ISの世界に来た名無しがペロちゃんと命名されてから頑張る話   作:いつのせキノン

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という訳で寄稿頂いた作品のご紹介です。
先生は次のお三方。(掲載順、敬称略)

・束桜
https://syosetu.org/?mode=user&uid=31155
・エア
https://syosetu.org/?mode=user&uid=8468
・バンビーノ
https://syosetu.org/?mode=user&uid=80263

どうぞ、ごゆるりと。


寄稿品集

 

【束桜 様より】

 

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「あの会長はどこに行った!!」

 

 それは真昼のIS学園。校内というか島内に声が響き渡った。

 はろはろー、みんなのアイドルペロちゃんだよ。今、自分の仕事を放っておいて遊びに行っているバ会長を探しているんだ!

 

「見つかりましたか?」

「だめだ、どこにも居ない」

「おかしいですねぇ……」

「ホントおかしいなぁ……」

 

 周りを見渡しながら近づいてくるのは生徒会の会計担当である虚さん。

 しかし……探しても探しても見つからない。あれか、実は遊びに行ってるんじゃなくて迷子だったり? 子供か!

 と、まあ、そんな事で現実逃避をしようとしても某殺人を呼ぶ名探偵が言う通り、真実はいつも一つ。犯人は証拠を残してましたーってな感じで生徒会室の会長の机の上にはメッセージ付きの紙が置かれていた。

 

「それでは、このメッセージ通りにペロちゃんがこの仕事を終わらせてくださいね」

「ガッデム!! 慈悲は無いの!?」

「この前本音の分のケーキを食べましたよね?」

「ほら、もうちょっと減刑を! 裁判長!」

「うーん、有罪だね~」

「本音ちゃんにまで言われた!? そんな……」

「被害者本人がこう言っているんです。大人しく処理してください」

「そんな!? ……い、いえ、畏まりましたお嬢様。全身全霊で取り掛からせていただきますぅ」

 

 決して虚さんが振り上げた拳に反応したわけじゃないんです。そう、コレは善意の行動なのです。というか今サラリと本音ちゃんがいなかった?

 辺りを見回しても本音ちゃんの影も形も匂いもない。一体どういうことなんじゃ。

 きっと幻聴か幻覚か、それとも虚さんが召喚術の使い手……? いや、そんなことは無いだろう。いや、でも、ウーム。彼女ならできそうだなぁ……。

 背筋が冷えてきたため、作業をすることにしよう。副会長の席(自分の席)に着いて書類を整理しようと姿勢を正した瞬間、ふと顔を上げると──。

 

「……ん? あれは」

「? どうしました?」

 

 生徒会室の窓から見える木からこちらを覗いている会長が居た。綺麗に華麗に手を振って挑発までしてくれている。

 

「あんにゃろ……!」

「ペロちゃん!?」

 

 絶対とっ捕まえてこの仕事をさせてやる! 

 そう思いながら5階から飛び出し、PIC(パッシブ・イナーシャル・キャンセラー)の恩恵を得ながら怪我すること無く地面に着地する。

 流石に生徒会室から飛び降りるとは思っていなかったか、挑発の姿勢を崩し木から飛び降りて逃げる逃げる。何で後100メートルくらいで追いつきそうなのに届かないの? 一応体力的にはこっちが上だよね? ちょっと自信無くしちゃうよ?

 

「へへーん! やっぱりペロちゃんはまだまだよね!」

「なんで追いつけないんだよこの!!」

「さーあ? 何ででしょうねー? もうちょっと早く走れば分かるかもしれないわよ?」

 

 100メートル前後で均衡しているからか、追いつけないと分かった瞬間からおほほっ、と煽ってくる生徒会長がソコにいた。ちょっとペロちゃん怒っちゃいますよ……? ダレカが言っていた。むしろキレなきゃ人間じゃねえ。

 

「くぉらあああああ!!!! 待てえええええ!!!!」

「……!? 誰が捕まるものですか!」 

 

 アクセル全開ギア増量、とばかりにスピードを体感2倍程上げる。微妙に、あともう少し、もう少し……。

 しかし現実はそう甘いものでもなんでもない。偶然なのか計算していたのか、手がもう少しだけ伸びればというところで校舎の出入り口に差し掛かってしまった。

 そして、その出入り口を見逃すはずが無い生徒会長には見事に中に逃げ込まれてしまった。丁寧に鍵まで掛けてらっしゃる。あら手癖の悪いこと。

 近くの窓を見るも、流石IS学園(女子校)。不審者対策なのかすべての窓の鍵が閉まっている。ここって陸の孤島と言うかむしろ人工の孤島だけどそんなセキュリティシステム必要なの……?

