マギアレコード 偽書e/s memorys   作:ジャックノルテ

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菖蒲彩月編
第10話 僕もどうかしていると思うよ


□ 神浜市内 ホテルフェントホープ 北養区 一夜の私室 夜

 

 

私室にいる眼鏡を掛けたままの一夜は黄色いローブを脱いで私服姿でゆっくりと本を読んでいた。

その時、ドアをノックする音が鳴り一夜がドアを開くとそこには、ねむがナナツメを伴って立っていた。

 

一夜「ねむ様!?それにナナツメさんも」

 

ねむ「一夜。ちょっと良いかな?」

 

一夜「はい。大丈夫です。どうぞ」

 

ねむ「いや。玄関で大丈夫だよ。一夜に頼みたい事があるだけだからね」

 

 部屋に招く一夜に対してねむは要件を話す事を優先した。

 

ねむ「一夜。明日、僕とナナツメと一緒に風見野市に行ってくれないかい?」

 

一夜「えっ。風見野市ですか?」

 

ねむ「うん。スカウト、もしくは交渉したい人がいるからね。だから僕が直々に行く事にしたんだ。少し遠出になるから、一夜とナナツメにも来て欲しいんだ」

 

一夜「でも・・・。それならアタシよりもナナツメさんや他の人の方が適任じゃ・・・」

 

ねむ「そうだね。護衛と言う意味ならナナツメ一人でも十分だと思うよ。けど明日の遠出は殆ど危険が無いから余り外に出ない一夜に付いて来て欲しかったんだ」

 

一夜「えっ」

 

ねむ「無理にとは言わないよ。でも一夜。君は殆ど外に出ないだろう?たまに外へ出る事で気分転換になるんじゃないかと思ってね」

 

一夜(ねむ様・・・。アタシの為に・・・)

 

ナナツメ「気分転換はした方が良い」

 

 ポツリとナナツメが喋った事に一夜は少し驚いた。

 ねむも珍しいなと言う表情を薄く見せた。

 

一夜「分かりました。アタシ、風見野へ行きます」

 

ねむ「うん。良い返事だね。じゃあ明日、ナナツメが午後には君を迎えに行くからフェントホープで待機していて。ローブ作りは休みでいいから」

 

一夜「分かりました」

 

ねむ「夜に悪かったね。じゃあ一夜。また明日」

 

一夜「はい。あの・・・。ねむ様。気にしてくれてありがとうございます」

 

ねむ「良いんだよ。君は僕の直属の部下だからね」

 

 ねむはそう言ってナナツメを連れて去って行った。

 ドアを閉めて一夜はベッドに座って考えていた。

 ねむに先程言われた事を考えて一夜は、驚きそしてねむの為に働ける事を嬉しく感じていた。

 

一夜「明日は・・・。頑張らなきゃ・・・。何が出来るか分からないけど・・・」

 

 まだ見ぬ明日に一夜は久し振りに期待を抱いていた。

□ 神浜市内 ホテルフェントホープ 北養区 一夜の私室 次の日の午後

 

 

眼鏡を掛けた一夜は私服姿でナナツメが来るのを待っていた。

その時、ドアをノックする音がしてドアを開くと黄色いローブ姿のナナツメがいた。

 

ナナツメ「準備は出来ているな?」

 

一夜「はい。出来てます」

 

ナナツメ「ならこれに着替えてくれ」

 

 そう言ってナナツメは袋を差し出して来た。

 

一夜「これは?」

 

ナナツメ「カモフラージュ用の服だ。これを着て待ち合わせ場所へ行くぞ」

 

一夜「わっ分かりました・・・」

 

 一夜は素直に袋を開けてみると中に入っている服を見て驚いた。

 

一夜「これって・・・」

 

ナナツメ「どうした?着方が分からないなら手伝うが」

 

一夜「そうじゃなくて・・・。これ、本当に着ても大丈夫なんですか?」

 

ナナツメ「着ていれば誤魔化せると判断した」

 

