マギアレコード 偽書e/s memorys   作:ジャックノルテ

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第17話 それなら・・・。相手をしてやる

□ 回想 神浜市内 数ヵ月前の出来事

 

 

小生はマギウスの翼で黒羽根の一人として活動していた。

マギウスの翼の本分と言える魔女の捕獲を行っていた。

 白羽根である天音姉妹や幹部である梓みふゆの指示を受けて魔女の捕獲要員として神浜市内で何度も魔女を捕獲する為に戦闘を繰り返した。

 仕事は順調だった。

 直ぐに慣れて要領よくこなせる様になった。

 あの時までは・・・。

 

 

 

 その日、小生は魔女の結界で白羽根のローブを身に纏った天音月夜に率いられた黒羽根の一人として魔女の捕獲に赴いていていた。

 

月夜「今でございます!」

 

黒羽根達、セナ「ハイ!」

 

 次々と黒羽根達が魔女の周囲を取り囲んで鎖鎌で拘束した。

 拘束された魔女は拘束から逃れようと暴れたが拘束が解ける事は無かった。

 

月夜「これなら大丈夫でございます。アリナさん!」

 

 天音月夜は傍にいる気乗りしない様子のアリナ・グレイに声を掛けた。

 今回の魔女の捕獲にはアリナ・グレイも同行していた。

 

アリナ「ハァ・・・。気にいらないんですケド」

 

月夜「えっ?」

 

アリナ「こんな魔女じゃアリナのモチベーションも上がらないんですケド!」

 

 いきなり手に無数の四角いキューブを出現させると拘束した魔女へ全力で攻撃を行った。

 

月夜「アリナさん!?何て事を!?」

 

黒羽根達「!?」

 

セナ「・・・・・・」

 

 アリナ・グレイの全力の攻撃で魔女は倒され結界は崩壊して元の廃墟へ戻ってしまった。

 驚きの余り硬直している天音月夜や黒羽根達を見て

 

アリナ「別に騒ぐ事でも無いワケ。アリナが気に入らないからあの魔女には死んで貰ったワケ。問題は無いワケ。アンダースタン?」

 

月夜「しかし今回の魔女は捕獲する筈でございます」

 

アリナ「グリーフシードも回収したし、文句を聞くつもりも無いワケ。それとも羽根がアリナに意見するワケ?」

 

 天音月夜にグリーフシードを投げ付けアリナ・グレイは自信を見つめる周囲に威圧的に手に出現させたキューブを見せつけていた。

 それを見て小生は少し苛立った。

 仕事の邪魔をする相手に苛立ちを覚えた。

 

月夜「意見は無いでございます・・・。ですが、ありのままを報告させて貰います。そうしないとこちらが怒られるでございます」

 

アリナ「好きにしたらいいんですケド。じゃあアリナは帰る事にするカラ」

 

 傍若無人にふるまい去って行くアリナを小生は黙って見送った。

 まだこの時は怒りを抑えられたからだ。

 

それから三日後の大東区。

 白羽根である天音月咲の率いる黒羽根の中に小生もいた。

 今回も魔女の捕獲にもアリナ・グレイが同行していた。

 

月咲「ようやく見つけた。強力そうな魔女だからみんな注意して!」

 

黒羽根達「はい!」

 

セナ「・・・・・・」

 

 白羽根として黒羽根への指揮を行う天音月咲の行動は小生が見ても適切と言える行動だった。

 

アリナ「・・・・・・」

 

 周囲のそうした行動を無視してアリナ・グレイは一人で結界に入ってしまった。

 

月咲「アリナさん!?ウチ達も追いかけるよ」

 

黒羽根達「はい!」

 

セナ「・・・・・・」

 

 小生達は慌てて結界に入り込むと最深部を目指した。

 

月咲「アリナさんに何かあったら大変な事になるからみんな急ぐよ!」

 

 天音月咲の抱く危惧は周囲の黒羽根にも理解出来た様だった。

 襲い来る使い魔を次々と倒して行くが最深部へ行く事無く結界は突如として崩壊した。

 

