マギアレコード 偽書e/s memorys 作:ジャックノルテ
8・5章 まだ君は僕と戦うつもりなのかい?上
今、神浜市ではマギウスの翼に属する魔法少女と属さない魔法少女達の戦いが始まっていた。
市内全域で行われる魔法少女同士の戦い。
タイミング良く市内各所に出現する魔女。
神浜市に近付くワルプルギスの夜。
後に神浜決戦と言われる戦いが始まっていた。
□ 神浜市内 ホテルフェントホープ 会議室
そんな時、ホテルフェントホープの会議室において魔法少女姿で厳しい表情を見せる柊ねむ、里美灯花とアリナ・グレイ。
その視線の先には制服姿で虚ろな瞳をしている菖蒲彩月がいる。
彩月「・・・・・・・・・」
ねむ「これでも・・・。まだ君は僕と戦うつもりなのかい?」
虚ろな目をした彩月の足元には借り物だったソウルジェムが転がっている。
彩月「・・・・・・・・・」
虚ろな目をした彩月は黙ったまま右手をねむの方へ伸ばす。
ねむ「!! それは!?」
驚愕のねむに見せつける様に輝きを放つ右手を掲げる彩月。
□ 宿北 廃工場周辺 数日前
宿北においてマギウスの翼と謎の人型魔女、裏切りの羽根との激闘から一夜明けた次の日。廃工場の周辺を探る二人の少女がいた。
神楽燦と遊狩ミユリである。
神楽教官「やっぱり見つからないわね・・・」
ミユリ「ですです・・・・・」
制服姿の神楽教官とミユリは学校帰りに廃工場周辺を探っていた。
廃工場周辺には多くの警察官や解体業者等が出入りしていた。
一夜で廃工場周辺がまるで爆発でも起きた様に周囲の建物が倒壊したりした事を不審に思った警察が捜査していたのだ。
ニュースにもなったので神楽教官も目にしていた。
原因不明の記憶喪失と重軽傷者が数名いた事も世間の注目を浴びる要因となっていた。
神楽教官「菖蒲は一体何処に行ったのかしら・・・」
ミユリ「燦様に心配させるなんて・・・。菖蒲は本当に面倒な人です」
神楽教官「ミユリ」
ミユリ「あっ!? 燦様!?失礼しました!?」
神楽教官「別に私は菖蒲の事なんて心配して無いわよ」
ミユリ「えっ!?そうなんですか?そうなんですか?」
神楽教官「いない方が静かなのは確かね。菖蒲は何をするか分からない。ねむ様直属の実験台だからマギウスでも好き勝手やっている訳だし正直に言って面倒な相手なのは確かね」
ミユリ「まあ・・・。そうかも知れませんです・・・」
神楽教官「と言っても菖蒲を探すのは作戦に参加した者として責任だしそこに文句は無いわ。それに・・・」
ミユリ「それに?」
神楽教官「菖蒲の事を一番心配しているのは越馬でしょ」
ミユリ「そう言えば・・・。越馬は」
神楽教官「部屋から出て来ないらしいわね。まあ・・・。ねむ様があんな冷酷な一面を見せたのが効いたんでしょう」
ミユリ「ミユは意識が飛んでいたけど・・・。話を聞く限り仕方なかったんですよね?」
神楽教官「ええ。仕方なかったわ。元々の作戦でも菖蒲や七部の脱出が間に合わなかったとしても巴さんに撃って貰うのを承知の上で突入させたんだから」
ミユリ「・・・・・。菖蒲は何処にいるんでしょう?」
神楽教官「何処なのかしらね・・・・・。私が聞きたいくらいね。警察も多いから探索はここまでにしましょう」
二人は一時間程で宿北での探索を終えると直ぐにフェントホープへと向かった。