 

「どこから入れば……!」

「ペロちゃん」

 

 校舎の出入り口を探しながら周囲をキョロキョロと見回していると。背後から幽鬼の如く現れる存在が。

 

「アーッ! ノホトケウツホサン! ヤメテーッ!」

「いきなり窓から飛び出して……職務放棄、ISの無断使用、その他諸々の事について話があります。来てください」

「職務放棄も何も元は生徒会長の──あ、すみませんっ、その振りかざした右腕は太陽でも掴んでくださいおねがいします」

 

 そんな風に右手を構えられると何も言えないじゃない。もしかして髪の毛を垂直に伸ばしたジャ○ンプの連載を疑われる某漫画の主人公にでもなるつもりなの? ジャン拳とか勘弁して下さいマジでおねがいします。

 恐怖に身が震えて正座を咄嗟にしてしまい、頭が下がる下がる。コレ実はオートなんじゃない? 人間の遺伝子に刻まれた本能なんじゃない? 螺旋族(人間)の頭は地面と空中を延々と行き来するためのDNAを備えてたりしちゃうんじゃない?

 

 しかし、どんな時でも好奇心を忘れないのが男の子の美徳。どんな顔をしながら怒っているんだろうと、ちらっと顔をあげると、(オーガ)がソコにいた。あらやだ好奇心なんて二度と持たないと心に決めちゃう……。

 そんなことはさておき、ちょっと女子がしてはいけない顔をしてしまっていますよ。女子力低下とともにナニカ別のオーラが上がってる気がするけどコレもう手遅れだったりしませんかね……。

 

 グイッと襟を掴まれて生徒会室へ連行が開始されながら、そんなどうでもいい事を考えて現実逃避していると視界の端に水色が顔を出す。

 

「お前は散歩中に方向確認する犬か! それともなんだ!? また挑発か!?」

「ペロちゃん叫ばないでください迷惑がかかります」 

「あ、はい」

 

 そのまま胸襟を掴まれて連行される姿を見てアッカンベーッとしてくるが、抵抗も何もできない状態なので極力見たくない。挑発に乗っちゃうお年ごろだもん。

 それはさておき、俺何かしたっけ……。会長にソコまでの事をした記憶が無いぞ。この一週間を例に出してみよう。

 

 

 1週間前は……そうだな。この時まではまだ可愛かった。少なくともこんな人を嵌めることなんてしてなかった。

 その次の日は、たしか少し作業速度が遅かったな。書類整理なんかを虚さんに少しだけ渡していた。俺の仕事は少なかった。書類十数枚を選別する作業だったな。とても楽でした。

 5日前は仕事が残ってたのに早めに終わった。次の日に何かあるのかと思って覗きに行ったら書類が無くなってた。

 

 あれ、これ今思うとサボりなんじゃね? いや、きっと彼女にはなにか考えがあったんだろう。そうに違いない。

 

 4日前、前日生徒会室に忘れ物をしたから朝早くに取りに行ったら会長がお茶を淹れてたな。今思えばナニカに備えての練習なのかな。

 

 3日前、仕事が何もなかった。その代わり虚さんがいなかった。お茶は本音ちゃんが自分で淹れてた。

 

 2日前、仕事は何も無い。これはおかしいと虚さんに聞くと黒い笑みで会長を見つめ続けていた。その時会長は冷や汗を書いてたな。あとケーキと紅茶は美味しかったです。

 

 昨日、そういえば、と虚さんに会長が朝早くに紅茶を入れる練習をしていたとなんとなしに伝えると目の前から消えてた。ケーキの件を逸らかすために言っただけだからその後は知らない。俺はすぐに逃げた。

 

 うーん、コレ確実にサボりなんじゃね? ケーキの件も、もしかすると会長が淹れた紅茶を虚さんが淹れたものと勘違いしてケーキと一緒に召し上がったんだし……。いや、もうサボり以外に考えられないでしょ。紅茶入れる練習とか確実に準備じゃないですかヤダー。

 

「もしかして俺って会長に嵌められた?」

「その山を崩したら教えます」

「……これ今日の分?」

「一日にこれだけだったら一週間で軽く死にますよね」

「ですよねー! はぁ……」

 

