マギアレコード 偽書e/s memorys   作:ジャックノルテ

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今回のストーリーはマギアレコードメインストーリー第2章の直後に起こった出来事と想定しています。




2・5章 私は前に進んでいるのよね

□ 神浜市内 参京区 市内路地

 

 

参京区内を歩く制服姿のねむ。

夏休みが終わり既に学校が再開して数日が過ぎていた。

その背後で距離を取って魔力を絞り周囲から探知されづらくした私服姿のナナツメがねむを護衛していた。

 

ねむ(ナナツメ。いつも護衛をご苦労様。君の様に仕事熱心な羽根がいて助かるよ)

 

 距離を取っている為に会話にはテレパシーを使っていた。

 テレパシーは盗聴防止の為に魔力を溜める石を経由して使っている為、周囲の魔法少女に盗聴される心配も無かった。

 

ナナツメ(お気になさらず。小生は仕事をしているだけです)

 

ねむ(まあそうだけど上に立つ者としては・・・!?)

 

 その時ねむは異変に気が付いて思わず足を止めた。

 

ナナツメ(どうかされましたか?)

 

ねむ「絶交階段のウワサが消えた・・・」

 

 ねむは思わず声に出して呟いていた。

 周囲に人がいない事を確認するとナナツメはねむの傍に近付いた。

 

ねむ「どうやらまた僕のウワサが消されたみたいだね」

 

ナナツメ「七海やちよですか?」

 

ねむ「うん。またそうだろうと思うけど見て来てくれるかい?ナナツメ」

 

ナナツメ「分かりました」

 

ねむ「このウワサの栞を持って行けば何が起きたのか記録出来るから頼むよ」

 

 ねむは手に出現させた本から栞を取り出すとナナツメに渡した。

 このウワサの栞はウワサ空間があった場所へ正確に案内してくれる。

 更に何があったのかウワサ結界の残骸から解析する事を容易にしていた。

 

ナナツメ「はい。では直ぐに見てまいります」

 

ねむ「もう自宅が近いから護衛は大丈夫だから遠慮なく頼むよ。栞は明日渡せば大丈夫だから」

 

ナナツメ「はい」

 

ねむ「後、なるべく魔法少女との戦いは避けてね」

 

ナナツメ「分かりました」

 

 ねむをその場に残して素早く跳躍して建物の上を移動するナナツメは新西区の建築放棄地へと辿り着いた。

 

ナナツメ(どうやらこの辺りらしいが・・・!?)

 

 移動先に複数の魔法少女の魔力を探知してナナツメは更に慎重に先へ進んだ。

 すると建設放棄地の周辺で5人の魔法少女の姿を見た。

 

 

 水色で勝気そうな槍を握る魔法少女。

 倒れている赤い髪の杖を抱える魔法少女。

 黄色のポニーテールの髪型をして巨大な剣を持つ魔法少女。

 

 

 ナナツメは直ぐに相手の素性が分かった。

 以前に梓みふゆが神浜で注意すべきと注意喚起したリストに載っていた魔法少女の面々だ。

 

ナナツメ(あの3人は確か梓みふゆの知り合い・・・。それに・・・)

 

 ナナツメの視線の先には青い髪を長く伸ばして槍を構えた油断ならない雰囲気を持った年長者と思しき魔法少女がいた。

 

ナナツメ(あれは七海やちよ。やはりウワサを倒し続けているのか・・・。後は・・・)

 

 最後の一人はリスト載っていないピンクの髪にフードを被った知らない顔の魔法少女がいた。

 相手の顔触れを確認したナナツメはねむから渡されたウワサの栞にウワサ結界の残骸を吸収した。

 その時、僅かに魔力が反応した気がするが微弱な反応だから問題無いとナナツメは感じていた。

 

ナナツメ(栞はウワサ結界の残骸を吸収した。これまでだな)

 

 見つからない内にナナツメはその場を少し急ぎ足で離れた。

 否。見つからない内に離れたつもりだった。

 

??「待ちなさい」

 

 路地をしばらく歩いた後に間違いなく自身に向けられた言葉に驚いたナナツメが振り向くとそこには私服姿の七海やちよが警戒心を隠す事無く立っていた。

 

やちよ「あなた・・・。魔法少女よね。さっきから私たちを見ていたみたいだけど・・・。何が目的?」

 

ナナツメ「・・・・・・・」

 

