マギアレコード 偽書e/s memorys   作:ジャックノルテ

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ナナツメ編
第15話 こんな記憶さえなければ


□ 神浜市内 ホテルフェントホープ エントランス 土曜日の午後

 

 

彩月「はぁ・・・。神楽教官の羽根の訓練はキツイな・・・」

 

 その日、彩月は羽根の教育を担当する神楽教官が新人の羽根を指導すると言うのでねむの口添えもあり特別に訓練に参加させて貰った帰りだった。

 

彩月「固有の魔法が使えんと言うのが難しいな・・・。やっぱ薙刀の方が使いやすいんやけどな・・・」

 

 訓練を終えた彩月はエレベーターに乗ってフェントホープの上層階にあるねむの部屋に向かった。

 黄羽根は灯花とねむの直属である為、今日の訓練が滞りなく終わった事を報告する為だ。

 ねむの部屋の前に来るとドアをノックした。

 

彩月「ねむ様。彩月やで。今日の報告に来ましたで」

 

ねむ「いいよ。入って」

 

 ねむからの返答があるとカギを開く音がしてナナツメがドアを開いていた。

 

彩月(ちょうどええな・・・)

 

 内心考えている事を隠して彩月はナナツメの先導で部屋に入りねむのいる場所へ向かった。

 

彩月「本日の羽根の訓練も滞りなく終わったで」

 

ねむ「そうかい。順調な様で何よりだよ。これなら来週から一夜の護衛を彩月に任せようかな?」

 

彩月「それはおおきに。組織に属する以上、割り振られた仕事があると言う事はほんとにありがたい事やな」

 

ねむ「うん。君の言うとおりだと思うよ。働きぶりにも問題無いし君のように忠実で向上心のある羽根がもっと欲しい所だよ」

 

彩月「まあウチ見たいな変わり者は、そうそうおらへんやろ」

 

ねむ「そこは僕も同意だね」

 

彩月「報告も終えたし質問してもええか?」

 

ねむ「良いよ。答えられる範囲でなら答えるよ」

 

彩月「まあねむ様やのうてナナツメさんに聞きたい事があるんやけどな」

 

ねむ「ナナツメに?珍しいね」

 

ナナツメ「仕事中だ。個人的な質問は受け付けない」

 

 毅然とした態度で答えるナナツメ。

 それを見てねむは少しだけ彩月のフォローをする事にした。

 

ねむ「どんな質問なんだい?」

 

 彩月の行動はねむの好奇心を刺激していた。

 

彩月「ナナツメさんはウチの後釜と聞いたんやけんど、いつ筒地綾女と出会ったんや?」

 

ねむ「ああ。そう言う質問か。ナナツメ。僕が許可するから答えられるなら答えてくれるかい?」

 

 珍しくねむもナナツメに興味を抱いている様子を見せていた。

 

ナナツメ「ねむ様の命令とあれば・・・。しかし長い話になります」

 

ねむ「長い話か・・・。確かに夕方だし今からするのは適切では無いね。じゃあ次の土曜日の午後に話してくれるかい?僕も興味があるからね」

 

ナナツメ「ねむ様がそう言うのであるなら話します。しかし小生の話等、何も意味があるとは思えません」

 

彩月「そおとも限らんで。物事の意味っちゅうんは個々人それぞれで大なり小なり異なる物や。ナナツメさんに意味が無くてもウチらにあるかも知れへんで」

 

ねむ「上手い事を言うね。今のは良い発言だよ」

 

ナナツメ「話はしますが、余り良い話ではありません。それに小生には話せる様な記憶がほとんどありせん」

 

彩月「それでも良いからウチは聞いてみたいんや」

 

ナナツメ「分かった。筒地綾女の実験体と言う同類の縁と言う事もある。答える事にする」

 

彩月「どんな内容であれ楽しみにしとるで」

 

□ 神浜市内 ホテルフェントホープ ねむの部屋 一週間後の土曜日

 

ねむの部屋には、制服姿のねむと黄色いローブを身に纏ったナナツメが集まり椅子に座っていた。

 

ねむ「そろそろ時間だね」

 

ナナツメ「はい・・・」

 

 するとドアをノックする音が響いた。

 

彩月「ねむ様。彩月やでー」

 

 彩月の明るい声が両者の耳に聞こえて来た。

 

ねむ「開いているからどうぞ」

 

彩月「お邪魔するで」

 

 そう言って黄色いローブを纏い素顔を見せている彩月が入って来た。

 