 なんとなくわかった気がする。多分自分がやりたくないがために仕事を放置&溜め込んでいたのだろう。虚さんがいなかったのは恐らく書類処理か……? きっと俺達(俺と本音ちゃん)に迷惑をかけないために影で処理しようと考えてたんだ。でも何で俺に仕事が回ってきたんだ……? この考えだと俺に仕事が来るはず無いのに……。

 

「本音を悲しませた罪は重い」

 

 無表情でそう告げてくる虚さん。鬼! 悪魔! えっとえっと……ダメだ。罵倒のボキャブラリーが足りない。

 つまりアレか、俺が本音ちゃんのケーキを食べなければこんなことにはならなかったのか! ガッデム! 何でそんなことをやったんだ過去の俺よ。美味しそうなケーキがあったら食べちゃわない!? え、普通食べないの……? いや、コレは紅茶を淹れてウェルカムな雰囲気を出していた会長ってやつのせいなんだ!

 

「何も言えない……」

 

 のろのろと不精無精と手を動かす。書類がいちまーいにーまーい……ダメだ、このままじゃ寝てしまう。何か刺激的なモノを……。

 

 眠気覚ましの刺激を求めて周りを見回す。前、何もなし! 右、虚さんが黒い笑みで書類を捌いてる……怖いのでスルー! 左! 何もなし。イカン、このままじゃ本格的に寝てしまって虚さんにを叩きつけられてしまう。

 身体を丸めて机に(うずくま)る。弛緩からの硬直、硬直からの弛緩。ソレを連続して行った後に勢いをつけて立ち上がる。

 

「ッダアアアアアァァァァァ!!!!!」

「ひゃっ!?」

「きゃっ!?」

 

 あらやだ声まで出ちゃった。流石にこちらに全面的な非があるので、素直に謝ろうと思うけど……いま悲鳴が2つ聞こえたような……。

 虚さんも同じ疑問を抱いたのか、声のした方向へと顔を向ける。顔を向けた先には、何故か耳を抑えながらのた打ち回っている会長がソコにいた。いや、なんでいるの?

 

「捕獲!」

「ホイサ!」

「ヘイサ!」

 

 流石の対応。会長がいたことに驚き、呆けていた虚さんが一瞬で我に返り、捕獲を命じる。すると、どこからか縄を持って現れた本音ちゃんと俺が動き出す。

 腕を縛って……お、本音ちゃんその脚の縛り方角度的に折れてそうだけど大丈夫なの?

 

「捕獲しました!」

「よろしい。本音、ペロちゃんにケーキを買ってもらいなさい」

「え、俺?」

「なにか?」

「いえ、ナンデモナイデス」

 

 カナシイナー。あれ、俺ってお金持ってたっけ……。

 

「ねえねえお姉ちゃん~」

「なんですか本音?」

「ペロちゃんお金持ってたっけ~?」

「……ペロちゃん書類整理のバイトしませんか?」

「やだ、絶対しないしたくないです」

 

 書類整理はもう勘弁。

 

 

 

 

 

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生徒会グループはわちゃわちゃしてていいですね。

会長は特にペロちゃんにちょっかい出すキャラとしてピカイチなんじゃないかと。

 

 

 

 

 

【エア 様より】

 

※クロスオーバー形式ですので予めエア氏の作品にも目を通しておくのをオススメします。

 

 

 

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時空跳躍器。

 

それは、ザエルアポロが作った守専用の傑作である。行きたい場所に守と彼に間接、または直接触れているものを、文字通り時空を跳躍して越えるというまさに夢のような器械だ。

 

そんなドラえもんがポケットから出してきそうな秘密道具もどきがまた調子をおかしくした。守は覚えていないが、以前は過去に飛んでいった経験まである。一歩間違えれば未来にまで飛んでいけるだろう。そんなとんでも作品なのだ。

 

……が、今度はちょっとまずい事になりそうなのである。

 

「とりあえず、この縄を解いて」

「無理です」

「ですよね~」

 

まさか、本当の意味で時空を跳躍するとは思わなかったのである。今の彼の気分は時空を越えた高山我夢だ。劇場版な気分だ。スペシャルに放り出された気分である。これは後々光の戦士の先輩が助けに来てくれるのだろう。お願い助けて。

 

それにしても、何故このお姉さんはウサ耳カチューシャをしているのだろうかと、守は気になって仕方がない。もう自分の今置かれている立場とかどうでもいいのでとりあえずツッコミを入れたいとまで思う始末だ。多分消されるんじゃないかな?