一夜「じゃあ・・・。ちょっと待ってて下さい・・・」

 

 ナナツメに押し切られる形で一夜はナナツメの持って来た服に着替えた。

 一夜が着替えたのを見てナナツメが魔法少女の変身を解除すると一夜と同じ服を既に着ていた。

 それを見て一夜はナナツメも着ているのなら大丈夫なんだろうなと少しだけ安心感を得ていた。

 

ナナツメ「行くぞ」

 

 一夜が着替え終わったのを見てナナツメは一夜を連れて一夜の部屋を出た。

 そのままエントランスに行くとそこからフェントホープの外へ出た。

 

ナナツメ「駅までは小生が一夜を運ぶ」

 

 そう言って魔法少女姿に変身したナナツメは有無を聞かずに一夜を抱き抱えると走り出した。

 

一夜「わっ!?」

 

 驚く間もなくナナツメは一夜を抱えたまま駆け巡ると北養区ないにあるホテルフェントホープから一番近い北養山林駅の近くに出た。

 

ナナツメ「ここからは、電車で待ち合わせの駅へ向かう」

 

 一夜はナナツメに付いて電車に乗り込んだ。

 電車の行く先は参京院方面であり、参京区にはねむの通う参京院教育学園があるのを一夜も直ぐに分かった。

 しばらく電車に乗っていると参京区の駅、水徳商店街駅へ辿り着いた。

 改札口の前で待ち合わせていると聞かされた為、一夜はナナツメに付いて進んで行く為、迷う事は無かった。

 改札口の前には、制服姿のねむが待っていた。

 

ナナツメ「柊さん。お待たせしました」

 

ねむ「うん。僕も今来た所だよ・・・!? その制服どうしたんだい?」

 

 驚くねむの指摘した通り、一夜とナナツメはねむと同じ参京院教育学園の制服を着ていたのだった。学校に通っている訳でも無いのに・・・。

 

ナナツメ「カモフラージュの為に用意しておきました。制服姿の3人なら何らかの活動をしていると誤魔化せると」

 

一夜(ナナツメさん。そこまで考えてたんだ・・・。だからねむ様じゃなくて柊さんと呼んで・・・)

 

ねむ「そこまでしなくても大丈夫だと思うけど・・・」

 

ナナツメ「念には念を入れた方が良いかと」

 

ねむ「まあ着替えて貰う必要も無いから風見野市へ行こうか。二人共、準備は良いんだろう?」

 

ナナツメ、一夜「はい」

 

ねむ「場所の確認は大丈夫なんだよね?」

 

ナナツメ「大丈夫です。行きましょう」

 

ねむ「二人共、ちょっと待って。うっかりしていたよ。二人にもこれを持っていて欲しいんだ」

 

 ねむはそう言ってカバンから手の平に収まるサイズの宝石を三つ出して来た。

 宝石はソウルジェムでは無い。

 

一夜「それって、この前作った魔力を貯めておく宝石の試作品ですよね?」

 

 一夜は数日前にねむと灯花から依頼を受けて作った新しい道具だった。

 魔力を貯めておく事は出来るが少しずつ消耗してしまう為、まだまだ改良の余地がある試作品だった。

 一夜はこの所。ローブ作り以外にもマギウスの活動に必要な道具を作る事もあった。

 マギウス3人や幹部であるみふゆ、白羽根は一夜に道具の改良を依頼する事は許可されている。

 

ねむ「うん。そうだよ。これから神浜市を離れるけどなるべくキュウべえに探知されたく無いからね。ここには黒羽根の子達の魔力が詰まっているから僕達の魔力を探知し難くする筈だよ」

 

 ねむから渡された宝石を受け取る一夜とナナツメ。

 

ナナツメ「では行きましょう」

 

 そう言ってナナツメが、一夜とねむを先導する形を取って風見野市方面に向かう電車に乗り込んだ。

 電車に乗り込むとねむと一夜を座らせると、その席の前にナナツメが立つ形を取った。

 

ねむ「君は座らないのかい?」

 