そしてねむの私室で報告を行った。
椅子に座るねむの脇には黄羽根ローブに身を包んだナナツメが警護していた。
フェントホープなので神楽教官とミユリも白羽根と黒羽根のローブを纏っていたがフードの方はねむの要望で被っておらず素顔で報告を行っていた。
神楽教官「宿北での探索は警官が多いので人目に付かない様に一時間で切り上げました」
ねむ「うん。構わないよ。警官に職務質問されたら君達も困るだろうからね」
神楽教官「はい・・・・・。ねむ様。質問があるのですが・・・・・」
ねむ「なんだい?」
神楽教官「菖蒲は生きているのでしょうか?」
ねむ「うん・・・・・。今から話す事は他言無用にして欲しいんだけど大丈夫かい?」
神楽教官「はい」
ミユリ「ハイです」
ナナツメ「・・・・・・・」
ナナツメは頷いた。
ねむ「彩月は死んではいないよ」
ミユリ「えっ!?」
神楽教官「・・・・・・。やはりそうですか」
ねむ「教官は気付いていたんだね。と言っても僕が彩月に施した魔法が解けていないから生きているのは確かだよ。何処にいるのか分からないけどね。もしかしたら隠れていて僕達を脅かそうとしているのかな?」
神楽教官「もしそうだったら捕らえて地獄の特訓をさせますけど良いですね?」
ねむ「うん。良いと思うよ。もし彩月がふざけて隠れていた場合はね。ところで教官。君と遊狩君の休暇は了承するよ。問題は無いからね」
神楽教官「ありがとうございます」
神楽教官(これでミユリと火祭りの準備が問題無く出来るわね)
ねむ「ただ一つ頼みがあるんだけど良いかな?」
神楽教官「なんでしょう?」
神楽教官(ねむ様が頼みなんて珍しい・・・・・)
ねむ「君達が休暇中に一夜と護衛の黒羽根の事を一日だけ預かって貰えるかい?」
神楽教官「えっ?」
ミユリ「えっ?」
神楽教官とミユリは同時に驚きを見せていた。
ねむ「今度フェントホープを全面的に改良しようと思うからね。その間は一時的に立ち入り禁止にしたいから一夜を信頼できる君に預かって欲しいんだ」
神楽教官「そう言う事ですか・・・・・。分かりました。大丈夫です」
ねむ「一夜の事は臨時の護衛をしている黒羽根に連れて行かせるから頼むよ」
神楽教官「はい」
ねむ「行く時間が決まったら僕の方から連絡するよ」
神楽教官「準備の方を進めて置きます」
ねむ「きっと一夜は・・・・。いま、僕の顔なんて見たくないだろうしね」
神楽教官「!?」
ミユリ「!?」
その時、ねむの表情が少しだけ曇った様に神楽教官とミユリには見えた。
神楽教官(見てはいけないモノを見たかも知れない)
ミユリ(今見たモノが信じられないですう)
ねむ「じゃあ話は終わったから帰ってもいいよ」
神楽教官「分かりました。では一夜さんの事はお待ちしています。ミユリ。行くわよ」
ミユリ「はいです!」
神楽教官とミユリはローブのフードを被るとねむの部屋を出て行った。
廊下を歩く二人。
神楽教官「ミユリ。どう思う?」
ミユリ「何をですか?」
神楽教官「どうしてマギウスが私達の休暇を許可したのかよ。これからマギウスが最後の計画を進めようとしている時にベテランである私とミユリの休暇を許可したのかと言う事よ。普通に考えればあり得ないわ」
ミユリ「言われてみれば・・・。そうです!」