 

すると流石に可哀相に思ってくれたのか、彼女の隣にいたナイスミドルがこちらへ近づいてきた。嘘である。完全に同年齢くらいの青年である。見た目は10代後半で、とても活力にあふれている。だが色々と何かを背負っているのかその背中には哀愁のようなものも感じてしまう。主に苦労やら苦労やらなのだろう。守は内心察して心の中で両手を合わせた。

 

「えっと、貴方だ~れ?」

「それ俺が聞きたい事ね」

「なるほど把握」

「なら名前を教えて?」

「断る!」

「即答!?」

「この俺がが最も好きな事のひとつは立場上上に当たる人の要求にNOを言う事だ!」

「性格悪い!?」

「ふはは、何とでも言うがよぎゃああばばばばばばばば!?!?」

 

ドヤ顔で大笑いしていた守が唐突に放電にあう。骨が時折見えるほどの高電圧が彼の中に流れ込んでいった。

 

青年が即座に後ろへ振り返る。そこではブレーカーに取り付けられているような大きなトグルスイッチをONにしているウサ耳カチューシャロリ顔美少女の姿が。星のように怪しく輝く二つの眼が物語っている。殺意高いなぁ。

 

もはやギャグだと、青年は開いた口が塞がらない。

 

「もう面倒くさいから電気流しちゃった♪」

「あんた何やってんだ!! これで死んだらどうするんだよ!」

「そうだそうだ。暴力反対! でもお姉さんになら言葉攻めされてもバッチこいだぜ」

「何だこいつ変態かよって何で生きてんだよ!」

「お兄さんは美女と結婚するまで死なないから」

「理由がしょぼいのか広大なのかわかんないんだけど!?」

 

まさか高電圧の電撃に生きてた守を見てしまったウサ耳美少女は恐怖した。成功で1、失敗で1d3のSANチェックだ。あ、失敗した。2点の減少だって。あと一時間以内に3減ったら一時的恐怖のアイデアロールだ。やったね。

 

ウサ耳カチューシャ娘は、目の前で起こったありえない現象……「高圧電流を耐え切った」の事もそうだが、この無駄な執念を耳にし、自身の美貌を呪った。

 

「もしかして、私も範囲に入ってる?」

「ははは、何言ってんだろこの人」

「ペロちゃんは後で殴る」

「さーせんっした」

 

ペロちゃんと呼ばれた青年がこの世で見た事もないような美しい土下座をした。その土下座はまさに数学的な美しさがあったとかなかったとか。土下座に美しさってなんだよ。

 

改めてこのウサ耳ロリ顔美少女へ視線を向けよう。一言で言えば可愛い。その豊満な胸も飛び込みたくなるお尻もだが、何よりボディーラインの良さが守にとってストライクゾーンだ。顔もいい、スタイルもいい。ボディーラインもいい。声もいいと来た。これで性格がよければなお良い。きっとベッドの上では可愛く鳴いてくれるんだろうなと思うと守君もオリムラって来た。図らずともシモネタである。とりあえず全国の織斑さんに謝るべきだろう。

 

「で、どうなの?」

「……じゅるり」

「よし●そう」

「ストップストッピセイセイセイ! 【はい】【いいえ】で答えてないのにその反応は待って!!」

 

どこから取り出したのかわからないチェーンソーがギャリギャリと音をたてる。その禍々しく動く紫色が恐怖を助長させる。ほら、命を刈り取る形をしているだろってか? やかましいわ。

 

ジリジリとにじり寄ってくる美少女。ここまでなら寧ろこの胸に飛び込んでおいでと催促出来たのだろう。その手にチェーンソーなんていう残酷兵器さえなければ両手を広げたのにとこの状況でも悔しさを噛み締めていた。

 

「まぁ待て待て。話し合いましょう結月ゆかりさん!」

「ウサギ成分とチェーンソーしかあってないから却下」

「中の人の名前も同じゆk――」

「中に人はいません。イイネ?」

「――ア、ハイ」

 

女性の低い声で世界が一瞬ぶれた。何だこのハイプレッシャーはと守は後ろへ飛び退き、その汗を洪水のごとくだらだら流している。ペロちゃんも大汗をかくしまつだ。

 

世界の理に触れる禁忌を犯したようだ。守君お口チャック。

 

「とりあえず束さん! 落ち着こう! ここで暴れても何の成果もないから!」

「どいてお兄ちゃん! そいつ●せない!」

「何でこういうときだけそんなロリボイスで妹属性発揮させるかなぁ!! あんた一応お姉ちゃんでしょ!」

「……まさか、年上の妹キャラだって? ……新鮮すぎ」

「なんで死に掛けてる本人は冷静なんだよ! なんだよ! 俺がおかしいのかよ!」

 