 魔力をギリギリまで絞っていたにも関わらず見つかった事にナナツメは自身の油断に怒りを覚えていた。

 ナナツメの抱いた怒りは顔に表情として僅かに浮かんでいたが直ぐに頭を切り替えていた。

 目的はあくまでウワサの栞にウワサ結界の残骸を回収する事。

 既に目的は終えている。

 それに今のマギウスの翼では七海やちよと戦う事は禁じられている。

 

やちよ「もしかしてあなた・・・。ウワサと何か関わりがあるの?なら・・・」

 

 やちよはナナツメの僅かに浮かんだ怒りの表情からナナツメが自分と戦うつもりだと判断していた。

 相手が魔法少女へ変身しようとしている事を感じ取ったナナツメは、それを逃亡するチャンスと感じていた。この裏は既に人通りの多いバスの通り道でもある。

 

ナナツメ「・・・・・・・・」

 

 やちよが魔法少女へ変身したと同時に私服姿のままのナナツメは人通りの方へ一気に全力で駆け出した。

 

やちよ「待ちなさい!!」

 

 慌てて追いかけて来る魔法少女姿のやちよだったが、私服姿のナナツメが人通りの多い道へ出た事で慌てて足を止めた。

 

やちよ(不味いわね。この先は人通りが多い・・・)

 

 変身していないナナツメは人通りへ飛び出しても誰も見とがめないが魔法少女姿のやちよは事情が違った。

変身を解いた私服姿のやちよも人通りの多い通りに出たがそのタイムロスでナナツメを見失っていた。

 

やちよ「人通りに紛れ込んだのね・・・」

 

 やちよはナナツメの追跡は不可能と悟っていた。

 

やちよ(でも・・・。ウワサを消した事で不可解な魔法少女が現れたのなら進展はあった・・・。これまでもウワサを消した時、誰かの視線を感じる時があったけど、やはり誰かに見られていた・・・)

 

 やちよは今日の出来事を思い出していた。

 絶交階段のウワサに巻き込まれた知り合いの魔法少女、秋野かえでを助ける為に水波レナに助言し十咎ももこと環いろはと共闘した事を。

 そして今日、絶交階段のウワサを倒した直後にいた不審な魔法少女。

 

やちよ(ウワサに関わる魔法少女がいる・・・。いいえ。関わるのではなく・・・。ウワサは・・・。魔法少女が作っているのかも知れない・・・)

 

 それはやちよにとって最悪の予想でもあった。

 しかし今の段階では確信は無かった。

 ナナツメが本当に関係しているのか分からないからだ。

 単にやちよに驚き逃亡しただけかも知れなかった。

 

やちよ(判断するには材料がまだ足りないわね。それでも・・・。私は前に進んでいるのよね・・・。みふゆ・・・)

 

 自らに言い聞かせる様にやちよは、姿を消した友の名を心の中で告げて帰路へ着く事にした。

 

 その頃、ナナツメは人通りに出ると停留所に来ていたバスに乗り込んで遠ざかるやちよの姿を見ていた。どうやらナナツメの姿を見失ったらしい。

 

ナナツメ(何とか撒けたが・・・。しばらくは新西区には行かない方がいいか・・・)

 

 明日、ねむ様の護衛をする際にこのウワサの栞を渡す。

 やる事を確認したナナツメは少しだけ安心していた。

 

ナナツメ(だが・・・。ここから色々と起こりそうな気がする・・・)

 

 理由の見えない予感にナナツメは僅かに不安を感じていた。

 

ナナツメ(それでも小生はマギウスの翼として戦うだけ)

 

 

□ 神浜市内 新西区 調整屋内

 

 

 

調整屋の中でみたまから調整を受けている私服の一夜。

制服姿の彩月は近くにある椅子に座って持って来た本を読んでいた。

 

みたま「は~い。これで大丈夫よ。一夜ちゃん。お疲れ様」

 

一夜「ありがとうございます・・・」

 

 少し顔が赤い一夜。

 

一夜(みたまさんの調整・・・。全身を撫でられるのが恥ずかしい・・・)

 

彩月「なんや終わりか。今日は速いな」

 

みたま「一夜ちゃんのソウルジェムが身体に馴染んできているから速く終わったのよ~。それに特に問題も起きていないしね~」

 

 みたまは一夜の頭を撫でている。

 

彩月「なあみたまさん。調整ってどうやったら習得できるんや?」

 

みたま「あら~?彩月ちゃんは調整に興味があるのかしら?」

 

彩月「あるでー。魔法に関する事は何だって彩月ちゃんが関心を抱く事やしなー。出来たら何でも魔法は覚えたいでー」

 