彩月「お揃いの様やけど遅れたか?」

 

ねむ「いいや。時間通りだよ」

 

彩月「そか。なら早速初めてもらおか?」

 

 彩月も手近な椅子に座るとナナツメに話を促した。

 ナナツメはねむの方を見た。

 ねむが静かに頷いたのを見てナナツメは厳しい表情をすると口を開いた。

 

ナナツメ「まずは小生が筒地綾女と出会った所から話す。あれはまだ小生が七部セナの名前を使っていた時だ」

□ 約一年前 リンドウ市 夕方 魔女の結界内 ナナツメの過去

 

 

ナナツメ¬=七部セナ(もういい・・・。もうどうなったていい。何も上手く行かない・・・)

 

 あの時、小生はまだナナツメでは無く七部セナと言う矮小な魔法少女の一人に過ぎなかった。

 魔女との戦いに敗れて地面に倒れ込んだ小生は既に死を待つだけだった。

 

???「ようやく魔女の所へ来れたわね。手こずらせてくれたわ」

 

 小生の耳に聞きなれない声が響くが正直どうでも良かった。

 もう小生は戦う気力を失っていたからだ。

 朦朧とした意識でも他の魔法少女が結界に入り込んで来た事だけは察する事が出来た。

 

???「うん?先客が既に倒されていたのね。じゃあ私とも戦って貰うわよ!」

 

 声のする方向を見ようとも思わなかった。

 魔力が魔女にぶつかっているのが小生にも肌で感じられた。

 

???「これは!?」

 

 声を聴いて思わず小生は魔女を倒された瞬間を見つめてしまった。

 それから直ぐに魔女が倒されて結界が崩れた事を小生も感じ取れた。

 元の公園の地面に小生は倒れたままだった。

 もう立ち上がる気力も無かった。

 

???「仕方ないわね」

 

 その声と同時に誰かが小生を抱えると何処かに運んだ。

 運ばれた場所は固いけど座るに適した場所からベンチだと推測が出来た。

 

???「まだあなた死ぬ事無いわよ」

 

 そう声の主が語ると同時に小生のソウルジェムが浄化された事を感じ取れた。

 驚きと共に小生が目を開くとそこには背の高い女性=???がベンチに横たわる小生を不思議そうに見ていた。

 

セナ「何故・・・。助けた?」

 

???「ああ。それは簡単よ。あの魔女を倒せたのは貴女のお陰だからよ」

 

セナ「ワタシ・・・の?」

 

???「ええ。貴女の魔法でほとんど倒した様な物よ。随分とあっさりと倒せたんだから」

 

セナ「・・・・・・」

 

???「だから貴女の手柄。それが助けた理由よ」

 

セナ「本当にそうなのですか?」

 

???「えっ?」

 

セナ「ワタシにそんな実力があるとは思えません・・・」

 

???「そんな事無いわよ。現に私は軽い一撃だけ放ったら倒せたんだから」

 

 先程の戦いを思い返す様子を見せる???。

 小生も???の反射的に放った攻撃で魔女はたった一撃で倒されてしまったのを見ていた。

 

???「だからもっと自信を持っても良いんじゃないかしら?貴女、それだけの実力を持っているわ」

 

???の言葉を聞いて小生の表情は曇ったのが自分でも分かる。

同時に小生は過去を思い出していた。

 

セナの母親「あなたなんて育てるんじゃ無かった」

 

大剣の魔法少女「あんたは魔女を倒す為の削り役よ」

 

 小生の脳裏には周囲から浴びせられた罵倒が響いていた。

 

セナ「ワタシにそんな価値はありません。ワタシは所詮・・・」

 

 再び小生の脳裏に記憶が思い出された。

 

大剣の魔法少女「はっ。そうやって少し優しくしただけで攻撃を躊躇うアンタなんて他人に利用されるだけなんだよ!」

 

 過去に言われた言葉を思い出し小生は心を歪めていた。

 

セナ「ワタシはいつも利用されるだけだった。いつも記憶に振り回されて裏切られても躊躇って戦えなかった。そんなワタシに価値は無い・・・」

 

???「・・・・・・」

 

セナ「こんな・・・。こんな記憶さえなければ、何も躊躇わずにいられるのに!!」

 

???「面白い事、言うのね」

 

セナ「!?」

 

 突然???の告げた言葉に小生は驚く。

 

???「そんなに過去の記憶が消したいのなら私が消してあげましょうか?」

 

