マギアレコード 偽書e/s memorys   作:ジャックノルテ

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外伝3 一夜と彩月の対人特訓編

□ 神浜市内 北養区 ホテルフェントホープ正面広場

 

 翌日。ホテルフェントホープ前の広場に黄色いローブを身に纏ったナナツメが立っている。ナナツメの眼前には魔法少女姿の一夜と彩月が立っている。

 一夜と彩月、二人の表情は緊張している。

 

ナナツメ「武器は使わない。お互いに素手だけだ。来い。始めるぞ」

 

 一夜は直ぐに動かなかった。

 それを見て彩月が一歩踏み出す。

 

彩月「ならウチから行かせて貰うで!」

 

 走り出した彩月がナナツメに向かって拳を振る。

 ナナツメはそれを冷静に避けて最後に振った彩月の腕を受け止め、足払いで転ばせた。

 

彩月「敵わんなあ」

 

ナナツメ「どうした。来ないのか?」

 

 ナナツメは一夜に向かって語る。

 何の表情を見せずにも意を決した一夜は駆け出した。

 

一夜「えい!」

 

 一夜のパンチを簡単に避けたナナツメは、一夜の頬を軽く叩いた。

 

一夜「あっ!?」

 

 ナナツメが何もするまでもなく足を縺れさせて転ぶ一夜。

 

一夜「いたたたた」

 

ナナツメ「・・・。訓練以前の問題だ。一夜。拳をただ振るうだけでは何にもならない」

 

彩月「そうやろな」

 

 そう言いながら彩月はナナツメの足を引っ張ってバランスを崩した。

 立ち上がりながら彩月の平手がナナツメの顔面を捉える。

 しかしナナツメはそこからバランスを立て直すと彩月の平手に自身の頭をぶつけて彩月を再度転ばせた。

 

ナナツメ「今のは良かったな。やられたフリをするとは良いアイディアだ」

 

彩月「そうやろと言いたいんやけど、上手く行かなかったんじゃ話にならへん」

 

ナナツメ「そうだな・・・。それよりも小生と訓練するには経験が足りな過ぎる。使い魔退治でもして経験を積んだ方が良い。今よりマシになったら訓練に付き合おう。見回りの時間だ。失礼する」

 

 ナナツメはそう言ってホテルフェントホープの方へ歩いて行った。

 

彩月「経験が足りへんか。そうやろなあ・・・。どうする?」

 

一夜「えっ?それって・・・」

 

彩月「決まってるやろ?早速、行ってみようやないか。使い魔退治」

 

 彩月はイタズラをする様な子供の目を見せていた。

 

一夜「あっ・・・・・。そっか・・・・・。うん。行きます」

 

彩月「ほら。行くで」

 

一夜「わっ」

 

 彩月に手を引かれて一夜はフェントホープを飛び出した。

 

ナナツメ「行ったか・・・」

 

 二人がフェントホープを出て行くのを見たナナツメの顔には何の表情も浮かばない。

 

□ 神浜市内 参京区内 路地裏

 

 

彩月と一夜は使い魔を探して参京区の路地裏に来て周囲をソウルジェムで探っていた。

 

彩月「大体こういう道に使い魔は多いらしいと聞いたけど全然、おらへんな」

 

一夜「うん。いないね・・・」

 

彩月「じゃあ移動するで。適当に歩いていれば、いつかは見つかるやろ」

 

一夜「そうだよね・・・」

 

彩月「三度目の正直って言うやろ?次で倒しゃええんや」

 

 一夜と彩月はここに来るまでに使い魔と二回遭遇したが取り逃がしていた。

 これは使い魔自体が戦闘を避けたと言うのもあったが、驚き身動きの取れない一夜が対処出来なかったのも大きかった。

 彩月を先頭にして進んで行く一夜。

 やがて・・・。二人は魔力を探知した。

 

彩月 一夜「!!」

 

彩月「感じたか?」

 

一夜「うん。魔力だよね・・・」

 

彩月「どうやら使い魔みたいやな。ちょうどええ。行くで」

 

一夜「はい」

 

 二人は直ぐに結界の入り口を見つけた。

 魔法少女姿に変身する二人。

 彩月は借り物の魔法少女姿に薙刀を構えた。

 一夜は黄色いローブを羽織り、右手に鎖鎌を出して構えた。

 

彩月「じゃあ行くで。覚悟はええんやろ?」

 