ナナツメ「立っている方が・・・。対処が聞きます」

 

ねむ「そう言う事だね」

 

 ねむとナナツメの会話を聞いて一夜は理由を考えてみた。

 

一夜(ナナツメさんが言う対処って言うのは・・・。トラブルかな?もしくは危険?護衛をしている関係があるから対処が利くって意味なのかな・・・)

 

 流石に電車内で答えを聞こうと一夜は思わなかった。

 暫く電車に乗っていると風見野市内の駅へ電車は辿り着いた。

 先導するナナツメに付いてねむと一夜は付いて駅を出た。

 

ナナツメ「この先にある中学校に相手はいます」

 

ねむ「そろそろ下校時間だから丁度良いね」

 

 ねむが語る様に先頭を歩くナナツメとねむ、一夜とすれ違う制服姿の中学生の数が増えて行く。

 

ナナツメ「ここです」

 

 路地からナナツメはそっと覗く形で風見野中学校を示した。

 

ねむ「さて・・・。どうするかな。相手が直ぐに出て来るとも限らないからね・・・」

 

一夜「ここが校門ならここで待っていればいつかは出て来ますよね?」

 

ねむ「そうだけど相手が部活や委員会をやっていたらいつになるか分からないだろう?帰り時間を遅くするのは避けたいから何か方法を考えよう」

 

一夜「そうですよね・・・」

 

ナナツメ「それならば小生が中に入り探して来ますか?」

 

ねむ「その制服でかい?」

 

ナナツメ「魔法少女姿ならば見られない様に入り込めます」

 

ねむ「なるほど。じゃあナナツメに頼もうかな・・・。相手の顔を知っているのはナナツメだけだからね」

 

ナナツメ「はい・・・!?待って下さい。相手が出て来ました」

 

ねむ「本当かい!?」

 

ナナツメ「これから声をかけます」

 

ねむ「頼むよ」

 

 そう言ったナナツメは少し小走りに走って校門から同級生と思しき少女と出て来た紫色の髪を生やしたセーラー服の少女に声をかけた。

 

ナナツメ「菖蒲彩月さんですね?」

 

菖蒲彩月「なんや?見ない顔やけどウチになんか用かえ?」

 

 彩月の表情には警戒よりも好奇心が強く表れていた。

 

ナナツメ「単刀直入に言おう。筒地綾女の件で話がしたい」

 

彩月「ふーん。綾女さんの件かぁ・・・。ええで。付き合おうたる。香乃木。ウチはこの人とお話しがあるさかい、今日は一人で帰ってくれへん?」

 

石菖香乃木「分かったさ。また明日学校でさ」

 

 香乃木はそのまま歩き去って行く。

 

彩月「話をするのは、ええんやけどここじゃあ場所が悪い。近くの公園で話そうか?」

 

ナナツメ「ああ。それで構わない。上役が近くにいるから出て来て貰う」

 

ナナツメ(ねむ様。話には応じると言っています。出て来て貰えますか?)

 

ねむ(うん。後は交渉次第か。今行くよ)

 

ねむ「一夜。どうやら話は出来るみたいだから行こう」

 

一夜「はい」

 

 ねむの後に付いて一夜もナナツメの所へ向かった。

 彩月は後から現れたねむと一夜に対して特に驚かなかった。

 しかし眼鏡を掛けている一夜を見ると少しだけ怪訝な表情を見せた。

 

彩月「さて役者は揃ったようやし付いてきい」

 

 先導する彩月の後を付いてナナツメ、ねむと一夜は付いて行くと小さな公園に行き当たった。人はほとんどいない。

 

彩月「ここなら人もいないんやし魔法少女の事を喋っても問題無いやろ。んでウチにどんな用があるんかいな?」

 

 道化染みた態度と裏腹に彩月の目は笑っていなかった。

 

ねむ「そうだね。じゃあまずは自己紹介しておこう。僕は柊ねむ。マギウスの翼と言う魔法少女組織を率いる存在だよ」

 

