マギアレコード 偽書e/s memorys   作:ジャックノルテ

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5・5章 だから黄羽根がおるんやろ

□ 神浜市内 北養区 ホテルフェントホープ エントランス

 

 

 

年が明けてお正月も過ぎて一週間経った頃には、既にマギウスの翼は今まで通りの活動を再開していた。

ナナツメ、一夜、彩月。3人の黄羽根もそれぞれの仕事を行っていた。

ホテルフェントホープのエントランスに設置されたソファーに向かい合って座る一夜と彩月。二人は仕事を終えて間もない為に黄色いローブを羽織ったままであった。

 

彩月「さーて。仕事も終わた事やし、暗記の続きでもするか?」

 

一夜「暗記って?」

 

彩月「忘れたんか?神浜で要注意の魔法少女リストが更新されたやろ?マギウスの翼との関係がバレたらヤバそうな魔法少女リストや」

 

 そう言いながら彩月はスマホに送られて来たマギウスの翼広報からのメールマガジンを開いた。

 そこにはマギウスの翼が注意すべき魔法少女の素性と観鳥さんが撮ったと思しき写真付きで掲載されていた。

 

彩月「そら行くで。まずはこの北養区にある灯花様の通う聖リリアンナ学園・・・。名前が入名クシュ。願いの叶え方に問題があって夜しか活動しない魔法少女。魔女化を知っているが、上記の体質故に勧誘は控えるべしと・・・。ふむ。確かにそれじゃ面倒そうやな」

 

一夜「もし会ったら・・・。どうするの?」

 

彩月「挨拶だけして帰ればええやろ。戦う必要な無いさかいな。んじゃ次は月咲さんのいる工匠区の工匠学舎か。えーと千秋理子。小学生にしては高い戦闘能力を持つも実家がお弁当屋さんで店番をしている場合もある為、勧誘は不可。それに留学生魔法少女アシュリー・テイラー。海外から来ている為、魔女化を知っているか不明瞭な為、勧誘は見送り。まあ読んだだけでも駄目やろ」

 

一夜「千秋屋のお弁当なら前に月咲さんが買って来てくれたから食べた事があるけど美味しかったよ」

 

彩月「そーなんか。今度ウチも食うか。えーと他に水樹塁。クールに振舞っており本心が見えづらい為、注意すべし。相手の魔法少女を何故か注視する癖がある。なんやろな。これ?」

 

一夜「よっぽど気になる事でもあるのかな?」

 

彩月「どうやろな?見る事が魔法に繋がるのかも知れへんなあ。次は大東区の大東学院で・・・。和泉十七夜。神浜東のリーダーでありマギウスへの勧誘は絶対に不可。むしろ否定し敵対ている。なお相手の心を読む能力を持つ。それに眞尾ひみか。実家の家事に没頭している為、話を聞いてくれない。そりゃ無理やろ。」

 

一夜「和泉十七夜に会ったら迷わず逃げてって月咲さんにも言われた・・・」

 

彩月「そら怖いな。まあ命までは取らへんやろ。次は観鳥さんの通う南凪区の南凪自由学園。都ひなの。神浜の中央区周辺の魔法少女のまとめ役でありベテラン。一度羽根達で勧誘したが妙な顔をして断られた」

 

一夜「知らない人から見たらアタシ達って変な集団だもんね・・・」

 

彩月「まあしゃあないやろ。顔の見えない集団なんてそんなモノや。南凪には後・・・。由貴真里愛、桐野紗枝、枇々木めぐる。この3人の魔法少女は、それぞれ部活や実家で忙しくしている」

 

一夜「魔法少女と普通の生活って両立難しいんですね」

 

彩月「えーと次は栄区の栄総合学園か。御園かりん。フールガールは絶対に勧誘しない事。アリナさんからのお達しやな」

 

一夜「アリナさんが?」

 

彩月「ああ。何故かこのリストを直々に条件を付け加えて来たらしいで」

 

一夜「何か理由でもあるのかな?」

 

彩月「どうやろなー?苦手な人なんかもなー。アリナさんのいる学校やし」

 

一夜「あっ。そっか。正体を隠したい人ならマギウスに参加して欲しくないよね」

 

