マギアレコード 偽書e/s memorys   作:ジャックノルテ

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第3話 そこで全てが明らかになるでしょう

□ 神浜市内 ホテルフェントホープ 一週間前

 

璃阿「ここは・・・?」

 

 瑞光璃阿がベッドから上半身だけを起こして周囲を見つめると、そこは見覚えの無い場所だった。

 ベッドは三つ並んでおり、その内の一つに璃阿は寝ていた。

 残りのベッド2つにも二人の少女が同じ様に体を起こしていた。

 寝ていた二人に見覚えはあったが、直ぐに思い出せなかった。

 

優里「ここはぁ・・・。何処ですかぁ?それにあなたはぁ・・・。瑞光」

 

璃阿「璃阿。璃阿は瑞光璃阿です。この魔力の反応・・・。どうやら戦闘が行われているみたいです」

 

スミレ「でしょうね。揣摩臆測(しまおくそく)ですが、私めとあなた達は今の所、敵対関係では無いのでしょう?」

 

璃阿「はい。敵対はしてません。思い出せる範囲では」

 

優里「そうですねぇ。ここが何処なのか分かるまではぁ休戦で良いんじゃないですかぁ?」

 

 3人はお互いを見て頷き部屋を出た。

 部屋を出ると洋風の廊下が続いていたのだが、所々に火を帯びて痛んでいた。

 そこには黒いローブを纏った魔法少女=黒羽根が2・3人倒れていたのが3人の視界に入った。

 倒れている黒羽根は気絶しているだけで死んではいない様子だった。

 

優里「何ですかぁ?このダサいローブはぁ?」

 

璃阿「統一された衣装。つまり何らかの魔法少女組織・・・」

 

 璃阿は自身も魔法少女組織を率いていた経験からそう結論付けた。

 

スミレ「では、私め達も幻惑変装致しますか?」

 

 スミレの視線の先には黒羽根のローブが何着か落ちていたが火で燃えていた。

 

璃阿「着ましょう。もし敵だった場合、着ていれば誤魔化す事が出来ます」

 

 璃阿の提案を受けて3人は火の付いていないローブを身に纏った。

 3人が廊下を道なりに進むと踊り場に出た。

 その踊り場から続く階段の下には同じローブを着た黒羽根達が集まっていた。

 怪しまれない様に3人は、目配せすると踊り場から下に降りた。

 周囲にいる黒羽根達は小さな声で囁きあっていたが、耳の良い璃阿には、幾つか単語が耳に入って来た。

 

璃阿(集まる事。反逆者。この場で待機。エントランス。もう少ししたら新しい指示。マギウス。恐らくは反逆者が出たからこのエントランスで待機して新しい指示を待つ。マギウスと言うのが何だか分からないからこれが妥当の推測・・・)

 

 周囲の様子を伺う璃阿達だったがその時、エントランスの上に白いローブを着た白羽根が姿を見せて言葉を叫ぶと黒羽根は皆、その言葉に耳を傾けていた。

 

白羽根1「みんな落ち着け!上の階にいる反逆者はマギウスが討伐した」

 

 黒羽根達が白羽根の言葉に耳を傾けるのを聞いているのを見た璃阿は白羽根がリーダー、もしくは中間管理職と言った立ち位置では無いかと璃阿には思えた。

 

白羽根1「だが他に反逆者がいないとも限らない。念の為この場にいる全員の魔力をみふゆ様にチェックしてもらう。みふゆ様はウソを見抜く事が出来るとの事で、もう暫くしたら到着する」

 

璃阿(嘘を見抜ける?流石に・・・)

 

 璃阿が他の二人を見るとスミレは思案している様子を見せていた。

 伊良草優里はローブの下から武器を出現させているのが璃阿には見えた。

 

璃阿(!?ここで戦うつもり?)

