マギアレコード 偽書e/s memorys   作:ジャックノルテ

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序文

 今回のストーリーはマギアレコード メインストーリー及びアナザーストーリー第一部の第4章と第5章の間を想定しています。
そして美国織莉子、呉キリカ、千歳ゆまの魔法少女ストーリーの後日談として構成されています。
なお各ストーリーのネタバレ描写も含みます。

追記
 マギアレコードにおいておりこ☆マギカイベントの開催が確定したので、このストーリーは全てボツにしたエピソード、リジェクトストーリー扱いとなります。
 ですからこの話における描写は本編には反映されません。
 ご了承下さい。



リジェクトストーリー集(ボツネタ)
4・5章 重要なのは話を聞く事なのだから 上


□ 見滝原市 結界内部

 

 芸術家の魔女が鎮座する結界の中。

 3人の魔法少女が芸術家の魔女を目指して突き進んでいく。

 

美樹さやか「まどか!ほむら!援護をお願い!」

 

鹿目まどか「任せといて!さやかちゃん!行くよ!ほむらちゃん!」

 

暁美ほむら「はい!私も・・・。頑張ります!」

 

 次々と使い魔を切り伏せるさやかを先頭にまどかの弓とほむらの拳銃と爆弾の援護によって3人は芸術家の魔女へ近づきつつあった。

 芸術家の魔女もそれに焦って攻撃が稚拙となりさやかはその隙を見逃さなかった。

 

さやか「今よ!」

 

まどか「うん!」

 

 まどかの弓から放たれた魔力をチャージしていた矢はそれまでと別格の威力を持って芸術家の魔女の身体にヒビを入れる。

 

さやか「そこだあ!」

 

 一気に駆け出し跳躍したさやかの持つ魔力が込められた剣によって芸術家の魔女はヒビから粉砕されて倒された。

 

 結界は崩壊してそこは人通りの余り無い鉄橋へと戻っていた。

 

ほむら「何とかなりましたね・・・」

 

まどか「うん。久しぶりに3人で魔女と戦ったしね」

 

さやか「それに余り強くない魔女で助かったわよ。マミさんは今、神浜市へ調査中だから強敵だったら手に負えないしね」

 

ほむら「神浜市での調査。大丈夫でしょうか?」

 

まどか「マミさんなら大丈夫だよ。私たちの中で一番強いんだから」

 

さやか「そうだね。でも魔女も使い魔も減り過ぎて・・・。正直、今の平和が・・・。あたしは怖いよ。魔女と戦うカンが鈍りそうで」

 

まどか「もし人手がいる時は・・・。杏子ちゃんに頼んでみるのはどうかな?」

 

さやか「え!?まどか。アンタいつの間に杏子と仲良くなってるの?」

 

まどか「仲良いって程じゃ無いけど・・・。前に少しだけ一緒に話した事があったから・・・」

 

ほむら「でも・・・。確か佐倉さんってスマホとか持ってないですよね?」

 

さやか「そうなんだよね・・・。アイツと連絡を取るのも一苦労だしね・・・。足で探した方が速いかも・・・」

 

まどか「それに確か杏子ちゃんも神浜市に行ったって聞いたよ」

 

 その時、ほむらは向かい側にある鉄橋に誰かがいた気がした。

 

ほむら「えっ?」

 

 しかし再度視線を戻すとそこには誰もいなかった。

 

まどか「ほむらちゃん?」

 

ほむら「あっ。はい。何ですか」

 

さやか「何かあったの?」

 

ほむら「いえ。別にその・・・。大丈夫です」

 

さやか「そっか。なら良いんだけど。それよりも杏子が神浜市へ行ったのってやっぱり私たちを差し置いてマミさんに会う為なのかな?」

 

まどか「マミさんは杏子ちゃんの事は前に弟子だったとしか教えてくれないしね」

 

ほむら(誰か見ていた気がするけど・・・。気のせいだよね・・・)

 

