マギアレコード 偽書e/s memorys   作:ジャックノルテ

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第12話 返事はどうあれ今は共闘しませんか?

 

 

□ 回想 一ヵ月前 神浜市内 新西区 公園 土曜日の午前中

 

 

綾女「良いわ。答えを告げるわ」

 

 声を出した綾女に驚く朱奈とみふゆと黒いローブを身に纏った魔法少女=黒羽根。

 

綾女「私の答えは」

 

 みふゆの表情に緊張が走る。

 次に綾女が言う言葉次第でみふゆが行う行動が決まるからだ。

 みふゆの抱く緊張が周囲の黒羽根にも伝染して行く。

 それは朱奈も同じだった。

 だが・・・。

 

綾女「!?」

 

みふゆ「!?」

 

黒羽根達「!?」

 

 突然起こった魔女の反応に綾女は次の言葉を言う事は出来なかった。

 しかも魔女の反応はこの公園に一直線に向かって来ている。

 

綾女「朱奈!」

 

朱奈「えっ!?」

 

 朱奈を引き寄せると綾女は魔法少女の姿に変身した。

 

みふゆ「皆さん!」

 

 みふゆが魔法少女に変身した事で周囲の黒羽根も武器を構えた。

 同時にそれまで公園だった場所は結界に飲み込まれてしまった。

 

みふゆ「皆さんは周囲を警戒して下さい!綾女さん!」

 

 みふゆは周囲の警戒を黒羽根達に任せると綾女に近付いた。

 綾女の傍にいる朱奈は魔女を見て恐怖を感じている様子だった。

 

みふゆ「返事はどうあれ今は共闘しませんか?」

 

綾女「ええ。私も同じ意見よ。この魔女・・・。かなり強力な魔女ね」

 

みふゆ「はい・・・。恐らく対魔法少女戦に慣れているみたいですね・・・」

 

綾女(もしくは何人かの魔法少女を既に餌にしていたからこそ私達の所へ来たのかも知れないわね)

 

 殺人を連想させる表現を朱奈の前で口に出来ない綾女はみふゆにテレパシーを送った。

 綾女の冷徹な予想にみふゆは表情を少し歪めていた。

 

黒羽根「来ます!」

 

 黒羽根の一人が叫ぶと同時に魔女は綾女達の前に姿を現した。

 

みふゆ「皆さん。慌てずにいつも通りに!」

 

 みふゆの落ち着いた発言を聞いて黒羽根達は魔女を包囲すると次々と鎖鎌を放って牽制を開始した。

 

みふゆ(七瀬さん!ワタシの傍に来て下さい!頼みたい事があります!)

 

 魔女への攻撃に参加しようとした黒羽根の一人はみふゆのテレパシーを受けてみふゆの傍へ向かった。

 

みふゆ「綾女さん!朱奈さんが脇にいては上手く戦えないでしょう。ワタシの部下に朱奈さんを守らせて下さい。身の安全は保障します!」

 

綾女「・・・。分かったわ。朱奈。今だけは・・・」

 

朱奈「うん。分かった・・・」

 

 綾女に促されて朱奈は黒羽根5の傍に向かった。。

 

黒羽根5=七瀬ゆきか「あなたの事は私が護衛します・・・」

 

みふゆ(七瀬さん。いざと言う時は固有魔法を使って下さい。ワタシが許可します)

 

ゆきか(分かりました・・・。やっぱりこれもわたしが原因なんでしょうか・・・)

 

みふゆ「では行きましょうか」

 

綾女「そうね。あの魔女は全力で戦わないと勝てないわね・・・。さっきの質問の返答を返しとくわ」

 

みふゆ「えっ?」

 

綾女「私もマギウスの翼に入らせて貰うわ。まあ現状それしか選択肢が無いでしょうけど・・・」

 

みふゆ「綾女さん・・・」

 

 少し驚いた表情を見せるみふゆ。

 

綾女「その代わり朱奈の身の安全は保障して貰うわよ」

 

みふゆ「はい。それはワタシが保証します」

 

綾女「行くわよ!」

 

みふゆ「はい!」

 

