マギアレコード 偽書e/s memorys   作:ジャックノルテ

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第14話 想いちゅうんは人を生かしも殺しもするもんやからな

□ 神浜市内 栄区 記憶ミュージアム 一夜の意識内

 

 

一夜が目を開くとそこは白い空間だった。

意識の中で目を開くと言うのはおかしな話だが、周囲の認識をする為に目を開き周囲を見渡すと言う意味では間違っていなかった。

 

一夜「ここは・・・」

 

 一夜が改めて周囲を見つめるとそこには無数の映像が流れていた。

 赤と青色の髪を話した女性が誰かの手を引いている映像だった。

 映像は手を繋ぐ少女の視点なのか少女の顔は見えなかった。

 けど手を引く女性の顔を見た瞬間に少女が誰なのか悟る事が出来た。

 

一夜「筒地綾女さん・・・。じゃあこれは朱奈さんの記憶・・・」

 

 一夜は映像が一定の方向から流れて来ている事に気が付いて映像が流れて来ている方向に向かって足を進めた。

 やがて映像の流れて来る先には黒い空間があり一人の少女、朱奈が俯いたまま座り込んでいた。

 

一夜「朱奈さん・・・?」

 

朱奈「だれ・・・?」

 

 朱奈は俯いて一夜の方に背を向けて問い掛けて来た。

 

一夜「アタシ・・・。越馬一夜って言います。今日はあなたと話したくてここに来ました・・・」

 

朱奈「そう・・・」

 

一夜「ここは・・・。朱奈さんとアタシの意識を繋いでる空間だとマギウスから説明を受けています。ここでなら朱奈さんと会話が出来るって・・・」

 

朱奈「そう・・・」

 

 心底関心が無いと言う雰囲気を出して朱奈は答えた。

 

一夜「どう言ったら良いか分かんないんですけど・・・。アタシ、魔法少女なんです」

 

朱奈「そうなんだ・・・」

 

一夜「でも今は色々あって自分の身体を失っていて・・・。アタシは今、朱奈さんの身体を借りている状態なんです」

 

朱奈「それで・・・」

 

一夜「アタシは朱奈さんの身体を借りているから仕事が出来る状態なんです。でも朱奈さんの許可を得ずに無断借用した気がしたから・・・だから・・・」

 

朱奈「いいよ・・・」

 

 予想外の朱奈の答えを驚く一夜。

 

一夜「えっ?あのそれって・・・」

 

朱奈「わたしの身体、使っても良いよ・・・」

 

一夜「でもそれは・・・」

 

朱奈「わたし・・・。今は・・・。思い出したく無い・・・。綾女ちゃんがあんな風になってしまった事を・・・。わたしは・・・」

 

一夜「マギウスは綾女さんの事を元に戻そうと研究しています・・・」

 

朱奈「!?・・・。研究したってまだ戻ってないんでしょう?」

 

一夜「はい・・・。まだ元に戻す事は・・・」

 

朱奈「それならいいよ・・・。わたしはずっとここにいるからあなたがわたしの身体を使って良いから・・・」

 

一夜「でも・・・。いつか・・・。綾女さんが元通りになったら・・・。この身体をお返しします。だからそれまで・・・。この身体を大切に使います・・・」

 

 一夜の言葉を振り向く事無く無表情に聞く朱奈。

 

朱奈「もう出て・・・。わたしは起きていたくないから・・・」

 

一夜「分かりました・・・。朱奈さん!」

 

朱奈「・・・・・」

 

一夜「ありがとうございます!アタシが生き返るチャンスをくれて!」

 

朱奈「・・・・・」

 

一夜「いつかきっとこの身体を返せる日が来る筈です・・・」

 

朱奈「・・・・・」

 

一夜「じゃあいつかまた・・・」

 

 そう言って一夜は背を向け朱奈から離れた。

 すると一夜の視界は真っ白に染まって行く。

 

□ 神浜市内 栄区 記憶ミュージアム

 

 

椅子に座った一夜が目を開くとそこは元のカプセルの中だった。

 カプセルの外にはねむ、みふゆ、彩月が思い思いの椅子に座ってこちらの様子を見ていた。傍らの壁にはナナツメが待機していた。

 