 さやかとまどかを先頭に歩き去って行くほむら。

 3人の姿が見えなくなった時、向かいの鉄橋の影に身を潜めていた制服姿の少女が姿を見せた。指にはソウルジェムがあり魔法少女なのは確かだった。

 

??1「ありえない・・・。どうして彼女が魔法少女に・・・.」

 

 呟きながら険しい表情を見せて少女はその場を去って行く。

 

??1(どうしてわたしの予知が外れたと言うの・・・。こんな事はあり得ないのに・・・)

 

 

□ 見滝原市 五郷 某所

 

 

 

部屋の中で一人の少女が私服姿でソファーに座っていた。

 

??1(どうしてわたしの予知が外れてしまったのかしら・・・。まだ彼女は魔法少女となる筈が無いのに・・・)

 

 今までにない出来事に少女は動揺しているが、強固な自制心で動揺を抑え込んでいた。

 しかし冷静さはかき乱されているとも言えた。

 

??1「だからわたしは・・・。一度自分の歩んだ道筋を振り返る必要があるわ・・・。美国織莉子が歩いた道筋を」

 

 ??1=美国織莉子は過去の自分の行動を振り返る事にした。

 

 

 

 美国織莉子は議員だった父親が汚職疑惑を苦にして自殺してしまった。

 白羽根女学院の才色兼備の生徒会長と言われた織莉子の立場は失墜して学院の恥とまで蔑まれる様になってしまった。

 周囲に疎まれながらも習慣的に学校生活を続けていた織莉子の前にある日、キュウべえが現れて魔法少女の契約を持ち掛けた。

 

 

織莉子「わたしはわたしが生きる意味を知りたい」

 

 

 織莉子はそう願いキュウべえと契約をした。

 だが・・・。織莉子の魔法が織莉子に見せたのは絶望だった。

 最悪の魔女、ワルプルギスの夜に蹂躙される見滝原市。

 そして・・・。ワルプルギスの夜を倒して出現する全てを滅ぼす最悪の魔女。

 織莉子の魔法は未来を見せる予知だった。

 予知によって織莉子は見滝原市いや。世界に迫る危機を知ってしまった。

 同時に魔法少女はいずれ魔女となると言う事を見せつけられた。

 だからこそ織莉子は、いずれ最悪の魔女となる少女、鹿目まどかを魔法少女として契約する前に殺害する事で世界を救おうとしていたのだった。

 しかし予知の魔法は大きく魔力を消耗する為、織莉子は協力者となる魔法少女の存在を求めていた。

 ふとした切っ掛けで知り合った魔法少女呉キリカに織莉子はソウルジェムの秘密を話す事で協力者とする事に成功した。

 順調に進むと思われた織莉子の計画ったが突然、キリカが精神的に不安定な様子を見せてしまう。

 周囲の話題と恐慌状態のキリカの様子から織莉子はキリカが人を殺した事を悟った。

 殺した相手が織莉子の同級生だった事は織莉子にとっても驚きだったが。

 

 

 そしてキリカは壊れてしまった。

 

 

 狂信的な愛を織莉子へと向ける事で魔女化を回避出来たのは良かったが・・・。

 

 

 そのすぐ後に風見野市から魔女を操る魔法少女、優木沙々が来た事で織莉子はキリカと共に優木沙々が溜め込んだグリーフシードを奪う為の策略を行った。

 風見野市から優木沙々を追って人見リナ率いる3人の魔法少女が見滝原市に現れた時、織莉子とキリカは優木沙々と人見リナ達を潰し合わせる事で織莉子は漁夫の利を得る事に成功した。