 

黒羽根2「待ってください!」

 

黒羽根1「待って・・・」

 

 周囲の沈黙を破って響いた声のする方を見ると黒羽根1とローブを着ていない黒羽根2がその場に姿を見せた。

 

白羽根1「あなた!?どうしてローブを着ていないの?まさか・・・」

 

 声色から驚きの感情を読み取った璃阿。

 

璃阿(璃阿達以外にも部外者がいると言うの・・・)

 

黒羽根1「違う・・・。この子のローブは取られた・・・」

 

黒羽根2「はい。あそこにいる背の高い黒羽根に取られました!」

 

 黒羽根2の指差した方角には異様に背の高い黒羽根の姿が見えた。

 

璃阿(目立つあの背の高さ・・・。あれが部外者)

 

 璃阿の思考に答える様に尋問を開始する白羽根。

 

白羽根1「確かにあんな背の高い黒羽根はいない筈・・・。あなた、そこを動かないで!?」

 

綾女「バレたなら仕方ないわね」

 

 叫んだと同時にローブのフードを取り外した背の高い黒羽根の素顔は、筒地綾女の顔だった。

 

璃阿(筒地!?綾女!?)

 

優里(あの女!?)

 

スミレ(あれは・・・。綾女さん?不可思議な事もありますね・・・)

 

3人がそれぞれそう思考した時、綾女は手に魔法の種を出すと地面に叩き付けたと同時に周囲に煙が充満して視界を奪ってしまった。

 

白羽根1「しまった!?誰か、ヤツを押さえろ!?」

 

 慌てる白羽根の声が響く中、璃阿達も行動を起こそうとした時、

 

璃阿(璃阿達も!でもどすれば!?)

 

 綾女の起こした煙が充満する中では、会話で伝える事が出来ない。

 更に下手にテレパシーで伝えれば周囲の黒羽根に璃阿達の事がバレてしまう。

 まだこの組織が敵か味方か分からない状況では望ましく無かった。

 その時、璃阿と優里の手を誰かが握って来た。

 

スミレ(私め達も後続追跡、致しましょう。私めは、逃亡した人を知っています)

 

 スミレが璃阿と優里の手を握って有線テレパシーを送って来た。

 相手の身体を握って直接、絞って送ったテレパシーは周囲にいる他の魔法少女やキュウべえにも聞こえる事が無いテレパシーの裏技とも言える技術だった。

 

璃阿(追いまっしょう。手掛かりやも知れまぜん。こほん。ここにいる全員が知り合いなのが偶然とは思えません)

 

 スミレを通して璃阿と優里は筒地綾女と言う少女が全員共通の出会った存在だと悟っていた。

 

優里(ですよねぇ?おかしいじゃないですかぁ?あの女がアタクシ達に何かしたんじゃないですかぁ?)

 

 怒りを隠さない優里に対して困惑する璃阿、冷静なスミレ。

 バラバラな思考をした3人だったが、綾女を追うと言う事で意見は一致した。

 綾女を追って、白羽根が率いる他の黒羽根と共にエントランスを出た3人は、そこで初めて自分達のいた場所の全貌を見た。

 洋館の様な外観を持つホテルフェントホープを。

 

璃阿(これは・・・。魔力で作られている?)

 

 魔力で作られたと思しき巨大な建物に驚く璃阿だったが、白羽根の声で直ぐに逃亡する綾女に視線を戻した。

 

白羽根1「逃がすな!?」

 

 逃亡する綾女は森の中へ進んで行き、それを追う白羽根、黒羽根に混ざる璃阿達3人。

 森の中を進んで行く内に境目の様な場所を抜けて結界から現実世界に戻った様に璃阿は敏感に感じ取った。

 

璃阿(結界の位置は覚えたけど・・・。ここからどうすべか・・・)

 

 この集団の協力をして綾女を捕らえるべきか、それとも土壇場で綾女に協力して逃亡するか璃阿は悩んでいた。

 綾女とは、敵対はしてないが、関わりたくない相手だと言う事は確かだからだ。

 関わりたく無いが、璃阿、優里、スミレの3人が綾女と知り合いなのが偶然とは思えなかった。

 この事態の手掛かりとも言える綾女の事を失う訳には行かないのも確かだった。

 