神楽教官「勿論、宿北での戦いの功績もあるかも知れないわ。もしかしたら・・・・・。私がいなくても問題が起こり得ない状況と言う事かしら」
ミユリ「ミユには難しすぎて・・・・・。わからないですう・・・」
神楽教官「そうね。これは私の想像に過ぎないわ。だからこそ・・・・・。今は火祭りの準備に集中しましょう」
ミユリ「ハイ・・・です」
神楽教官とミユリは宝崎への帰路へ着いた。
□ ホテルフェントホープ ねむの部屋 数日前
ねむの部屋で神楽教官とミユリが出て行った後、ねむは暫く椅子に座っていた。
傍らには相変わらずナナツメが控えている。
ねむ「ねえナナツメ。君はいま一夜がどうしていると思う?」
ナナツメ「・・・・・・・。部屋にいるかと」
ねむ「うん。そうだろうね。でも・・・・・きっとまだ布団を被っているんだろうね」
ナナツメ「起こしますか?」
ねむ「ううん。しばらくそのままにしておこう。幸い地下倉庫は護衛の黒羽根が代わりにみているから大丈夫だろうし・・・・。そろそろ計画のゴールが近いからね。僕らもやれる事をやらないとね」
そう言いながら椅子から立ち上がるねむ。
ねむ「だからまずは灯花から頼まれている事を済ませようか」
ナナツメ「分かりました」
二人は部屋を出ると事を済ませる為に歩を進めた。
□ 神浜市内 ホテルフェントホープ 一夜の部屋の前 数日前
一夜の部屋のドアの前に観鳥さんと郁美がローブ姿で来ている。
観鳥さん「一夜さん。入ってもいいかい?」
観鳥さんがドアをノックするが部屋の中から反応は無かった。
郁美「やっぱり反応無いね・・・・・」
観鳥さん「ねむ様の許可を得た黒羽根が部屋の中を見て見たけどずっとベッドの上で布団を被っているみたいだからね」
郁美「え? 部屋の中を見るってどういう事なの?」
観鳥さん「フェントホープはねむ様の作ったウワサだからねむ様が操作すれば部屋の鍵は直ぐに開くからね」
郁美「えー!? くみは気付かなかったよぉ!?」
観鳥さん「いや・・・。それ位、気付かないと・・・・・」
郁美「それじゃあ私達も入ってみるの?」
観鳥さん「いや。ねむ様に鍵を開いて貰う必要があるしね。今日の所は退散しよう。観鳥さん達にはみふゆさんに頼まれた仕事もあるからね」
郁美「そうだったね。その仕事だけは確実にやり通さないと・・・・・」
観鳥さん「そうだね・・・。じゃあ行こうか」
観鳥さんと郁美は一夜の部屋の前から去って行った。
一夜の部屋の中で一夜はずっとベッドの中で布団を被っていた。
一夜(彩月さん・・・・・・・・・・)
一夜は彩月がいると分かっていて宿北の廃工場にねむが攻撃の指示をした事を思い出していた。
更に数日前。
宿北回想シーン。
宿北の廃工場での戦いの最中。
一夜「ねむ様!彩月さんは!」
ねむ「事前に伝えた通りだよ。合図までに戻れないなら・・・。仕方ない事だね」
一夜「でも!彩月さんは」
ねむ「彩月はそれを承知の上で切り込み役を選んだんだ。時間までに戻れなければどうなるか分かっているのにね」
一夜「ねむ様!」
いつも以上に感情をあらわにする一夜を見てねむは少しだけ珍しい物を見た気になっていたが、今の状況をこれ以上、混乱させる訳には行かなかった。
ねむ「悪いけど一夜。もう結論は出ているよ」