 人見リナは魔女化して仲間の魔法少女3人は織莉子とキリカに殺害された。

 残された優木沙々は・・・。これが織莉子とキリカの策略だったと気付いた時には既に追い詰められてどうしようもない状況だった。

 織莉子とキリカに追い詰められた優木沙々は操っていた魔女をけしかけて逃亡しようとした。

 だが突然、操っていた魔女が優木沙々を丸飲みにして織莉子とキリカの目の前から逃亡して行った。

 織莉子の予知通りに優木沙々は操っていた魔女を魔力切れによって操る事が出来なくなり食い殺されると言う末路を迎えた。

 こうして織莉子はキュウべえに知られる事無く優木沙々が風見野市に隠していたグリーフシードを奪う事に成功した。

 その過程で織莉子は千歳ゆまがキュウべえと契約して魔法少女になる様に誘導した。

 全ては鹿目まどかを殺す為の布石だった。

 見滝原市に戻った後、キリカは再び魔法少女狩りを始めるも、魔法少女狩りを調査していたベテランの魔法少女巴マミと遭遇して戦闘になってしまう。

 魔法少女としての経験差によってキリカは巴マミに敗れソウルジェムに亀裂が入ってしまう致命傷を負う筈だったが・・・。事前にその事を予知した織莉子によってキリカは致命傷を負う事無く救い出されていた。

 巴マミを殺せなかった事で全てがキュウべえに露見したと判断した織莉子とキリカは一時的に逃亡して潜伏していたが追跡は無かった。

 それもその筈だった。織莉子とキリカが潜伏していた間に魔女が突然、次々といなくなってしまったのだった。

 予知と魔女の消失でこの事を知った織莉子は深夜に公園でキュウべえに接触をした。

 

織莉子「久しぶりね。キュウべえ」

 

キュウべえ「織莉子・・・。君がキリカと組んで魔法少女狩りをしているのは、マミからの報告でもう分かっているよ。それなのに僕の前に姿を見せるなんてどういうつもりなんだい?」

 

織莉子「停戦したいのよ。魔法少女狩りはしないわ。いいえ。出来ない状況って言うのが分かったからよ」

 

キュウべえ「君も気が付いたのかい?」

 

織莉子「ええ。この近隣から魔女が次々といなくなっているわ。こんな状況で動ける訳が無いでしょう」

 

キュウべえ「僕がそんな提案に乗ると思っているのかい?」

 

織莉子「わたしもこの異変を調査するわ。わたしの魔法を使って。その情報を貴方に提供しても良いわ。それでも?」

 

キュウべえ「成程・・・。君の魔法で調査してくれるんだね?確かにその提案は僕にとっても利益になるね。君の魔法はどんな物か推測は出来ているからね」

 

織莉子「そう。なら取引成立で良いわね?」

 

キュウべえ「うん。君とキリカに対する追撃は止めさせよう。でも僕が止めたからと言って聞くとは限らないと言う事は分かっているよね?」

 

織莉子「ええ。貴方が止められない相手はわたし達が自衛するだけよ。でも・・・。今は他の魔法少女もそれどころでは無いでしょうけどね」

 

 こうして織莉子とキリカはキュウべえとの取引によって自身への追撃を停止させる事に成功した。

 と言っても実際には織莉子の言う通りに魔女が急激にいなくなった今の状況下では、誰も織莉子とキリカを追跡出来る筈が無かったのだが。

 久しぶりに自身の自宅に戻った織莉子は魔女が集まる街、神浜市に関する予知を感じ取ってキリカに調査を命令した。

 キリカは神浜市で織莉子の予知通りに巴マミと佐倉杏子と遭遇するも情報を得る事では出来ずに撤退してしまった。

 織莉子もまた千歳ゆまを再度、唆して神浜市へ置き去りにしたがこれと言った成果は無かった。

 調査の進展が無い中で起こった今回の予知のズレ。

 織莉子が内心抱いていた焦りは大きくなっていた。

 

呉キリカ「織莉子!お邪魔するよ!」

 

 織莉子のいる部屋へ協力者である呉キリカが入って来る。

 キリカは手にはケーキボックスを大切に抱えている。

 私服を着ているキリカは自身が部屋に入って来ても反応しない織莉子に驚きを見せた。

 

キリカ「どうしたんだい?何か悩み事でもあるのかい?それなら私に言っておくれよ!」

 