白羽根1「諦めろ!」

 

 川沿いで白羽根が叫んだ時、追い付かれそうになった綾女は迷う事無く川へ飛び込んだ。

 

白羽根1「なっ!?」

 

 驚く白羽根だったが既に後の祭りだった。

 川の流れは速く深さもある。

 

黒羽根「追いますか?」

 

白羽根1「いや・・・。これでは無理だろう。戻ってマギウスに指示を仰ごう」

 

黒羽根「はい」

 

 白羽根と黒羽根が追跡を断念して撤退していくのを見て璃阿、優里、スミレの3人は目配せをすると他の羽に続いて最後尾に位置して付いて行った。

 そしてホテルフェントホープの結界に入ろうとした時、最後尾に意図的に位置していた3人は再度目配せすると示し合わせた通りに結界には入らなかった。

 

璃阿「これで暫く璃阿達に気が付かない筈。これからの事を決めましょう」

 

 結界から距離を取りながら話す璃阿。

 

優里「そうですねぇ。暫くはぁこの近辺に潜伏した方がよろしいんじゃないんですかぁ?どうせ綾女さんに逃げられて手掛かりもないんですしぃ」

 

 不満を隠さない優里の発言に璃阿は平静を装う事にした。

 

スミレ「意見賛成致します。それから意見具申も致しましょう」

 

璃阿「どんな意見が?」

 

スミレ「私めもこの近辺潜伏するのは賛成です。何故なら綾女さんは高い確率でこの結界内にある洋館に戻って来るでしょうから」

 

璃阿「何故そう言い切れるのですか?」

 

優里「朱奈とか言うチビ子がいないからでしょうぅ?」

 

スミレ「言い方は杜撰言行(ずさんげんこう)ですが、その通りです。綾女さんが朱奈さんを連れていないのなら、幾つか考えられる事があります。まずこの場合、朱奈さんは既に他の場所に待機させていて綾女さんはここに潜入に来た場合。この場合、綾女さんはここに戻って来ません」

 

優里「じゃあぁどうするんですかぁ?それじゃあぁここで待っていても意味が無いでしょうぅ?」

 

スミレ「焦って速攻結論しても意味はありません。もう一つは、朱奈さんがいないから、あの洋館へ探しに来た、もしくは綾女さんも私め達と同じ状況では無いかと」

 

璃阿「づまりい。こほん。筒地綾女も何が起きているのか分かっていないと?」

 

スミレ「その可能性は高いかと。顔を見た時、状況困惑している様子を見せていました。何よりも強い不安が表情から見えました。朱奈さんと離れた時に見せる不安が」

 

璃阿(そげな事が分かるなんで・・・。敵に回しちゃいげん・・・)

 

優里「それならぁ、暫くここで待ち伏せすると言う事で良いんでしょうぅ?手掛かりはほとんど無いんだからぁ。最悪、洋館にいる連中から力ずくで聞き出せば良いんでしょうぅ?」

 

璃阿「そうですね。璃阿も異存はありません。あなたはどうですか?」

 

スミレ「私めも異存意見はありません。今はここで綾女さんが来るのを待ちつつ、機会を伺ってあの黒いローブを着た人たちから情報収集するのがよろしいかと」

 

 的確なスミレの意見に3人の目的は一致した。

 

優里「ならぁ改めて名前を告げましょうかぁ?アタクシは伊良草優里」

 

璃阿「璃阿は瑞光璃阿。協力を感謝します」

 

スミレ「私めは雨津木スミレと申し上げます。暗中模索なこの状況を悪戦苦闘しながら乗り越えましょう」

 

 こうして3人は一応の同盟関係を結ぶ事になった。

□ 神浜市内 ホテルフェントホープ近辺 結界前

 

ホテルフェントホープ結界手前にいる綾女、優里、スミレ、璃阿に身柄を抑えられた黒羽根5。

 