一夜「うん。アタシ自身が決めた事だから・・・」

 

彩月「そうやな。躊躇うんやないで」

 

一夜「分かった」

 

 一夜の返事を聞くと彩月が先頭に立って結界に入った。

 現れた使い魔はアリクイが袋の上に乗っている様な姿をしていた。

 使い魔は彩月と一夜に気が付くと直ぐに四角い何かを投げ付けて来た。

 

彩月「ちっ」

 

 咄嗟に跳躍して回避する彩月。

 

一夜「ひゃっ!?」

 

 一夜は左手で咄嗟にローブを掴むとローブを盾にした。

 ローブに攻撃が当たるがローブは攻撃を弾いた。

 

彩月(一夜さん!大丈夫なんか!?)

 

一夜(うん。大丈夫。アタシのローブは改造して頑丈にしてあるから)

 

彩月(なるほどな。開発者だから出来る事やな)

 

 テレパシーで会話しながら彩月は使い魔へと近付き攻撃する。

 攻撃は当たらず、使い魔の身体は一夜の方へ近付いていた。

 

彩月「今や!!」

 

一夜「あっ!?」

 

 彩月が大声を上げた事で使い魔は驚いた様子を見せたが一夜も少し驚いたが、意を決して駆け出した一夜は鎖鎌の刃を使い魔に向かって振り下ろした。

 一夜の脳裏にナナツメ、神楽燦、遊狩ミユリとここ数日に特訓を付き合った面々の顔が浮かぶ。

 不意を付かれた使い魔は身体の一部を傷付けられてしまったが、至近距離から一夜に向かい四角い何かを発射しようとした。

 

彩月「甘いで!!」

 

 そこへ彩月が薙刀を下から上へ向かい振るって使い魔を両断する。

 

彩月「一夜さん!」

 

一夜「はい」

 

 彩月の必死な叫びを聞いて我に返った一夜は両手で握った鎖鎌を思いっきり使い魔に振り下ろした。使い魔は断末魔の悲鳴を残して消滅した。

 結界が消滅して彩月は、そのまま地面に座り込んだ。

 

彩月「ふう。何とか上手く行ったみたいやな」

 

一夜「・・・・・・・・」

 

彩月「一夜さん。どうしたんや?」

 

一夜「アタシ、使い魔を倒せたんだ・・・」

 

彩月「そうやな。ウチと共同やけどな」

 

一夜「うん・・・。アタシでも戦うって出来るんだ・・・」

 

彩月「そや。まあまだまだやろ。一人でやれて一人前や」

 

一夜「そうだよね・・・」

 

彩月「うん?なんや?これ?」

 

 彩月は握っていた薙刀の先に四角い物が付いている事に気が付いた。

 どうやら手紙の様だった。

 中身を見た彩月の顔色が変わる。

 

彩月「この拙い文字。これ・・・。もしや・・・。アレかあ」

 

一夜「どうしたの?」

 

彩月「たぶん、さっき倒した使い魔は鏡の魔女の使い魔やな。知っとるやろ?果てなしのミラーズにいる誰も見た事ない魔女の事」

 

一夜「うん。聞いた事は・・・。ある」

 

彩月「果てなしのミラーズでは入り込んだ魔法少女のコピーが使い魔として立ち塞がって来る厄介な結界。でも・・・。今のウチらにはちょうどええ場所かも知れへんなあ」

 

一夜「えっ。それってどういう」

 

彩月「これからミラーズへ行ってみるのも悪く無いやろ?」

 

一夜「でもアタシ達二人で大丈夫かな?使い魔をやっと倒せた訳だし・・・」

 

彩月「ナナツメさんからも経験を積んだ方がええと言われた訳やし行ってみるんも悪く無いやろ?」

 

一夜(彩月さんの言う事も一理ある・・・)

 

一夜「わっ分かりました。行きましょう」

 

彩月「鏡屋敷の位置は黒羽根から聞いとるし下見も済んどる。じゃ行くで」

 

 彩月に手を引っ張られて一夜達はまた別な場所へと向かった。

□ 神浜市内 某所 鏡屋敷内結界 通称果てなしのミラーズ

 

 

果てなしのミラーズの結界内部にいる魔法少女姿の彩月と一夜。

少し浮かない表情を見せている。

 

彩月「んで来てみたんやけど・・・」

 

一夜「・・・・・・・・」

 