ペロちゃんなる青年はこのマイペース馬鹿に振り回されてしまう。何故だ、彼もボケ側のはずではないのか!? 残念な事に守はそれ以上に馬鹿だったのだ。今回は諦めてツッコミに回っていただこう。

 

「とりあえず、話を聞いてからにしましょ。ね?」

「……ペロちゃんがそこまでいうならそうしようか。運が良かったね」

「ふっ、俺もこの運で生き抜いてるもんでね」

「そこ自慢げに言う事じゃねぇから」

「うっす」

 

 

 

 

どうも、ペロちゃんです。早速ですが、今回大変な事が起こってしまいました。今回突如として現れた謎の青年……名前は東悟守というらしいんだけど、一言で言うとマイペースバカなんだけど、その守って人が。

 

「何だこの器械は!?」

「ふははっ、時空跳躍器だ。凄いだろう、俺の友達が作った傑作品だ」

「ほんとに時空跳躍すんの!? マジで!?」

「マジもマジ。大マジよ。実際そこからここに飛んできたんだし」

 

(ばか)と意気投合してしまいました。いや、実際束さんは天災なんだけど、こういうことに関しては馬鹿なのよ。

 

それにしてもまさか時空を跳躍できる器械があるなんて思っても見なかった。確か束さんはワームホールをどうのって作ってたらしいけど、それとは別の理論で作られてるらしく、根本から違うらしい。作った本人に聞きたいが、残念な事にその本人は時空の向こう側にいるため聞くにも聞けないと来た。

 

「この懐中時計型いかすじゃん! センスあるわ!」

「しかもこれ、理論上は時間も越えられるらしい」

「なん……だと……!?」

「これさえあれば……」

「テストもカンペし放題」

 

おいこら待て天災。お前カンペ必要ないだろ。全部わかるだろ。

 

「しかもこれ、時間干渉しないから……理論上時を止められる」

「ゴクリ……つまりちーちゃんのおっぱいを揉み放題と」

 

ゴクリなんて口に出して言う人初めてだよ束さん。あとそれちーちゃんさんに言っとくから。

 

「ごめん待ってペロちゃんそれは待って。ついでにその携帯をしまうんだ」

「ちょっと待とうペロちゃん君。その名前聞いた瞬間に恐怖を感じたんだ。やめろペロちゃん君、その告げ口は俺に効く。止めてくれ」

「……悪用しないと誓うなら許しますよ」

 

そう言うとへたり込んだ二人。ため息しか出てこない。何でだろう。久しぶりだぞこの振り回されてる感。もうお姉さん疲れちゃったわ。

 

「ふっ、よくやったね同志M」

「それはこちらの台詞だよ、ドクターT」

 

何だその呼び名は、いつの間に出来た。

 

「それで、守さんは元に戻れるんで?」

「一応戻れると思う。多分きっとおそらくメイビーなはず」

「それすっごいあいまいでこっちが怖いんですけどね」

「いやぁ、前例がないからねぇ。それに今ここで仮にこの器械を直すと、完全に戻れる可能性がなくなるから束さんも手を出せないと来た」

「束さんでも無理なのか。それはまずい事になりましたね」

 

俺の知ってる中で、束さんを超える天才を知らない。だからこそ束さんが出来ないとなると詰んだも同然なのだ。八方塞レベルで終わってしまったレベルだ。俺のときのようにご愁傷様としか言えないだろう。

 

「と言うわけで、当分お世話になりたいのじゃが。よろしいかドクターT」

「ふっ、いいだろう同志M改めマーちゃん」

 

がっちりと交わされた握手を見て、あれー? 俺の時より決まるのはやくなーい? と思ってしまう。俺の苦労はなんやったんや。というか仲良くなるのはやすぎやしませんかねぇ? 別に嫉妬とは違います。違います。

 

「じゃあこの時空跳躍器を借りるね。スキャンで似たもの作ってどんな構造なのか把握するから」

「うぃっす。オナシャス」

「え? 簡単に貸していいものなの?」

「うん? あぁ、他の人に貸すなとも言われてないし、何よりも美人の頼りだからね! 仕方ないね!」

「もう何言ってるのさマーちゃん。褒めても新規ISしか出てこないゾ☆」

 

アラスカ条約とは何だったんだ。

 

「と言うわけで、少しの間よろしく頼むぜペロちゃん君」

「あ、はい。よろしくマーちゃんさん」

「俺の事は守でいいぜ。そっちの方が呼び慣れてるからな」

「ならそう呼ばせてもらいます」

「おっとぉ、敬語もなしだ。いつもどおりのYOUでいいんだぜBOY」

「なんで唐突に胡散臭くなったの? バカなの?」

「辛辣!?」

 