璃阿「璃阿達は、そうした経緯を経てここで筒地綾女さんを待っていたのです」

 

綾女「なるほど・・・。私とは別の部屋にあなた達もいたと言う事ね。流石に気が付かなかったわ。私も脱出を優先していたから」

 

優里「じゃあやっぱり朱奈さんはぁホテルフェントホープにいるんですかぁ?」

 

綾女「ホテルフェントホープ?」

 

スミレ「マギウスの翼が集う拠点名称です。私め達はこの近辺潜伏しながら黒いローブを着た黒羽根達に新人を装って接触して情報を集めていましたから」

 

璃阿「ですから既にマギウスの翼が筒地綾女さんを待ち伏せしている事も知っています」

 

綾女「私を待ち伏せ?」

 

璃阿「はい。どうやら向こうも戻って来る事を予想していた様ですね」

 

綾女「・・・。それでも行くしか無いわ。手掛かりはホテルフェントホープにしか無いんだから」

 

優里「さてぇ。じゃあ突入と行きましょうかぁ?」

 

 優里がローブを脱いでソウルジェム内部にローブを収めると武器である怪物の彫られた剣、カスターネを出現させた。

 それを見て綾女達もローブを脱ぎ、ソウルジェム内部に収めた。

 

璃阿「さて・・・。あなたの事ですが」

 

 璃阿は、それまで押さえつけていた黒羽根5に話しかけた。

 

黒羽根5「あ・・・」

 

黒羽根5(これは・・・。もうスリルどころじゃ・・・)

 

璃阿「ではあなたは解放しましょう」

 

黒羽根5「えっ?」

 

璃阿「先程、璃阿達が倒した黒羽根達を助けに行って下さい。そっして下さんならあ、あなたには何もしやせんからあ。こほん。お仲間を助けるのも仕事の内でしょう?」

 

黒羽根5「わっわかりました・・・」

 

 璃阿の言葉を聞いて黒羽根5は直ぐに元来た道を戻って行った。

 

優里「良いんですかぁ?解放してしまってぇ」

 

璃阿「どおせ待ち伏せされてんなら。こほん。璃阿達が突入したと同時に退路が断たれるでしょう。それなら邪魔にならない様にここで解放しておいた方が良いでしょう。どうせ既にバレていると筈ですし」

 

スミレ「意見賛成致します。それでは、私め達も難攻不落なフェントホープへ行きましょうか?」

 

綾女「ええ。もう準備は済んでいるわ」

 

 綾女の言葉を聞いて意を決した4人はフェントホープの結界へと入り込んだ。

 

綾女「ところであなた達、魔法は使えるの?私は正直に言って普段の半分が限界よ」

 

璃阿「奇遇、と言うよりも璃阿達と同じ状態なんですね。璃阿達も半分と言った所ですね」

 

綾女(半分の魔力で何処まで戦えるのか・・・)

 

綾女「記憶はどうなの?」

 

優里「そうですねぇ。アタクシは綾女さんと戦ってからありませんねぇ」

 

璃阿「璃阿は、ワルプルギスの夜との戦う直前に途切れています」

 

スミレ「私めは・・・。数ヵ月前から途切れて現状状態と言った所でしょうか」

 

綾女「その辺りの記憶・・・。私も良く思い出せない・・・。私もやはり記憶を操作されているみたいね・・・」

 

 綾女は実際には、3人の最後を思い出していたが意図的に語らなかった。

 

綾女(この3人の記憶・・・。まさか・・・)

 

心当たりを抱いた綾女。

その時、森林の中の道を抜けてホテルフェントホープが見えて来た時、先を歩いていた璃阿が足を止めて他に身振りで止まる様に促した。

 

璃阿「やはり既に待ち伏せられてますね」

 

優里「どうしますぅ?正面突破しか無いでしょうけどぉ?」

 

 優里は武器を構え今にも走り出しそうだった。

 