ねむがそう告げると同時に一夜の意識は途切れた。
次に一夜が目を覚ましたのは自室のベッドの上だった。
一夜「!!」
目を覚ました一夜は直ぐに起き上がると部屋を出た。
一夜「彩月さん・・・・・・・」
??「どこへ行くの?」
一夜「マミさん・・・・・」
一夜の部屋の前にマミが椅子を置いて座って待っていた。
一夜「その・・・。彩月さんの事が聞きたくて・・・」
マミ「・・・・・・・・」
押し黙るマミの表情から一夜にもそれが意味する事を悟っていた。
一夜「やっぱり・・・・。彩月さんは・・・・」
マミ「ええ。まだ見つかってはいないわ」
一夜「どうして・・・・・。どうしてねむ様は・・・あんな事を・・・・・」
マミ「彩月さんはそうなる事を覚悟の上で行動していた筈よ」
一夜「でも!!」
マミ「彩月さんの覚悟を聞いていたから柊さんは私に命令したのよ。魔法少女として人々を魔女から守る為に必要な事なのだから」
一夜「アタシは・・・・・・・・」
一夜はマミに何も言う事は出来なかった。
マミ「一夜さん。もし恨みたいのなら・・・。マギウスでは無く撃った私を恨むと良いわ。私は魔法少女解放の為に・・・。他の魔法少女から恨まれる覚悟は出来ているわ」
一夜「・・・・・・・・。アタシには・・・・・・。誰かを恨むなんて・・・・」
立ち尽くす一夜。
マミ「一夜さん・・・・・。今は部屋にいると良いわ」
マミは一夜を部屋の中に連れて行きベッドに座らせた。
マミ「彩月さんの事は神楽教官の方でも捜索を続けているから何か分かったら直ぐに教えるわ・・・。近しい人を亡くす悲しみは私にも分かるから」
一夜「えっ?」
マミ「私の両親は私の目の前で亡くなったわ。だから一夜さん。今は悲しんで良いのよ」
マミはそう言って一夜の部屋を出て行った。
一夜「・・・・・・・・。彩月さん」
一夜は目を瞑って彩月の事を思い出して涙を流していた。
??「泣いたって何にもならないよ」
一夜「えっ?」
一夜(今の声は聞き覚えがある・・・・・。朱奈さん?)
??=朱奈(そうだよ)
一夜(どうして・・・・・・)
朱奈(わたしのじゃない悲しみが心に流れて来たから)
一夜(・・・・・。今ならアタシも朱奈さんの悲しみが分かる・・・・・。大切な人に良く無い事が起こるって・・・・・。凄く悲しい事だね・・・・・・)
朱奈(そう・・・・・)
一夜(アタシはどうしたら・・・・・)
朱奈(あなたにとって彩月さんは大切な人なんだね)
一夜(!? 彩月さんを知っているの?)
朱奈(知ってるよ。あなたが寝ている間に喋った事もあるから)
一夜(えっ!?そう・・・・・なんだ)
朱奈(わたしには綾女ちゃんしかいなかった。でも・・・・。誰かがいなくなる事は悲しい事だって分かるよ・・・・・)
今、二人の少女の心は確かに重なり合い・・・。共鳴していた。
一夜(アタシにはお母さんしかいなかった。でも契約してマギウスの翼に入って色々な魔法少女と出会った。マギウスのお三方、月夜さんと月咲さん。観鳥さんに郁美さんに神楽教官にミユリさん。ナナツメさんと彩月さんは同じ黄羽根だから比較的距離が近かった気がした。だから彩月さんが消えたのは・・・。お母さんが魔女に殺された時と同じ位に苦しい・・・・・)
朱奈(いつまで苦しめばいいのかな?)