彩月「アリナさんやしなー。後は・・・。恵萌花。天然過ぎる事とお世話係を称する一般人が周囲にいる事が多い為、勧誘不可。由良蛍。極度のめんどくさがり屋で常に眠ろうとして話すら聞こうとしない。真井あかり。小学生の為、余程の事情が無い限り勧誘禁止。由良蛍と行動を共にしている。アリナさんみたいに変なのが多いな」

 

一夜「うーん。それは・・・」

 

彩月「お次は中央区の中央学園。鞠子あやか。やたらポジティブで勧誘が成り立たない。面白くないギャグを延々と続ける。また妙なやっちゃな。んで次は・・・。おっ。知っとる人やな」

 

一夜「えっ?知っている人?」

 

彩月「前に鏡屋敷で会った加賀見まさら、粟根こころ、江利あいみ。この3人は割とチームを組んで行動する事が多い。特に加賀見まさらの戦闘能力は高いんやけど全く話を聞かないそうやで。こりゃ後の二人も望み薄やな」

 

一夜「確かにそうかも・・・」

 

彩月「後は綾野梨花。一時期、戦い方が乱暴だったが今は落ち着いている。ただしプライベートを優先するタイプなので勧誘不可。まあそんなもんやろ」

 

一夜「マギウスの翼に参加してる人たちは平気なのかな・・・」

 

彩月「それ程、救われたいと言う事なんやろ。次はねむ様の通う参京区の参京院教育学園か。静海このは、遊佐葉月、三栗あやめ。この3人はチームで動いていて、ある事件で冤罪を掛けられた際にもチームの結束は揺るがなかった。前に羽根の一部と遭遇して警戒されているそうやな」

 

一夜「どうして警戒されたのかな?」

 

彩月「素顔が見えない相手は怪しいからやろ。えーと後は・・・。保澄雫。マギウスの翼と協力関係にありと。他には空穂夏希。チアガールとしての活動も並行しており前に羽根が遭遇した際には怪しんでいる。当然の事やろなー。次やな」

 

一夜「次は水名区の水名女学園だね」

 

彩月「月夜さんの通う所やなー。梢麻友。高校3年生で学芸員のバイトをしている。史乃沙優希。神浜市のローカルアイドルを行っている。そして阿見莉愛。ファッションモデルをしている。この3人は特に目立つ存在であり勧誘する事自体がリスキー過ぎるとの事」

 

一夜「史乃沙優希はアタシもテレビで見た事あるよ」

 

一夜「有名人やし余計に面倒やしなー。竜城明日香。武道の心得があり。ただしかなりそそっかしい。後は矢宵かのこ。デザインセンスが独特であり実家の家業で頭が一杯なので勧誘不可。よう分からんが的確な評やな」

 

一夜「センスが独特ってどういう事何だろ・・・」

 

彩月「どうもキノコに執着しとるらしいで。自分でも山中で取りに行っているらしいな。後は・・・。若菜つむぎ。食レポサイトを書いている魔法少女。胡桃まなか。洋食店ウォールナッツのシェフ兼魔法少女。店が忙しい為、勧誘は難しいと」

 

一夜「月夜さんが言ってましたけど、料理の腕は確かだって」

 

彩月「中学生でシェフが出来るんやしおもろい人やな。んで次は神浜市立大付属学校やな・・・。この学校は魔法少女が仰山おるなー。春名このみ。花屋ブロッサムでバイトしている魔法少女。美凪ささら。正義感が強く人々のレスキューを優先する。木崎衣美里。商店街でエミリーの相談所を解説しており顔が広い。五十鈴れん。気が弱そうで人見知りなので勧誘は難しい。まあそれなら顔見知りか友人から攻めるしか無いやろなー」

 

一夜「でもそう都合良く顔見知り何ているの?」

 

彩月「まあ例えや。そう都合よくおらへんやろ。んで次は相野みと。天然そうに見えるが相手を出し抜こうとする思考の速さを持っている。伊吹れいら。だれとでも仲良くなれるタイプ。桑水せいか。凄く黙って怒るタイプ。この3人は和泉十七夜と交友関係がある為、勧誘が不可。こんなとこにもおるんか。面倒やな」

 

一夜「交友関係って意外な所にもあるんだね・・・」

 

彩月「そうや。気を付けんとアカンで。んで後は十咎ももこ、水波レナ、秋野かえで。この3人のチームはみふゆさんの知り合いかつ要注意人物である七海やちよの知り合いやから絶対に接触はアカンそうやで」

 