みたま「でも残念ね~。わたしじゃ彩月ちゃんに調整を教えられないわ~」

 

彩月「まあウチのソウルジェムは借り物やしなー」

 

みたま「それだけじゃなくてね・・・。この調整の技術はわたしが先生に教わったからなのよ」

 

 みたまの表情は彩月と一夜にも分かる程、真顔となっていた。

 

彩月「じゃあその先生に技術を教われば魔法少女は調整屋になれるんか?」

 

みたま「否定はしないわ。でもね・・・。先生が誘いをするかどうかは別問題だし・・・。調整屋は先生が厳選した願いを叶えた魔法少女だけがなっていると言った所よね」

 

 そこまで言ってみたまはハッとした表情を見せた。

 

みたま「あら~。ごめんなさい。何だか急に真剣な話をしちゃって・・・」

 

彩月「別にええで。質問したのはウチや。答えが得られたし満足やで」

 

一夜「彩月さん。そろそろ」

 

彩月「そやな。んじゃみたまさん。ウチらは帰らせて貰うで」

 

みたま「そう。じゃあまたのご来店をお待ちしているわ~」

 

 そこへ複数人の足音が調整屋へと入って来る。

 

彩月「なんや?お客さんか?」

 

??「失礼します!」

 

 そこへ入って来たのはマゼンタの髪に眼鏡を掛けた少女。

青い髪で落ち着いた雰囲気の少女。

灰色の髪で引き締まった体つきの少女。

緑の髪に少し気弱そうに見える少女4人が制服姿で入って来た。

青い髪の少女が怪我をしたのか灰色の髪の少女を担いでいた。

 

みたま「あら~。ななかさん達じゃない~。あら?怪我人かしら?」

 

常盤ななか「はい。あきらさんと美雨さんが魔女との戦いで傷を負ったので・・・」

 

純美雨「ワタシは大丈夫ネ。少し打撲をしただけヨ。それよりあきらの方が大変ネ」

 

夏目かこ「はい。あきらさんは魔女の攻撃で身体が麻痺したみたいで・・・」

 

志伸あきら「うぅ・・・。不覚を取ったよ・・・」

 

みたま「大変!直ぐにそこの寝台にあきらちゃんを寝かせてあげて」

 

美雨「分かったあるヨ」

 

 そう言って美雨はあきらを寝台に寝かせ、みたまもベッドに駆け寄った。

 

彩月(この4人・・・。確かみふゆさんから渡された要注意人物リストに写ってたな・・・)

 

彩月「一夜さん。邪魔そうやし退散するで」

 

一夜「うっうん」

 

 彩月と一夜はそっと調整屋を出て行った。

 その二人の様子を眼鏡の端から見ていたななかは、そっとかこに小さい声で耳打ちした。

 

ななか「かこさん。あきらさんに付いていて下さい」

 

かこ「どうしたんですか?」

 

ななか「今の二人・・・。妙な魔力を感じました。少し話をして来ます」

 

かこ「わっわかりました・・・」

 

 そう言ってななかは二人を追った。

 彩月と一夜は二人で調整屋のある神浜ミレナ座を出ようとしている所だった。

 

ななか「そこのお二方・・・。お待ち下さい」

 

彩月「なんや?ウチらに何か用か?」

 

ななか「あなた達・・・。神浜の魔法少女ではありませんね。何処から来たのですか?」

 

一夜「えっとその・・・アタシ達は・・・」

 

彩月「一夜さん。無理しないでええで。ウチが説明したる。ウチらは風見野市から来たんや」

 

 笑顔で答える彩月。

 

ななか「どうして神浜へ?神浜の魔女は他よりも強く数が多いですよ。ここへ来る理由が見受けられませんが・・・」

 

彩月「そうでもないで。ここには調整屋さんがおるやろ。それが目的や」

 

ななか「調整屋にですか?」

 

 怪訝な表情を見せるななか。

 

彩月「調整屋は他にもあるらしいけど、この辺りにいるのはみたまさんだけやろ?神浜市に魔法少女を強く出来る調整屋がおると言う噂も出回っとるで」

 

ななか「成程・・・。それは初耳でした。他にも調整屋がいるかも知れない事に気が付かないなんて・・・。私とした事が迂闊でした」。

 

彩月「そう言う事や。調整すれば戦いが少しは楽になるやろ?あんさんもお仲間が心配そうやし・・・。ウチらは行くで」

 

ななか「お手数をお掛けしました」

 

