ISの世界に来た名無しがペロちゃんと命名されてから頑張る話   作:いつのせキノン

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もう夏終わりじゃね?


冷やし中華、はじめました(n回目)

 

 冷やし中華が美味しい季節だ。昼飯用に作ったそれを食べながらそんなことを思う。

 

 どうも、ペロちゃんです。この前から引き続き織斑家にて居候中。

 現在家には俺と織斑君とくーちゃんが。ちーちゃんさんはまた学園に戻って仕事があるとかで、束さんはそれについていった。終始面倒そうなちーちゃんさんを見てるととても忙しそう(他人事)って思った。

 

 3人でぼんやり麺を食べつつ平日昼間のテレビのバラエティー番組をなんとなーく眺める。お昼に合わせてか都内の飲食店をリポートするやつらしい。夏の定番冷やし中華を中心にやってる。

 

「なんかここで有り合わせ食ってるとテレビ番組に嫉妬したくなるな」

「余り物から作ったものですからね、本場には負けるかと。私はお兄様の手作りの方が好きですが」

 

 くーちゃんがそんなことを言ってくれるなんて、俺は今最高に嬉しいよ……!!

 

「つってもよっぽどのいい店行かない限りはどこ行っても味は同じだしな」

「安くない金銭を払ってまで堪能したいか、と問われれば否です。安価な飲食でも、こうして食卓を囲む方がよっぽど有意義かと」

「やっぱ好き勝手のんびり他人の目を気にしない方が一番だよなー」

「ですね」

 

 織斑君が「この人達すっかり馴染んでるな……」って視線をしばし向けてきて、また逸らす。そう言えばこの織斑家だったね。

 世間にとって、自分にとって、他人にとって心底どーでもいいことを変な建前付け足して適当に喋る。論点もなく結論もなく考察もなく。いいもんだ。休日、素晴らしい。

 

 そんな昼食も各々が食べ終わって片付けに入ろうかと思っていた頃、ピンポーンとインターホンが鳴った。

 織斑君が出ていったので俺とくーちゃんで誰が来たのか予想して遊んでみる。

 

「第一回、訪問者を当てよう!! 回答時間は織斑君が戻って来るまでの10秒!! 説明省いてさぁ誰だ!!」

「回答時間短くないですか……?」

「あと5秒!!」

「えっ、え……、」

「はい時間切れー」

「ちょっとお兄様、流石に理不尽な気が」

「せやな」

 

 だが俺は謝らない。

 

「お、お邪魔しまーす……」

「お邪魔してまーっす」

「お邪魔してます」

「へ……?」

 

 何か女の子連れ込んできたぞ織斑君。金髪の外国人さんだ。悪ふざけして返事したら唖然とした表情で固まった。

 

「ら、うら…………じゃ、ない……?」

 

 ラ・ウラさん? 誰だ。短い名前だな。

 

「私はラウラ・ボーデヴィッヒではありませんよ」

「……え、……あ、うん。そう、ですよね……」

 

 困惑気味の少女。どっかで見たことあるんだけど誰だったかな。結構最近見たような……。

 

「おろ、シャルどうしたんだ、そんなとこで立ち止まって」

「あ、うん、お客さんいたみたいで……」

「ああ、束さんの助手さんたちだな」

「束さんって……あの、篠ノ之束博士の……?」

「そうそう」

 

 あ、思い出した。あれだ、『紅椿』届けた時に混じってた子だ。名前は……うん、調べたことなかったから知らんな。

 

「部外者が居座っててすまんね。早々に退散させてもらうよ」

「では、私も」

「っつー訳で織斑君と彼女はごゆっくりな」

「かっ、かの……!!」

 

 ぼんっ、と顔が赤くなる少女。初々しいのう、ええのう。

 

「なんか、すいません」

「良いってことよ。こっちは上がらせてもらってる身だしな」

 

 そんな訳で食べ終わった食器を片付けてそそくさとリビングから退散した。

 