 魔女に対して黒羽根達は距離を取り鎖鎌を放って牽制し相手の出方を計っている様だった。

 魔女へと向かう綾女とみふゆ。

 その時、地面からタコの足の様な物が伸びて来ると綾女やみふゆ、黒羽根達に襲い掛かって来た。

 回避する綾女とみふゆ、黒羽根。

 だが黒羽根の一人は反応が遅れてタコ足に捕まってしまう。

 

黒羽根「くっこの・・・。うっ・・・」

 

 タコの足に絡まれた黒羽根は急激に魔力を消耗して抵抗する力を失いある程度の魔力を吸収するとその場に捨てられた。

 

みふゆ「あの魔女はどうやら魔法少女の魔力を吸収する事が出来る様ですね」

 

綾女「厄介ね。でも後頭部が大きく膨らんだから、そこに魔力を貯めているんでしょうね」

 

みふゆ「どうします?定石なのはワタシの幻惑魔法で魔女の視界を封じた隙に周囲の黒羽根達にタコ足を全て鎖鎌で絡め捕って貰い誰かが後頭部に攻撃を仕掛ければ勝機となり得ますが・・・」

 

綾女「私がやるわ」

 

みふゆ「えっ!?」

 

綾女「私はあの足を拘束する魔法が無いもの。一番危険な役回りはやらせて貰うわ。と言うか私がやる流れでしょ」

 

みふゆ「いえ。綾女さんは大切な協力者ですよ。させる訳には」

 

綾女「迷ってる時間は無いわよ!」

 

 綾女がそう告げた時、黒羽根達は魔女のタコ足に苦戦して本体を攻めあぐねていた。

 

綾女「あのローブの子達じゃ無理よ。正直私より弱いんじゃ話にならないわ。やるしかないじゃない」

 

みふゆ「・・・。分かりました。綾女さんに任せます」

 

綾女「信用してるわ」

 

 駆け出す綾女を援護すべく後方から追いかけるみふゆ。

 みふゆが手にした円月輪を魔女に向かって翳した瞬間、魔女の視界が揺らぎ動きが鈍くなった。

 

みふゆ「皆さん!今の内に魔女のタコ足を鎖で絡め取って下さい!」

 

黒羽根達「はい!」

 

黒羽根達は次々と魔女のタコ足を鎖鎌で次々と絡め捕り動きを封じて行く。

 魔女はみふゆの幻惑魔法が原因で黒羽根の動きに対処出来なかった。

 その間に綾女はジグザグに走ると一気に魔女との距離を詰めると背後に回り込んで一気に魔女の魔力が溜まっている後頭部に跳躍した綾女は武器である箒の柄を一気に後頭部へ突き刺そうとした。

 

綾女「これで!なっ!?」

 

 驚く綾女の左腕を後頭部から突然伸びて来たタコ足が絡み付いて動きを止めてしまった。

 

朱奈「綾女ちゃん!?」

 

みふゆ「綾女さん!?今助けます!」

 

 咄嗟にみふゆは手にした円月輪を魔女に向かって投げた。

 投げられた円月輪は回転して刃と化すと魔女の身体を切り裂き空中に飛び上がったみふゆが受け止め、再度幻惑魔法を仕掛けた。

 その瞬間に魔女の拘束が緩み後頭部へ降り立った綾女は今度こそ箒の柄を突き刺した。

 その瞬間に魔女が暴れ始め後頭部から無数のタコ足が更に生えて来て綾女の動きを封じようとした。

 

綾女「邪魔よ!」

 

 綾女は左手で握った箒を魔女の後頭部に突き刺し続けると右手にも箒を出現させて魔女のタコ足を薙ぎ払いながら攻撃を続けた。

 やがて後頭部から魔女の溜め込んだ魔力が漏れ出し痛みの余り魔女は暴れ始め、それに呼応する様に結界内部も大きな振動が起こった。

 

ゆきか「わたしから離れないで下さい!」

 

 ゆきかは隣にいる朱奈を抱き寄せてその身を守ろうとした。

 

みふゆ「結界が揺れている・・・」

 

 みふゆが周囲に目を凝らすと結界の外の景色が流れているのがみふゆには見えていた。

 

みふゆ(結界が移動している!?もしかして綾女さんの攻撃で暴れ始めて!?)