織莉子は今、起こっている出来事をキリカに言っても解決する事は出来ないと思ったが、相談する事で何かを得る物があるかも知れないと思い話してみる事にした。

 

織莉子「そうね。実は今日、例の少女・・・。鹿目まどかに会ったのよ」

 

キリカ「えっ!?そうなのかい?じゃあもしかして織莉子が直接殺しちゃったのかい?それはダメだよ!私が織莉子の為に殺すって決めたんだから!」

 

 キリカはそう言いながら織莉子の向かい側にあるソファーに座りながら丁寧にケーキボックスをテーブルの上に置いた。

 

織莉子「キリカ落ち着いて。殺していないわ。わたしは鹿目まどかを守る守護者が・・・。あの場所に現れると予知して行ってみたのよ。そうしたら・・・」

 

キリカ「そうしたらどうしたんだい?」

 

織莉子「おかしいのよ。わたしの見ていた予知では鹿目まどかはまだ契約をしていない筈だったわ。でも・・・。もう契約をして魔法少女になっていたのよ」

 

キリカ「えっ!?それってどういう事なんだい?」

 

 キリカも織莉子の発言に動揺していた。

 これまで織莉子の予知魔法が外れた事は無かったからだ。

 

織莉子「わたしにも分からないわ。どうして鹿目まどかがもう契約をしているのか・・・。それにもう一つ気になる事があったわ。知らない魔法少女が一人いたのだけど、わたしが見た守護者は予知で見たのと服装は同じでも様子が違っていたわ。眼鏡を掛けてまるで別人の様な様子を見せていたわ」

 

 織莉子は予知で見た光景を思い出す。

 巨大な銃を構えた長い黒髪をなびかせて左手に特徴的な盾を付けたクールな眼差しの守護者=暁美ほむらの姿。

 それと対照的に思い出す先程目撃した赤い眼鏡を掛けて弱気そうな表情を見せる特徴的な盾を左腕に付けていた眼鏡の暁美ほむらの姿。

 

キリカ「どうなっているんだい?ますます訳が分からないよ?」

 

 キリカは頭を抱えてお手上げと言う様子を見せていた。

 

織莉子「そうね。わたしにも分からないわ。どうして予知が外れてしまったのか」

 

 そう言いながら織莉子はキリカがテーブルの上に置いたケーキボックスに目を向ける。

 

織莉子「このケーキボックスの中身は予知できたのにね」

 

キリカ「え!?織莉子をびっくりさせようと持って来たのに!?」

 

織莉子「ごめんなさい。今日の事を予知していたらこのケーキボックスの事も予知してしまったのよ。確か・・・。中身はチーズケーキでしょう?」

 

キリカ「え!?」

 

 それを聞いてキリカは驚いた様子を見せた。

 

織莉子「ごめんなさい。驚かそうとしたのに先に予知してしまって」

 

キリカ「織莉子・・・。違うよ・・・」

 

織莉子「えっ?」

 

キリカ「私が買って来たのはチョコレートケーキだよ」

 

織莉子「まさか」

 

キリカ「本当だよ。ほら」

 

 そう言ってキリカがケーキボックスを開くとそこにはチョコレートケーキが二つ入っていた。

 

織莉子「どういう事・・・。わたしの予知魔法が全く機能していないわ。いいえ。機能はしているのに何か別な物を見ている・・・」

 

キリカ「織莉子・・・。何か思い当たる原因は無いのかい?魔法の事だしやっぱり何か原因があると私も思うけど・・・」

 

織莉子「原因って言っても・・・」

 

 織莉子はここ数日の事を思い出していた。

 変わった事と言えば神浜市の事を予知した事・・・。

 そしてキリカに神浜市を調査させると同時に織莉子自身も神浜市へ千歳ゆまを連れて行った事・・・。

 ここまで最近行った行動を振り返って織莉子も直ぐに気が付いた。

 

織莉子「神浜・・・。もしかして神浜市の事が原因なのかしら?」

 

キリカ「神浜が原因なのかい?確かに異常に魔女が集まっている奇妙な街だから、その可能性はあると思うよ」

 