彩月「まあ入り込んだから型を取られるのは分かり切った事やし気にする事はないやろ」

 

一夜「そうだね・・・・」

 

 二人は直ぐに結界に入り込んだ時に使い魔によって型を取られていた。

 

彩月「でもなあ・・・。なんか妙な感じがしたんやけどなあ」

 

 先程、型を取られた時を思い出す彩月。

 その時、型を取った使い魔の動きから困惑の様な動きを感じ取ったからだ。

 

使い魔「!?」

 

 最も型を取った使い魔は聞いていた通りに直ぐに逃げてしまい何も出来なかったが・・・。

 

彩月(あれは人間で言う所の困惑やと思うんやけどな・・・)

 

一夜「これからどうするの?」

 

彩月「浅い階層なら比較的弱い敵しか出えへんと言うから2,3体の魔法少女コピーと戦ったら帰ればええんやないか?」

 

一夜「分かった・・・」

 

 彩月と一夜は武器を構えながら結界を歩いて行く。

 暫く歩いて行くと二人の目の前に人影が見えた。

 

彩月「来おったな?」

 

一夜「うん!!」

 

 武器を構える彩月と一夜。

 二人の前に現れたのは・・・。

 

???「キャハハハハハ」

 

彩月「うん?黒羽根かいな!?」

 

一夜「黒羽根?本物じゃ無いよね?」

 

 二人の前に現れたのは黒羽根のミラーズコピーだった。

 

???=黒羽根コピー「キャハハハハハ」

 

 笑いながら黒羽根コピーは両手から鎖鎌を出して二人に向かって行く。

 

彩月「全く。やりにくいんは確かやな!」

 

 迎え撃つ彩月は飛ばして来た鎖鎌を薙刀の切っ先に魔力を集中させて断ち切って見せた。この結果に彩月は内心少し驚いた。

 

彩月(成程。コピーはコピーでも質の悪い劣化品と言う事かいな)

 

黒羽根コピー「キャハハハハハ」

 

 黒羽根コピーは笑い続けながら攻撃を止めようとしない。

 止めを刺そうとした彩月だったが思い直し黒羽根コピーを薙刀の柄で殴り動きを止め片腕に切り付けるに留めた。

 

彩月「一夜さん。ここからはアンタがやりい」

 

一夜「えっ?」

 

彩月「一夜さんの訓練で来たんやからやらなアカンやろ。幸い相手は一匹や。もしもの時はウチもいる」

 

彩月(それにこれ以上深く潜るんは今のウチらじゃヤバイ気がするなあ)

 

 内心ではこれからの算段を付けて有無を言わせないと暗に匂わせ彩月は一夜に告げていた。

 

一夜「そう・・・。だよね。分かった」

 

 意を決した一夜は両手で1本の鎖で繋がった鎖鎌を構えた。

 立ち上がった黒羽根コピーの前にゆっくりと近付いて行く。

 

黒羽根コピー「キャハハハハハ」

 

 武器も壊れて体にダメージを受けていても黒羽根コピーは笑い続けていた。

 まるで自身の状況が分かっていない様に。

 その様子に少し恐怖を覚えた一夜だったが先程、使い魔を倒した事で得た自信が恐怖を乗り越えさせていた。

 

一夜「・・・。行くよ!」

 

 一夜が鎖鎌に魔力を集中すると鎖鎌の刃の部分が魔力で少し輝いた。

 

黒羽根コピー「キャハハハハハ」

 

 笑いながら一夜に向かって行く黒羽根コピーは残った片腕の鎖鎌を振り回している。

 それを見た一夜も注意深く近付いて行く。

 黒羽根コピーが鎖鎌を投げ付けて来た時、それに合わせて一夜も鎖鎌を投げ付けた。鎖鎌の刃がぶつかり合って火花が飛ぶも一夜はぶつかった瞬間に鎖鎌に魔力を送り込んでいた。

 

一夜(今!!)