ナナツメ「小生はナナツメ。ねむ様の護衛だ」

 

一夜「アタシは越馬一夜。ねむ様の部下です・・・」

 

彩月「まあウチも名前は告げさせて貰うで。ウチは菖蒲彩月や。ところでねむさんが組織のリーダーかいな?」

 

ねむ「まあそんな所だね」

 

彩月「随分と若いリーダーさんやな。綾女さんの記憶じゃあ魔法少女の組織は碌なもんや無いって聞いとるで」

 

ねむ「そうなのかい?」

 

 ねむはナナツメを見た。

 

ナナツメ「・・・。確かに筒地綾女の記憶はそう言っています」

 

 ナナツメは少し考える様子を見せてから答えた。

 

ねむ「まあ確かに怪しまれても仕方ない行動を僕らはしているからね」

 

彩月「ちょっとまちい。今記憶って言うたんか?」

 

ナナツメ「確かに言った」

 

ねむ「確かに言ったね」

 

彩月「ナナツメって言うたけど、もしかして・・・。ウチと同類なんか?」

 

 彩月は先程と異なり少し警戒心を見せていた。

 

ナナツメ「そうだ。小生も筒地綾女の記憶を持つ実験体の一人だ」

 

一夜「えっ!?」

 

 一夜はそれまで知らかなった事実を知って驚いた。

 

一夜(じゃあナナツメさんは自分の記憶以外に筒地綾女さんの記憶を持っている!?)

 

彩月「ウチの持っている綾女さん記憶にナナツメさんはいないで。つまりウチの後釜って所やろ?」

 

ナナツメ「ああ。最初に菖蒲彩月。あなたで実験した後、筒地綾女に記憶を移植して貰ったのが小生だ。何人目かは知らないが」

 

彩月「そう言う事か。んでウチに何の用なんかな?」

 

ねむ「単刀直入に言うと僕たちは彩月さんの中にある筒地綾女の記憶が欲しいんだよ」

 

彩月「なんでウチのなんや?ナナツメさんにも記憶はあるんやろ?」

 

ナナツメ「記憶はあるが・・・。今必要とされる部分が抜けている」

 

彩月「肝心なぁ部分?」

 

 怪訝な表情をする彩月。

 

ねむ「僕たちが欲しい記憶は筒地綾女の持つ魔法技術に関する記憶だよ。ナナツメの記憶にはそうした部分が抜けているからね」

 

彩月「そおゆう事かあ。そりゃそうやろ。綾女さんがタダで自分の技術を渡す筈が無いんやからな」

 

ねむ「まるで筒地綾女を知っているみたいだね?」

 

 意外そうにねむは聞いていた。

 

彩月「記憶はあるさかい人となりは知っとるで。どういう人間かもなあ」

 

 彩月は意味ありげな笑みを見せていた。

 

ねむ「ところで君の中に技術に関する記憶はあるのかな?そこは重要な事だからね」

 

彩月「そやなぁ。あるで。ただウチが普通の人間であるさかいこの技術に関する記憶が正しい物かどうかは分からへんで」

 

ねむ「そこは僕の魔法と筒地綾女本人の記憶を元に復元すれば良いよ。ナナツメと君の記憶と筒地綾女本人が揃えば記憶の復元が出来そうだからね」

 

彩月「筒地綾女本人?本人がおるんか?ならウチに会う必要がない筈やのに・・・。ウチに会いに来うたと言う事は・・・。何かあったんか?」

 

ねむ「うん。今の筒地綾女は会話も出来ない状態だ。今は僕が封印して保管していると言う所かな?」

 

彩月「そう言う事なんか・・・」

 

ねむ「おっと。少し喋り過ぎたかな?そろそろ君の返答を聞かせて貰えるとありがたいんだけど」

 

彩月「その取引に応じてウチに何のメリットがあるんや?」

 

ねむ「そうだね。現金が必要なら僕が仲間に頼んでみるよ。それとも魔法少女にしか出来ない事をお望みかな?」

 