ねむ「終わったみたいだね。一夜」

 

一夜「はい・・・」

 

 答えた一夜はカプセルの中ら出て来た。

 

みふゆ「朱奈さんの様子はどうでしたか?」

 

一夜「えっと・・・。その・・・」

 

ねむ「話してくれると助かるよ。今回の事は個人のプライバシーに関わる事だから映像として映し出す事は停止していたからね」

 

一夜「はい。朱奈さんとは、こんな事を話しました・・・」

 

 一夜は少し言い淀んでいたが、意を決して朱奈との会話を話した。

 

ねむ「成程。じゃあ今は一夜が身体を使う事を許した訳だね」

 

朱奈「はい・・・。一応は許してくれました・・・」

 

みふゆ「やっぱり朱奈さんは、まだ綾女さんとの事を思い出し続けているのですね・・・」

 

ねむ「現実逃避とも言えるね」

 

みふゆ「でも分かります。大切な人が・・・。あんな状態になってしまっては・・・」

 

彩月「まあ仕方ないないやろ。想いちゅうんは人を生かしも殺しもするもんやからな」

 

 彩月の言葉にみふゆが顔を曇らす。

 

みふゆ「そうかも知れません。ワタシが朱奈さんの心を傷付けたのかも知れません」

 

 それまでと異なる悲痛な表情を見せるみふゆから重い感情が流れていた。

 

彩月「みふゆさん。何かしたんか?」

 

 彩月の声には非難の心情は無い。ただ反射的に聞いただけだ。

 

ねむ「みふゆだけの責任じゃ無いよ。あれは僕も止めるべきだったよ・・・」

 

一夜「何があったんですか?」

 

 みふゆの発言を聞いてねむまでが妙な事を口走り一夜も気になった。

 

みふゆ「そう言えばあの時、一夜さんはローブ作りが忙しくて工房に籠ってましたから何があったのか知りませんね・・・。これから話す事は正直に言って余り良い話ではありません。止む無く行った事とはいえ、ワタシは今でも後悔しています」

 

 意を決する様に一度、瞳を閉じて開いたみふゆは再度、口を開いた。

 

みふゆ「ワタシ達は綾女さんをフェントホープに封印した後、朱奈さんを保護しました。ですが・・・。朱奈さんは綾女さんが封印された事にショックを受けて心を閉ざしていました。その為に自発的に食事も何も一人で出来ない状態でした」

 

ねむ「初めはみふゆが世話をしていたんだけど流石に負担が大きかったからね。みふゆの疲労の色が濃くなったから辺りに灯花が提案して来たんだ」

 

彩月「何を提案したんや?」

 

みふゆ「ワタシの固有魔法である幻惑魔法でワタシの姿を綾女さんに見せかける事によって朱奈さんの精神を一時的にでも安定させて管理しやすくしようと・・・」

 

一夜「えっ!?」

 

 みふゆの告白に一夜は驚いた。

 

みふゆ「流石にどうかと思って断ろうとしたのですが、灯花の提案を聞いたアリナも賛同して無理にでもやって欲しいと言われて・・・。やってしまいました・・・」

 

ねむ「僕も後から聞いて驚いたよ。流石にどうかと思ったからね」

 

みふゆ「ですが灯花もアリナもワタシの心が疲弊しているのを見抜いていましたからね。ワタシも灯花の提案を聞いて魔が差したのは確かです」

 

一夜「それでどうなったんですか?」

 

みふゆ「初めは順調でした・・・。朱奈さんはワタシを綾女さんだと思い綾女さんが元に戻ったと思ってワタシの言う事を聞いて大人しくしてくれました。ですが・・・。きっと朱奈さんの心が負った傷はワタシの幻惑魔法を超える物だったんです。突然、朱奈さんは綾女さんが封印されている事を不意に思い出してワタシの幻惑魔法が通じなくなる様な恐慌状態となってしまいワタシは止む無く朱奈さんを幻惑魔法で眠らせました」

 

ねむ「でも魔法で眠らせるのには限度があるからね。また別の対処が必要になったんだよ」

 

みふゆ「はい・・・。その間にマギウスへの反逆事件が起きて一夜さんが身体を失ったんです」

 