織莉子「でも・・・。まだ神浜が原因とは言えないわね。もう少し予知と現実がどれ位のズレが起こるのか知っておきたいわ」

 

キリカ「織莉子がそう言うなら従うよ。じゃあどうするんだい?」

 

織莉子「今日は二人でこのケーキを食べましょう。せっかくキリカが買って来てくれたんだから」

 

キリカ「そうだね!そうしよう!織莉子の為に一番美味しいと評判のケーキを買ったんだから」

 

織莉子「それじゃわたしは紅茶をいれて来るわ。キリカの分はいつも通りに砂糖とジャムは入れておくわ」

 

キリカ「ありがとう。織莉子!大好きだよ!」

 

織莉子「大袈裟よ」

 

 そう言いながら照れ隠しに紅茶の準備に台所へ向かう織莉子だった。

次の日の夕方・・・。

 

自宅の客間でテレビのニュースを見ている制服姿の織莉子。

 

織莉子「やっぱり・・・。この時間に予知したのは火事の速報だった筈なのに、速報で流れて来たニュースは交通事故になってる・・・その他のニュースは予知通りなのに・・・。」

 

 織莉子は改めてやはり自分の予知魔法は機能しているが、何らかの要因で正常に予知が出来ていないと言う現実を思い知らされた。

 これまでこの予知魔法で活動方針を組み立てて来た織莉子には大きな痛手と言えた。

 

織莉子「やっぱり神浜市をもう一度、調べた方が良いわね。今度はキリカと二人で調べれば・・・」

 

キリカ「織莉子!」

 

 そこへキリカが慌ただしく客間へ入って来た。

 余程慌てていたのか普段は私服に着替えて来るのが見滝原中学の制服姿のままである。

 

キリカ「予知の方はどうだい?」

 

織莉子「やっぱり上手く機能していないわね。本当にどうしたものかしら・・・」

 

キリカ「私、もしかしたら織莉子に何が起こっているのか分かったかも知れないんだ」

 

織莉子「え!?分かったの!?」

 

キリカ「うん。だから今日は急いでここに来たんだ」

 

織莉子「じゃあキリカ。説明して頂戴」

 

キリカ「良いよ。でもその前にソファーに座らせてもらうよ」

 

 そう言ってキリカは織莉子の正面向かい側にあるソファーに座った。

 

織莉子「キリカ。教えて頂戴。わたしに何が起こっているの?」

 

キリカ「うん。その前に・・・。必要な事だから聞きたいんだけど織莉子。並行世界って分かるかな?」

 

織莉子「並行世界?確か・・・。前に映画で見たわね。わたし達の世界とは似ているけれど違う世界って所かしら」

 

キリカ「うん。その認識で間違っていないと思うよ。織莉子。単刀直入に言うね。織莉子が予知しているのは恐らくだけど・・・。別の世界の予知なんじゃないかな?」

 

織莉子「えっ?」

 

 突拍子もないキリカの発言に織莉子は驚きを隠せなかった。

 

キリカ「織莉子は昨日、私がチーズケーキを買って来ると言ったけど、私が実際に買って来たのはチョコレートケーキだったろう?あれで気が付いたんだ。織莉子の予知魔法が働いているけど内容にズレがある。つまり予知の内容が違うだけで起こる出来事の時間が予知通りなら・・・。ここじゃない別の世界を予知しているんじゃないかって」

 

 キリカの指摘は突拍子も無かったが織莉子にもその意味は理解出来た。

 予知した出来事と現実の出来事で引き起こされた差異の意味が織莉子にはようやく理解できた。

 

織莉子「言われてみればその通りかも知れないわ・・・」

 

キリカ「織莉子の役に立てたのなら嬉しいよ」

 

織莉子「でもキリカ。良く気が付いたわね。わたしには、気が付く事が出来なかったわ」

 

キリカ「それはね・・・。前に家でやったゲームに並行世界の事を夢で見るって内容があって印象的だったから覚えていたんだ。だから織莉子の予知もそうなんじゃないかって」

 