月咲「これは・・・」

 

 結界が崩壊したと言う事は魔女が倒されたか逃げられたかもしくは・・・。

 

アリナ「遅かったヨネ。魔女はアリナが捕獲したから」

 

月咲「えっ!?でも今回の魔女は倒してグリーフシードにする筈じゃ」

 

アリナ「アリナが気に入ったんだから捕獲したんですケド。文句があるワケ?」

 

月咲「・・・・・・」

 

黒羽根達「・・・・・・」

 

セナ「・・・・・・・!!」

 

 小生は自分の中に強い感情が動いたのを感じ取った。

 この時はそれがなんなのか良く分からなかった。

 

アリナ「じゃあ後の事は任せるワケ」

 

 そう言ってアリナ・グレイは去って行った。

 

月咲「仕方ないね。他の魔女を探そう。30分経って見つからなかったら今日は解散で」

 

黒羽根達「分かりました・・・・」

 

セナ「・・・・・・」

 

 諦めた様な天音月咲の声に同調した黒羽根達に混じって小生も魔女を探した。

 結局その日は魔女を見つける事は出来ずに解散となった。

 小生の心の中にある強い感情はその時には薄れていて何なのか分からなくなっていた。

 更に数日後の南凪区。

 

 その日は天音月夜と天音月咲の白羽根二人に率いられた黒羽根の一人として小生は同行していた。

 この時まだマギウスの翼に所属する魔法少女の数はそう多く無く黒羽根だけで動く事は無かった。

 捕獲すべき魔女の結界を見つけ出し最深部を目指していている最中だった。

 また結界が突如として消滅した。

 同時に覚えのある魔法少女の魔力が感じ取れた。

 

月咲「これは!?月夜ちゃん!」

 

月夜「はい。またでございますか・・・」

 

 結界が崩壊した海浜公園に天音月夜と天音月咲。

 小生と黒羽根達。

 それにアリナ・グレイが姿を見せていた。

 

月咲「アリナさん!魔女は!?」

 

アリナ「魔女なら倒したんですケド」

 

 そう言ってアリナ・グレイはグリーフシードを天音月咲に投げて来た。

 

月夜「またでございますか!?今回の魔女は捕獲する筈でございます!?」

 

アリナ「そんなのアリナには関係無いワケ。それともアリナに意見が出来ると思っているワケ?」

 

月夜 月咲 黒羽根達「!?」

 

 威圧的にキューブを向けて来るアリナ・グレイに天音月夜も天音月咲も黒羽根達も思わず後ずさりしていた。

 しかし小生だけは違った。

 アリナに向かって思わず歩を進めていた。

 既に我慢の限界を超えていた。

 小生がやるべき仕事の邪魔をする事への怒りが爆発していた。

 

セナ「・・・・ふざけているのか」

 

アリナ「ワット?誰か文句でも」

 

セナ「ふざけているのかと言っている!」

 

 怒りのままに叫び一気に駆け出した小生を見てアリナ・グレイは慌てる事無くキューブからの一斉攻撃を小生に浴びせた。

 普通の魔法少女ならこの攻撃で動きを止めただろう。

 しかし小生は痛覚遮断を必要に応じてスイッチを入れられる。

 身体の痛みを気にする事無くスピードを落とさない小生にアリナ・グレイは虚を突かれる形となった。

 大きく体制を崩しながらも、小生の平手がアリナ・グレイの頬を叩いたのは虚を突くと言う戦法故に成り立っていた。

 大きな音がしてアリナ・グレイは茫然としていた。

 周囲にいる魔法少女は皆固まっていた。

 マギウスへ公然と反抗的な行動を取った羽根は知る範囲では小生が初めてだったからだ。

 

アリナ「アナタ!?羽根の癖にアリナに」

 

セナ「増長した存在は排除する!」

 

アリナ「チッ!」

 