 

 結界内部の振動は激しくなりみふゆも黒羽根達もその場から動く事が出来なかった。

 それはゆきかと朱奈も同じ様子だった。

 魔女の後頭部で攻撃を続ける綾女も結界の振動を感じていたが攻撃を緩める訳には行かなかった。

 

綾女(ここまで来て・・・。倒さない訳には行かない!)

 

 結界の外を流れる景色を見ていたみふゆは景色から方角を割り出していた。

 

みふゆ(この方角は!?)

 

綾女「これで!!」

 

 綾女は渾身の魔力を込めた一撃を魔女へ放とうとしていた。

 既に綾女のソウルジェムは濁り始めている。

 魔女の後頭部から漏れ出した魔力が綾女の身体を傷付けているからだ。

 決着を急がなければならなかった。

 

みふゆ「綾女さん!」

 

 慌てた様子のみふゆが叫んだと同時に綾女の一撃が魔女を貫いた。

 周囲に魔女の断末魔が響き結界は崩壊した。

 みふゆは周囲の景色からここが神浜市と宝崎市の境にある川の横にある草原だと気が付いた。

 魔女の身体は爆発して四散して爆心地から綾女が姿を現したがよほどダメージが酷いのか身体を箒で支えている状態だった。

 

綾女「うっ・・・」

 

 綾女はその場に倒れ込んでしまった。

 

みふゆ「綾女さん!」

 

 みふゆは直ぐに綾女の傍に近付いて様子を見た。

 

みふゆ「これは・・・」

 

 驚愕の表情をするみふゆ。

 

朱奈「綾女ちゃん!」

 

 朱奈はゆきかの傍から離れて綾女に近付こうとした。

 

みふゆ「行けません!近づいては!」

 

 普段の穏やかな様子と異なり強く注意を促すみふゆの声に朱奈は驚いて足を止めてしまう。

 そこへゆきかが追い付いて朱奈の肩を優しく抑えた。

 

ゆきか「みふゆさんに任せましょう。何かあったのかも知れません」

 

朱奈「でも・・・」

 

ゆきか「魔法少女の怪我は魔法少女にしか治せませんから」

 

 ゆきかにそう言われてようやく朱奈は納得してその場に留まった。

 

みふゆ「一体どうすれば・・・」

 

 思わず小さな声でみふゆは呟いてしまう程、綾女の状態は悪かった。

 綾女のソウルジェムは既に魔女化寸前の状態だった。

 一度周囲を見渡したみふゆはこの場所が神浜市と宝崎市の境だと言う事に気が付いた。

 

みふゆ「ゆきかさん!マギウスに緊急連絡を!他の人は周囲の警戒を!」

 

黒羽根達「はっ」

 

 みふゆの指示を受けて黒羽根達が動き出す。

 ゆきかは携帯電話を取り出しマギウスへ連絡を行った。

 みふゆは周囲にグリーフシードが落ちているのか周囲を見渡しが今の魔女はグリーフシードを落とさなかった様だった。

 

みふゆ「どうすれば・・・。ここではドッペルが発動するのかどうか・・・」

 

 考えを巡らせても答えが出せないみふゆは焦り始めた。

 

綾女「うっ・・・。くっ・・・」

 

みふゆ「綾女さん!しっかりして下さい!綾女さん!」

 

綾女「魔女は・・・」

 

みふゆ「魔女は倒せました。だからしっかりして下さい!」

 

綾女「朱奈・・・。は・・・」

 

みふゆ「朱奈さんは無事です。ですから神浜市に戻りましょう。神浜ならこの怪我も・・・」

 

綾女「そう・・・」

 

 綾女の意識が混濁して行くのはみふゆにも分かった。

 

綾女「ぐぅ・・・。あああああああ」

 

 突然綾女が悲鳴を上げた。

 

みふゆ「綾女さん!」

 

 綾女のソウルジェムに穢れが溜まりどす黒く変色して行く。

 

朱奈「綾女ちゃん!」

 

ゆきか「こらえて下さい!」

 

 綾女の元へ駆け寄ろうとする朱奈をゆきかは抑えた。

 

みふゆ「まさか・・・」

 

 驚きながらもみふゆは反射的に円月輪を構えた。

 もし魔女化するのならここで戦う事になるかも知れないからだ。

 その時、穢れの溢れた綾女のソウルジェムに異変が起きる。

 穢れに満ちた《赤と青に彩られた何か》がソウルジェムから出て綾女の肉体を覆って行く。

 魔女化と異なる変化にみふゆは覚えがあった。

 

みふゆ(これはまさかドッペル!?)