織莉子「ありがとう。キリカ。お陰でこれから何をすべきか分かったわ」

 

キリカ「何をするんだい?」

 

織莉子「神浜市を調査するべきだと言う事ね。わたしとキリカの二人で」

 

キリカ「え!?私と織莉子でかい!?でも・・・」

 

織莉子の提案にキリカは珍しく直ぐに同意をしなかった。

 

キリカ「神浜市には強い魔女が沢山いるんだ。私だけでも織莉子を守り切れるかどうか・・・」

 

織莉子「大丈夫よ。無理はしないわ。それに・・・」

 

キリカ「それに何だい?」

 

織莉子「わたしはキリカを信じているわ。必ずわたしを守ってくれると」

 

 織莉子はキリカを真っすぐに見てそう言った。

 

キリカ「織莉子・・・。そんな事を言われたんじゃ・・・。私は君を守るしか無いじゃないか」

 

織莉子「ええ。二人で神浜市へ行きましょう」

 

 この時、織莉子は無意識に神浜市へ向かって意識の方向を向けていた。

 織莉子の意識に予知魔法の映像が流れ込んで来る。

 

織莉子(えっ!?これって・・・)

 

 織莉子の脳裏に流れた予知の映像に写る町並みは、前に織莉子が千歳ゆまを置き去りにした場所の近くにある公園だった。

 そこへ暗い表情をした外人と思しき金髪で紫の瞳を持つ少女が通りかかる。

 手に出現させたソウルジェムから魔法少女だと分かるがソウルジェムは真っ黒に濁っている。

 

織莉子(あそこまでソウルジェムが穢れていたら魔女化するのは時間の問題・・・。でもそれならどうしてわたしはこんな予知を見ているの?)

 

 その時、紫の瞳少女は魔女の結界に飲み込まれて行く。

 紫の瞳少女は魔法少女に変身するが魔力の欠乏から直ぐに倒れてしまう。

そのまま様子を見ていた織莉子の眼前で紫の瞳の少女のソウルジェムから何かが飛び出したのだ。

 そこへピンク色の髪の少女と青い髪の少女が姿を現す。

 

 

織莉子(え!?)

 

 それは織莉子の予想とは異なるモノだった。

 魔女の様に見えるが織莉子には違って見えたのだ。

 何よりも紫の瞳の少女のソウルジェムが砕けずに穢れだけが何かを作り出していた。

 

織莉子(あれは一体!?)

 

キリカ「織莉子!織莉子!」

 

 キリカが織莉子の名を叫んだ時に丁度、予知は終わりを告げた。

 

キリカ「織莉子!?どうしたんだい?急にぼんやりして?」

 

織莉子「予知を見たわ・・・。神浜の」

 

キリカ「え?」

 

織莉子「丁度、意識を神浜市に向けていたから予知が発動したのかも知れないわ。わたしの予知魔法は何か特定の物や人に向けると発動する事があるから」

 

キリカ「それでどんな予知だったんだい?」

 

織莉子「少し言葉にしにくいわ。だから・・・。直接見に行った方が良いわね。二人で」

 

キリカ「えっ?二人で?」

 

織莉子「守ってくれるんでしょう?キリカ」

 

キリカ「分かっているよ。私は織莉子の為ならなんでもするよ。それでいつ神浜に行くんだい?」

 

織莉子「今からよ」

 

キリカ「今から!?」

 

 流石にキリカは驚きを隠せなかったが織莉子は直ぐに行動に移す。

 

織莉子「ええ。早速行きましょう」

 

キリカ「織莉子待って」

 

 予知を確かめる為に織莉子とキリカは神浜市へと向かった。

 

 

 

□ 神浜市内 新西区 夜

 

 

 

制服姿のまま神浜市へ来た織莉子とキリカ。

既に市内は夜の闇に覆われている。

織莉子とキリカは予知で示された公園を離れた場所から監視していた。

 