一夜(わからない。でも生きている事は苦しみと喜びの連鎖だってねむ様が言ってた)
朱奈(そうだね・・・・・。わたしは今まで幸せだったから・・・・)
一夜(だから・・・・・。苦しむの?理不尽だよ・・・・・・)
□ 神浜市内 ホテルフェントホープ 会議室 一日前
会議室にはねむと灯花、ナナツメがいた。
ナナツメは会議室の脇に控えて二人はテーブルを挟んで椅子に座っている。
灯花「とりあえず準備の方は殆ど終わったかにゃー?」
ねむ「そうだね。後は・・・・・。地下倉庫の資材と・・・・・。封印している筒地綾女を移動させないとね」
灯花「移動させるのは良いけど・・・。ねむは筒地綾女をどうする気なのかにゃー?」
ねむ「どうって?」
灯花「筒地綾女を魔法少女に戻すのは構わないんだけどにゃー。もう計画が終わる頃なのにその必要があるのかにゃー?」
ねむ「まあ僕の趣味みたいなものだよ。戻せれば良し。戻せなくても良しと。上手く行くなら羽根達へのパフォーマンスにもなるからね。それに・・・・・。筒地綾女は非常に興味深い存在だからね。だからこそなるべく魔法少女に戻したいんだよ」
灯花「まあねむがそこまで言うならいいけどにゃー」
ねむ(勿論、灯花の言う事も分かってる。でも・・・・。僕には、もしかの事を考えて置く必要があるからね)
ねむの脳裏に浮かぶ宿北での廃工場における戦い。
彩月に施した魔法が消えない理由。
ねむ(僕が敵なら・・・・・。明日の決戦に敵がいるのなら必ず仕掛けて来る・・・・・。だから平静を装う必要がある・・・・・。明日の準備も滞りなく行わないとね)
コンコン
その時、会議室のドアをノックする音が響いた。
ねむ「どうぞ」
白羽根1「失礼します」
会議室に入って来た白羽根1は灯花とねむに一礼をした。
白羽根1「大東区の準備は終わりました」
灯花「うん。ご苦労様だにゃー。これで後は二カ所かにゃー?」
ねむ「そうだね。仕事を終えたばかりで悪いんだけど、君に一つ仕事を頼みたいけど良いかな?」
白羽根1「何でしょう?」
ねむ「まず確認だけど地下室に封印されているモノがある事を知っているかい?」
白羽根1「はい。白羽根となった際にみふゆさんから一通りの説明を受けています」
ねむ「なら話が速いね。君には封印している筒地綾女と地下倉庫にある備品を里美家の倉庫に移動して欲しいんだ」
白羽根1「分かりました。アリナ様のキューブは支給されているので直ぐに取り掛かります」
灯花「よろしくにゃー」
白羽根1「お任せください」
ねむ「そうだ。もう一つ頼んでいいかな?」
白羽根1「なんでしょう?」
ねむ「地下倉庫の番をしている黒羽根がいるから彼女に会議室に来る様に伝えて貰ってもいいかな?」
白羽根1「お安い御用です。伝えておきます。それでは」
白羽根1は一礼して出て行った。
ねむ「これでまた一つ準備が終わったね」
灯花「まだ他にもあるけどにゃー」
ナナツメ「・・・・・・・」
ねむ「ナナツメ。何か言いたいのかい?」
ナナツメ「筒地綾女の移送。重要な事なら小生が行いますが?」
ねむ「確かに重要だけど白羽根でも大丈夫だよ。ナナツメには僕の護衛を優先して欲しいな」
ナナツメ「分かりました」
灯花「うん。やっぱりナナツメは護衛として最適だにゃー」
コンコン
再び会議室のドアが再びノックされた。
灯花「入っていいよー」
白羽根7「失礼します・・・・」
先程の白羽根1とは違い緊張気味に白羽根7は会議室に入って来た。
白羽根7「里見メディカルセンター周辺の準備は終わりました」
灯花「ご苦労様だにゃー。じゅあ次の指示を伝えるにゃー」
白羽根7「はい」
灯花「あなたは明日、何人かの黒羽根を連れて里見メディカルセンターで待機して欲しいんだにゃー」