 

 綾女の身体は《赤と青に彩られた何か》に包まれ宙に浮かび脈打っていた。

 真ん中に存在する綾女の顔は生気無く目を閉じている。

 ドッペルと言うには余りにも魔女に近い魔力にみふゆは困惑していた。

 

みふゆ(ドッペルでは無いのですか?では魔女?それも違う・・・。ではこれは一体・・・)

 

《赤と青に彩られた何か》に包まれた綾女が動き出そうとしたその時《赤と青に彩られた何か》の内部から穢れが暴発してそのまま地面に落下した。

 落下を避けたみふゆが様子を見てみると《赤と青に彩られた何か》に包まれた綾女はそのまま硬直してしまっていた。

 慎重に近づいたみふゆが様子を伺うと《赤と青に彩られた何か》に包まれた綾女は完全に動きを止めていた。

 

みふゆ「何が起きたのですか・・・」

 

朱奈「綾女ちゃん!!」

 

 ゆきかの手を振り切った朱奈が《赤と青に彩られた何か》に包まれた綾女の元へ走って来た。

 

みふゆ(朱奈さん!?)

 

 みふゆが止める間も無く朱奈は《赤と青に彩られた何か》に埋め込まれた綾女の顔を恐る恐る触れた。

 

朱奈「冷たい・・・。それに綾女ちゃんを包むこれ・・・。魔女みたい・・・。何がどうなっているの?綾女ちゃんに何が起きたの?」

 

 涙目となった朱奈はみふゆに向かって叫ぶ。

 

みふゆ「ワタシには何が起きたのか・・・。分かりません・・・」

 

朱奈「お願い!綾女ちゃんを助けて!」

 

 みふゆが答えようとした時、赤と青に彩られた何かが動き出した。

 

みふゆ「朱奈さん!」

 

 みふゆは咄嗟に朱奈を庇おうとしたが朱奈は《赤と青に彩られた何か》の腕に掴まれてしまった。

 

朱奈「うぅ・・・。綾女ちゃん。やめて・・・」

 

みふゆ「今助けます!」

 

 みふゆは咄嗟に飛び上がり円月輪で《赤と青に彩られた何か》の腕を切り落として落下する朱奈を抱き留めた。

 

みふゆ(皆さん!鎖で拘束を!)

 

黒羽根達(はい!)

 

 黒羽根達は次々と鎖を放ち《赤と青に彩られた何か》を拘束する。

 

みふゆ「大丈夫ですか?」

 

朱奈「・・・」

 

 みふゆが朱奈の見ている方向に気が付いて見るとそこには黒羽根達の鎖に拘束された《赤と青に彩られた何か》が朱奈に向かって再生した腕を伸ばしていた。

 

朱奈「あぁぁ・・・」

 

赤と青に彩られた何か「クァアアアアアアア!」

 

 朱奈に向かって強力な感情を込めた咆哮を叫んだ《赤と青に彩られた何か》はそのまま再度沈黙した。

 

みふゆ「止まったのですか?」

 

 みふゆは朱奈を庇いながら再度様子を見ていた。

 どうやら直ぐに動き出す事は無さそうだった。

 

みふゆ「皆さん!マギウスが来るまで拘束を続けて下さい!」

 

 みふゆは改めて朱奈の様子を見た。

 手で顔を覆って完全に怯え切っていた。

 

みふゆ「大丈夫ですか?」

 

朱奈「・・・」

 

 朱奈は完全に恐怖で怯え切ってしまい会話もままならない様子だった。

 動揺する朱奈の目から慌てて《赤と青に彩られた何か》を隠すみふゆだったが既に朱奈の瞳には自分に向かって鋭い爪の伸びた手を伸ばす《赤と青に彩られた何か》が見えていた。