一夜「みふゆさんの知り合い・・・」

 

彩月「まあなんか事情でもあるんやろ。後は警戒すべき魔法少女のチームやな。自身の敵と味方を見極める常盤ななか率いるチーム。クールな拳法の達人、純美雨。空手の使い手である志伸あきら。本屋の娘である夏目かこ。この間、調整屋で会った4人やな」

 

一夜「あの時、怪我人を連れて来た人たち・・・」

 

 一夜と彩月は以前、調整屋で常盤ななかのチームと会った事があった。

 

彩月「ああ。既にウワサとも戦っとる連中やから注意せんとアカン。最後は・・・。七海やちよが率いるチームやな」

 

一夜「七海やちよって・・・。マギウスの翼で一番の要注意人物だよね?」

 

彩月「そうやな。みふゆさんが直々に要注意人物と指定した訳やしな・・・」

 

一夜「それにチームって事は他にも魔法少女が・・・」

 

彩月「そうやな。新西区にいる七海やちよ率いるチームには自称、最強の魔法少女由比鶴乃、傭兵を生業としていた深月フェリシア、この間まで電波少女のウワサに囚われていた二葉さな。そして最近、神浜に引っ越して来た環いろはの4人やな」

 

一夜「調整屋へ行く時は注意しないといけないね・・・」

 

彩月「そやな。まあ最近じゃ他の街から魔女を狩りに来る魔法少女を多いらしいからそれで誤魔化せるやろ。まあ注意は怠らん様にせんとな」

 

ソファーに座る彩月はそう言って頭の後ろで腕を組んだ。

 

??「彩月の言う通りだよー。七海やちよのチームには、そろそろ特別な対処が必要かもねー」

 

彩月 一夜「灯花様!?」

 

 一夜と彩月の座っているソファーに向かって制服姿の里美灯花が歩いて来た。

 

??=灯花「彩月。一夜。お仕事ご苦労様だにゃー。それでここでお喋りしている所を見るとヒマなのー?」

 

一夜「えっと・・・。仕事は終わりました」

 

彩月「そうやな。だから少し情報の暗記をしていた所や」

 

灯花「感心だねー。黄羽根として重要な事だよ。もしかしたら彩月や一夜にも護衛として動いて貰うかも知れないからねー」

 

彩月「ウチはともかく一夜さんが何かあったらマズいやろ。こんな便利な魔法持っとる人は他におらへんやろ?」

 

灯花「それは彩月の言う通りだにゃー。でも少しぐらいならわたくしが使ってもいいよねー?」

 

 灯花はいたずらっぽく微笑んだ。

 

彩月「もしかして早速何か仕事があるんか?ウチでよければええで」

 

灯花「たぶん二人いないと厳しいと思うかにゃー?仕事が終わってるなら二人に私の護衛を任せたいけど大丈夫かにゃー?」

 

彩月「大丈夫やで?なあ一夜さん」

 

一夜「はい。アタシも大丈夫です」

 

灯花「じゃあ今から二人共、外に行くから変身を解いて付いて来て」

 

彩月「分かったで。じゃ行くで。一夜さん」

 

一夜「はっはい」

 

 一夜と彩月も言われた通り変身を解いて私服姿に戻ると灯花の後に続いた。

 歩きながら3人はフェントホープの結界の出口へと向かっていた。

 

彩月「んで灯花様。ウチらは何をすれば?」

 

灯花「ちょっとフェントホープで使っていたパソコンが壊れたから新しいのが直ぐに必要なんだにゃー。だから一夜と彩月には持ち帰るのを手伝って貰おうと思って」

 

彩月「なんや。そんな事か」

 

灯花「もしかして不満かにゃー?」

 

彩月「いんや。お安い御用や。それ位ならウチや一夜さんでも出来るやろ?なあ一夜さん」

 

一夜「はい。黒羽根の人達も備品購入でお使いに行くからその延長と言う事ですよね?」

 

灯花「うん。その通りだよー。二人共、物分かりが良くて助かるにゃー」

 

彩月「そりゃおおきに。それで灯花様。雑談ついでに聞きたいんやけど」

 

灯花「何かにゃー?」

 

彩月「ミラーズコピーってミラーズの外ではウワサの結界以外では活動出来ないんやろ?綾女さんのコピーは何で活動出来たんや?」

 