彩月「何が出来るって言うんや?」

 

ナナツメ「憎んでいる相手がいるのなら小生が事故に遭わせよう。魔法を使えば容易い」

 

彩月「流石にそれは無いで・・・」

 

ねむ「そうだよ。ナナツメ。それは流石に良くない。まあ君が本気で望むのなら検討しない事も無いけど・・・」

 

一夜(それはマズいんじゃ・・・)

 

彩月「安心しい。そんなアホな事、頼もうとも思わへん」

 

ねむ「じゃあ何か他の望みがあるのかい?」

 

彩月「そやなあ・・・。じゃあウチが欲しいと思うモノをくれへん?」

 

ねむ「欲しいモノ?」

 

彩月「そや。欲しいモノと言うてもお金で買えるモノやあらへん。ウチがどうしても手に入れられないモノや」

 

ねむ「何だい?それは」

 

彩月「おや。分からへんか。けど・・・。筒地綾女の記憶が欲しいねむさんなら出来る事やろ?」

 

ねむ「僕達に出来る事・・・!?まさか」

 

彩月「分かったみたいやな。ウチが欲しいモノが」

 

ねむ「魔法が欲しい・・・。と言う事だよね」

 

ナナツメ 一夜「!?」

 

彩月「そう言う事や。普通の人間であるウチはキュウべえと契約が出来へん。筒地綾女の記憶も宝の持ち腐れや。けどなぁ・・・。アンタ等なら契約なんて出来ない事を望まんでもウチに魔法を与えられるやろ?」

 

 彩月の表情は暗い笑みが浮かんでいた。

 

ねむ「確認だけど・・・。君は魔法少女の真実を知っているんだろう?」

 

彩月「いずれ魔女に至る事やろ?知っとるでぇ。筒地綾女は魔女化を目撃しながら魔法少女になったんやからな」

 

 ねむは彩月の答えを聞いて少し考え込んでいた。

 

ねむ「・・・。分かった。君の望みを叶える事にするよ」

 

ナナツメ「!?」

 

一夜「えっ!?」

 

 ナナツメと一夜は少し驚いていた。

 

彩月「ええ返答やな」

 

ねむ「ただし君に魔法を与える件は仲間と相談する時間が欲しい。最も十中八九この話は通ると思うけどね。でも・・・」

 

彩月「でもなんや?」

 

ねむ「普通の人間に契約を抜きにして魔法少女の力を与える・・・。理論上は出来るし前に行った実験の応用が役に立つと思う。けど初めて行う実験だから時間が欲しい。今度の日曜日に神浜市まで来る事は出来ないかな?」

 

彩月「神浜?えらい遠い場所やな。まあ構へんで。それで魔法が手に入るなら安いもんやろ」

 

ねむ「じゃあ僕とスマホの番号とメールアドレスを交換して貰えるかな?」

 

彩月「ええで。ほな」

 

 そう言って彩月はスマホを取り出し掲げるとねむの提案に賛同した事を示した。

 ねむは彩月に近づくとお互いのスマホを見て番号とアドレスを交換した。

 

ねむ「じゃあ場所と時間は今夜にでも伝えるよ。帰ろう。ナナツメ、一夜」

 

 ねむは一夜とナナツメを促して神浜市へ帰ろうとした。

 

彩月「ちょっと待ちい。一つ質問があるんやが?」

 

ねむ「なんだい?」

 

彩月「ねむさんやのうて眼鏡をかけた越馬一夜って名乗ったあんさんや」

 

一夜「アッアタシですか?」

 

 自分に質問が向けられて一夜は驚いた。

 

彩月「そや。アンタ・・・。越馬一夜って名乗って眼鏡をかけとるけど朱奈やろ?」

 

一夜「えっえっと・・・」

 

 一夜は質問に戸惑いを見せてねむの方を見た。

 視線に気が付いたねむは一夜に向かって小さく頷いた。

 