 悪い事に意識を失った綾女の顔が朱奈に向いていた。

みふゆは朱奈をゆきかに預けると周囲を幻惑魔法で人目に付かない様にした。

 この幻惑魔法は一般人を対象にした物で魔法少女ならば容易く見破る事が可能だった。

 それから30分後・・・。

 

アリナ「みふゆ!ケガなんてしてないヨネ?」

 

灯花「みふゆー!大丈夫なの!」

 

 そこへアリナと灯花、それにねむが現れた。

 

ねむ「たまたま僕たちが3人でフェントホープに行く途中で助かったよ」

 

 ねむが言うにはたまたま3人共、フェントホープへ行く途中で出会った所でゆきかからの連絡を受けて駆け付けたと言う事だった。

 

アリナ「話は大体分かったカラ。とりあえずコレを運べば良いんだヨネ?」

 

 そう言いながらアリナは《赤と青に彩られた何か》を固有魔法であるキューブに包み込んだ。

 

灯花「ここでドッペルを発動させたって本当なのー?」

 

みふゆ「はい。この神浜市との境で魔女化寸前にドッペルを発動させたみたいなんです」

 

ねむ「見た所、ドッペルと魔女が入り混じっている様に見えたね」

 

 キューブに包まれた《赤と青に彩られた何か》を観察したねむは自身の検分を述べていた。

 

灯花「わたくしにとってもこれは想定外だにゃー」

 

みふゆ「とにかく一度フェントホープへ戻りましょう。いつまでもここにはいられません」

 

灯花「うん。みんなー。今起きた事には箝口令を敷くから他の羽根には漏らさないでねー」

 

みふゆ「はい。灯花の言う通りです。皆さん。この事は他の羽根には話さないで下さい」

 

黒羽根達「はい・・・」

 

 何かを言いたげな黒羽根達だったが一応頷いた。

 

ねむ「彼女の状態を解析する事が出来ればより君達の解放に繋がるだろうからこの箝口令を守って貰えるとありがたいね」

 

黒羽根達「はい」

 

 黒羽根達の返事は先程より良い返事だった。

 

みふゆ(ねむ。助かりました)

 

ねむ(一応、羽根の上に立つ者として当然の行動だよ)

 

みふゆ(はい。ゆきかさん。朱奈さんを連れて行くのに協力して貰えますか?)

 

ゆきか(わかりました)

 

みふゆ「アリナ。二人をキューブで運んで貰えますか?」

 

アリナ「ハイハイ。それじゃ取り込むから動かないデネ」

 

 みふゆの指示に従って朱奈の事を支えたゆきかをアリナはキューブの中に取り込んだ。

 

みふゆ「他の皆さんは今日の仕事は終わりです。ご苦労様でした」

 

黒羽根達「分かりました」

 

 みふゆの発言を聞いて黒羽根達はその場から散って行った。

 

 その場にはみふゆと灯花、ねむ、アリナだけが残っていた。

 

ねむ「じゃあ僕たちもフェントホープへ戻ろうか」

 

みふゆ「アリナ・・・。頼みがあるんですがワタシもキューブの中へ入れてくれませんか?」

 

アリナ「別に良いケド、何かあるワケ?」

 

みふゆ「そろそろやっちゃんが自宅に戻って来るかも知れません。ここだとワタシの魔力に気付かれると厄介な事になりかねませんから」

 

アリナ「じゃあアリナのキューブの中に入ってヨネ」

 

 みふゆはアリナのキューブに入った。

 キューブの中でゆきかと朱奈に会ったが何かを喋る気にはなれず一言も喋らなかった。

 

□ 回想 一ヵ月前 神浜市内 北養区 ホテルフェントホープ 土曜日の午後

 

 

40分ほどでフェントホープの地下室に着くとアリナはみふゆと朱奈、黒羽根のゆきかをキューブから解放した。

 

みふゆ「ここは地下室ですか」

 

ねむ「うん。あれを解放するのはここが一番良いと思ったからね」

 

灯花「ところであなたが朱奈なの?」

 

 灯花は興味を隠そうとせずに朱奈の顔を覗き込んでいた。

 しかし朱奈は綾女の事でショックを受けていて何も反応を示さなかった。

 