はぁ、これからどうなるのだろうか。とりあえず、この人には雑巾掛けをしてもらおう。

 

 

 

 

 

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ペロちゃんがツッコミ役に徹するレアケース。ペロちゃんが過労死してしまうでぇ……。

 

 

 

 

 

【バンビーノ 様より】

 

 

 

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 自分は何処から来たのか。そんなことは気にすることなく過ごしてきた。だって今が楽しいし気にする必要なんてないでございましょ? いやいや初めっから記憶とかないわりにドラゴン●ールとかは知ってたのなんでかなぁと思ったりはしたけど、そのドラゴ●ボールとフュージョンしたのはなんでだよって理由は未だにわからなかったけど。

 

 そんな特に気にしてなかった話題をえいこらしょっと抱えて、部屋のなかに滑り込んできた婚期ギリギリな束さん。是非とも婚期にも滑り込んでほしい。

 宙に待ったオセロを落ちる前に回収。ちーちゃんさんと野菜チャンバラし合えたりと俺の身体能力にも磨きが掛かってきたね。

 

「束さんはついにペロちゃんの正体を掴んだのだぁぁぁぁ!」

「な、ナンダッテー」

「さすが束様です、ぱちぱちー」

「棒読みの驚きと口での拍手ありがとう!」

「口でのハックシュッ?」

「くしゃみみたいだけど違うよ! 拍手だよ! というか割りと真面目な話だから聞いてよ!」

「えー」

 

 俺の正体と言われてもな……どうせ俺とくーちゃんがふたりで遊んでえ暇だったから構えということだろう。まったく仕方ない、束さんも交ぜてやろうじゃないか。

 拡張領域(バススロット)からトランプを取りだしリフル・シャッフル、ブリッジで整える。カードが痛むのでお薦めしないし、デュエリストには怒られる方法だけど音が心地よくて替えの聞くトランプではついついやってしまう。というか束さん謹製トランプが何故か折れず傷つかず跡が残らない。何製だこれ、怖くて聞けないんだよ。

 

「はい、束さんの手札」

「えっ、あ、うん……何やってるの?」

「ババ抜きです、束様」

「だよね、でも束さんの手札が30枚越えててくーちゃんが2枚しか手札ないのはなんでかな? 束さんに過酷でくーちゃんに過保護すぎない?」

「いやー、束さん天才だからなぁ、それぐらいのハンデあっても余裕だろうなぁって! 束さんって美人で! 天才だからなぁ!」

「びっ美人!? ふっふふ、フハハハ! ……やぁぁぁってやるよぉぉぉ!」

 

 チョロい。

 

「私の勝ちです、ぶい」

「運には、くーちゃんには勝てなかったよ……ってそうじゃなくて! ペロちゃんの正体!」

「ペロちゃんの小隊! ただし隊員は二人だけ、みたいな!」

「お兄様、それでは小隊より下の分隊ですらないです。私たちが組めるのは一番下の組です」

「さすがくーちゃん、賢いな」

「束さんの娘だからね!」

「ふっ」

「鼻で笑ったな!?」

 

 因みに小隊は30人から、俺の知り合いみんな集めても無理そう。決して知り合いが少ないとかそういうわけじゃない、じゃない。むしろ束さんだけで世界規模だし。

 

「というか、あの、そろそろ束さんの話を……」

「……あれ、真面目な話だったん?」

「初めっからそう言ってるじゃん!? なんで、え、ナニソレ初耳みたいな顔してるの!?」

「男は、顔で語る」

「そこは背中なのでは?」

「あ、しまったって顔してる。ホントに顔で語ってるよ……で本題にもう入るよ。くーちゃんはあのとき居なかったけどペロちゃんってワームホールから出てきたでしょ?」

 

 あぁ、出会ったときはそこから出たんだっけ。忘れった忘れった、自分では自分がどこから出たか見えないから仕方ないな。

 認識的には何かよく分からないものに引き付けられてたけど、感覚的には天井付近から落ちた感じだったし。落ちた先にはクッション(おっπ)があったんだけど、ごちそうさま!