白羽根7「待機ですか?明日は確か総会があるかと」
灯花「そーだよ。総会の方は出なくて良いから、地域医療の要でもある里見メディカルセンターを守って欲しいんだにゃー」
白羽根7「つまり・・・。病院の護衛と言う事ですね」
灯花「そうだよー。黒羽根の人選は任せるから好きにすると良いにゃー」
白羽根7「分かりました」
灯花「それと念の為にスマホの番号を知っときたいにゃー。それとあなたの素顔も」
白羽根7「えっ!?」
流石に白羽根7は驚愕の様子を隠せなかった。
ねむ「大丈夫だよ。素顔を知りたいと言うのは僕らにとって信頼の証だからね。それが証拠に僕らも一部の白羽根の素顔は知っているよ。教官や広報担当者の顔を知っている様にね」
ねむのフォローを聞いて白羽根7は意を決した様だった。
灯花「それにあなたはわたくしの質問に解放と答えたんだから里見メディカルセンターの下準備を任せたんだにゃー」
白羽根7「・・・・・。分かりました」
フードを降ろすとその素顔を晒した。
白羽根7「これが私の素顔です。茜すみれと言います」
灯花「うん。覚えたよ。じゃあスマホの番号を」
白羽根7=茜すみれ「はい」
灯花と茜すみれはスマホの番号とメールアドレスを交換した。
灯花「そうだ。白羽根を集めた時にも言ったけど、くれぐれも黒羽根には計画の内容を漏らしちゃダメだよー。黒羽根は精神的に余り強くない子が多いから動揺して予想外の行動を取るかも知れないんだからにゃー」
茜すみれ「心得ました」
ねむ「それとこれは僕からの餞別だよ」
ねむはそう言って何かを茜すみれに渡した。
茜すみれ「これは・・・・・。ありがとうございます。では私は黒羽根の人選に移ります」
再びフードを被りながら茜すみれはそう告げた。
灯花「うん。良い返事だにゃー」
ねむ「君なら大丈夫そうだね」
灯花「黒羽根は誰を使っても構わないからねー。質問にどう答えたとしても」
茜すみれ「わかりました」
灯花「あとは・・・・・。里見メディカルセンターで何をすれば良いかはメールで手順を説明しておくからー」
茜すみれ「はい・・・。それでは」
茜すみれは一礼して部屋を出た。
と同時に再びドアをノックする音がした。
ねむ「どうぞ」
黒羽根9「失礼します・・・」
ドアを開いて入って来たのは地下倉庫の番をしていた黒羽根9だった。
黒羽根9「お話があると聞きました」
ねむ「うん。そうだよ。君には臨時で一夜の護衛役を任命するよ」
黒羽根9「分かりました」
黒羽根9(菖蒲彩月が行方不明だからか・・・・・)
ねむ「だからこれを君に渡しておくよ」
ねむがそう言って机の上に差し出したのは黄色いスカーフだった。
黒羽根9「これは?」
ねむ「これは臨時の護衛役の証として僕が一夜に作らせておいた物だよ。これを付けて置けば君は今日から臨時の黄羽根と言う事が他の羽根にも分かりやすいと言う事だよ」
黒羽根9「分かりました。付けて置きます」
黒羽根9は首に黄色いスカーフを巻いた。
ねむ「他の羽根には話を通してあるから安心して。それと君には早速頼みたい仕事があるんだ」
黒羽根9「はい」
ねむ「君は明日、一夜を連れて隣の宝崎市にある神楽教官のいる光塚にある公民館に行って欲しいんだ」
黒羽根9「しかし明日は総会があるのでは?」
ねむ「君は解放に忠誠を誓っているから出なくてもいいよ。明日はこのホテルフェントホープを少し改装する予定なんだ。君にはその間、護衛として一夜と宝崎で一日だけ外泊して欲しいと言う事だよ」
黒羽根9「仕事は分かりました。しかし良いのですか?私だけこんな事をして・・・」
灯花「問題は無いから大丈夫にゃー。それにこれも必要な仕事だからにゃー」
ねむ「うん。護衛と言うのは護衛対象と行動を共にするのが仕事だからね。何も起きなければ退屈かも知れないけど、いつ何が起きるのか気を張らなければいけない仕事だからね。誰にでも任せられる仕事じゃあないよ」