 小生が振り下ろした鎖鎌に対してアリナ・グレイは咄嗟に手の平に出現させたキューブで受け止めようとしたが、キューブは砕かれて引き起こされた魔力の衝撃によって後方へ飛ばされたが、アリナ・グレイの様子からどうやら意図的にキューブを破壊させた様に小生には後から思えた。

 

セナ「・・・・・・」

 

 黙って小生は武器を構え直しアリナ・グレイへと向けて走り出そうとした。

 

アリナ「訳の分からない事ばかり言って・・・。増長?アリナが増長して何が悪いワケ?」

 

セナ「・・・・・・・」

 

アリナ「羽根の一人位、魔女の餌にしても良いヨネ?」

 

 アリナ・グレイがそう呟くと同時に小生の正面に捕獲した魔女の入ったキューブの入り口が出現した。

 

セナ「!!」

 

 咄嗟に駆け出した小生は固有魔法を発動させた鎖鎌でキューブの入り口を叩き切った。

確証があって行った行動では無かった。しかし小生は固有魔法の破壊ならばキューブの入り口を破壊出来るのではと推測していた。

以前、魔女との戦いで結界の階層と回想を繋ぐ入り口を破壊した経験から同質の魔法であるアリナ・グレイの固有魔法にも通じるのでは無いかと推測していた。

 

アリナ「ワット!?何をやったワケ!?」

 

 自身の結界魔法で出現させたキューブの入り口を破壊すると言う今までに無い出来事にアリナ・グレイは驚愕していた。

 

セナ「・・・・・・・」

 

月夜「まずいでございます」

 

月咲「そうだね。止めないと。みんな!アリナさんとあの黒羽根を」

 

黒羽根達「ハイ・・・」

 

 黒羽根達はアリナ・グレイと小生を止める為に間に割って入ろうとした。

 

セナ「邪魔をするな!」

 

黒羽根「うっ」

 

 飛び上がった小生は両足から2本、右手と左手から2本ずつ、そして首に巻き付けていた7つの鎖鎌を一度に放って7人の黒羽根達の動きを止めると同時に黒羽根のローブを脱ぎ捨てると次々と黒羽根達を殴り倒した。

 

アリナ「邪魔なんですケド!」

 

黒羽根「ぐっ」

 

 アリナ・グレイもまた自信を抑え込もうとした黒羽根をキューブで一時的に大きくして当てる事で排除していた。

 

セナ「!!」

 

アリナ「!!」

 

 軽装となった小生とアリナ・グレイが再び真正面からぶつかり合おうとした瞬間に笛の音が響いた。

 

月夜、月咲「「笛花共鳴!!」」

 

セナ「・・・・・・・」

 

アリナ「クッ。あの双子・・・」

 

 小生もアリナ・グレイも頭を押さえてその場に片膝を付きお互いに動く事が出来なかった。天音姉妹の吹く笛が原因なのは明白だった。

 

月夜(今でございます!)

 

月咲(今の内に二人共、拘束して!)

 

月夜(長くは持たないでございます!)

 

月咲(速く!)

 

 余程慌てているのか、天音姉妹は全方位へのテレパシーで黒羽根達に命令を下していた。全方位でテレパシーを使えばマギウスの翼に所属していない魔法少女に隠れて行動している事が露見し兼ねないにも関わらずだ。

 つまりそれだけ小生とアリナ・グレイが争ったのは非常事態だと言えた。

 

黒羽根達「はい!」

 

 その隙を付いて黒羽根達は次々と鎖鎌を小生とアリナ・グレイに放って拘束して身動きを封じられた。

 

アリナ「ヴァアアアア。今すぐアリナを自由にしてアイツを魔女の餌にさせてヨネ!?そうしなきゃ気が収まらないんですケド!?」

 

 冷静さを失ったアリナ・グレイだったが拘束から逃れる事は出来ない様子だった。

 

セナ「・・・・・・・・」

 

 小生は拘束されながらも身体を動かす努力は続けていた。

 固有魔法である破壊を両手に集中して身体を拘束する鎖鎌に触れてみた。

 瞬間、小生を拘束した鎖鎌は次々と破壊され自由になった小生はアリナ・グレイに止めを刺すべく跳躍した。

 全身から血が流れたが気にならない。

 