彩月「反逆事件?なんや?初耳やな」

 

みふゆ「そう言えば、まだ話して無かったですね。彩月さんと会う一ヶ月程前にマギウスの翼内部で反逆事件が起きたんです。その時、反乱に激怒した灯花がドッペルを使って反逆者を一掃したんですが、一夜さんも攻撃に巻き込まれて身体を失ってしまったんです」

 

彩月「まあどんな組織でも内部分裂は付きもんって事やな」

 

 皮肉な表情を見せて彩月は言った。

 

みふゆ「一夜さんが巻き込まれてソウルジェムだけになった事が分かってワタシ達は一夜さんの身体を元に戻せないかと色々手段を模索しましたが、有効な手段が思いつきませんでした。その時、灯花がある提案をしたんです」

 

灯花「そう!わたくしが提案して一夜のソウルジェムと朱奈の身体を接続して一夜にまた働いて貰える様にしたんだよー」

 

 みふゆの発言を待ってましたとばかりに遮って、その部屋に里美灯花が制服姿で部屋に入って来た。

 

みふゆ「灯花。来ると思いませんでした」

 

 部屋の中にいた全員が驚いた。

 

灯花「うん。来るつもりは無かったよー。でも新人の黄羽根さんがいるのなら、わたくしとねむの親衛隊でもあるんだから顔合わせはすべきでしょー?」

 

 そう言って灯花は彩月の前に向かい手を差し出した。

 

灯花「あなたが菖蒲彩月だねー。初めまして。わたくしは里美灯花。マギウスの翼を率いるマギウスの一人の天才物理学者だよー。よろしくねー」

 

 彩月はそのまま手を握り返そうとしたが、座っていた椅子から立ち上がり床に片膝を付いて頭を傅く形で灯花の手を取った。

 

彩月「ウチは菖蒲彩月や。親衛隊ならこう言う挨拶のがええんやろ?」

 

灯花「わたくしはそう言うのにこだわらないけどありがとねー」

 

 そう言って灯花は彩月の手を握り返した。

 

ねむ「さて。話を元に戻すと灯花から提案を受けた僕が一夜のソウルジェムと朱奈の身体を《赤と青に彩られた何か》に包まれた筒地綾女の断片的な記憶から再現した魔法でソウルジェムと肉体を接続する事で一夜は今の状態に至ると言う訳だよ」

 

 ねむは、灯花が現れた事で止まった話を上手くまとめて話した。

 

一夜「そうだったんですか・・・。それでアタシは朱奈さんの身体を接続されたんですね・・・」

 

灯花「うん。組織を運営し続ける上で一夜の能力が必要不可欠な物だからねー。これからもローブや色々な道具を作って貰うから期待してるからねー」

 

 灯花は機嫌良さげにそう語った。

 

彩月「まあウチも話を聞いて一夜さんが組織において重要だと言う事は理解したで」

 

灯花「うん。理解するのが速くて助かるにゃー。黄羽根に任命した甲斐があったよー」

 

彩月「そうやろ?綾女さんの記憶のお陰でウチは魔法少女の事に関して理解力が高い方なんやで」

 

ねむ「そんなに理解力が高いなら次の週から彩月には羽根としての訓練も始めて貰おうかな?」

 

彩月「羽根としての訓練?何するんや?」

 

ねむ「まず彩月は戦闘経験が不足しているだろう?だからフェントホープ内にある訓練所で戦い方の基礎を習って貰うよ」

 

みふゆ「魔法少女としての戦い方。それとは異なる羽根としての戦い方。二通りの戦い方を習って貰うのでワタシの方から適任者には話を通してあります」

 

灯花「流石はみふゆだねー。仕事が速くてわたくしもねむも大助かりだよー」

 

ねむ「むふ。確かにそうだね。問題は先送りせずに一つ一つ適切な対処をして行く事が大切だからね」

 

彩月「なるべくお手柔らかに頼むで」

 

 少しだけ困った表情をした彩月は答えてた。

 

彩月「そう言えば一つ気になる事があるんやけど聞いてもええか?」

 

灯花「なにかなー?」

 

彩月「朱奈の右目にあった呪いはどうしたんや?」

 