 

 その瞬間、一夜の鎖鎌の刃が巨大化した。巨大化した刃をそのまま黒羽根コピーへと振り下ろす一夜。

 成す術もなく黒羽根コピーは、そのまま消滅してしまった。

 黒羽根コピーの消滅を見届けた一夜は緊張が切れてその場に座り込んでしまった。

 

彩月「やれば出来るやないか」

 

一夜「ううん。相手は既に彩月さんが傷付けていたからアタシは止めを刺しただけだよ。だから・・・」

 

彩月「・・・」

 

一夜「次は自分で戦うよ」

 

彩月「上出来やないか。それより聞きたいんやけど、あの鎖鎌の刃が巨大化したのもやっぱり改造したんか?」

 

一夜「うん。暇な時があったから自分用のローブを少し改造してみたんだ」

 

彩月「その改造は他のローブでも出来るんか?」

 

一夜「出来るけど・・・。少し時間が掛かるよ。どんな改造かにもよるし」

 

彩月「じゃあ今度ウチのローブも改造してくれへんか?」

 

一夜「良いけど、どう言う風に改造したいの?」

 

彩月「そうやな。ローブとして使わない時は腕に巻くバンダナになるとか?バンダナの状態で腕に巻いてあれば鎖鎌を使える様になるとかな」

 

一夜「それなら直ぐに出来ると思うけど」

 

彩月「そりゃ便利やな。ここを出たら頼む事にするわ。それよりも新しいお客さんの様やで」

 

 彩月の言葉に合わせて新たな人影が二人に向かって来ていた。

 

一夜「!?」

 

彩月「一夜さん。下がってなあ。今度はウチの番や」

 

 彩月は薙刀を構えて相手に向かい立ち塞がる形を取った。

 

彩月「さて・・・。どんな相手や。うん!?」

 

一夜「えっ!?」

 

 彩月と一夜が驚く様子を見せる。

 その相手であるミラーズコピーの姿は彩月の魔法少女姿と同じ服装をしていた。

 しかし服装は同じでも顔は違っていた。

 紫の長い髪をツインテールの髪型にして星の飾りを付けるミラーズコピーの顔は彩月とは似ても似つかなかい少女の顔だった。

 

一夜「彩月さんと同じ服装?でも・・・。ミラーズコピーなら全く同じ姿になる筈じゃ・・・」

 

 困惑する一夜に対して彩月は落ち着いた表情を見せていた。

 

彩月「成程。さっきの違和感の正体はこれか。どうやらウチの持つ借り物のソウルジェム本人のコピーなんやろな」

 

 一夜に説明しながら皮肉な笑みを浮かべた彩月はミラーズコピーに近付いた。

 

彩月「さてさて。どう戦おうか?」

 

ミラーズコピー「・・・・・」

 

 彩月の方から薙刀で切り付けるもミラーズコピーは何なく動きを合わせて刃物同士がぶつかった。お互いに力を入れて鍔迫り合いとなる。

 

彩月「なあ。あんた・・・。何者や?」

 

 試しに彩月はミラーズコピーに話しかけて見た。

 先程の黒羽根のコピーは狂った様に笑っていたが、このコピーが同じとは限らないとカンが働いたからだ。

 

ミラーズコピー「あたし?あたしは・・・。こまち・・・」

 

彩月「!?」

 

 質問に答えて来た事に驚く彩月。

 

彩月「ふーん。こまちか。言葉通じんなら都合がええな。あんたはどうしてマギウス裏切ったんや?」

 

一夜「えっ!?」

 

一夜(そっか。彩月さんに接続したソウルジェムはマギウスを裏切った人のソウルジェムだって・・・)

 

 彩月の言葉を聞いて一夜は彩月のソウルジェムが裏切り者として処断されたこまちの物だと思い至る。

 

ミラーズコピー=ミラーズこまち「マギウス?裏切り・・・?違う。あたしは。あたし達はマギウスを信じていた。でも・・・」

 

 鍔迫り合いしていた薙刀を弾いて彩月から距離を取るミラーズコピーこまち。

 

彩月「でもなんや?ハッキリしい」

 

ミラーズこまち「あの時、あたし達は何故か反逆しなければいけなかった。反逆しなきゃいけないとみんなで思ったんだ」

 

彩月「ふん。つまらんな。自分らがした事も分からんのか?」

 

 彩月の言葉にハッとする表情を見せるミラーズコピーこまち。

 

ミラーズこまち「そうだ。あたしは分からない。どうしてか・・・。分からない事が分かる・・・」

 

 その瞬間にミラーズこまちの表情が無表情に変わり彩月に近づくと再び二人の長刀がぶつかり合った。

 だがミラーズこまちは左手を彩月に向けると星形の防御壁を展開するとそのまま彩月を押し当て壁際に追い詰めようとした。

 

彩月(固有魔法!?ウチには使えへんな)

 

 少し驚いた表情をした彩月だったが咄嗟に黄色いローブを魔法で出現させて身に纏った。と同時に袖口から鎖鎌を出現させるとミラーズこまちが出現させた星形の防御壁を回り込んでミラーズこまちの両手を切り裂いた!