ねむ「それはとても長い話になるから今度話そう。一つだけ言えるのは、今は朱奈では無く一夜だって事だよ」

 

彩月「そおか。ほな日曜日にな」

 

 抱いた疑問に対する答えが出なくても気にせずに、彩月は軽く手を振って公園を出て行った。

 

一夜「ねむ様・・・。すみません・・・」

 

ねむ「気にしなくていいよ。今の発言で菖蒲彩月が筒地綾女の記憶を持っている事がハッキリとしたからね」

 

ナナツメ「朱奈の事を知っている人間は限られます」

 

ねむ「そう。ナナツメの言う通りだよ。成果もあった事だしフェントホープへ戻ろう」

 

 ねむに促されてナナツメと一夜はその後に続いた。

□ 神浜市内 ホテルフェントホープ近辺 北養区 夕方

 

 

制服姿のねむとナナツメ、一夜は電車を乗り継いで風見野市からホテルフェントホープへ戻って来ていた。

 

ねむ「僕はこのまま灯花とみふゆとフェントホープで合流するからナナツメはどうする?」

 

ナナツメ「ねむ様が自宅に戻るまでは警護を続けます」

 

ねむ「一夜。君は部屋に戻って構わないよ」

 

一夜「分かりました。あの・・・。ねむ様・・・。今日はありがとうございます・・・」

 

ねむ「うん。今日は僕のワガママに付き合ってくれて悪かったね」

 

 一夜はねむに頭を下げると自分の部屋に戻って行った。

 

ねむ「それじゃ僕達も行こうか」

 

ナナツメ「はい」

 

 ねむとナナツメは、その足で灯花の部屋に向かった。

 ねむは部屋のドアをノックした。

 

灯花「入っていいよー」

 

 灯花の返答を聞いてねむとナナツメは部屋に入った。

 

みふゆ「お待ちしておりまし・・・ってナナツメさん。その制服は!?」

 

ナナツメ「カモフラージュの為だ」

 

灯花「わたくしは必要だとは思わないけどねー」

 

 灯花は呆れた様に告げた。

 

ねむ「まあそれは置いといて本題に入ろうか。アリナはどうしたんだい?」

 

みふゆ「アリナは興味が無いから二人で話し合ってくれとメールがありました」

 

ねむ「まあ予想通りだね。じゃあ始めようか」

 

 ねむに促されて4人は部屋にある椅子に座った。

 

ねむ「相談したい内容はメールで送った通りだよ。二人の意見を聞かせて欲しい」

 

みふゆ「メールは読みましたが・・・。その彩月さんは本気でそんな事を提案してきたんですか?」

 

ねむ「うん。彼女は本気だったよ」

 

みふゆ「魔法が欲しいけど、キュウべえとの契約をする事が出来ないから契約をする事なく魔法が欲しい・・・。しかも魔法少女の真実を知った上で。正直な所、正気とは思えません・・・」

 

 みふゆの苦言を聞いてもねむと灯花の表情は変わらなかった。

 

灯花「確かにみふゆはそう言うかも知れないけど、わたくしだって同じ様に魔法の事を知って契約が出来なかったら同じ事をすると思うなー。だって魔法があれば出来る事が広がるんだものー」

 

ねむ「僕も灯花と同じ意見だね。魔法少女の事を知って契約が出来なければ同じ行動を取ったと思うよ。ただみふゆの言う事も理解出来るよ」

 

 灯花と同じ意見を述べたねむだったがみふゆにも理解を示した。

 

ねむ「菖蒲彩月。彼女は筒地綾女の記憶を持っているにも関わらず契約を望む・・・。流石に僕もどうかしていると思うよ」

 

みふゆ「ではどうするのです?」

 

ねむ「まあ菖蒲彩月が何を考えようと魔法を与える役を果たすのは僕だからね。ちゃんと予防措置は取っておくよ。生殺与奪権を握れば問題無いだろう?」

 

灯花「ねむがそう言うなら安心だよねー」

 

みふゆ「そうですか。それ程に筒地綾女の記憶には価値があるのですね」

 