月夜 月咲「!?」

 

黒羽根達「!?」

 

アリナ「ッ!?」

 

セナ「・・・・・・・」

 

 手に武器を出現させる間も惜しく感じた小生は武器を生成する事無く拳でアリナ・グレイを殴ろうとしていた。

 

みふゆ「アサルトパラノイア!」

 

 その時、梓みふゆの鋭い声が響くと同時に小生の視界は歪み、そこで気を失ってしまった。

 

 

□ 回想 神浜市内 ホテルフェントホープ 数ヵ月前

 

 

 

気が付くと小生は見覚えのある牢屋に閉じ込められていた。

 

セナ「・・・・・・・」

 

 周囲を見渡すと寝かされていたベッドの脇に机がありメモが置かれていた。

 メモにはこう書かれていた。

 

 

 

ねむ「セナへ。アリナとの事は聞いたよ。アリナは君を魔女の餌にすると言って聞かないから君を一時的にフェントホープの地下牢に隠して貰ったよ。明日の夕方、灯花やみふゆと話を聞きに行くからそこで待っていて」

 

 

 

セナ「そう言う事か」

 

 見覚えがあるのはフェントホープにある地下牢だからだと納得した。

 ねむ様の趣味で作ったこの地下牢は今の所、使用した事は無い筈だった。

 状況を認識した小生はベッドの上に座り込み身体の状態を確認した。

 ソウルジェムは無事。

 身体も問題無い。

 

セナ「・・・・・・・」

 

 腕時計を見ると時間はまだ朝方だった。

 特にやる事が無いので再びベッドで横になろうとした時、足音がした。

 足音の方を見ると来たのは越馬一夜だった。

 

一夜「セナさん。大丈夫ですか?」

 

セナ「特に問題は無い。何か用か?」

 

一夜「ねむ様が食事と退屈だろうから色々持って行く様にと」

 

 そう言って一夜が持って来たのは水やサンドイッチやパン、それに動画鑑賞用のタブレットと予備のバッテリーだった。

 

セナ「そうか。助かる。用が済んだなら戻れ。ここには長いしない方が良い」

 

一夜「分かりました。アタシ戻りますね」

 

 そう言って一夜は地下牢を去って行った。

 見届けた小生は食事を済ませて夕方まで動画サイトを見たりして時間を潰していた。

 夕方になると梓みふゆが来て小生を連れてねむ様の部屋へ向かった。

 ねむ様の部屋には灯花様も既に着ていた。

 

みふゆ「セナさんを連れて来ました」

 

灯花「うん。ありがとー。みふゆ。話を聞きたいからとりあえずセナも座りなよー」

 

 促されて小生は椅子に座った。

 このメンバーと言う事はアリナ・グレイもいるのかと小生は思わず周囲を観察した。

 

ねむ「アリナならいないよ。話は聞き終えたし、そもそも今回の件は完全にアリナが悪いからね」

 

灯花「そうだねー。予定を無視して魔女を捕獲したり倒したり勝手な行動ばっかりしたんだから自業自得じゃないかにゃー?」

 

みふゆ「はい・・・。正直言って同情の余地がありません。完全にマギウスの活動を阻害しています」

 

セナ「それで・・・。話と言うのは?」

 

みふゆ「はい。セナさん。単刀直入に聞きます。あの時、あなたはアリナを殺すつもりだったんですか?」

 

 梓みふゆは真っすぐに小生を見つめて直線的な質問をぶつけて来た。

 

セナ「そうだ。と言っても殺す気は無かった。ソウルジェムを取り上げようとしただけだ」

 

ねむ「ふむ。それがどういう意味か分かっていてやったのかい?」

 

セナ「はい。ソウルジェムさえあれば意識は無くても問題無いと思います」

 

灯花「でもソウルジェムがあっても魔法を使えないんじゃ意味が無いんじゃないかにゃー?」

 

セナ「確かにそうです。ですが小生は他人のソウルジェムを強制的に操作する魔法が存在する事を知っています」

 