セナ「何を言って?」

 

???「魔法少女なんだからそう言う魔法を持っていてもおかしくは無いでしょう?」

 

セナ「出来るのですか?」

 

???「ええ。出来るわ。その代わり、私の実験に付き合って貰うわ」

 

セナ「代わりの実験?」

 

???「あなたの過去の記憶を消す代わりに貴女に私の記憶を一部移植したいのよ。記憶はそうねえ。私の今までの戦いの記憶なんてどうかしら?それなら魔女との戦いに活かせるだろうし」

 

セナ「何故そんな事を?」

 

???「記憶を移植する実験をしていて魔法少女の被験者を探していたのよ。貴女なら丁度良いわね」

 

セナ「・・・・・・」

 

 少し考える小生だったが自身が記憶に振り回されている事を自覚していた。

 

セナの母親「もういらない。役に立たない子供なんていらない」

 

 母親に言われた心無い言葉が決定的だった。

 小生は選択を終えていた。

 

セナ「出来るのならして欲しい。もうワタシは今までの記憶なんていらない!」

 

???「分かったわ。この筒地綾女が責任を持って記憶を消してあげるわ」

 

□ 約一年前 リンドウ市 夜 公園 ナナツメの過去

 

 

???=筒地綾女「とまあ貴女が記憶を消した経緯はそんな所よ」

 

 ベンチに座る小生に筒地綾女はそう語った。

 

セナ「成程・・・。小生には余り記憶が無い理由が分かった」

 

綾女「そうね。どうして記憶を消す選択をしたのかに関しては少し突っ込んだ会話をしたけど、どうやらその記憶もきちんと消せているわね。少なくとも貴女は両親にも知り合いにも恵まれなかったみたいね」

 

セナ「そうか。だから小生が記憶消した理由も知っているのか」

 

綾女「そう言う常識的な受け答えが出来る様に記憶を失わせる調整は大変なのよ。貴女で成功するまで何人も失敗してるんだから」

 

 するりと恐ろしい事を語る筒地綾女の言う事を小生は信じる事にした。

 記憶は無いが筒地綾女が語る小生の記憶を消した理由は納得の行く物だったからだ。

 とりあえず小生はベンチから立ち上がった。

 特に身体に問題があるとは感じられない。

 

綾女「処置は終わったし取り敢えず今日は自宅に帰ったら?また明日にも様子を見に来るから」

 

セナ「自宅の場所は・・・。覚えていない」

 

綾女「スマホに入ってないのかしら?」

 

 言われてポケットに入っていたスマホを取り出し内部に蓄積された情報を精査する。幸い操作方法は頭の中に埋め込まれた常識から思い出す事が出来た。

 スマホの位置情報から自宅の場所は直ぐに把握出来た。

 

セナ「記憶を消してくれて感謝する」

 

綾女「そう。気分はどうなの?」

 

セナ「・・・・・・」

 

 小生は自身の気持ちが不思議な程、落ち着いている事に気が付いた。

 こんなに落ち着いているのは生まれて初めてかも知れないと感じる程だった。

 

セナ「悪く無い。余計な物がそぎ落とされたようだ」

 

綾女「それは良かったわね。それじゃまた明日ここで」

 

 そう言って筒地綾女は公園を出て行った。

 見届けた小生もスマホのデータを元に道を辿ると自宅へと辿り着いた。

 みすぼらしい団地がどうやら小生の自宅の様だった。

 階段を昇り四階の部屋を確認して自宅だと確認が取れた。

 荷物を探るとカギがありそれを使う事でドアを開く事が出来た。

 

セナの母親「セナ!アンタ今、何時だと思っているの!?」

 

 母親と思しき人が小生に文句を言って来た。

 だが記憶の無い小生には、その言葉が心に響く事は無かった。

 

セナの母親「本当に邪魔なんだから。少しは役に立ったらどうなの!?」

 

セナ「うるさい」

 

セナの母親「アンタ!親に向かって」

 

セナ「黙っていろ」

 

セナの母親「いい加減に!」

 

セナ「馬鹿め」

 

 言いながら小生は思いっきり母親と思しき女性の頬を叩いた。

 母親と思しき女性は叩かれた勢いでその場に倒れ込んだ。

 口から血が流れどうやら歯が折れたらしく歯を吐き出していた。

 

セナの母親「アンタ・・・。親に向かって何を・・・」

 

