁物だぞ。怪我をさせた手前申し訳ないが、下手をすれば一生響く。大人しく安静に治療をだな……』

「づッ……ぃ、テメェ、はァ……ぁ、い゛……っ!?」

 

 殴れず、ぐらりと体勢が崩れる。相当痛い筈だ。もし背骨を本当にやられてたら一生モノだから真面目にヤバい。下半身不随とかも有り得る話だってのに……コーリングさんは退こうとはしていない。バイザーの隙間からは脂汗もびっしょりかいてるし震えてる様子もよくわかる。苦しんでる証拠だ。

 …………正直なところ心苦しい。仕事とは言え何か息が詰まるのは確かだ。彼女は何もしてないし、寧ろこっちが起こした事に巻き込まれてる訳だ。普通から見れば俺が悪者になる。

 

『…………例え貴方が「白銀の鐘(シルバリオ・ゴスペル)」の元に行ったとしてもその調子では役に立たない』

「フーッ、だから……フーッ、だから、どうした……!!」

『自分の身を捨ててまでやることじゃない。「銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)」搭乗者は無事に戻ってくる』

「しん、……ようっ、できねェ……っ!!」

『だろうな。だが今はこの言葉を信じるしかない。貴方は強いが周りが見えていない上にこれ以上の無理はただの自滅だ。時間がくればやがて勝手に落ちる』

「う、る……さぃッ……!!」

『客観的に自身の状態を観察すればわかることだ。貴方は自身の人生を棒に振ることになる。それで良いのか?』

「知る、ッ、かよ……仲間見捨てて……いい気分に、なんか……なれねェッ!!」

 

 『ファング・クエイク』が突っ込んでくる、が、その速度はずっと遅い。無意識に体の不調から制限をかけてしまってる状態だ。トランスオートのだからこその弊害と言えよう。

 

『残念だが、』

「ッ!?」

『大人しくしててくれ』

 

 余裕をもって回避、すれ違い様に肩のスラスターを右手で掴み、左手にパイルバンカーを展開して叩き込む。轟音が装甲をあっさり貫いた。

 間髪入れずに、今度はリロード中の左手で逆のスラスターを捕まえて右手にパイルバンカー、破壊する。これで機動力は軒並み低下した。コーリングさんは衝撃に顔をしかめてロクに動けやしない。

 離脱しようとするところをバイザーを鷲掴みにして無理矢理砕く。

 

『表情が苦痛そのものだ。諦めろ』

 

 無防備なそこへ、久々に『エグゼ・ドラゴニア』を展開して食わせる。向こうに避ける余裕はなし、上半身と膝近くまでをバックリと飲み込み、衝撃。アギトの内側から火花と放電が飛び出し、大きく身体が痙攣して動かなくなった。バイタルはまだ安定しているから問題はない。

 武装を解除し、苦悶の表情で気絶しているコーリングさんを抱える。

 

『……応急処置くらいは、させてもらおう』

 

 そんぐらいはしないと良心が痛む。情けない話だ。

 さて、しかし空中で応急処置をできるほど俺も器用じゃないのでどこかしら床が欲しいものだ。辺り一面全て海、流石に宙に浮くタンカー的なサムシングは量子変換(インストール)されてなかったよ。

 と、思ったがハイパーセンサーが次の動くものを捉えた。西側から来る……ISよりはずっと遅い、が、既存兵器、こと艦船においてはその巨体からは考えられない速度でこちらへ一直線に向かってくる。

 なんだありゃ……『銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)』も現代のISからすれば充分オーバースペックだけど、今こっちに来ているアレはまた異質だ。

 艦船なのだろうが推進方式はスクリューではなく背部のロケットエンジンと、恐らく喫水線付近の電磁推進装置。速度は……約80ノット(時速150km相当)。全長120m、高さは30m。水面上を滑るように移動しており、海面下の喫水はゼロに近いだろう。流線型のフォルムを基礎にした黒い金属の塊、全体的に艦首から丸みを帯びていて空気抵抗を極力無くす仕組みのものだ。形としてはシャチを太くしたものに近いかもしれない。

 十中八九アメリカさんの……それも地図にない基地(イレイズド)の所有物。ヤバイな、完全に敵として認識されてる。

 さてどうしようか。多分だがあの艦船、速度を維持しないと浮かべない奴なんじゃないかと予想している。距離的に考えて止まることはないだろうし、そうなれば向こうの狙いはコーリングさんの奪取だ。

 案の定というかIS……のような何かが5つほど飛び出してきた。しかしISに比べると装甲も武装も少ない……EOSと言ったか。多分だけど空中機動に特化させたタイプのものだろう。

 

「ターゲット及びタイガー1、確認。接触(エンゲージ)

「「「「Sir!!」」」」

 

 体長らしき屈強な男を中心に俺を包囲するように陣形を取る。穏便に済ませてくれるんかな……。

 

『彼女のお迎え、でよろしいかな?』

「……そうだ。彼女を解放してほしい。さもなくば、」

『力ずくで、か? バカを言え、EOSでは何も出来ない』

 

 EOSの機能なんてのは精々力を増幅させる程度のもの。IS程多機能ではなく、寧ろ単機能特化のパワードスーツだ。戦闘力は当然のこと低い。

 

「貴様は我が軍に包囲されている」

『ISの戦力はイコールで国家軍に匹敵する。高々一部隊でどうにかできるとでも?』

 

 今の僅かな観察でわかったことだが、EOSはそこまで細かい空中機動が得意な訳じゃない。飛んでいる間の僅かなふらつきでわかる。戦闘に入って真っ先に落とせるだろう。

 それはこの人達だってわかってる筈。それであるのにこうして強く出られるのは……恐らく母艦の存在。俺達の周りを旋回している高速の艦船こそが切り札なのだろう。

 

『……彼女は解放しよう。その代わりに条件として作戦領域離脱まで手を出さないとしてもらう』

「……………………………………………………、」

『出来ないか? 確かに作戦を妨害されたら拘束せざるを得ないことはわかる。が、抵抗されてしまえばそれまでだ』

 

 隊長らしき人の表情が険しいものに……いや、最初からなんだけど。雰囲気から察するにちょっと気を悪くしてるっぽい。

 

『要は人質だ』

 

 IS用のハンドガンを展開しコーリングさんのこめかみに押し付けた。周りの隊員たちが慌て出す中、隊長だけは本当に静かにこちらを見据えている。肝が据わった人だ。

 

『どうする?』

「……………………彼女を解放してもらう。こちらは手を出さないとしよう」

『賢明な判断だ。ああ、とんちにして足は出すなよ?』

 

 ケタケタと笑ってハンドガンを量子化し隊長機の元へ。気絶しているコーリングさんを手渡す。

 

『背中を痛めている。今後の活動に影響が出ないようケアしてやってくれ』

「……妙な奴だ。何故そんなことを言う?」

『良心、かな。まだ人を殺めたことは無いよ』

 

 多分。研究所爆破した時は一応死人出なかったみたいだし。

 

『多分、これっきりだ。もう邪魔することも無いだろうよ。保障はできないけど』

 

 隊長さんへ確かにコーリングさんを渡し離れる。隊員達の包囲網を離脱するが、周りは誰も動かなかった。

 

『お達者で、「名も無き兵たち(アンネイムド)」』

 

 ブースターを点火、マッハ3で空へ駆け上がる。大きかったあの船も、数秒で豆粒のように小さくなった。




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