灯花「それはねー。推測にはなるけど、ミラーズコピーに筒地綾女のメモリーシード、それとねむの具現化魔法が合わさった結果として出来たイレギュラーだからじゃないかにゃー。でもどうしてそんな事を聞くのかにゃー?」

 

彩月「いやー。綾女さん達のコピーを量産出来たら戦力になるんじゃないかと思うたんですわ。最近色々な事があるからマギウスも戦力拡充出来へんかなと」

 

灯花「たぶん無理じゃないかにゃー。あの後も実験したけど筒地綾女のメモリーシード無しでねむの具現化魔法をかけてもミラーズコピーは結界の外では実体化出来なかったし、何より筒地綾女の作ったメモリーシードに入っている自我のデータが強すぎて全く言う事を聞かないからやる意味がないんじゃないかにゃー?」

 

彩月「成程・・・。そりゃ残念や。戦力にならへんじゃ意味が無いな」

 

灯花「でもわたくしは既に別の手を考えてあるから大丈夫だにゃー」

 

彩月「流石はマギウスのお三方の一人やな」

 

灯花「雇い主としてこれ位は当然かにゃー?さて工匠区にあるパソコンの専門店に行くから二人には荷物持ちを依頼したいんだにゃー」

 

彩月「雇用主の言う事やし問題無いで」

 

一夜「はっはい。アタシも大丈夫です」

 

灯花「良い返事だにゃー。たくさん買うから頑張ってねー」

 

 この時、二人は気が付いていなかった。

 灯花の沢山買うは二人の予想を超えていると。

 

 

 

□ 神浜市 工匠区 電気店街

 

 

 

灯花を先頭に歩く一夜と彩月。

二人の手には大きな紙袋が両手に握られていた。

 

一夜「灯花様・・・。これで最後ですか・・・」

 

灯花「うん。これで最後だよー。二人共お疲れ様―」

 

彩月「こんなに買うとは思わへんかったわ・・・」

 

 灯花の買ったパソコンの部品やパーツは彩月の予想を上回る量だった。

 

灯花「二人には特別にディナーをご馳走してあげるからそれで許してくれないかにゃー?」

 

彩月「最高に旨いディナーなら文句ないで」

 

一夜「大丈夫です・・・」

 

灯花「大丈夫だよー!神浜で一番評判のいいウォールナッツのシェフに作って貰うからー」

 

彩月「ウォールナッツって・・・。要注意魔法少女がいる店やないですか?」

 

 護衛としての台詞を答える彩月。

 

灯花「そうだねー。でも私の家に来て貰うのは、その魔法少女のお父様だから大丈夫だよー。私も時々、お父様とディナーを一緒に食べるからねー。今度、ねむと一緒に彩月と一夜にもディナーをご馳走してあげるからー」

 

彩月「そいつは楽しみですな。なあ一夜さん?」

 

一夜「はい。アタシ楽しみです・・・」

 

灯花「良い返事だにゃー。それじゃあ近道して直ぐにフェントホープへ帰ろー。わたくしは買ったばかりのパソコンの調整もしなきゃいけないからにゃー」

 

 灯花の示した道は人通りの少ない裏路地と言える道だった。

 

彩月「この道、大丈夫なんですか?」

 

灯花「ここを通れば駅まで近いから効率的だにゃー。それにわたくし達は魔法少女だから何が出ても平気でしょー?」

 

一夜「言われてみればそうですね」

 

彩月「じゃあ行きましょか」

 

灯花「うん。行くよー!」

 

 灯花を先頭に荷物を持った彩月と一夜が続く。

 夕暮れに近い時間帯だったが裏路地は薄暗い感じだった。

 その時、3人は魔法少女の魔力を探知した。

 

灯花、彩月、一夜「!?」

 

彩月「なんや?」

 

一夜「魔法少女の魔力みたいですけど・・・」

 

灯花「んー。他に反応が無いにゃー。魔女や使い魔がいないのにいるなんて変だにゃー」

 

彩月「一夜さん。ちょっと持っててくれな」

 

一夜「あっはい」

 

 彩月は借り物のソウルジェムを使い魔法少女に変身すると一夜に持っていた荷物を渡すと薙刀を構えて灯花の前に立った。

 

灯花「うん。ちゃんと黄羽根として護衛をしてくれてるねー。はなまるだよー」

 

彩月「まあこれもウチの仕事やさかい。それにやっぱこれ近付いて来てますなあ」

 