織莉子「確かこの辺りね・・・」

 

キリカ「織莉子。かなり遅い時間になったけどこれから予知が起こるのかい?」

 

 キリカの質問に対して織莉子は口に人差し指を当てた。

 

織莉子(ええ。ここからは万一の事を考えてテレパシーで会話をしましょう)

 

キリカ(うん。でも・・・。やっぱり神浜はおかしな町だよ。ここへ来るまでに魔女と戦う事になるなんて・・・)

 

織莉子(そうね。わたしも驚いたわ。予知にはそこまでの情報が無かったもの)

 

キリカ(お陰でグリーフシードは手に入ったけど、使い魔も多いし面倒な事だよ)

 

 この場所へ来るまでに織莉子とキリカは使い魔とも出会ったが目的を優先する為に使い魔の事は無視した。

 

織莉子(そろそろね・・・。キリカ。周囲に注意して。もしかしたら巴マミ達がいるかも知れないわ)

 

キリカ(そうだった。神浜市を調査しているとか言ってたね。注意するよ)

 

 キリカに周囲の警戒を促して織莉子は予知で見た場所を監視していた。

 しばらくすると・・・。

 そこへ予知で見た紫の瞳の少女が暗い表情で歩いて来た。

 

織莉子(来たわね・・・)

 

キリカ(あれ・・・。魔法少女だよね・・・)

 

 キリカは魔力で紫の瞳の少女が魔法少女だと気が付いた。

 紫の瞳の少女は暗い表情のまま公園に出現した結界に入って行く。

 表情の虚ろさから意識があったのかも疑わしい。

 

織莉子(追うわよ)

 

キリカ(分かった)

 

 織莉子とキリカは金髪の少女を追った。

 そして紫の瞳の小女が魔女の前に向かったのを見計らうと結界の壁際に隠れた。

 

織莉子(キリカ。予知では、あの子の仲間が来るようだから用心して)

 

キリカ(? 分かったよ)

 

 キリカは織莉子の意図が分からなかったが特に気にしなかった。

 やがて織莉子の予知と同じ光景が目の前に広がって行く。

 魔女の前に倒れた紫の瞳の少女のソウルジェムは真っ黒に染まり穢れが溜まっている事が一目瞭然だった。

 

キリカ(魔女化・・・。するんだよね?)

 

織莉子(始まった・・・。これから予知と同じ出来事が起こるのかしら・・・)

 

 紫の瞳の少女が魔女化するのではキリカは予想していた。

 魔女化を知っているキリカの予想は間違っていなかった。

 神浜市でなければ。

 紫の瞳の少女は突然、苦悶の叫び声を上げた。

 すると突然、紫の瞳の少女のソウルジェムに溜まっていた穢れが一つの形を形成すると紫の瞳の少女のお中から腸を模して両手にハンマーを持った魔女の様なナニカが飛び出して魔女を倒した。

 だが紫の瞳の少女は死んでいないのが魔力から二人は感じ取っていた。

 

キリカ(えっ!?魔女化しなかった!?)

 

織莉子(やはり魔女化じゃない・・・)

 

 魔女化でない現象に驚く織莉子とキリカ。

 そこへ・・・。

 

青い髪の魔法少女「あそこよ!」

 

ピンクの髪の魔法少女「待ってて!フェリシアちゃん!」

 

 紫の瞳の少女の仲間と思しき魔法少女が現れた。

 だが二人は金髪の少女のお中から出ている腸を模したモノに驚きはしていたが、落ち着いた様子を見せていた。まるで既に知っていると言う様に。

 

織莉子(あの二人・・・。この現象に余り驚かないと言う事は・・・。この現象について知っている?)