ねむは傍らにいるナナツメを見た。
ナナツメ「・・・・・・・」
ねむ「ナナツメはこの通り僕の護衛をしてくれるから何も起きない時もある。けど何かトラブルが起きる時もあるから常に気を張らなければいけないからね。強い集中力を持つナナツメや彩月は護衛役として最適なんだよ。そして僕は彩月が選んだ君にもそう言う才能があると思うよ」
黒羽根9「そんな・・・・・。恐れ入ります」
ねむ「だから一夜の護衛を頼むよ。何も無いとは思うんだけどね」
黒羽根9「はい・・・」
ねむ「神楽教官には話を通してあるから・・・。そうだね。明日の午後15時には宝崎に到着して欲しいな。到着したら一夜からスマホを借りて僕に連絡してくれないかい?」
黒羽根9「分かりました・・・・・」
灯花「それとこれは移動の際に必要な交通費だにゃー」
そう言って灯花は交通系ICカードを黒羽根9に渡した。
灯花「10万円は入っているから何があっても大丈夫だと思うにゃー」
黒羽根9「えっ!? あっありがたく使わせて貰います・・・」
灯花「そのカードには食事代も入っているから好きに使うといいにゃー」
黒羽根9「・・・・・・・。ありがとうございます」
黒羽根9はねむ達に一礼して出て行った。
ねむ「果たして本当に何も起きないかな?」
灯花「ねむがそう言うと何か起こるような気がするにゃー」
ねむ「明日は僕達の悲願が果たされるかも知れないからね。衝突は避けられないし何も起きない訳が無いよ。ここからが僕達にとっての正念場だよ。灯花」
灯花「そうだねー。明日でわたくし達の計画が全て成就するのかも知れないしねー」
ねむも灯花も真剣な表情をしていた。
ねむ「だから君も僕達の護衛を頼むよ。ナナツメ」
ナナツメ「小生は護衛として使える者。命令とあらば」
ナナツメは灯花とねむの眼前で腰を落として首を垂れて忠誠の仕草を見せていた。
ねむ(そうだよ。ナナツメ。君は僕にとって・・・・・。最も頼りになる武器なんだから・・・・・)
□ 神浜市内 ホテルフェントホープ エントランス 一日前
茜すみれは会議室を出るとそのままエントランスに向かった。
エントランスには仕事上がりの数人の黒羽根が何組かに分かれて談笑しているのが見えた。
茜すみれ(さて・・・・・。メンバーの選出は・・・・・)
周囲を見渡す茜すみれの視線に近くのソファーで黒羽根1と黒羽根2が談笑しているのが見えた。
更に別の場所を見ると黒羽根5と背の高い黒羽根14、黒羽根15が話しているのが写った。
茜すみれ(特にこだわりは無い。この場にいる5人でいいか)
茜すみれ「君達。少し良いかな?」
黒羽根1「え!?」
黒羽根2「あの・・・。私達が何か?」
黒羽根1と黒羽根2は白羽根である茜すみれに話しかけらえて驚いていた。
茜すみれ「そんなに緊張しなくていい。マギウスから仕事を頼まれて人を集めているんだ。仕事が無いなら良いかな?」
黒羽根1「大丈夫です」
黒羽根2「はい。特に何も頼まれていないので」
茜すみれ「そうか。じゃあ・・・・・。そこの3人。ちょっといい?マギウスからの仕事を協力して欲しい」
黒羽根5「はい。大丈夫です」
黒羽根14「私も」
黒羽根15「はい」
茜すみれ「これで5人か。じゃあ全員こっちのソファーに集まってくれない?」
茜すみれの言葉を聞いて5人の黒羽根は茜すみれのいるソファーに集まった。
茜すみれ「君たち5人には明日、私の仕事に協力して欲しい。マギウスからの最重要指令だ」
黒羽根5人「!?」
茜すみれ「明日・・・。放課後になったら君たちは、里見メディカルセンターに来て欲しい。私は朝から待機している」
黒羽根1「でも明日は確か総会があるんじゃ?」