スミレ「それでしたら私めが誘導標的、囮となりましょう」

 

 スミレの提案に周囲は驚いた。

 

綾女「それは・・・。確かに雨津木さんなら出来るでしょうけど、本当に良いの?」

 

スミレ「はい。私めは、私めにされた事に余り意識関心が向きません。だからこそ私めが誘導標的となり縦横無尽に動けばフェントホープへ入る隙が生じる筈です」

 

璃阿「出来るってんでねら、こほん。出来るのなら正直、お願いしたいです」

 

優里「やってくれるならぁ、締め上げた相手から色々、聞いときますよぉ」

 

 話は付いた。と判断したスミレは頷き一人で待ち伏せされた地点へ向かった。

 一人で歩いて行くスミレ。

 その先には数名の黒羽根と白羽根が周囲を警戒している様子を見せていた。

 

黒羽根9「あっ!あれを見て下さい!」

 

 黒羽根9の指差す方向を注視する周囲の羽。

 

白羽根2「あれは!?逃亡者の一人!?よし。全員で捕縛しろ!手加減はしなくて良い!!」

 

 スミレの元へ殺到する黒羽根達。

 コートの袖から次々と鎖鎌を出して次々とスミレへ放った。

 

スミレ「万物の全ては、根源同一にして正邪一体」

 

 呟くと同時にスミレは全ての魔力を足に集中する事で、その場から跳躍すると同時に黒羽根達の隙間を飛び背後に立った。

 混乱する黒羽根の一人を魔力の一転集中した拳で殴り倒すと意図的に声を出した。

 

スミレ「ふふ。懐古趣味が出てしまいましたね。こんな劣勢戦闘は、とても久しぶりですよ。手加減は、致しません」

 

 困惑する黒羽根達の様子を見て白羽根2も鎖鎌をスミレに向かって鎖を伸ばし投げて来たが、スミレが片手をその方向へ向けたと同時に、スミレに向かっていた鎖鎌はスミレから逸れてしまった。

 

白羽根2「バカな!?」

 

スミレ(流転認識。瞬間使用の魔力でも4割あれば敵の攻撃を逸らせますか。これだけ目立てば綾女さん達は)

 

 考えながらスミレは次々と黒羽根達を殴り倒して行く。

 スミレの魔法、流転認識は周囲に存在する量子の流れを魔力によって強引に認識して攻撃で生じた量子の流れに対して僅かな点を付く事で流れを変える魔法と言える。

 勿論この様な魔法はハッキリ言ってしまえばスミレには本来使える筈が無かった。

 なのにこの様な魔法をスミレが使えるのは自身の限界を常に超えようと研鑽している証とも言えた。

 最も流転認識と言えども相手の攻撃の威力が強すぎれば反らせない事もあるのだが、スミレはその弱点を認識した上でこの魔法を使っていた。

 だからこそ雨津木スミレは黒羽根以上の強さを持っていたのだ。

 

白羽根2「くっ。こんなのが相手なんて・・・。これじゃあ我々だけじゃあ・・・」

 

???「ハア。これ以上は、もういいカラ」

 

 突然、一人の少女が白羽根の横に歩いてきた。

 

白羽根2「あなたは!?」

 

???「ここからは、みふゆに頼まれたから代わりにアリナが戦うから下がってヨネ」

 

白羽根2「分かりました・・・」

 

 白羽根2がテレパシーを送ると黒羽根達はスミレとの戦いを止めて直ぐに撤収した。

 

スミレ(あらあら。勝ち目が無いと考えて迅速撤退ですか。もう少し引きつけたいのですが・・・)

 

 その時、スミレに対して無数の緑色をしたキューブが次々と撃ち込まれて来た。

 驚きながらも咄嗟に交わしたスミレが攻撃された方向を見ると、そこには緑色の髪を生やし帽子を被った魔法少女がスミレを見ていた。

 

???=アリナ・グレイ「アリナの攻撃も当たらないなんてアナタ、面白い相手ヨネ」

 