みふゆ 灯花 ねむ「!?」

 

セナ「小生の中にある筒地綾女に魔法によって植え込まれた筒地綾女本人の記憶。それによれば筒地綾女は敵対した魔法少女のソウルジェムを奪って魔法を施す事で自身の戦力として用いていたそうです」

 

みふゆ「あの人、そんな事をしていたんですか・・・」

 

灯花「筒地綾女って前にみふゆが話してくれたキュウべえ専属の魔法少女だよねー?」

 

みふゆ「はい。他人のソウルジェムを奪って戦力にしていたなんて思いもよりませんでした・・・」

 

ねむ「ふむ。興味深い話だけどセナは、その魔法を使えるのかい?」

 

セナ「小生には使えません。筒地綾女がくれた戦いの記憶の中に魔法に関する記憶が混じっていました。だから存在だけは知っていました」

 

灯花「使えないんじゃどうしようもないかにゃー?」

 

ねむ「いや・・・。もしかしたら出来るかも」

 

みふゆ「どう言う事ですか?ねむ」

 

ねむ「記憶ミュージアムのウワサを使えばセナの中から筒地綾女の記憶だけを取り出す事が出来るかも知れない。その記憶を元にソウルジェムを強制的に操作する魔法を再現出来る可能性があるよ」

 

灯花「でも確実な手段とは言えないんじゃないかにゃー?」

 

ねむ「そうだね。可能性は低いと言って良いんじゃ無いのかな?」

 

みふゆ「記憶ミュージアムの件は後にしましょう。セナさん。あなたは組織を裏切るつもりでは無くアリナの増長したとも取れる行動が許せなくて今回の行動に及んだとワタシは見ていますが違いますか?」

 

セナ「その通りです。組織の命令を自分勝手に破る事はトップであろう許される筈が無いと思いました」

 

 梓みふゆと小生の視線が合わさる。

 

みふゆ「正論ですね。セナさんの言う事は正しいです」

 

セナ「では小生の処分は?」

 

みふゆ「はい・・・。その事ですが・・・」

 

灯花「みふゆが言い難いならわたくしが言うよー。まずセナの今後に関わるからアリナの事を先に話すけど、今後アリナは魔女の捕獲や討伐にみふゆに同行して貰う事にしたからー」

 

セナ「アリナ・グレイを野放しにするのですか?」

 

みふゆ「野放しにはしません。アリナはまだ組織に必要な人材です。それにワタシがいればまだアリナを説得する事が出来ます」

 

 小生もアリナ・グレイと梓みふゆの関係は聞いていた。

 

セナ「適切な判断だと思います」

 

灯花「それからねー。セナ。あなたは黒羽根を辞めて貰うからー」

 

セナ「お役御免と言う所ですか?」

 

ねむ「いいや。セナ。君には僕と灯花の護衛を任せたいんだ」

 

セナ「護衛ですか?」

 

ねむ「うん。僕たちは一応、組織のトップだからなるべく魔女と戦わない様にするつもりだけど万が一と言う事もあるだろう?」

 

灯花「だからセナならわたくしたちの護衛にピッタリなんじゃないかなって思ったんだよねー」

 

みふゆ「セナさんにはマギウスの護衛に専念して貰う為、白羽根や黒羽根と言った戦闘要員とは異なる役職である黄羽根を用意しました。現状ではセナさん一人の部署で黄羽根はマギウスの直属と言う事になります」

 

セナ「それはアリナ・グレイの部下と言う事か?」

 

ねむ「形の上ではそうだけど、基本的には僕と灯花の護衛に専念してくれたら良いよ。どうせアリナは君と顔を合わせるのも嫌だろうしね」

 

灯花「そうだねー。名前を聞くのも嫌だと言っていたし」

 

ねむ「だからセナには僕がコードネームをあげるよ。嫌でなければだけど」

 

セナ「構いません。名前は所詮、個体を分ける記号に過ぎません」

 

みふゆ「名前ってそう言う物では・・・」

 