 

ミラーズこまち「うっ」

 

 思わず武器である長刀を落とし星形の防御壁をも解除してしまったミラーズこまちの隙を見逃さずに彩月は一気に近づいて長刀を振り下ろした!

 

彩月「これでどうや!」

 

 彩月の攻撃でミラーズこまちは消滅した。

 

彩月「手こずらせたなあ。まあええけど」

 

一夜「彩月さん。大丈夫?」

 

 彩月に駆け寄る一夜。

 

彩月「ああ。大丈夫やで。それより一夜さん。このローブ。後で改造して貰いたいんやけどええか?やっぱ少し使い難いな」

 

一夜「いいけど。さっき言った内容で改造すれば良いの?」

 

彩月「ああ。それでええ。その方がウチの戦い方に合いそうや」

 

一夜「分かった。けどこれからどうするの?正直これ以上は・・・」

 

彩月「そうやなあ。これ以上は危険やし帰るとしますか」

 

一夜「そうだね。帰ろ」

 

 その時、一夜と彩月の耳に激しい音が響いた。

 

彩月「なんや!?」

 

一夜「なに!?」

 

 驚いた二人だったが慌てて武器を構えて身構えた。

 そこへ走って来る人影。

 

一夜「またコピー?」

 

彩月「どうやろな」

 

魔法少女?「くっ。あいつら。私の言った事の何が間違ってんのよ?男なんて幾らでもいるんだからとっかえひっかえして何が悪いってのよ!?」

 

 テンガロンハットを被りカウボーイならぬカウガールとも言うべき二丁の拳銃を両手に構えた魔法少女?が一夜と彩月の前に姿を現した。

 

魔法少女?「ん?何よ!?アンタ達。アイツ等の仲間!?」

 

 一夜と彩月の返答を聞かずに魔法少女は二人に銃撃を撃って来た。

 

彩月 一夜「!?」

 

 間髪入れない行動に対応できず二人は銃撃で傷付いてその場に倒れてしまう。

 急所は外れたが片足を撃たれて二人は片膝を付いていた。

 

彩月「油断したな・・・。あんたもコピーか?」

 

魔法少女?「何よ?これから男漁りするんだから邪魔しないでよね!!」

 

 魔法少女?は彩月と一夜に止めの銃撃をする為に両手の拳銃を二人に向けて躊躇なく引き金を引こうとした。

 

一夜「うっ」

 

彩月(油断大敵やな・・・)

 

??1「やらせない!」

 

 突然、誰か少女の声が彩月と一夜の耳に響いた。

 同時に鳴り響く銃撃の音。

 

??1「っ・・・。これ位どうって事無いから」

 

 彩月と一夜の眼前に一人の魔法少女が魔法少女?との間に割って入っていた。

 建設重機の様な黄色のカラーに両手のトンファーが印象的な魔法少女だった。

 

魔法少女?「お前!?また邪魔を」

 

??1「そうだよ。私はコピーのあいみをこれ以上見たく無いから。あいみ!」

 

江利あいみ「そうよー。こころの言う通りよー!何が男漁りよー!?私は本命一筋よぉー!!」

 

 あいみと呼ばれた少女は魔法少女?と同じカウガール姿をしていたが表情や仕草が真逆で陽の印象を彩月と一夜に抱かせた。

 

彩月(本物と言う事か?)

 

 彩月の抱いた疑問に答える様にあいみは次々と銃撃を魔法少女?=あいみコピーへ撃ち続けて行く。

 

あいみコピー「くっ」

 

 銃撃から逃れる為に距離を取ろうとするあいみコピー。

 

??1「まさら!今だよ」

 

あいみ「そうよー。私に代わってやっちゃって!!」

 

加賀見まさら「分かっているわ。こころ、あいみ」

 

 その瞬間、あいみコピーの後ろから突如として短剣を構えた透明感のある姿をしたクールな印象を持つ魔法少女=加賀見まさらが現れてあいみコピーを切り付け止めを刺した。

 

??1=こころ「ふう。良かった。二人共大丈夫?」

 