ねむ「呪いは僕の魔法で概念化して取り出した後、ホテルフェントホープに接続して魔女をおびき寄せるのに利用しようとしたんだけどね・・・」

 

彩月「けど、なんや?」

 

ねむ「やっぱり僕の作ったウワサに呪いを接続するとウワサとしての機能に影響が出てしまうから今は切り離しているよ」

 

彩月「切り離した呪いはどうしたんや?」

 

ねむ「呪いはこの間、一夜に魔力を込めて貰ったハンドベルに接続して今はアリナに預けているよ」

 

彩月「アリナってウチがまだ会ってないマギウスの一人か」

 

ねむ「アリナは余程、気に入ったのか魔女を集めるのに役立つって早速使っているみたいだよ」

 

みふゆ「はい。呪いのベルは金曜日になると自動的に鳴り響いて魔女を引き寄せますが魔力を込めて振る事で曜日に関係無く使う事が出来るのでアリナはとても気に入ったようですよ」

 

灯花「でもハンドベルに呪いを接続したお陰でわたくしは呪いの持つ魔女を引き寄せる波長を分析する事が出来てもっと多くの魔女を神浜に誘導する事が出来たからねー。結果オーライだよー」

 

彩月「便利な魔法やなー。筒地綾女の記憶を持っとると余計にそう思うで」

 

彩月(それなら呪いをウチが手にする事も出来るって事やな・・・)

 

彩月「これでマギウスの翼を束ねるマギウスの二人には挨拶を済ませたさかい、後はアリナさんだけやろ?いつ挨拶したらええんや?」

 

ねむ「どうだろうね?アリナは特に黄羽根の事に関心を抱かないし、いつフェントホープに来るのかも予想が付かないからね」

 

灯花「うん。来た時に挨拶すれば良いと思うよ」

 

みふゆ「それでしたら彩月さん。ホテルフェントホープにいる時はローブのフードは被らないでおいて下さい。アリナがナナツメさんと間違える大変な事になりますから・・・」

 

彩月「なんや?仲でも悪いんか?」

 

 彩月の言葉を聞いて灯花、ねむ、みふゆは表情を曇らせた。

 

灯花「なんて言ったら良いんだろうねー」

 

ねむ「僕も上手く言い表せないよ・・・」

 

みふゆ「そうですね・・・。これはアリナとナナツメさんの問題ですから・・・」

 

 全員の視線がナナツメに向かってしまう。

 

ナナツメ「特に問題は無いと小生は思います」

 

 珍しくナナツメが意見を口にした。

 

ねむ「ナナツメはそうでもこれは周囲が気遣う問題なのは確かだよ」

 

ナナツメ「・・・。少し気に留めて置きます」

 

 ねむの苦言にナナツメは答えながら頭を下げた。

 

彩月(なんや、爆弾抱えとる組織みたいやな)

 

 内心の感想を押し隠して彩月は周囲の人物を観察していた。

 組織のトップ、マギウスである灯花とねむ。

 幹部であるみふゆ。

 護衛役であるナナツメ。

 裏方担当の一夜。

 バラバラな人間が集まり一つの目的の為に動く組織を象徴している様に思えた。

 

□ 数日後 土曜日の午後13時 風見野市内 公園

 

 

風見野市内の公園に菖蒲彩月は一人で立っていた。

 

彩月(さて・・・。人気も無いし始めさせて貰おか)

 

 そう思いながら彩月は魔法少女姿へと変身した。

 そしておもむろに一本の木に手を翳した。

 するとそこに魔力で形成された円状の空間が出現した。

 躊躇う事無く彩月は、その空間に足を踏み入れた。

 空間を数十歩歩くと、そこは神浜市北養区の廃墟の内部に出た。

 

彩月(便利な魔法やな。空間転移だったんか?直接フェントホープに繋げないのも用心深くてええな)

 

 ここから歩いて約15分でフェントホープの入り口へ着く事が出来る。

 再び私服姿に戻った彩月は周囲を見渡し誰もいない事を確認すると廃墟を出てホテルフェントホープへ向かって歩き出した。

 

彩月(みふゆさんが組織外の魔法少女と交渉して設置してくれた空間転移の入り口。お陰で風見野から神浜へ来るのが楽でええもんや)