スミレ(新手強敵と言った所ですか・・・。でも・・・。強い相手がこちらに集中集結してくれるのなら好都合。綾女さん達の侵入する手助けになる筈・・・)

 

アリナ「アリナが相手をしてあげるんだから感謝して欲しいんですケド!」

 

 次々と撃たれる緑色のキューブをスミレは交わし避けられない物だけは反らす事で対処した。

 

アリナ「チッ。これで止めなんですケド!」

 

 アリナは撃ったキューブを次々とスミレの周囲に展開させスミレを完全に包囲した。

 

スミレ(完全包囲・・・。脱出出来ないなら一点に撃たせれば・・・)

 

アリナ「いくら攻撃を反らせても全方位から一度に攻撃したら一溜りもないでしょ?アハハハハ」

 

 勝ち誇ったアリナは全方位から一度にスミレに攻撃を仕掛けた。

 スミレの姿が攻撃の起こした煙の中に消えた事でアリナは勝利を確信していた。

 

アリナ「もしこれで生きているなら・・・。魔女の餌にすれば良いヨネ?アッハハハハ」

 

 高笑いするアリナがスミレのいた煙の残る方向へ近づいて行く。

 そこには倒れたスミレの姿が見えた。

 

アリナ「ジーニアスアーティストであるアリナの作り出す芸術の礎になれたんだから感謝してヨネ?魔法少女は魔女の餌として最適なんだカラ」

 

 アリナが拘束の為に固有魔法のキューブを使用しようとした瞬間、倒れていたスミレが瞬時に起き上がるとアリナとの距離を一気に詰め二人の顔と顔がぶつかる寸前となった。

 

アリナ「なっ!?気絶した振りだったワケ」

 

 アリナの質問に答える事無くスミレはアリナの頬を一発ビンタした。

 なんの変哲もない、ただのビンタ。

 それがその時、スミレに出来る瞬間的な反撃だった。

 

アリナ「!?アナタ・・・。今、アリナに何をしたワケ!!」

 

 頬をビンタされたアリナは、初め何をされたか分からなかったが、痛みと共に何をされたのか理解したと同時に怒りに任せて手の平に出現させたキューブで0距離から次々とスミレに撃ち込んだ。

 だがスミレは撃ち込まれた攻撃の勢いにまるで塵の様に舞い流れる事でアリナから距離を取った。

 スミレが無事だったのはアリナの撃った攻撃を自身が動かない事で一点に集中させ着弾する寸前に伏せた為だった。

 

スミレ「流水風雲。あなたの攻撃の持つ力を利用して距離を取らせて貰いました。それにしても・・・。私めを魔女の餌にするとは、どういう事でしょうか?」

 

アリナ「What?アナタに聞かせてアリナに何の意味がアルの?」

 

スミレ「魔女に餌を与えてグリーフシードの大量生成でもしているのですか?」

 

アリナ「アッハハハハ。グリーフシード?そんなの、この神浜にいれば必要が無いヨネ?」

 

スミレ「なら、大量殺人が目的ですか?」

 

アリナ「魔女を飼育している事が何だって言うの?アリナは別にアナタとの問答なんてどうでも良いから」

 

スミレ「自身意思で危険極まりない物を育てる・・・。私めの話も、と言うより人の話を聞こうともしない。それに芸術や天才と言ってましたね・・・。そう言う事ですか」

 

アリナ「アナタ・・・。ナニが言いたいワケ?」

 

 何かを悟った様なスミレの発言にアリナは苛立ちを見せていた。

 

スミレ「つまり・・・。自分勝手で正常判断の出来ない狂気の精神の持ち主と言う事ですか。あなたは、以前に生命断頭。自殺をしようとして見事な失敗をしたのでは無いのですか?」

 

アリナ「!?」

 

 自らの過去を言い当てられて驚くアリナ。

 

スミレ(推理推測と当てずっぽうでも意外に言い当てられるモノですね)