ねむ「むふ。面白い事を言うね。じゃあセナ。君のコードネームは・・・。ナナツメだよ」

 

セナ「ナナツメ・・・」

 

ねむ「気に入ってくれたかい?君がアリナと戦った時に七つの鎖鎌を自由自在に操っているのを天音姉妹がビデオ通話で見せてくれたのが印象に残ってね」

 

灯花「わたくしは良いと思うにゃー。それにセナは確かマギウスの翼で7人目のメンバーだし」

 

みふゆ「灯花、ねむ、アリナ、月夜さんに月咲さんとワタシ。確かにセナさんが7人目で一夜さんが8人目ですね」

 

セナ「分かりました。小生いえ。ナナツメは護衛を承ります」

 

ねむ「そう言ってくれると思ったよ」

 

灯花「じゃあこれはわたくし達からセナ、じゃなくてナナツメへの最初の支給品だよー。はい」

 

 そう言って灯花様は黄色いローブを机の上に置いた。

 

灯花「一夜に作って貰った特製の黄羽根用のローブだよ」

 

セナ=ナナツメ「早速使わせて貰います」

 

 小生は真新しい黄色いローブを身に纏った。

 機能的には黒羽根の物と変わらない様に思えた。

 

ナナツメ「このローブ。護衛用に改良をしても?」

 

ねむ「構わないよ。一夜に頼むと良いよ。けど一夜に無理はさせないでね」

 

ナナツメ「分かりました」

 

みふゆ「ではセナさん。今日から灯花とねむの護衛をよろしくお願いします」

 

ナナツメ「了解した」

 

 

 

□ 神浜市内 ホテルフェントホープ ねむの部屋 一週間後の土曜日

 

 

 

回想終了

 

ナナツメ「小生が黄羽根へと就任するまでの経緯はそんな所だ」

 

彩月「成程な・・・。それでナナツメさんがウチの後釜になった訳か。綾女さんらしい処置やな」

 

ナナツメ「お陰で小生は躊躇う事無く攻撃を行える」

 

彩月「それはええんやけど、どうりでアリナさんと仲が悪い訳やな・・・」

 

ねむ「こればっかりは仕方無いよ。アリナにも問題があるけど、組織の人間全員が仲良しこよしとは行かないからね」

 

彩月「まあそれについてはウチも同意見や。それこそ魔法少女が組織を作ればいさかいに魔法が絡むんは、火を見るよりも明らかやろ」

 

ねむ「筒地綾女の記憶でもそうなのかい?」

 

彩月「そうやな。そう言う記憶もあるで。まだ全部を見てないんか?」

 

ねむ「まだ全てでは無いね。魔法に関する部分は重点的に見ているからお陰で幾つかの魔法は再現出来ているよ」

 

彩月「ソウルジェムを強制的に操る魔法か」

 

 彩月は意味ありげな表情と興味を隠そうとしなかった。

 

ねむ「彩月のお陰で復元は目前かな。復元出来ればソウルジェムが持つ固有魔法を限定的とは言え使用が出来るかも知れないからね」

 

彩月「それはええ事や無いか。ウチも他人のソウルジェムと繋がっているだけやから固有魔法は使えへんからな。ただ魔力で変身して戦うだけや」

 

ねむ「彩月は例外的な存在だからそれで十分だと思うけどね」

 

彩月「まあええさ。また進捗があったら話を聞きたいさかい、今日の所は退散させて貰うで」

 

 彩月はそう言って椅子から立ち上がり部屋を出ようとした。

 

ねむ「何処へ行くんだい?今日、仕事は無いと思ったけど」

 

彩月「一夜さんの所へも顔出しせんといかんやろ?一応、黄羽根やさかい」

 

 そう言って軽く手を振りながら彩月は出て行った。

 部屋にはねむとナナツメだけが残っている。

 

ねむ「慌ただしい人だね。彩月は。夕方だし僕も帰る事にするよ」

 

ナナツメ「では自宅まで送ります」

 