 

「あぁ、そう言えばそうだった」

「忘れてたんだ……」

「安心してくれ、あのあとの束さんの胸と下着は鮮明に覚えてる。感触に色にレースの柄まで事細かにな!」

「なんでそっちを覚えてるのかな!?」

「意地があんだよ、男の子にはなぁ!」

「もっと違うところで意地見せて、ペロちゃんの記憶力!」

 

 ふ、あのときは動転もしてたけど、然と網膜に焼きつけたあの下着は覚えているさ。というか洗濯とかやってるから下着とか今更なんだけどな。束さんがまともに掃除しようとしないし、家事全般俺がしてるし。

 

「うぐっ、そうだけど……ま、まあその事は置いておいて!」

「話の逸らし方が露骨すぎます束様」

「置いておいて! そもそもあのワームホールは空間の短縮を行うものであってさ、決して何かを取り寄せるためのものじゃなかったんだよ」

 

 曰く、束さんがちーちゃんさんに会うため、かつ暇潰しに作ったワームホール。

 それはアルファベットに例えるならA地点からBCDEと続く地点を通ってようやく辿り着けるZ地点までの間。B~Y地点までの空間を無視する通り道を作って移動するためのゲート。わかりやすくいうと小説で冒頭からいきなりオチのページまで過程をとばして読了する感じか。

 

「そそ、だからそもそも移動するためのワームホールからペロちゃんが出てきたこと自体がおかしかったんだよ」

 

 どこでもドアは移動のためにあって取り寄せバックは好きなものを取り寄せるためにある。いくら取り寄せバックに入ろうとしても何処に行くこともできない。逆も然り。

 だからどこでもドアから俺が出てくるのがおかしいように、ワームホールから何もしてないのに俺が出てきたのは理屈に叶ってなかったそうだ。

 

「むしろ束さんが作ったワームホールがおかしかった可能性」

「いえ、束様の性格からして作るには作ったけど座標あたりを適当にお決めになったのでしょう」

「くーちゃん正解! キーボードでめくら打ちしちゃった! でね、座標は間近のラボ内に設定しちゃったんだよね。それも同室」

「え、ウェイウェイウェイト。それはないだろ、だって俺はあの部屋に元から居なかったし、居たなら束さんが俺を知ってるはずだ。束さんが気づかないわけがないだろ」

「うーん、嬉しい信頼だけど……いたけどいなかった、が正しいかな。ペロちゃんってさ、記憶はないけどコアについての知識はあったんだよね」

 

 …………あー、確かにあった。そんな知識はあったしそれ聞かれるとだいたいオチがわかったぞ。

 これでも束さんとこ来てから長いからな。頭もそれなりに良くなったし、なによりこの人の考えも読めるようになってきた、読めても気にしないことが多いだけで。ともすれば束さんの顔が似合わない真面目にシリアッティーな理由もなんとなく察せる。

 

 

「ペロちゃんが調整もしてないワームホールを通って無事だった理由(ワケ)

 

「俺がここにきたときに記憶はなく知識しかなかった理由」

 

「天災と呼ばれる束さんが、ペロちゃんの身体からコアを、その残滓すら見つけることが出来なかった理由」

 

「俺に取り込まれたISコアに意識が、人格がなかった理由」

 

「素人のペロちゃんが国家代表を翻弄する機体操縦を魅せた理由」

 

「ペロペロプログラムの成果が束さんの予想を上回る結果を出せた理由」

 

「束さんがアレ(G)を苦手な理由」

 

「それ違う」

 

「そっかぁ……でも総じてその理由が導く答えはひとつ」

「だな」

 

 

 

「「つまり──ペロちゃん()自身ががISコアの意識、ISそのもの」」

 

 

 

 ま、こんなとこだわな。

 

「伝えるかは迷ったんだけどね、つまりペロちゃんは同室にあった──あのISコアの中にいた。コアの意識として確かにあそこに存在していた」

「ふむ、だから居たけど居なかったか……」

「……束様、わからないことが。お兄様がISだったとして、その肉体はどこから現れたのですか」

「ワームホール内や空気中に存在する成分とか、ついでにラボ内のものだよ。ペロちゃんという意識を納めるために、それらを再構築して作り上げられた肉の器ってところかな」

「ワームホールがお兄様を引き寄せたのは」

「ISコア内に座標を定めるとか不可能に近いだろうからね、たぶん行き先となる地点を無理矢理生み出した結果が──」

 

 束さんの視線がこちらを向く。うむ、まぁ流れ的に俺だよな。人ってカタチをした肉体まで構成されたのは……俺の意識が人間に近しいものだったからか。

 もしも犬に近かったら犬になってたかもしれん。『自分を犬と申すか、いや犬なんだけども』とか言ってたかもな。まぁ、犬だと喋れんし、そもそも犬に近しい意識ってなんなのかわからんけど。

 

「俺の記憶がないのに知識があったのは、大方コアネットワークの影響かね」

「イエス、そうだね。ペロペロプログラムについてはペロちゃんの努力もあるけど、ネットワークから最適な鍛え方ってものも無意識に拾ってたんだと思う。頑張ったこと自体はペロちゃんの成果だけどね」

 

 だよなぁ、取り込んだコアが物理的に無くなるとかおかしいとは頭の片隅で思ってたんだよ。ホントだって、さっきまで忘れてたとかそんなことないからな?