 

 やがて彩月はホテルフェントホープへの入り口がある自然公園に辿り着くと入り口からホテルフェントホープを生成する空間へと入り込んだ。

 

彩月(おっと。ローブを着にゃアカンか)

 

 とソウルジェムから出現させた黄色いローブを身に纏いナナツメと異なり素顔を晒した彩月はホテルフェントホープへの道を歩き続けた。

 そこへ前方から白羽根と黒羽根が歩いてくるのが見えた。

 

彩月「よお。今日もお互いに頑張ろーや」

 

 フレンドリーに手を振りながら挨拶をする彩月。

 

白羽根「こんにちは・・・」

 

黒羽根「こんにちは・・・」

 

 白羽根と黒羽根達は彩月に挨拶を返すと彩月とすれ違って行く。

 

彩月(なんかの仕事か。まあ仕事があるのなら順調って事やろな)

 

 そう思いながら彩月はホテルフェントホープのエントランスへ入り込んだ。

 

白羽根5「やあ。来たみたいだね」

 

 エントランスにあるソファーに座っていた白いローブを纏った少女が彩月に話かけて来た。

 隣には黒いローブを身に纏った少女が座っている。

 

彩月「ウチの事を知っとると言う事はあんさん等がウチに魔法少女の戦い方を教えてくれる人なんか?」

 

白羽根5「そうだよ。みふゆさんに頼まれたからね。じゃあ早速地下の訓練所へ行こうか」

 

 彩月は白羽根5と黒羽根6に付いて地下にある訓練所へ向かった。

 訓練所はある程度の広さを持った広い部屋だった。

 

黒羽根6「ここはとても頑丈な部屋だからここでなら幾ら魔法を使っても問題はありません・・・」

 

 頑丈そうな扉を閉めながら黒羽根6はそう言った。

 

白羽根5「さて・・・。扉を閉めたならもう堅苦しいのは良いかな」

 

 そう言って白羽根5は身に纏った白いローブを脱いだ。

 

白羽根5=観鳥令「マギウスの翼、白羽根の一人、観鳥令だよ」

 

黒羽根16=牧野郁美「じゃあくみもぉー。マギウスの翼、黒羽根の一人、牧野郁美だよぉー。キュンキュン♪」

 

彩月「ウチは菖蒲彩月や。よろしゅう頼むで」

 

 彩月の差し出した手を観鳥さんと郁美は順番に握手した。

 

観鳥さん「それじゃあ魔法少女としての戦い方をきっちりと教えようか。実戦形式でね」

 

 握手を終えた観鳥さんは武器であるバズーカを構えていた。

 

郁美「そうだねー。やっぱり戦い方って言うのはみふゆさんの言う通り、実戦あるのみだよねー。ルン♪」

 

 郁美もそう言って武器であるモップを構えていた。

 

彩月「そやな。実戦形式で戦い方を学ぶんが一番やしなあ!」

 

 そう言って彩月も武器である薙刀をその手に出現させていた。

 

観鳥さん「良い返事だね。じゃあ始めようか!」

 

 そう言って観鳥さんはバズーカ砲を天井に向かって最小限の威力で撃った。

 それを合図に彩月と郁美が走り出し正面からぶつかろうとした。

 

 

 

 それから1時間、彩月は観鳥さんや郁美さんと二対一や一対一と言う戦闘を繰り返した。

 

観鳥さん「少し休憩にしようか。それにしてもみふゆさんから事情は聞いていたけど驚いたよ。戦い方の呑み込みが凄く速いね」

 

郁美「そうだよぉー。聞いてた話と全然違うよぉー。くみはもう限界だよぉー」

 

 まだ余裕と言った表情を見せる観鳥さんに対して郁美は既に息が上がっていた。

 

彩月「そか?ウチもまだ行けるで。恐らくは筒地綾女の・・・。戦いの記憶があるからやろな。戦うって事の心構えが刷り込まれてるって事やな」

 

観鳥さん「他者の記憶が頭の中にあるか・・・。それは興味深いね・・・。観鳥さんとしては取材したい所だよ。これでもマギウスの広報担当だからね」

 

郁美「もうー。令ちゃんたら直ぐに何でも取材しようとするんだからー」

 