彩月「安心しい。神浜では戦わんで。例え目の前で誰が襲われようとも」

 

ななか「・・・・・」

 

 皮肉を言い捨てた彩月は一夜の手を握ると引っ張って行く様にして少し急ぎ足で神浜ミレナ座から出て行った。

 

ななか「・・・・・。美雨さん。出て来ても良いですよ」

 

美雨「気づいていたカ」

 

 物陰から美雨が姿を見せた。

 

ななか「はい。今の二人、どう思いましたか?」

 

美雨「調整屋に用があったのはウソじゃないネ」

 

ななか「私もそう思います。鈴音さんの件があったので警戒しましたが杞憂だったようです」

 

 ななかと美雨の脳裏にかつて神浜市に現れた驚異の魔法少女、天乃鈴音の姿が浮かんだ。

 

美雨「でも何か隠しているのは確かヨ」

 

ななか「ですね。私の固有魔法も感じていました」

 

美雨「敵なのカ?」

 

ななか「敵ではありません。ですが・・・」

 

美雨「言い淀むなんてななからしくないネ」

 

ななか「今の段階では敵ではないと言った所でしょうか?私の発言次第では敵になっていた様に感じました」

 

美雨「また厄介な魔法少女が現れたと言う事アルカ」

 

ななか「そうですね。この所の神浜市における魔女は増大し続けていますし油断しない様にしましょう」

 

美雨「そうだヨ。あきらも心配だし戻るヨ」

 

ななか「はい。戻りましょう」

 

 ななかは美雨と共に調整屋へと戻って行った。

 

みたま「あら~。ちょうどあきらちゃんの治療が終わったわ~」

 

 あきらは治療を終えて落ち着いた表情を見せてベッドの上で目を閉じていた。

 

ななか「そうですか。ありがとうございます。ところでみたまさん。先程のお二人は神浜の魔法少女ではないそうですね?」

 

みたま「あら?わざわざ聞いて来たの?まあ本人たちが答えたのならそうねえ~」

 

 みたまは横目でななかと美雨が彩月と一夜を追っていた事に気が付いていた。

 

ななか「神浜市外からも調整屋に来る魔法少女はいらっしゃるのですか?」

 

みたま「そうねえ~。やっぱり私の調整の評判が良いからカワイイ女の子が市外からも来る様になったわ~」

 

ななか「成程・・・。一つお聞きしたいのですが・・・。みたまさんの様な調整屋は他にもいらっしゃるのですか?」

 

みたま「いるでしょうね~。でも私以外の調整屋が何処にいるのかは知らないわ~」

 

ななか「そうなのですか?こういう商売ですからてっきり横の繋がりがある物かと・・・」

 

みたま「調整屋になれる魔法少女ってそう多く無いのよ。そしてその中で先生に会える魔法少女は更に少ないでしょうね・・・。だから神浜の魔法少女達は、とても運が良いのかも知れないわね~」

 

美雨「そうは言っても最近の魔女は強いし多過ぎネ。調整しても苦戦する事があるヨ」

 

かこ「すみません。私が足を引っ張って・・・」

 

ななか「かこさんのせいではありません。私達は調整だけでなく己自身の持つ魔法をより磨かなければならないと言う事です」

 

みたま「調整屋さんはその為のお手伝いならいつだって請け負うわ~。ちゃんと報酬を貰えるのなら」

 

ななか「分かっています。これからもよろしくお願いします」

 

美雨「今の神浜では調整屋の存在は欠かせないネ」

 

かこ「はい。私もよろしくお願いします」

 

みたま(どうやら一夜ちゃんと彩月ちゃんの事には気が付いて無い様ね・・・。マギウスにそこまで入れ込むつもりは無いけど・・・。わたしから情報が漏れたなんて思われたく無い物ね・・・)

 

 

□ 神浜市内 新西区 新西中央駅東口

 

 

 

彩月「ここまで来ればもう大丈夫やろ」

 

一夜「うん。ありがとう・・・」

 

彩月「気にせんでええで。ウチは一夜さんの護衛やしな。それにしても要注意人物と会う事になるとは思わなかったで」

 

一夜「確かマギウスのメルマガでも要注意人物として載っていたよね」

 

 観鳥令が配信しているマギウスのメルマガにはそうした情報が載っていた。

 

彩月「そうや。常盤ななかに志伸あきら、純美雨に夏目かこ。神浜でチームを組んで戦っている要注意人物やな。マギウスの誘いに応じる可能性は低いと言われとるしな」

 

一夜「アタシ達も気を付けないといけないね・・・」

 