 やることも特にないので2階のあてがわれた部屋に。俺は束さんやくーちゃんとは別の部屋だけどくーちゃんは俺のいる部屋に。特に何も置いてない殺風景な部屋だ。俺の荷物は全部拡張領域(バススロット)にあるので散らかることはない。非常に便利。

 

「そういやくーちゃん。さっきらぁらがどうのこうの言ってたけどなんの話だ?」

「●リパラは関係ないですよ。それに名前はラウラ・ボーデヴィッヒです」

「言いにくいからドイツ人か?」

「そうですね。一応書類上は」

「?」

「先程の彼女……シャルロット・デュノア様が私をラウラ・ボーデヴィッヒと間違えたのは、容姿が似ていたからでしょう」

「へぇぇ。俺には外人さん見分けつきにくいんだけど」

「真面目な話ですよお兄様」

 

 サーセン。

 

「お兄様ならおわかりかと思いますが、私は試験管から生まれました。その経緯(いきさつ)もご存じですよね」

「ああ。確か強い兵士を作るために云々だったよな。まさかだが、そのぼー……ぼうで……棒で物資ちゃんも遺伝子強化検体だと?」

「お兄様の名前を覚えるスキルは致命的ですね。まぁともかくとしてその通りでございます。彼女は私と同じ計画で作られた、完成形なのです」

「完成形って何がなんだ?」

「私は元から常人に比べ身体機能が著しく衰弱しておりました。故に未完の失敗作でした。が、当時育成に成功したのが私だけでしたのでたまたま保管されていたのです。それが功を奏したおかげでここにいるんですがね」

「なるほど。それでその棒で物資ちゃんはくーちゃんと同じように作り出されて、常人並に……いやそれ以上になっていた、と」

「はい。束様に教えていただきました」

「するってぇと、織斑君の知り合いにはくーちゃん似の子がいるってことか」

 

 うむ。俄然、気になるよな?

 

「織斑君写真とか持ってねぇかな……いやしかしあっても流石にいきなり見せてとか言ったら俺お縄になるよね……」

「調べれば良いのでは?」

「明らかに非合法研究だしなぁ。データベース浸入するとウイルスソフトどうにかしないとだから面倒臭い」

 

 いつだったかやったんだよな、電脳ダイブ。別に死ぬとか捕まるとかそんなことはなかったけど無制限にこっちを排除しようとしてくるシステムにはうんざりした。個人的にくーちゃん時みたいに直接出向いて強奪してくる方が楽っちゃ楽だ。正当かどうかは別問題として。

 

「そう言えば下がわいわいやってるみたいだけど」

 

 気付けば一階から女子達の声がしてくる。織斑君まさかハーレム状態なのか?

 

「うらやまけしからん。様子を見に行こう」

 

 熱工学迷彩をまとって準備完了。いざ!!

 

 

 

 反重力制動を駆使して空中浮遊で移動。これで足音の心配はなし。

 幽霊気分で廊下からチラッと中を覗いてみるとこれまた見知った顔が勢揃い。皆あの臨海学校の時の顔ぶれだ。

 

 と、その中に1人銀髪の子が混じってる。小柄な体躯と相まって、なるほど、確かにくーちゃんに似てる。彼女がくーちゃんと同じ計画で生み出された子って訳だ。しかし眼帯か……。

 

 と、煎餅をかじっていたその子が不意にこちらを向き……赤い瞳と目があった。

 

「っ、誰だッ!!」

 

 目と目が合う~♪ じゃねぇよナイフ飛んできたんですけどぉ!?

 見えてない筈なのに眉間目掛けて飛んできたコンバットナイフを指で挟んでキャッチ!! ふぃぃ、危険が危なかった。

 

 

 

 あれちょっと待て。俺って今一応透明なはずだからナイフ掴んでたら空中に浮かんでるマジカルナイフができちゃうのでは……?