ねむ「頼むよ。それにしても・・・。ナナツメ。隠された役割は忘れていないね?」

 

ナナツメ「はい。小生はアリナ・グレイが、もし反逆を起こした際のカウンター要員です」

 

ねむ「うん。どうして君がカウンター要員なのか理由は分かっているね?」

 

ナナツメ「小生だけが固有魔法の破壊でアリナ・グレイの結界形成魔法を破壊出来ます」

 

ねむ「うん。それで良いよ。だからこそナナツメ。君は組織にとって必要な人材難だ。いつ暴走するか分からないアリナへの対処は必要だからね。だからこそ君は僕の懐刀と言ってもいい」

 

ナナツメ「大きな信頼に答えられる様に致します」

 

ねむ「信用しているよ。僕の護衛である君や道具作りを担当する一夜、それに実験台である彩月。3人共、僕にとってこれからも必要な人材だからね」

 

ナナツメ「役に立てる様に努力致します」

□ 神浜市内 ホテルフェントホープ 夜

 

 

 

ねむを自宅まで護衛した黄色いローブを頭から被ったナナツメは帰り道に日課であるパトロールを終えてホテルフェントホープへと至る結界の入り口に戻って来ていた。

 

ナナツメ(特に異常無く仕事を終えられた。こんな時はまだ何かがある)

 

 結界の入り口を開きホテルフェントホープまでの一本道に出たナナツメが暫く歩くとそこには帰宅しようとするアリナ・グレイがいた。

 

アリナ「!!」

 

 憎々し気な表情を見せて魔法少女に変身したアリナ・グレイ。

 

ナナツメ「・・・・・・・」

 

 特に何も言う事が無いナナツメはそのまま黙って通り過ぎようとした。

 

アリナ「ストップ!アナタ、アリナに何か言う事は無いワケ?」

 

ナナツメ「・・・・・・・」

 

 ナナツメは黙ってアリナ・グレイの脇を通り抜けた。

 

アリナ「お前!!」

 

 話を無視されたアリナは怒りの余りキューブによる攻撃をナナツメに放った。

 

ナナツメ「・・・・・・・」

 

 余りに雑な攻撃故にナナツメは避けなかった。

 ただし幾つかの攻撃は当たりナナツメは全身から少しだけ出血した。

 アリナ・グレイと対面した時点で戦闘用に痛覚遮断を発動させていた為、特に痛みは感じなかった。

 

ナナツメ「気は済んだか?」

 

アリナ「これ位で済むと思っているワケ?」

 

 魔力を集中したアリナは、次の攻撃は本気だと言う姿勢を見せていた。

 

ナナツメ「・・・・・・・」

 

 黙りながらナナツメは既に戦う為の準備を終えていた。

 黄色いローブの左右の袖口から見えない様に鎖鎌を出現させていた。

 だがナナツメはそのまま背を向けてホテルフェントホープの方を向いた。

 

アリナ「お前!?」

 

 戦うつもりが無い様に見えるナナツメの行動に激高するアリナはいつ攻撃を始めてもおかしくは無かった。

 

ナナツメ「分かっているのだろう?小生とは魔法の相性が悪い。キューブを無駄にする気か?」

 

アリナ「・・・・・」

 

 頭に血が上っているアリナにもナナツメの言う事は分かっていた。

 アリナの結界形成を破壊したナナツメの固有魔法には対処方が無いからだ。

 

ナナツメ「どうしても小生を殺したいなら、マギウスの計画を終えてからにしろ。それなら・・・。相手をしてやる」

 

アリナ「・・・・・。良いね。ソレ」

 

 少し熟考したアリナはナナツメの提案を受け入れたのか魔法少女としての変身を解いて制服姿に戻った。

 

ナナツメ「提案に乗ると見て良いんだな?」

 

アリナ「イエス。アリナはマギウスの計画が終わるまではアナタの事は無視するカラ。それで良いんだヨネ?」

 

ナナツメ「それでいい。マギウスの計画が終わるまでは余計な内輪揉めをお互いに起こさずに済むだろう」

 