一夜「うん。アタシも分かる。それに・・・」

 

灯花「敵意がむき出しだにゃー。魔法少女解放の為に色々と動いているだけで恨まれる覚えなんて無いんだけどにゃー?」

 

彩月「まあ灯花様。組織があれば反発する者が出るのは必然やろ。だから黄羽根がおるんやろ?」

 

灯花「うーん。彩月は上手い事を言うねー」

 

 灯花がそう言った時、3人の目の前に人影が近づいて来た。

 そのシルエットは3人にとって見覚えのある物だった。

 

彩月「うん?なんや。白羽根か?」

 

 そう言いながらも彩月は武器の構えを解く事は無かった。

 

灯花「確かに白羽根だねー」

 

一夜「はい。確かにそうです」

 

 3人の目の前に現れたのは同じマギウスの翼に属する白羽根だった。

 しかし両手からは鎖鎌を出して敵意をむき出しにしている。

 

白羽根2「・・・・・・・・」

 

彩月「そこの白羽根さん・・・。ウチらに何か用でもあるんか?」

 

白羽根2「・・・・・・・・」

 

彩月「分かりやすい敵意を向けとると言う事は反逆でも目論んでるんか・」

 

白羽根2「うっ・・・。ああああああああああ!!」

 

 咆哮と共に両手の鎖鎌を振り回して彩月に否。灯花に向かって走って来る白羽根2。

 それを見抜いた彩月は咄嗟に自身の黄色いローブをバンダナモードにして右手に巻き付かせると右手から生成した鎖鎌を伸ばすと白羽根2の鎖鎌に絡ませた。

 鎖と鎖を引っ張り合い拮抗状態となる。

 

白羽根2「!!」

 

彩月テレパシー(咄嗟やけど上手く行ったか。灯花様?聞こえまっか?)

 

灯花テレパシー(うん。聞こえてるよ)

 

 灯花も魔法少女に変身して傘を構えていた。

 荷物を持っている一夜は変身出来ずにいる。

 

彩月テレパシー(ウチが時間を稼ぐからその間に一夜さん連れて逃げてくれへんか?元来た道を戻るとか)

 

灯花テレパシー(えー!?わたくしもいれば羽根の一人位、楽勝でしょー?)

 

彩月テレパシー(そうかも知れへんけど他にも仲間がいたらどうするんや?それに一夜さんもおるし買ったパソコン壊したら意味ないやろ)

 

灯花テレパシー(あっ・・・)

 

彩月テレパシー(幸いここは工匠区やし月咲さんが近くにおるかも知れへん。なるべく時間を稼ぐから何とか逃げて援軍呼んでくれまへんか?)

 

灯花「むぅ・・・。彩月の言う通りだね。じゃあ護衛として後は彩月に任せるから。一夜。行くよ」

 

一夜「えっ?でも」

 

灯花「わたくし達がいると彩月が戦えないから行くよ。速く行くにゃー!!」

 

 灯花は強引に一夜を引っ張ってその場を離れた。

 

彩月「これで一対一やな・・・。んでなんでそんなに敵意むき出しなんや?」

 

白羽根2「邪魔・・・。するな!!」

 

彩月「護衛の黄羽根やからそうは行かへんで」

 

白羽根2「うぁああああああ」

 

 うなり声を上げると白羽根2は両手に持っていた鎖鎌の実体化を解除した。

 

彩月「なっ!?」

 

 驚く彩月を尻目に白羽根2は灯花達を追おうと彩月の脇を通り抜けた。

 

彩月「けど甘いで」

 

 同時に彩月が呟くと彩月の左足首から鎖鎌が形成され飛び出すと白羽根2の左足に絡み付いた。

 

白羽根2「ぐっ!?」

 

彩月「だから護衛やからそうは行かへん。これで逃げれんやろ」

 

彩月(と言うても上手く当たって良かったで。こんな事は実戦では初めてやしな)

 

白羽根2「あああああああああ」

 

 両手に構えた鎖鎌で彩月に迫る白羽根2。

 

彩月「さて・・・。お仕事させて貰うで」

 

 彩月も両手に薙刀を実体化させて白羽根2に向き直った。

 白羽根2は鎖鎌を変形させた短刀で次々と彩月を突いて来る。

 

彩月(マズいな・・・。やっぱこの武器じゃ防御出来へん・・・。なら)