観鳥さん「これが性分だから仕方ないね」

 

彩月「そう言えばみふゆさんにマギウスのメルマガの事は聞いとったけど観鳥さんが作っていたんか?」

 

観鳥さん「そうだよ。マギウスの翼内部の事も色々と取材をしているからね。記事にするかどうかは別にしてね」

 

彩月「じゃあナナツメさんの事は何か知っとるんか?」

 

観鳥さん「ナナツメさんの事?うーん。生憎、あの人の事は何も知らないね・・・」

 

郁美「令ちゃんが知らないのも無理ないよぉー。ナナツメさんの事はぁ組織の古株で灯花様とねむ様の護衛を担当している以外は何も分からないからねー」

 

観鳥さん「どうしてナナツメさんの事を知りたいんだい?」

 

彩月「どうやらウチと同類らしくてな。ナナツメさんも筒地綾女の記憶を一部持っとるらしいからどんな人間か興味があったんや」

 

観鳥さん「成程・・・。でも悪いけどナナツメさん個人の事はやっぱり何も知らないね。一度だけねむ様を通して取材を申し込んだけど護衛が優先と言って断られたね」

 

郁美「くみが知ってる範囲でナナツメさんと関わっているのはぁ、灯花様とねむ様、それに一夜ちゃん位だよねー」

 

彩月「そか。ならウチが聞いてみるか」

 

観鳥さん「何か聞きたい事があるのかい?」

 

彩月「みふゆさんが言うとったけど、フェントホープにいる時はローブのフードを被らない方がええと言われたんや。アリナがナナツメさんと間違えると大変な事になると言われたからなあ」

 

観鳥さん 郁美「!?」

 

 彩月の言葉を聞いて驚いた表情を見せる観鳥さんと郁美。

 

観鳥さん「ああ。その事か・・・」

 

郁美「あの二人は私達がマギウスの翼に入った時点で仲が悪かったよねぇ・・・」

 

彩月「そんなに悪いんか?」

 

観鳥さん「悪いなんて物じゃ無いよ。観鳥さんも関わりたくは無いね」

 

郁美「うんうん。あの二人が顔を合わせたらぁ、もうくみはぁその場にいるのが耐えられないのー」

 

 観鳥さんも郁美もアリナとナナツメが顔を合わせた場所に居合わせた事を思い出して苦い表情をしていた。

 

彩月「ふーん。まあその事は置いといてウチはナナツメさんに興味があるけどな。数少ない同類やしな」

 

観鳥さん「まあ話を聞きたいならねむ様を通すと良いよ。それより次は・・・。羽根としての訓練をしようか」

 

 観鳥さんがそう言って白羽根のローブを纏った。

 それを見て郁美もローブを纏う。

 

彩月「羽根として訓練は別の人がやるんやないか?」

 

 専用の黄色いローブを着た彩月が問い掛ける。

 

観鳥さん「神楽教官は今日、新人を連れて実戦訓練に出ているからね。彩月さんの魔法少女としての戦い方が予想以上に速く終わったからオマケで羽根としての戦い方を教えてあげるよ」

 

郁美「うん・・・。羽根の時は固有魔法じゃ無くローブに付いている鎖鎌だけを使って戦って貰う事になるから・・・」

 

 郁美はローブを着ると抑揚の無い口調になっていた。

 

彩月「なら始めよか」

 

観鳥さん「本当はその喋り方もまずいけど・・・。黄羽根だから目を瞑るよ」

 

彩月「感謝するで」

 

郁美「行きます・・・」

 

 同時に郁美が彩月に向かって走り出して来る。

 それを迎え撃とうとしながら彩月は別の事を少しだけ考えていた。

 

彩月(ナナツメさんがウチと同類なら敵か味方かを知る為に出来るだけ知らなあかんなあ・・・)

 

 郁美の攻撃を避けながら観鳥さんが動いたのを見て彩月は先の事を考えるのをやめて目の前の戦いに集中した。

 




次回からは新章、ナナツメ編が開幕します。

ナナツメが何故、マギウスの翼に入ったのか?

一夜とナナツメが会った時に何があったのか?

ナナツメとアリナに何があったのかは次回のナナツメ編で明らかになります。

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