 アリナの返答を聞く事無くナナツメはホテルフェントホープへ戻って行く。

 

アリナ「計画が終わった時、アリナはアナタを・・・。アッハッハッハッハ・・・。魔女の餌にして良いんだヨネ?」

 

□ 神浜市内 ホテルフェントホープ 深夜

 

 

 

ナナツメ「眠れない・・・・・」

 

深夜に目が覚めるナナツメ。

 喉が渇いた為に水を飲もうとしたがミネラルウォーターの取り置きがもう部屋に無い事に気が付いた。

 

ナナツメ(仕方ない)

 

 地下の倉庫まで行けばミネラルウォーターが置いてあるので取りに行く為にナナツメは部屋を出た。

 最低限の照明だけは灯されており足元が見えない訳では無かった。

 

ナナツメ「あれは!?」

 

 その時、ナナツメの視界にふら付いた人影が写った。

 ホテルフェントホープにはナナツメ以外の魔法少女も部屋を貰って常駐していた為、珍しく無かったが見慣れない寝巻き姿にナナツメは少し違和感を覚えた。

 

ナナツメ(侵入者か!?)

 

 少し駆け足で相手に近寄ると正面に回り込んで顔を見た。

 ふらふらと足元のしっかりしない寝巻き姿の一夜だった。

 

ナナツメ「一夜か・・・。こんな夜中にどうした?」

 

一夜?「・・・・・。一夜?わたし?あなたは・・・。誰?」

 

ナナツメ「何を言っている一夜。小生はナナツメだ。分からないのか?」

 

 言いながらナナツメは一夜の魔力が不安定に感じられた。

 

一夜?「わたし・・・。一夜じゃない。わたしは朱奈・・・」

 

ナナツメ「何だと?」

 

 ナナツメは珍しく少しだけ驚いていた。

 どうやら一夜の意識が眠っている間に本来の肉体の持ち主である朱奈の意識が覚醒したらしい。

 

一夜?=朱奈「わたし・・・。綾女ちゃんに会いたい。綾女ちゃんは何処にいるの?」

 

ナナツメ「会ってどうする?」

 

朱奈「・・・・。分からない。どうしたら良いのか分からないし、わたしには何も出来ない・・・」

 

ナナツメ「そうか・・・・・・・。付いて来い」

 

朱奈「えっ?」

 

ナナツメ「筒地綾女は地下にいる」

 

 ナナツメは朱奈を連れて地下へと向かった。

 

ナナツメ「ここだ」

 

 外から鍵が掛けられているが地下室はナナツメでも開く事が出来た。

 そこには何も変わる事無く、《赤と青に彩られた何か》が鎮座していた。

 

朱奈「綾女ちゃん・・・」

 

《赤と青に彩られた何か》の中央に石の様に変化なく存在する筒地綾女の顔を見て朱奈は涙を流した。

 それを見て何故かナナツメの心に刺激があった。

 ナナツメにはそれが何なのか分からなかったが。

 その時、朱奈はそのままその場に倒れてしまった。

 

ナナツメ「どうした?」

 

 ナナツメが倒れた朱奈の方を見ると一夜の魔力が急に安定していた。

 どうやら朱奈が気を失った事で一夜に戻ったらしい。

 

朱奈=一夜「・・・・・」

 

 微かな寝息が聞こえたので眠っているだけだとナナツメは判断した。

 

ナナツメ「仕方ない」

 

 ナナツメは一夜の事を抱えると一夜の部屋へ連れて行きベッドに寝かせた。

 

ナナツメ「手間が掛かる」

 

 珍しくそう呟いたナナツメはミネラルウォーターを地下室から持って来るのを忘れた事に気が付いた。

 

ナナツメ(仕方ない)

 

 再びナナツメはミネラルウォーターを取りに地下室へと足を向けた。

 

 

 




今回の話でナナツメ編は終了です。
次回からは予定外の寄り道である一夜の特訓編が始まります。

本当だったら紅茶好きなあの人が出て来る話が始まる予定だったんですけどね。
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