灯花「だいぶショックを受けてるみたいだねー。とりあえずあなた客室に案内してあげて。とにかく休ませた方が良いと思うからー」

 

ゆきか「分かりました」

 

みふゆ「後でワタシが様子を見に行きますからそれまで付き添って上げて下さい」

 

ゆきか「ハイ」

 

 ゆきかはそう言って朱奈の手を引いて地下室から出て行った。

 

みふゆ(七瀬さん。ご苦労様です)

 

ゆきか(いえ!?とんでもありません)

 

 みふゆはテレパシーでゆきかに礼を述べた時、アリナがキューブから《赤と青に彩られた何か》を解放した。

 すると地下室の壁にぶら下がっていた鎖が《赤と青に彩られた何か》を改めて拘束し直していた。

 

ねむ「これで動く事は出来ないから安心して調べる事が出来るよ」

 

灯花「ありがとねー。ねむ。それじゃ早速・・・」

 

 灯花は《赤と青に彩られた何か》を検分し始めていた。

 その脇でアリナも興味深そうに《赤と青に彩られた何か》を見ていた。

 

みふゆ「アリナ。そんなに一生懸命に見つめて何か分かるのですか?」

 

アリナ「ナニも分からないケド?でも・・・。コレ・・・。生と死が入り混じった感じがして題材としては凄く興味深いヨネ?」

 

 笑みを浮かべて話すアリナにみふゆは質問した事を少し後悔した。

 

みふゆ「相変わらずですね。ねむ。綾女さんがまた動き出してもこの地下室で抑える事は可能ですか?」

 

ねむ「後で念の為にウワサを書き足しておくけど、僕が感じる魔力量では、ここから動く事は不可能だと思うよ」

 

灯花「そうだねー。今の所、完全に活動を停止しているみたいだから心配はいらないと思うよー」

 

みふゆ「灯花・・・。それで一体どうなのですか?」

 

灯花「うーん。結論から言うと筒地綾女はイブに近い存在になったかにゃ?」

 

ねむ「つまり半魔女と言った所だね」

 

灯花「そうだねー。魔法少女と魔女、それにドッペルが入り混じった状態なんて半魔女としか形容出来ないからねー」

 

みふゆ「それで・・・。その綾女さんを元には戻す事は可能ですか?」

 

 みふゆの質問に灯花は表情を陰らせた。

 

灯花「それは難しいと思うかにゃー。正直に言ってこんな状態は初めて見るからどうやって変化したのかも分からないし、どう戻せば良いのか分からないからにゃー」

 

みふゆ「そうですか・・・」

 

ねむ「ようやく筒地綾女を確保出来たと思ったけどこれじゃ技術の情報を引き出せないね」

 

灯花「テレパシーにも反応が無いから記憶を探るのも無理かにゃー?」

 

みふゆ「やはりナナツメさんの記憶だけではダメですか?」

 

 ナナツメと言う単語を聞くとアリナの表情が変化した。

 

ねむ「うん。肝心な技術に関する記憶が無いからね」

 

灯花「どうにかこの状態の筒地綾女から記憶を取り出せれば良いんだけどねー。あれ?」

 

みふゆ「灯花。どうかしたのですか?」

 

灯花「この筒地綾女の手なんだけど何かを握ってるみたいなんだよねー。よいしょっと」

 

 そう言って灯花は《赤と青に彩られた何か》から生えた手が握っていた何かを取り出した。

 

みふゆ「灯花!軽はずみな行動は!?」

 

灯花「うーん。グリーフシードに似た物見たいだにゃー?」

 

ねむ「何だろうね?何か重要な品物かな?強い魔力を感じるよ」

 

灯花「ナナツメなら分かるかにゃー?呼び出してみるー?」

 

 再度、ナナツメと言う単語を聞いた瞬間アリナの表情が変化した。

 誰が見ても憎悪としか形容の無い表情をアリナは見せていた。

 

アリナ「アイツが来るのならアリナは帰らせて貰うカラ」

 

 そう言ってアリナは地下室から立ち去ってしまった。

 

みふゆ「アリナ!はあ。仕方ないですね」

 

ねむ「まあ無理も無いと思うよ。あんな事があった後じゃ」

 