 

「やはり潜んでいたか!!」

 

 銀髪の子が跳ねるように飛び上がりどこから取り出したのやらコンバットナイフを両手に持って突っ込んできた。やべぇ迎撃していいのかいやよくねぇよなぁこれ!?

 

 と、寸でのところまで思考してた直後、反射的に蹴りが出そうになった俺と銀髪の子の間に影が割り込む。ソイツは――くーちゃんは両手に持った銃剣(バヨネット)でナイフを2本とも受け止め鍔迫り合いに持ち込み、止める。

 

「武器を納めなさい、ラウラ・ボーデヴィッヒ。それとお兄様、あまりお遊びが過ぎると後々大変なことになりかねませんよ?」

 

 そいつはまずい。ちーちゃんさんちだしあの人に怒られるとなるととんでもない仕打ちが待ってそうだ。迷彩を解除して一息つき、取り敢えずナイフどうしよっか。

 

「なッ、貴様は……!?」

「手荒な真似はお控えください。ここは戦場でもありませんから」

 

 驚く銀髪の子を余所にくーちゃんは淡々と告げて銃剣を下ろし、量子化して拡張領域(バススロット)にしまいこんだ。

 

「初めまして、ラウラ・ボーデヴィッヒ。あなたとこうして対面するのは初めてですね」

「……私を、知っているのか……?」

「ええ、勿論。同じ遺伝子強化検体として、私より優れた個体として生まれたのですから」

「私と、同じ……?」

 

 なるほど、くーちゃんは彼女を知ってても、彼女はくーちゃんを知らない、と。

 

「ふふっ。まぁこのことは置いておきましょう。お兄様」

「うんにゃ。すまんね驚かせるようなことして。居候中の束さんの助手その1だ。こっちはその2のクロエ・クロニクル」

「お見知りおきを」

「まぁ気になったから見に来ただけなんでね。邪魔して悪かった。どうぞごゆっくり」

「私も、これで失礼します」

 

 と、さっさと空気悪くなる前に戻ろうとしたら「待った!!」の声。

 

「何ですか、ラウラ・ボーデヴィッヒ」

「興味がある。話がしたい」

「私からは特に話題もありませんが」

「私にはある」

「私に話に参加する義務はありますか?」

 

 淡々とくーちゃんが返すとぼー……ぼー……言いづらいからラウラちゃんにしよう。ラウラちゃんが悔しげに唇を結んで押し黙った。

 

「はいはいはいはい。シリアスはなしだよ2人とも。くーちゃんも意地悪せんでも話くらいしてやりなって。んで、ラウラちゃんだっけか。君も、今その話はするべきじゃないと俺は思うんだけどいかがかな?」

 

 視線で後ろの方で固まっている5人を見やるとラウラちゃんも気付いた様子で少し沈黙した後に小さく頷く。それでよし、ここは一般的住宅のど真ん中だ。重苦しい空気は必要ない。

 

「そういうこった。まずはお友達同士仲良くしてるといい。大事な話は二人きりの時でもいいさね」

 

 という訳で。

 

「よし皆。くーちゃんも混ぜてやってくれ。俺よか君たちの方が歳も近いだろうしね」

 

 あと俺ちゃんと成人済みなんでね、大人は大人しく1人余暇を過ごすのよ。

 

「んじゃあラウラちゃん。ウチの妹と仲良く頼むな」

「ちょっ、お兄様……!!」

 

 友達増やせよ、くーちゃん。

 

 

 

 

 

 あ、特大ブーメラン返ってきた。




ツイッターで前に言ってた新規SS『養って下さい何でもしますから!!』を投稿しました。毎日20時22分投稿。本編全10話となってます。

ネタまみれでシリアスなんてクソ喰らえ、ペロちゃんよりもっとぶっ飛んでて最早小説の域を飛び出した拙作だけどよろしければ。

http://novel.syosetu.org/61493/



追記:
活動報告にてアンケートしてます。ご協力よろしくお願いします。

http://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=83962&uid=13103
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