 

 白羽根2の攻撃を薙刀では防御し切れないと判断した彩月は咄嗟に武器である薙刀の実体化を解除した。

 

白羽根2「邪魔!!」

 

 白羽根2の持つ短刀が彩月に突き刺さろうとした時、彩月の手に新たな武器が魔力によって形成されて突き刺さろうとした短刀を捌いた。

 

白羽根2「!?」

 

彩月「この距離ならこっちのがええなあ」

 

 言いながら彩月は手に持った武器を見つめている。

 刀身の細いレイピアと言われる剣だった。

 

彩月(一夜さんからコピーしたけど使わない武器を貰っといて正解やったわ)

 

 それは一夜が新しいローブを作ろうとした際に羽根の候補者からコピーした武器の一つだった。威力や強度は本物には及ばないが彩月には丁度良い使い捨ての武器だった。

 これはその一つで彩月も知らないが七瀬ゆきかの武器だった。

 

彩月(! やっぱ強度はそれなりか。もうヒビが入っとる)

 

 一度の攻撃を凌いだだけでレイピアの刀身にはヒビが入っていた。

 

彩月(なるべく速めに片づけなアカンなあ・・・)

 

白羽根2「いい加減に!!」

 

 再び白羽根2が迫って来る。警戒したのか今度は鎖鎌を両手から伸ばして振り回して迫って来ている。

 

彩月(考えとるなあ。これじゃたしかにこの武器じゃ無理やな。なら・・・)

 

 彩月はレイピアを握るのとは、逆の片手に自身の薙刀を実体化させた。

 

白羽根2「・・・・・!」

 

 間髪入れずに白羽根2は鎖鎌を投げると彩月の握る両手の武器に絡めさせた。

 これで彩月の握る武器は使えない。

 

彩月(やはりそう来たな。じゃあお次はこれや!)

 

 それを読んでいた彩月は鎖鎌が絡まった瞬間に両手の武器を捨てるとその場からジャンプする。しかし白羽根2とは足の鎖で繋がっている為にそう高くは飛ぶ事が出来ない。

 

彩月「これなら少しは利くやろ?」

 

 そう言って彩月が実体化させた武器は観鳥令のバズーカだった。

 

白羽根2「!?」

 

 慌てた白羽根2が足を藻掻かせて宙に浮かぶ彩月もバランスを崩してしまう。

 それは彩月がバズーカ砲の引き金を引くのと同時だった。

 爆発音と共に衝撃と地面から立ち上る土煙で両者は互いを見失っていた。

 だが彩月と白羽根2は足の鎖が繋がったままでお互いの存在とある程度の位置は把握していた。

 

白羽根2「もういい加減に!!」

 

 彩月のいるであろう位置へ鎖鎌を撃ち込む白羽根2。

 その鎖鎌が彩月の身体を傷付ける。

 身体の数カ所から血が流れる。

 

彩月(ちっ・・・。マジで痛いで・・・。けど次の手は打った!)

 

 彩月は防御の為にもう一つの鎖鎌を実体化させて回転させて防御の姿勢を取った。

 しかしそれは土煙を晴らして白羽根2に彩月の姿を見せる結果となる。

 

白羽根2「見つけた!!」

 

 彩月の姿を見つけた白羽根2が短剣を振り上げて彩月へ向かおうとする。

 その鬼気迫る表情は完全に彩月に対する殺意の塊と言えた。

 殺意を向けられても彩月の口元には笑みが残る。

 

彩月「かかったな。そら。鬼が来るで」

 

 彩月が言った時、白羽根2の視界に上から落ちて来る円月輪が見えた。

 

白羽根2「この武器!?」

 

彩月「なんや。みふゆさんの事は分かるんやな」

 

 みふゆの円月輪を見て明らかな動揺を見せた白羽根2に対して今度は彩月が左足で繋がった鎖鎌を片手で引っ張って白羽根2の体勢を崩した。

 

白羽根2「なっ!?」

 

 バランスを崩した白羽根2に対して今度は彩月が駆け出した。

 

彩月「生憎や!みふゆさんはおらへんで!」

 

 落ちて来た円月輪は彩月がバズーカ砲を地面に撃った際に生じた土煙に乗じて上に投げた一夜がコピーした偽物だった。無論、本物程の強度も切れ味も無いが見た目だけは完璧なコピーだった。