黒羽根2「はい。私も出席する様にと」
茜すみれ「それは知ってる。しかしマギウスからは私の仕事を手伝うのなら出席はしなくて良いと許可は得ている」
黒羽根5「それなら・・・。大丈夫です」
黒羽根14「それで我々は何をすれば?」
茜すみれ「北養区にある里見メディカルセンターの警護だ」
黒羽根15「病院の警護ですか?」
茜すみれ「そうだ。マギウスは明日、計画の為の最後の一手を神浜市で打つ。私達はその際に不測の事態が起きた時の為に里見メディカルセンター周辺に待機する」
黒羽根14「ただ待機するだけですか?」
茜すみれ「計画通りならば何も無い筈・・・。念の為と言う事だろう。病院に魔女が出れば悲惨な事になるは魔法少女なら良く知っているだろう。前々からローテーションを組んで見張りは行っていましたからね」
茜すみれ(計画通りなら・・・。明日は神浜市内では計画の為に色々と起こる・・・。解放の為だから問題は無いわね・・・)
黒羽根1「分かりました。僕、じゃなくて私は大丈夫です」
黒羽根2「私も大丈夫です」
黒羽根5「学校が終わり次第、直ぐに向かいます」
黒羽根14「私も大丈夫です」
黒羽根15「あの・・・。私は宝崎から来てるので少し遅れるかも知れません」
茜すみれ「それは構わない。それでは全員、明日は里見メディカルセンターで合流する。もし他の羽根から仕事を頼まれてもマギウスからの指令だと言って断って構わない。説明は以上だ。何か質問はあるか?」
茜すみれが黒羽根達を見渡したが全員が首を振った。
茜すみれ「なら私の魔力パターンを覚えてくれ。私は必ず病院の近くにいる」
黒羽根全員「はい・・・」
黒羽根達が頷くのを見て茜すみれは大丈夫だと思えた。
茜すみれ「では解散だ。今日はもう休んで明日に備える様に」
黒羽根全員「はい!」
答えた黒羽根達は示し合わせた様にエントランスから出て行った。
茜すみれ(これで大丈夫だろう。後は明日の作戦を上手く行けば・・・・・。あすなろ市から希望に縋って神浜に来た以上、マギウスの計画は上手く行かせて見せる)
茜すみれもまたエントランスから出て行った。
その時、エントランスにある柱の背後から観鳥さんと郁美がローブ姿で顔を出した。
観鳥さん「ふむ・・・。どうやらマギウスとしては・・・。明日、神浜市で騒ぎが起こると踏んでいるみたいだね」
郁美「えっ?令ちゃん。どういう事?」
観鳥さん「里見メディカルセンターに羽根を配置すると言っていただろう?あそこは神浜市での地域医療の要でもあるし灯花様の実家だからね。だからこそわざわざ羽根を増員して配置したと言う事だよ」
郁美「そっか・・・・・。ゆみがいたみたいだけど大丈夫かな・・・・・」
観鳥さん「大丈夫だと思うよ。マギウスの方でも色々と里見メディカルセンターに仕込んでいるみたいだからね」
郁美「それなら良いんだけど・・・・・・」
観鳥さん「観鳥さん達も明日に備えよう。あの人に頼まれた事の為にも」
郁美「うん・・・・・・」
観鳥さんと郁美はその場を離れて行った。
??「・・・・・・・・・・・・・・・」
この時、茜すみれの会話をもう一人のローブを着た人物が聞いていた事を観鳥さんと郁美も気が付く事は無かった。
今回の話では神楽教官とミユリがいない理由は最初から書こうと決めていました。
そして時雨やはぐむと言った羽根の面々が何をしていたのかも含めて動向を書こうとは思っていました。
マギウスの羽根リスト
黒羽根1=宮尾時雨
黒羽根2=安積はぐむ
黒羽根5=七瀬ゆきか
黒羽根6=牧野郁美
黒羽根10=柚希ほとり
黒羽根13=遊狩ミユリ
黒羽根14=友紀ゆみ
黒羽根15=黒江
白羽根3=天音月夜
白羽根4=天音月咲
白羽根5=観鳥令
白羽根6=神楽燦
白羽根7=茜すみれ