ねむ「うん。ナナツメの中にある記憶は技術以外の記憶だけ。本人は意識不明な上に記憶が不明瞭な状態。でも菖蒲彩月の中にある記憶を合わせれば限りなく完全に近い筒地綾女の記憶が手に入るからね」

 

みふゆ「完全な記憶・・・。それがあれば綾女さんが持つ技術が手に入りますね」

 

ねむ「そう。記憶の操作。他人のソウルジェムを強制的に操る技術。それに完全な記憶があれば筒地綾女を今の状態から元に戻せるかも知れないからね」

 

灯花「確かに今の状態がいつまで続くか分からないからねー」

 

みふゆ「確かに綾女さんを戻す事は・・・。必要な事ですね」

 

ねむ(それに元に戻せると言う事は逆もまた然りと言う事だよ)

 

 ねむは内心そう思ったがその事は表情に出さなかった。

 

ねむ「それじゃあ菖蒲彩月に魔法を与える件は僕が進めると言う事で良いね?」

 

灯花「異議なーし。わたくしは日曜日は用があるから後はねむに任せるよ」

 

みふゆ「ワタシも異議はありません。必要ならワタシも立ち会いましょうか?」

 

ねむ「時間が合うなら構わないよ。ナナツメは」

 

ナナツメ「護衛の為に同行します」

 

ねむ「だろうね。じゃあ今日の話し合いはこれで」

 

灯花「じゃあわたくしも帰る事にするからー」

 

みふゆ「ではワタシが送りましょう」

 

ナナツメ「ねむ様は小生が」

 

ねむ「うん。頼むよ。ナナツメ」

 

 ねむとナナツメ、灯花とみふゆは揃って部屋を出て行った。

 

 

 

□ 風見野市内 菖蒲彩月の自宅 彩月の部屋

 

退屈そうな表情をした彩月だったが机の上で宿題を進めていた。

その時、机の上に置いていたスマホが振動した。

 

彩月「うん?メールかい。どれどれ」

 

 彩月の予想通りにメールはねむから送られた物だった。

 

ねむのメール「次の日曜日の13時に神浜市北養山林駅まで来て欲しい。僕達は改札口で待っている。そこで君に魔法を与える事にするよ」

 

彩月「狙い通りやな」

 

 少し悪い笑みを浮かべた彩月はメールの返信を返した。

 

彩月のメール「オーケーやで。ほな日曜日に」

 

彩月「さあて・・・。お楽しみはこれからや」

□ 神浜市内 北養区 ホテルフェントホープ エントランス 夜

 

 

エントランスに入る制服姿のナナツメ。

ねむを自宅まで送った後、ナナツメは役目を終えて自室へ戻ろうとしていた。

 

一夜「ナナツメさん」

 

 そこへエントランスに配置されたソファーに座っていた私服姿の一夜が声を掛けて来た。

 

ナナツメ「どうした?小生に用か?」

 

一夜「この制服なんですけど・・・」

 

 一夜は綺麗に畳んだ制服を持っていた。

 

ナナツメ「それは受け取って貰って構わない。次に使用する機会があるか分からないが」

 

一夜「え?あっありがとうございます・・・・」

 

ナナツメ「いらなければ処分しておくが」

 

一夜「いっいえ。大切に保管しときます!」

 

ナナツメ「そうか」

 

 そう言ってナナツメは去って行った。

 ナナツメが去った後、一夜は緊張が解けてその場にへたり込んでいた。

 




菖蒲彩月は、以前に書いたしゅな☆マギカ、サツキ☆マギカ、じゅりあ☆くりすマギカに登場したお気に入りのキャラクターです。
石菖香乃木は彩月の友人キャラで魔法少女の素質はありません。

一夜が作った魔力を貯める宝石はマギアレコードのイベントで保澄雫が受け取った物と同じ物かも知れません。
本来は自身の魔力を感知しにくくする道具と言う解釈です。

ここから新章である菖蒲彩月編が始まります。
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