 

 内心の考えを完璧なポーカーフェイスで隠しスミレは会話を続ける。

 相手の注意を引きつけると言う点では最適な手段だからだ。

 

スミレ「自殺を成功させる事が出来なかった人は、再度、自殺する事が怖くなって一人で死ぬのが怖いから誰でも良いから道連れにしようと考える傾向が強いそうですよ。特に、天才を自称する様な自分勝手な人間なら尚更」

 

アリナ「黙ってヨネ?」

 

スミレ「魔女を育てているとも言ってましたね?随分と入念な自殺の準備ですね。天才を自称する芸術家は自分勝手。自殺する人間も自分勝手に命を捨てる。身勝手と言う面で同じでしょう?あなたは銃を購入して銃を乱射して多くの人を殺害して自殺した身勝手な人間と大差ないですよ」

 

アリナ「黙れって、言ってるヨネ?」

 

スミレ「そうですね。喋り過ぎました。自殺失敗した狂気の天才芸術家気取りが珍しくて。見世物に口を引かれたと言う所、ですか」

 

アリナ「もう良いからアナタは死んでヨネ!!」

 

 スミレの安い挑発に乗ってアリナは全力での攻撃を仕掛けようとしていた。

 

スミレ(これで・・・。綾女さん達は潜入成功する確率が上がった筈・・・)

□ 神浜市内 ホテルフェントホープ近辺 結界内

 

璃阿「行きましょう。敵はスミレさんに集中し始めました」

 

 璃阿の言葉を聞いて綾女と優里は頷き、先導する璃阿に続いた。

 フェントホープの周囲にいた黒羽根達は次々とスミレの元へ向かって行く。

 

綾女(おかしい。いくら雨津木さんが暴れていても私達に気が付かないもの?)

 

 その時、先頭を走っていた璃阿が足を止めたので、綾女と優里も止まった。

 

優里「どうしたんですかぁ?まだフェントホープの手前でしょぉ?」

 

璃阿「敵が真っすぐに近付いてきます」

 

 疑問を抱いた優里に璃阿が答えたと同時に3人の周囲を霧が包み込んだ。

 

綾女「この霧・・・」

 

みふゆ「本当に・・・。戻って来たのですね」

 

 霧に包まれて姿を現したのは、梓みふゆだった。

 

綾女「梓みふゆ・・・」

 

優里「どうやら幹部ってヤツ見たいですねぇ?」

 

璃阿「あた!?璃阿たちの記憶になんかしただか!?こほん。璃阿達に何をしたのか白状して貰いますよ」

 

みふゆ「戦うつもりはありません。生憎ワタシは、あなた達が何をされたのかは、正確には知りません。ですが、知っている人間からあなた達をホテルフェントホープまでお連れする様に依頼を受けました」

 

綾女 優里 璃阿「!?」

 

みふゆ「知りたいのなら付いて来て下さい。そこで全てが明らかになるでしょう」

 

 背を向けてホテルフェントホープの方へ向かうみふゆ。

 それを見た綾女はそれに続いた。

 

璃阿「付いて行くつもりですか?」

 

綾女「どうせ待ち伏せされているなら付いて行っても同じでしょう」

 

優里「ですよねぇ」

 

 綾女達3人は、そのままみふゆの後に続いてホテルフェントホープの入り口に辿り着いた。

 みふゆは綾女達3人が付いて来た事を確認すると、ホテルフェントホープの正面玄関の扉を開き中に入った。

 みふゆに続いて綾女達3人が中に入ると同時に扉は自動で閉まった。

 

綾女「予想通り」

 

璃阿「完全に包囲されてます」

 

優里「さあてぇ、切り刻みますかぁ?」

 

 




あとがき解説

黒羽根5は七瀬ゆきかを想定しています。

正直な所、今回の話は、嫌いな人は、嫌いな内容だと思います。
完全な悪口大会みたいな内容なので。
次回は、この物語における確信を書きたいと思います。
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