彩月「そうやなー。うん?あれは・・・。ナナツメさんやないか」

 

一夜「あっ本当だ」

 

 改札口の手前で彩月と一夜はナナツメに出会った。

 

ナナツメ「奇遇だな」

 

彩月「そうやな。しっかし護衛をしてないナナツメさんと出会うなんて珍しいな」

 

一夜「そうかも・・・。普段はねむ様の護衛をしているし・・・」

 

ナナツメ「そうだな」

 

彩月「今は帰り道か?」

 

ナナツメ「そんな所だ」

 

彩月「じゃあウチらも帰る所さかいご一緒させて貰うで」

 

ナナツメ「ああ。構わない」

 

 3人は揃って改札口を通ると来た電車に乗り込んだ。

 

一夜「そう言えば彩月さんは風見野市だけどフェントホープへ向かって大丈夫なの?」

 

彩月「大丈夫やで。どうせ風見野に帰るんならフェントホープから帰った方が楽やからな」

 

一夜「あっそっか」

 

彩月「それに電車代がかからへん。タダほどおいしい物は無いやろ?」

 

ナナツメ「それは一理あるな」

 

彩月「意見が合うなんて珍しいなあ」

 

ナナツメ「そうかも知れないな」

 

一夜「・・・・・」

 

 少し微笑する一夜。

 

彩月「どした?一夜さん」

 

一夜「なんだかナナツメさんと彩月さんは姉妹みたいに見えて」

 

彩月「ウチがナナツメさんと?ないない。ウチはここまでクールやないで」

 

ナナツメ「そうだな。小生もここまでお喋りではない」

 

一夜「なんだかドラマでみた姉妹みたいです」

 

彩月「言うなあ。一夜さん。まあある意味ではウチとナナツメさんは姉妹みたいなモノか」

 

ナナツメ「そうだな。同じ記憶を埋め込まれた同士か」

 

彩月「おや。また意見が合ったなあ」

 

ナナツメ「そうだな」

 

一夜(やっぱり姉妹みたい)

 

 そのまま電車で北養区まで戻った彩月は一夜とナナツメを送った後で風見野市へと帰って行った。

 

 

□ 神浜市内 北養区 ホテルフェントホープ ねむの私室 午後

 

 

 

ナナツメが七海やちよと遭遇した次の日、ねむの私室には制服姿のねむと黄色いローブを身に着けたナナツメがいた。

今日は平日である為、ねむはナナツメからの報告を今から聞く事になった。

 

ナナツメ「ねむ様。これがウワサの栞にございます」

 

ねむ「ご苦労様。ナナツメ。さて・・・。これを見れば昨日、何があったのかハッキリと分かるね・・・」

 

 魔法少女へ変身したねむがウワサの栞を本に挟むとねむの脳裏に昨日行われた絶交階段のウワサと魔法少女達による戦闘光景が映し出された。

 

ねむ「成程・・・。やはり七海やちよが絡んでいるみたいだね。後はみふゆの知り合いと知らない顔の魔法少女か・・・」

 

ナナツメ「それとメールでも報告した事ですが・・・」

 

ねむ「七海やちよに姿を見られたんだね」

 

ナナツメ「はい・・・・・」

 

 余り感情を見せないナナツメが申し訳ないと言う表情を僅かに見せたのはねむにとって小さな発見だった。

 ただしそれを指摘するのはナナツメの努力を踏みにじる事になると思うので心の中に隠しておく事にした。

 

ねむ「報告は聞いたけどナナツメは私服姿だったんだろう?」

 

ナナツメ「はい。変身せずに指示通りに戦わず逃げ出しました」

 

ねむ「会話も行っていないんだよね?」

 

 小さな会話が組織の露呈に繋がる危険性もあると思っていたねむは念を押す様に質問を重ねていた。

 

ナナツメ「はい。向こうは何かしら喋っていましたが、小生は黙っていました」

 

ねむ「うん。問題無いよ。ウワサの近くで知らない魔法少女と会ったとしても会話をしていない以上、情報が無さ過ぎるからね。マギウスの翼の露見には繋がらないと思うよ」

 

ナナツメ「深い考察。見事と思います。しかし・・・・」

 

ねむ「なんだい?」

 

ナナツメ「七海やちよ・・・。既に幾つものウワサを消している・・・。厄介な存在と見受けます・・・」

 

ねむ「確かに厄介と言えば厄介だね」

 

ナナツメ「小生が暗殺致しましょうか?正攻法で無ければ幾らでも手はあります・・・」

 