 こころと言われた少女が彩月と一夜に向き直り手を差し伸べる。

 

彩月「ああ。大丈夫やで」

 

一夜「はい。アタシも・・・」

 

 傷は浅く魔力で回復可能だった為、既に二人は傷を回復させていた。

 

こころ「私は粟根こころ。よろしく」

 

彩月「菖蒲彩月や。危ない所をありがとさん」

 

 彩月は素直にこころの手を握った。

 

一夜「越馬一夜です。その・・・。助けてくれてありがとうございます・・・」

 

あいみ「良いのよー。私は江利あいみ。私達も調整屋さんに頼まれてミラーズコインを集めに来ていたんだから」

 

 あいみはそう言ってミラーズコインを見せた。

 

まさら「そうね。私は加賀見まさら。私達のコピーの倒し損ねを追っていてあなた達二人を見つけたんだから運が良かったのは確かね」

 

 こころとあいみは助けられて良かったと表情にも見せていたが、まさらの顔には何の表情も浮かばず冷めていると言う様子を見せていた。

 

彩月(二人は良いとしても・・・。加賀見まさら・・・。少し怖いな)

 

 彩月の抱く素直な感想だった。

 

こころ「二人はどうしてここに来たの?神浜の魔法少女じゃないみたいだけど」

 

一夜「えっとそれは・・・」

 

彩月「ああ。ちょいと神浜市に観光にな。ウチと一夜さんは隣町の魔法少女さかい。変な魔力を感じてな」

 

あいみ「そうなんだ!確かに神浜市はミナギーシーやセントラルタワーとか色々あるからねー」

 

 彩月の咄嗟の言い訳にあいみが食い付いてお喋りが続きそうになった時、まさらが口を開いた。

 

まさら「待って。ミラーズにこれ以上いるのは危険だから出ましょう。喋るのはその後でも出来るわ」

 

こころ「そうだね。とりあえず出よう」

 

あいみ「サンキュー。まさら。こういう時、本当に気付いてくれるよね」

 

まさら「別に感謝する程の事じゃ無いわ」

 

 まさら達3人の先導を受けて彩月と一夜はミラーズを抜けて鏡屋敷のエントランスに戻る事が出来た。

 

あいみ「とりあえず結界からは出れたけど・・・。二人共、怪我は大丈夫なの?」

 

彩月「もう治したから問題無いで。そうやろ?一夜さん」

 

一夜「あっ。はい。アタシも・・・」

 

こころ「それなら安心だね。でも本当に怪我が酷いなら私達が調整屋さんまで連れてってあげるから遠慮しないでね?」

 

彩月「まあウチらは大丈夫やで」

 

まさら「・・・。本当にそうなの?あなた達二人の魔力から妙な感じがするのだけれど」

 

彩月、一夜「!?」

 

彩月(もしかして・・・。ウチらが普通の魔法少女とは違うとバレた?)

 

あいみ「そうなの?そんなに違わないと思うけど・・・」

 

まさら「こんな魔力を感じるは初めてよ。上手く言えないけど・・・。違和感があるわ・・・。もしかして知らない魔法少女のコピーなの?」

 

 まさらはそう言って武器を構えた。

 

彩月「待った。待った。ウチらは本物やで?」

 

一夜「はい。アタシも本物です」

 

こころ「まさら。そんな風に疑うなんて失礼だよ。初めてあった人の魔力だからそう感じるんじゃない?」

 

まさら「そうかしら?」

 

あいみ「あっ!もしミラーズのコピーなら結界の外には出れない筈でしょ?」

 

 あいみが思い出したとばかりに発言した。

 

まさら「そうだったわね」

 

 それを聞いてまさらは武器を収めた。

 

??2「その通りです。もしミラーズコピーが街を跋扈したら大変な事になりますからね」

 

彩月、一夜、まさら、こころ、あいみ「!?」

 

 突然響いた第三者の声に5人は驚いた。

 

??2「一夜さん。彩月さん。探しましたよ」

 

 そう言ってエントランスの鏡の裏から姿を現したのは、私服姿の梓みふゆだった。

 

彩月、一夜「みふゆさん!?」

 

??2=みふゆ「二人共、ミラーズに挑戦するのはまだ速いですよ」

 

 みふゆが姿を見せた事でまさらとこころ、あいみは顔を並べて会話した。

 

あいみ「確かあの人って」

 