みふゆ「またあんな事になっても困りますからね・・・」

 

 みふゆとねむは理由を知っていると言う表情を見せていた。

 

灯花「アリナの事は良いからナナツメを呼ぶよー」

 

 灯花はスマホを取り出すとナナツメに連絡を取った。

 

灯花「もしもし。ナナツメ?今大丈夫?じゃあフェントホープの地下室に来て欲しいんだけど・・・。分かった。待ってるからねー」

 

 灯花はそう言ってスマホを切った。

 

灯花「直ぐに来るって」

 

ねむ「今日は一応休暇にして貰っていたんだけどね」

 

 ねむが苦言を言ってから数分後に黄色いローブを身に纏ったナナツメは地下室に現れた。

 

ナナツメ「灯花様。ねむ様。小生に御用と言うのは?」

 

灯花「うん。これがなんなのか知りたいんだよねー」

 

 灯花はそう言って先程《赤と青に彩られた何か》の手から取り出した何かを見せた。

 

ナナツメ「これは・・・。筒地綾女の魔法の種。それも他人の精神を保管している種です。これをどこで?」

 

ねむ「筒地綾女本人の落とし物と言う所かな」

 

 ねむはそう言ってナナツメに《赤と青に彩られた何か》を差した。

《赤と青に彩られた何か》を観察したナナツメは中央部分に埋め込まれた筒地綾女本人の顔を見て悟った様子だった。

 

ナナツメ「何かがあった様ですね・・・」

 

灯花「うん。これじゃあ筒地綾女から技術を提携して貰うのは無理かにゃー?」

 

 残念そうな灯花の様子を見て考えた込んだナナツメが口を開いた。

 

ナナツメ「いえ。もしかしたらその魔法の種は筒地綾女の精神が保管されているかも知れません」

 

みふゆ「どういう事ですか?」

 

ナナツメ「筒地綾女は自身の記憶をコピーする実験を小生以外の人間でも試していました。ですからその中のどれかに自身の精神をコピーしている筈です」

 

ねむ「なるほど。それならその記憶の種を解析すれば筒地綾女の技術が手に入るかも知れないね」

 

灯花「ねむー。それなら記憶ミュージアムで解析出来ないかな?記憶を入っている物だし」

 

ねむ「どうだろう?他者の精神コピーを閲覧する様には作ってないし下手に刺激してこの魔法の種が破損しなければ良いんだけど・・・。まあやるだけやって見るよ。上手くやれば一部の技術位は引き出せそうだしね」

 

灯花「それよりもこれ、記憶が入っているかも知れないんだよねー?誰かにこれを使えば記憶を閲覧出来るのかな?」

 

ナナツメ「小生の知る限りこの魔法が成功したのは小生以外に一般人が一人だけだと記憶されています。それに記憶を埋め込んでも上手く作用しない事もあります」

 

ねむ「まあ急ぐ必要も無いから焦らずに進めてみよう・・・。そうだ!」

 

 ねむが何か閃いたと言う表情を見せる。

 

みふゆ「ねむ。どうしたんですか?」

 

灯花「どうしたの?ねむ」

 

ねむ「この魔法の種をミラーズコピーの魔法少女に使用したらどうかな?ミラーズコピーの魔法少女なら魔力で出来た存在だから魔法による改変がしやすいかも知れない」

 

みふゆ「それは・・・。確かにそうかも知れません。ミラーズコピーは時々、我々の予想を超えた行動を取る時がありますから」

 

ねむ「アリナが持っている分はアリナの作品扱いだろうし誰か黒羽根に数体捕獲してきて貰おうかな」

 

灯花「そうだねー。善は急げって言うし」

 

みふゆ「実験するのは構いませんが気を付けて下さい。ミラーズコピーも所詮は使い魔なんですから・・・」

 

ねむ「分かっているよ。これも組織に必要な事だからね」

 

 




今回は菖蒲彩月編と言うよりも第一話において意図的に消されたシーンの回想と言える作品です。
これが一話と二話における空白期間に起こった出来事です。
コピー綾女が作られた理由等が明らかになっています。
なお作中でアリナはナナツメに何らかの確執を抱えている事は後に語られます。
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