 ナナツメの言葉を聞いても無表情なねむだったが少しだけ驚きは抱いていた。

 

ねむ(確かにナナツメなら出来るかも知れない。けど・・・。それは最後の手段としたいね・・・。アリナやみふゆの件もあるから・・・)

 

 ねむは一応、ナナツメが勝手な行動を取らない様に釘を刺して置く事にした。

 

ねむ「ふむ・・・。ナナツメの言う事も分かるよ。けど七海やちよに関する対策は既に済んでいるから大丈夫だよ」

 

ナナツメ「そうなのですか?」

 

ねむ「うん。七海やちよがウワサを消している事は分かっていたからね。だからウワサの中に対七海やちよ用に特化した物を配置しておいたんだ。むふ」

 

ナナツメ「既にワナがあると言う事ですね」

 

ねむ「みふゆから聞いた七海やちよの性格とウワサを放っておけない性分。そこから導き出した性質から判断すれば・・・。あのウワサに七海やちよは勝てないと思うよ。みふゆの監修もあるからね」

 

ナナツメ「ねむ様がそう言うのであるのなら・・・。間違いは無いかと」

 

 余り感情を見せないナナツメの発言だったが少し安心した様子が見えた為、ねむはこれなら大丈夫だと確信した。

 

ねむ「だからナナツメ。これからも僕の護衛を頼むよ」

 

ナナツメ「はい・・・。それが小生の仕事ですから・・・」

 

ねむ「彩月も一夜の護衛をしてくれてる。これからが僕たちにとっての正念場だからね」

 

ナナツメ「心得ました」

 

ねむ「さて・・・。それじゃあ僕は灯花が電波望遠鏡にいるから顔を出して来るよ。ナナツメは」

 

ナナツメ「護衛として付いて行きます」

 

ねむ「むふ。じゃあ行こうか」

 

 ねむとナナツメは二人で部屋を出て電波望遠鏡へ向かおうとした。

 そこでエントランスに差し掛かると一夜と彩月が買い物袋を持って帰って来た所に遭遇した。

 

ねむ「やあ。一夜。彩月。凄い買い物の量だね」

 

一夜「あっねむ様」

 

彩月「ねむ様。ご機嫌よろしゅ。それにナナツメさんも」

 

ナナツメ「ああ」

 

彩月「いやー。今日はホテルフェントホープにお泊りしようと思うて色々と買うて来ましたわー。ついついはしゃいでしまったんやなー」

 

ねむ「ふむ。彩月は黄羽根だから専用の部屋も用意しているから好きにすると良いよ」

 

彩月「そやなー。楽しい事やし好きにさせて貰うでー。一夜さん。行くでー」

 

一夜「あっ。はい。じゃあ・・・。ねむ様。また」

 

 一夜と彩月はそう言って自室の方へ向かって行った。

 

ねむ「仲が良くて何よりだよ。じゃあ僕たちも行こうか」

 

ナナツメ「はい」

 

 ねむとナナツメもホテルフェントホープを出て電波望遠虚へと向かった。

 

 

□ 神浜市内 ホテルフェントホープ 深夜の廊下

 

 

 

深夜、自分の部屋の中から出て来たパジャマの一夜。

 

一夜?「・・・・・・・・」

 

 無言で少し目が虚ろな様子が誰の目にも明らかだった。

 

彩月「ちょいと待ちい」

 

 一夜?の背後から彩月が声を掛けて来た。

 彩月は今日、ホテルフェントホープに泊まっていた。

 虚ろな目で彩月の方を振り返る一夜?。

 

一夜?「・・・・・・・・」

 

彩月「一夜さんや無いやろ。あんた・・・。朱奈さんか?」

 

一夜?「・・・・・・・・」

 

 彩月の問いに答えない一夜?。

 その様子を面白げに見つめる彩月。

 

彩月(やっぱり・・・。おもろい事が始まっとるんやな)

 

 




あとがき

今回のストーリーで遂にメインストーリー第一部の第2章へ並びました。
 やちよさんとの遭遇は本来ありませんでしたが、改めてストーリーを見直すとやちよが第2章のラストで立ち去る姿に唐突もしくは何かを追った様に見えた為、こうした構成になりました。
 やり過ぎ感がありますが。

 当初、調整屋で彩月と一夜に遭遇するのはやちよさんの予定でしたが、余りにやちよさんが出て来過ぎたのでななかのチームに変更しました。
 実際、バランスが取れたのと思うので。

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