 

キリカ(何が起きているんだい・・・)

 

 紫の瞳の少女のお腹から出て来たモノが消えたと同時に結界はゆっくりと消滅した。

 ピンクの髪の魔法少女と青い髪の魔法少女は気絶した紫の瞳の少女を連れてこの場から去って行った。その様子を織莉子とキリカは建物の影から見ていたが気付かれた様子は無かった。

 

織莉子「助かったわ。キリカ」

 

キリカ「礼を言われる様な事はしていないよ。織莉子」

 

織莉子「いいえ。あなたの速度低下魔法が無かったらあの二人に気付かれていたわ」

 

キリカ「アレは一体何なんだい?あの魔法少女は魔女化する筈だったのに、しなかったんだよね?」

 

織莉子「ええ。だからわたしは予知で見たアレを調べに来たのよ」

 

キリカ「これからどうするんだい?」

 

織莉子「今日はもう遅いから帰りましょう。焦る事は無いわ。次の予知を待ちましょう」

 

キリカ「分かった。織莉子に従うよ。でも・・・」

 

織莉子「どうかしたの?」

 

キリカ「流石にこれから帰ると深夜だから親に色々と言われそうだよ」

 

織莉子「そうよね・・・。じゃあわたしの家に泊まると言うのはどうかしら?」

 

キリカ「良いのかい!?それなら親にもとやかく言われなくて済むよ!」

 

織莉子「前にも泊まって貰っているから問題無いわ」

 

キリカ「そうだったね。ありがとう!織莉子!」

 

織莉子「良いのよ。とりあえず・・・。今は見滝原へ帰りましょう。帰りの電車がある内に」

 

キリカ「確かに!神浜は見滝原からは遠いからね!」

 

織莉子「ええ。急げましょう」

 

 織莉子とキリカは駆け足で駅へと向かった。

 結果として織莉子の自宅に着いたのは深夜だったがキリカは友達の家に泊まると電話する事でお叱りを回避するのだった。

 

 

 

□ 見滝原市 美国邸 深夜 織莉子の部屋

 

 

 

織莉子は部屋の中でベッドの上で横になって寝息を立てている。

 その時、織莉子の脳裏で魔力が動き出した。

 

織莉子(これは・・・。予知魔法。つまりこれから起こる事・・・)

 

 織莉子の眼前で神浜中央駅と言う駅の看板が目に写る。

 そこで魔女の結界から4人の魔法少女が出て来るのが見えた。

 だが金髪のツインテールの魔法少女はソウルジェムを濁らせて倒れてしまい残る3人はツインテールの魔法少女をビルの路地裏へと連れ込んだ。

すると気を失ったまま濁り切ったソウルジェムから蛇の様なモノを生やすツインテールの魔法少女。

 ツインテールの魔法少女の周囲には、背の低い緑色の髪を生やした少女と年相応な薄いメイクをした金髪で赤い瞳の少女、運動が得意そうな灰色の髪の少女がその様子を驚き心配そうに見ている。

 4人の着ている制服はバラバラのデザインであり別々の学校だと言うのは分かった。

 しかし織莉子の関心はそれよりもツインテールの魔法少女に引き起こされたアレに向けられていた。

 

織莉子(この子も今日見たアレと同じ現象を起こしている・・・。一体これはなんなのかしら?)

 

 注意深く頭に流れ込んでくる予知の映像を見ながら織莉子はある事に気が付いた。

 

織莉子(あれは・・・)

 

 その4人の魔法少女の様子を離れた場所から見ている黒いローブを着る者の姿が。

 ローブの隙間から見えるその表情はこの現象に驚きはあっても慌てる事は無かった。

 織莉子は確信を抱いていた。

 この黒いローブを着た何者かがこの現象の答えを知っていると言う事に。

 

織莉子(この予知は何時の事を予知しているの?)

 

 予知の映像を更に注意深く見ていた織莉子は中央区の街中にある時計付きの電光掲示板からこれが明日の午後の事を予知している事に気が付いた。

 

織莉子「はっ!?」

 

 その瞬間に予知が終わり織莉子は思わずベッドから上半身を起こしていた。

 

織莉子「明日・・・。神浜市の中央区・・・」

 

 次の日の行動指針を決めた織莉子は今度こそ眠りに付くのだった。

 




次回は5月18日に公開します
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