 母親と思しき女性は小生の思わぬ反撃に恐怖を覚えている様子だった。

 もう少し脅した方が良いと思えた小生は手近にあった壁を殴って穴を開けた。

 

セナの母親「ひぃ!?」

 

セナ「小生の邪魔をするのなら親でもこうなる。勢い余ったらどうなるかな?」

 

セナの母親「!?」

 

セナ「死にたくないなら小生に構うな」

 

 小生はそう言って部屋の一つ一つを検分した。

 自身の部屋と思しき部屋に行くと中にある物を検分した。

 役に立つ物、立たない物を見極めていると玄関から物音がした。

 男性の声がして母親と思しき女性と何らかの会話をしているのが聞こえた。

 すると荒々しく背後の襖が開く音がした。

 

セナの父「お前!母さんに何を」

 

セナ「うるさい」

 

 反射的に小生は父親と思しき男性の顔面を殴った。

 手加減をしなかったので殴られた父親と思しき男性は、その場に顔面から血を流して倒れ込んだ。

 

セナの母「アンタ!お父さんにまで・・・」

 

セナ「どうでもいい。それよりなんとかしたらどうだ?」

 

 小生はそう言い捨て、そのまま家を出た。

 筒地綾女に聞いた通り碌な両親では無い事が分かったのでそれで充分だった。

 それに僅かながら魔女の魔力を感じていた小生は直ぐに結界へと向かった。

 小生が到着すると結界は既に崩壊し大剣を握った一人の魔法少女がグリーフシードを拾った所だった。

 

大剣の魔法少女「うん?セナじゃないか。まだ生きてたのかよ?」

 

 どうやら小生を知っているらしかった。

 

大剣の魔法少女「またアタイになぶられたいのかよ?えっ?削り役のセナちゃん?」

 

セナ「・・・・・・」

 

 小生は黙って魔法少女へと変身した。

 

大剣の魔法少女「さっきからなに黙ってんの?びびって声も出せないの?」

 

セナ「・・・・・・」

 

 無言で拳を握り心臓の位置まで上げた。

 

大剣の魔法少女「アンタ、どうせ殴れないのに何して」

 

セナ「!!」

 

 大剣の魔法少女が最後まで言葉を喋る前に小生の拳が顔面を捉えていた。

 不意を付かれて倒れた大剣の魔法少女に向かい小生は馬乗りになって顔面だけを執拗に殴り続けた。

 動かなくなった所で殴るのを止めてその場から離れようとした。

 

大剣の魔法少女「待て!!アタイにこんな事して・・・」

 

 大剣の魔法少女は大剣を支えにして立っていたが顔面は血だらけだった。

 小生は大剣の魔法少女に向かって走り出すと、すれ違い様に足を鎖鎌で斬り付けた。足を斬られた大剣の魔法少女はその場に倒れ込む。

 

セナ「お前がどう言う相手か分かった。二度と現れるな」

 

 そう言って小生はその場を離れた。

 大剣の魔法少女は追って来なかった。

 そのまま小生は夜の街を歩き魔法少女を見つけると片っ端から戦った。

 全員、前と違う小生に驚き反撃もままならないままに倒された。

 小生はその戦いの中で自分の実力をしっかりと認識する事が出来た。

 つまり今まで行った戦いは自身の実力を正確に知る為のテストに過ぎないと言う事だった。

 

セナ(己の力を知る事が最も重要・・・)

 

 小生は己の力を知るために朝まで戦い続けた。

 過去を持たない小生には何の感傷も無い。

 ただ限界を知る為だけの行動に過ぎなかった。

 

□ 次の日 リンドウ市 昼 公園 ナナツメの過去

 

 

私服姿の筒地綾女と七部セナがベンチに座っている。

 

綾女「昨日はそんな事をしていた訳ね」

 

 筒地綾女は少し呆れた様子を見せていた。

 

セナ「己の力を知る為に必要だった事だ。問題があるのか?」

 

綾女「そうねえ。特に無いかしら。でも私に向けられると言うなら話が別よ」

 

セナ「大丈夫だ。あなたは恩人だ。それに他にも色々な魔法を持っている気がする。有効的な関係を維持した方が得策だろう」

 

綾女「そうね。効率的な回答だと思うわ。ところで・・・」

 

セナ「何だ?」

 

綾女「貴女の中には私の記憶もあるけれど、何か感想はあるかしら?」

 

セナ「確かにあなたの記憶はある。昨日・・・。寝ていて夢を見た。朱奈と言う少女と旅をする記憶だ。様々な街を二人で旅をしていた」

 