まさら「ええ。梓みふゆ。西の実力者の一人ね」

 

こころ「でも確か行方不明って聞いたけど・・・」

 

みふゆ「やっぱり噂になっているんですね。でもそれは個人的な事情による物ですよ。粟根こころさん」

 

こころ「えっ?」

 

みふゆ「加賀見まさらさんに江利あいみさんでしたね。あいみさんとは前に一度会いました。まさらさんとこころさんとは、この鏡の魔女が現れた頃に初めてお会いしましたね」

 

まさら「確かに会っているわ」

 

こころ「うん。まさか覚えていたなんて・・・」

 

みふゆ「ついては少しお願いしたい事があるのですが」

 

あいみ「えっ。なんですか?」

 

みふゆ「ワタシと会った事は誰にも話さないで貰ってよろしいですか?」

 

こころ「良いですけど、それってどう言う・・・」

 

みふゆ「実は今、水名区特有の家庭の事情で家を出ているんです。特に・・・。やっちゃん。じゃなくて七海やちよさんには内緒にして欲しいんです」

 

まさら「どうして?」

 

みふゆ「これはワタシ個人の問題なのでやっちゃん。じゃなくて七海やちよさんを巻き込む訳にはいきませんから」

 

まさら「そう・・・。なら私から言う事は無いわ」

 

みふゆ「理解してくれてありがとうございます」

 

こころ「でも・・・。七海さん。梓さんの事をずっと探しているみたいでしたよ?私にも行方を聞いて来た位ですし・・・」

 

みふゆ「やっちゃんがワタシを探している事は知っています。でもこれはワタシと家族の問題ですから。落ち着いたら連絡を取ろうと思っています。それにワタシが魔法少女である以上、母親の望み通りに生きる事は難しいんですから・・・」

 

 その時のみふゆの表情は明らかにどこか遠い場所を見つめている様だった。

 その様子を見てこころもこれは自分が立ち入ってはいけない事だっと悟った。

 

こころ「そうですよね・・・。家族との問題は家族でしか解決出来ませんよね・・・」

 

みふゆ「あっ。すいません。変な事を言って。でも神浜市に住んでいるのなら水名区特有の事情は分かって頂けますね?」

 

 念を押す様に語るみふゆ。

 

まさら「そう言えば聞いた事があるわね」

 

あいみ「うん。色々としがらみがあるって聞いた」

 

みふゆ「水名に生まれた以上、仕方の無い事だとは思っています。さあ。一夜さん。彩月さん。行きましょう」

 

彩月「分かりましたで。世話になったな」

 

一夜「えっと。助けてくれてありがとうございます」

 

 変身を解いた一夜と彩月はみふゆに付いて鏡屋敷を出て行った。

 

あいみ「行っちゃったね」

 

まさら「ええ。私達も調整屋へ戻りましょう」

 

こころ「うん・・・」

 

あいみ「こころ。どうしたの?浮かない顔をしているけど」

 

こころ「梓さん・・・。母親と揉めているみたいだったから・・・」

 

まさら「あなたの事じゃ無いから気にする事は無いわ」

 

こころ「でも私もお母さんと色々合ったからつい・・・」

 

あいみ「そうだったよね・・・。でもやっぱり梓さんの問題は梓さんしか解決出来ない訳だし・・・」

 

まさら「そうよ。私たちが首を突っ込む事は許されないわ」

 

こころ「うん・・・。分かってるよ・・・」

 

まさら「私たちは私たちが出来る事をしましょう。調整屋さんが店で待っているわ」

 

あいみ「そうよ!ミラーズコインを届けないと。確か最近お菓子を手作りし始めたとか言っていたから・・・」

 

あいみの言葉にまさらとこころの表情が曇る。

 

こころ「それは・・・。良く無いね」

 

まさら「コインだけ置いて速く帰りましょう」

 

こころ、あいみ「賛成!」

 

 私服姿に戻った3人も調整屋へと向かって行った。

 そして調整屋では店主である八雲みたまがちょうど来客への調整を行っている最中だった。

 その様子を見た3人は顔を合わせて頷くとミラーズコインと手紙を置いて静かに調整屋から立ち去って行った。

 

みたま「酷いわー。わたしずっと手作りのお菓子を準備して待っていたのに~」

 

□ 神浜市内 ホテルフェントホープへと続く道 夕方

 

 