 白羽根2の眼前に辿り着いた彩月の片手にはガトリング砲が付けられていた。その銃口は白羽根2の身体に付き付けられている。

 

白羽根2「それは!?」

 

彩月「神楽教官のガトリング砲や。偽物でもこの距離なら関係無いやろ!」

 

 驚愕した様子を見せた白羽根2だったが彩月は言い終わるや否や一気にガトリング砲を発射した。

 このガトリング砲は神楽燦の持つガトリング砲を一夜がコピーした物だった。

 しかしどうしても本物と同等まで威力を高めて量産する事が出来ずお蔵入りとなっていた武器を彩月が一夜に頼んで貰っていた武器だった。

 欠点としては一度、全弾発射すると次の発射まで30分も魔力を溜めなければならないと言う致命的な欠点を持っていた。

 

彩月「!!」

 

白羽根2「!!」

 

 零距離からガトリング砲を浴びた白羽根2は吹き飛ばされて行く。

 銃撃音が周囲に響き渡る中、鮮血が飛び散って行く。

 

彩月「ぐっ・・・」

 

白羽根2「うっ・・・」

 

彩月「やってくれたなあ・・・」

 

 そう語る彩月の顔面の右側には大きな切り傷が胸元まで刻まれていた。

 ガトリング砲で吹き飛ばされた際に咄嗟に白羽根2が鎖鎌で投げ切ったのだ。

 

彩月「マジで痛いで・・。痛いんや!」

 

 片手で抑えていた顔面の右側から手を放した時、白羽根2には彩月の右目が刻まれていた事が認識できた。だが白羽根2自身も全身にガトリング砲の弾丸を零距離から浴びてしまい全身から血を流し戦う余力を失っていた。

 

白羽根2「うっ・・・・・」

 

 苦悶の表情を見せる白羽根2は這ってその場から離れようとする。

 既に先程まで存在していた殺気は無い。完全に逃走しようとしていた。

 

彩月「ここまで・・・・。やられて・・・・。これで終わりと思うな」

 

 再び右目の周辺を押さえながら歩いた彩月は近くに落ちていた円月輪を手に取った。

 

彩月「逃がす訳無いやろ!」

 

 彩月は円月輪を振り下ろして白羽根2の背中を切り付けた。

 

白羽根2「がっ!?」

 

 白羽根2の背中に大きな切り傷が出来て動きを止めてしまう。

 

彩月「痛いか!?それでもウチよりは・・・。マシやろ」

 

 右目から走る痛みで既に彩月は限界だった。

 思考も既に乱れている。

 だから普段ならしないような選択をした。

 

彩月「止めは刺させて貰うで!」

 

 最後に残った渾身の力を込めて彩月は円月輪を白羽根2の背中に向けて右手で握った円月輪を振り下ろした。

 その時突然、彩月の右手に鎖鎌が巻き付いて円月輪を振り下ろそうとした腕を強引に止められた。

 驚いて周囲を見た彩月は背後から伸びて来た鎖鎌が自分の腕に巻き付いていた事に気が付いた。それは目の前に倒れている白羽根2ではなく奥の方から現れた新たな二人の白羽根の一人が伸ばした鎖鎌だった。

 

??4「そんな事してはいけないよ!」

 

??3「そんな事をしてはいけないでございます!」

 

 シンクロする声で彩月は相手がようやく天音月夜と月咲の天音姉妹だと気が付いた。

 二人は白羽根のローブを羽織り素顔を晒している。

 

彩月「なんや。天音さんか。灯花様は?」

 

??3=月夜「無事にフェントホープへ・・・!?」

 

??4「彩月ちゃん!?その怪我!?」

 

彩月「なあに。ちょっと右目切られただけや。だから・・・・・」

 

 そう言った瞬間に変身が解けて彩月はその場に倒れたしまった。

 

月夜「彩月さん!?」

 

月咲「彩月ちゃん!?」

 

 天音姉妹の声がもう彩月の耳には届かない。

 音が突然聞こえなくなり彩月の意識はそこで途切れた。

 

 




今回のエピソードは護衛役としての黄羽根を描く事が目的でした。
5・4章ではねむの護衛をするナナツメを書いたので次は灯花の護衛をする彩月を書こうと言うのが狙いでした。
つまり護衛をする彩月が書きたかったと言う事です。

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