綾女「そう。貴女が一度眠ったら移植した私の記憶が再生される様に調整した見たいだけど上手く行ったみたいね。そこは安心したわ」

 

セナ「それに戦いの記憶もあった。あなたが戦った様々な魔女や魔法少女との戦いの記憶だ。戦いの記憶は一番役に立った」

 

綾女「そうでしょうね。結局魔法少女は戦いから逃れられないんだから」

 

セナ「そうだ。所詮は小さな生に過ぎない。それが小生達だ」

 

綾女「貴女・・・。見どころがあるわね。どう?私と同じ立場にならない?」

 

セナ「同じ立場?」

 

綾女「私と同じキュウたんの専属魔法少女として働いて見ない?」

 

セナ「そう言う事か」

 

綾女「私の記憶を持っている貴方には細かい説明は不要ね。でもキュウたんの専属魔法少女となれば普通の魔法少女よりも多くの情報を得る事が出来るわ。その代わりにキュウたんの依頼をこなす必要があるけれど」

 

セナ「何故小生を勧誘する?」

 

綾女「この仕事って色々な魔法少女と敵対するのが前提の仕事だから誰と敵対しても躊躇う事が無い貴女には相応しいと思うけど?」

 

セナ「・・・・・。分かった」

 

綾女「それは肯定と受け取って良いのかしら?」

 

セナ「ああ。小生もキュウべえの専属となろう」

 

綾女「だそうよ。キュウたん」

 

キュウべえ「うん。分かった。じゃあこれからはセナにも仕事を頼む事にするよ」

 

 いつの間にか現れたキュウべえが小生にそう告げて来た。

 

セナ「ああ。構わない。情報と言う報酬さえくれるのなら」

 

 そうして小生はキュウべえ専属の魔法少女となった。

 

綾女「そうそう。キュウたん。それなら一つ頼んでおきたいんだけど、セナさんが契約した経緯の記録を貴方、持っているんでしょ?」

 

キュウべえ「うん。持っているよ」

 

 それはそうだろうと小生は思った。

 

綾女「その記憶、何があってもセナさんに見せない方が良いわよ」

 

キュウべえ「どうしてだい?」

 

綾女「記憶を消してる関係もあるけど下手に過去を教えたりしたらせっかく記憶を消して躊躇いを無くしたのに躊躇いを思い出してしまうかも知れないわ」

 

キュウべえ「確かに綾女の言う通りだね。だからセナ。僕も君の過去は話せない。それでも構わないね?」

 

セナ「ああ。構わない。情報と言う報酬があるのなら構わない」

 

綾女「良い返事ね。だから一つだけ教えてあげるわ」

 

セナ「何だ?」

 

綾女「貴女の固有魔法。それは破壊よ」

 

セナ「破壊・・・・・」

 

綾女「貴女は過去に自宅からの見えた夕陽を遮って建設された建物全ての破壊を願った。だからこそ手に入れた力よ」

 

セナ「そうか。それだけ十分だ。感謝する」

 

 記憶の無い小生には、単なる情報としか認識されなかった。

 

綾女「感謝するのは私の方よ。貴女のお陰で良い実験が出来たからんだから。それにキュウたんに新しい専属魔法少女を紹介出来たんだから」

 

キュウべえ「僕も二人に感謝してるよ。感情は無いけどね」

 

 それが小生と筒地綾女の出会いと別れだった。

 その後、小生は叶えた願いによって作られた景色を見に自宅に戻った。

 母親は小生に怯えていたが小生は無視してベランダから景色を見た。

 

セナ(・・・・・。ただの景色だ。何も感じる事は無い)

 

 願いの結果を確かめ小生は魔女を狩る為に家を出た。

 それからキュウべえの専属魔法少女となった小生はキュウべえからの依頼を受けて動き、報酬として他の魔法少女よりも速く魔女の情報を得る事が出来た。

 

 

 いつの間にか学校へ行く事は無かった。

 

 小生は魔法少女としての仕事をこなす為だけに行動していた。

 

 いつの間にか自宅にも帰らなくなった。

 

 

 筒地綾女と同じ流浪の魔法少女としてキュウべえからの依頼を黙々とこなしていた。

 やがて数ヵ月の後・・・。

 

 




今回からは新章のナナツメ編がスタートします。

なおさりげなくマギアレコード二部に関する言及が一言だけあります。

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