ホテルフェントホープへの帰り道をみふゆと彩月、一夜は歩いていた。

ここまで来る間、汗をかきながら3人は余り喋らなかった。

外が熱い為、みふゆが余り外で喋らない方が良いと提案したからだ。

 

みふゆ「ここまで来れば大丈夫ですね。一夜さん。彩月さん。あなた達二人は普通の魔法少女では無いんですから余りマギウスでは無い魔法少女と接触するのは避けた方が良いですよ。今回はたまたま二人の魔力にワタシが気付いただけ何ですから」

 

一夜「はい・・・。すみません・・・」

 

彩月「まあでも貴重な経験もさせてもろたし、一夜さんも自力で少しは戦える様になったし結果オーライってヤツやろ」

 

みふゆ「一夜さんが戦える様になったのは喜ばしいですが、一夜さんには裏方としての仕事があるので余り戦って欲しくは無いんですけどね。何かあっても正直に言って一夜さんの代わりが出来る人はいませんから・・・」

 

一夜「あっ!?そうでした・・・。アタシ裏方担当ですもんね・・・」

 

彩月「まあ確かにウチは護衛やけど、必ずしも守り切れるとは限らへんから自力でも戦えた方がありがたいんやけどな」

 

みふゆ「彩月さん。あなたは護衛なんですから・・・。とにかく二人はもうミラーズには近づかないで下さい。あそこは迂闊に手が出せない場所なんですから」

 

彩月「そうやな。確かに暫く遠慮した方がええな。あそこは異質や」

 

みふゆ「彩月さんもそう思いますか・・・」

 

彩月「そうやな。何かが違うって感じがしたで。とても危険な異質さや」

 

みふゆ「!!・・・。同じ事を言っていた人が昔いましたね」

 

彩月「ふーん。そいつはおもろい人やな」

 

みふゆ「彩月さんに記憶を植え込んだ人ですよ」

 

彩月「なんや。綾女さんか。確かに言うやろな。あの人なら」

 

みふゆ「やっぱり彩月さんは綾女さんに考え方が似ていますね」

 

彩月「記憶を受け継いでるんやから仕方ない事やろ」

 

 3人は歩いている内にホテルフェントホープの入り口へと辿り着いた。

 入り口にはナナツメが立っている。

 

ナナツメ「戻ったか」

 

一夜「ただいま。ナナツメさん」

 

みふゆ、彩月「!?」

 

 ナナツメに普通に挨拶する一夜を見てみふゆと彩月は驚いた。

 

ナナツメ「少しはいい経験をしたようだな」

 

彩月「そうやで。使い魔にミラーズコピーを相手にして来たんや。十分な経験やろ?」

 

ナナツメ「ミラーズコピーか。確かに対人戦の訓練と考えれば良い経験だな」

 

みふゆ「ですが今後、一夜さんと彩月さんにはミラーズへ行く事はワタシが禁止します。経験は大切ですがミラーズはやはり危険過ぎますから・・・」

 

ナナツメ「それには同意しよう」

 

彩月「残念やな。とても興味深い場所なんやけど」

 

みふゆ「他の魔法少女も同じ感想を抱いている様ですから調整屋さんに行けば最新の調査情報なら入手出来ますよ」

 

彩月「そおかあ。それなら今度、挨拶しに行って聞くのもええかも知れないなあ」

 

みふゆ「一夜さんも一度、顔を出した方が良いかも知れません。ソウルジェムと朱奈さんの身体を繋いでいる魔法の状態を確かめる必要がありますからね・・・」

 

一夜「分かりました・・・。今度行っています」

 

彩月「その時はウチも同行するで。これでも護衛やからな」

 

みふゆ「そうですね。それが彩月さんの仕事ですから」

 

彩月「ああ。分かっとるで」

 

 そう言いながらも彩月は頭の中で別な事を考えていた。

 

彩月(どうしてやろな。このソウルジェムの持ち主であるこまちさんは何で反逆したんやろな?どうも裏がありそうやな)

 

 




 この話では当初、まさら、こころ、あいみの3人では無く阿見莉愛様や胡桃まなかの二人にしようかギリギリまで悩みました。

 理由は莉愛様とまなかなら確実にみふゆの事情を知っているからこそ深く理由を問わないと言う確信があったからです。

 しかし当初考えた3人でも問題無いと判断してまさら、こころ、あいみのままにしました。

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