 っと、くーちゃんが何か言いたそうにしてるな。

 

「お兄様自身が──ISになることだ」

「くーちゃん、そんなジャンプ漫画で最後の一撃放とうとする主人公っぽい台詞はやめてくれ。むしろ俺自身が普通にISだ。俺がIS・コア(イコール)ペロちゃんだよ何か文句ある!? みたいな勢いだ」

「えっ、いや別にないけど……というか文句があってもペロちゃんはISコアから生まれたことはもう変わらないから」

「ま、そだね。正直、思いつきで言った」

「で、ですが普通に食事も排泄もなされるのでお兄様は人間と相違ありませんよ……?」

 

 くーちゃんってば俺が人じゃなかったことを少し気にかけてくれている様子。

 束さん(こんな)(こんな)と過ごしてるのにどうしてこんなにいい子に育ったのか、間違いなく反面教師になってる気がする。が色々俺にも束さんにも刺さってくるので今は置いておこう。

 

「生体同期型ISの完成形どころじゃなかったよ」

「さすがに俺もおったまげた」

「おったまげたって、きょうび聞かないけど……それで今の話を聞いてペロちゃんは、どう思った?」

「え、別に俺がISだったとかどうでもいい。飯食ってウンコ出来るし人間と変わらんし実感ない。食事と排泄できたらISって人間だろ、うん。」

「飯食ってウンコが人間の基準!?」

「ご飯食って糞出来るし!」

「変わってないよ!?」

「フ*ッキンッ!!」

「せめてウンコから離れて!」

 

 ガクガクガクガク! と肩を揺すられる。うぇっぷ気持ち悪……遠回しに言い過ぎたか。束さんは何気に(身内には)心配性だしなぁ、ハッキリ言わなきゃな。

 

「束さん、俺は束さんとくーちゃんといることが楽しいし何も気にしてない。むしろ今に感謝してるくらいだ」

「……そっか、そっか……よ、よぉし! なら束さんに感謝を示してもいいんだよ! むしろペロちゃが気にしてた加齢臭とか出てこないボディだからね!」

「きっききに、気にしてないわ!」

「お兄様、声が震えてます」

「か、肩とか痛くなってないし……」

「痛むんですか……」

「ISボディでも痛むんだ……あ、今は人体がベースになってるからかな」

「じゃあ臭いも出てくるのか!?」

「ちょ、ペロちゃん揺すらないであべべべべべべべべべべ!?」

 

 ペロちゃん()の正体がわかっても別段変わりない日常であったマル

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、でも俺がISなら束さんの子供ということに……!?」

「えっ、ペロちゃんが子供……そっ、それは困るよ!」

「え、なんで?」

「なんでもだよ!」

 

 ペロちゃん子供化計画は、何故か顔を真っ赤にした束さんに破棄されたのであった。

 

 

 

 

 

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サブタイトル【束『っていうペロちゃんの誕生秘話考えてみた』 】

 

まさにIF√なペロちゃん。あるかもしれない未来の話。バンビー節が炸裂してますねぇ。

と言うか本編に若干似てる要素も出てきてあてくしビックリ。

やっこさん(バンビー)はエスパーに違いない。




改めまして寄稿頂きありがとうございます。この場を借りて感謝申し上げます。

今回の寄稿に関してはわたくしほとんど覚悟してなくて、不意打ち気味なボディブロー食らいまして床をのたうち回りながら狂喜乱舞です。
そんな訳で指定とか全くなしの完全フリーな創作になってます。好き勝手やっていただき大満足です。



ペロちゃんは基本創作フリーです。もし、本当に気紛れとかでもし書いていただけるなら、わたくし大変喜びます。事前じゃなくて「書いたんだけど、どう?」な事後報告でも全然オッケー、寧ろばっちこい、どんと来い超常現象。



これからもペロちゃん共々よろしくお願いします。
ではまたいつか。



P.S.
次回は今のところ番外編の予定……。
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