マギアレコード 偽書e/s memorys   作:ジャックノルテ

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10・5章 vol.1 だから自由に進むんや

□1 神浜市 工匠区 三穂野せいらの下宿先

 

 

 

古町みくら「ごめんなさいね。三穂野。急に避難させて貰っちゃって・・・。まさか本に夢中になっている間に停電と電波障害に嵐で帰れなくなるなって思いもよらなかったから・・・」

 

吉良てまり「仕方ないですよ。小町。こんな状況では私達は自宅に帰れないんですから」

 

三穂野せいら「そうですよ!この状態で帰るなんて無理ですよ。先輩方もぜひ泊まって行ってください!ただ・・・・・」

 

吉良てまり「ただ何ですか?」

 

三穂野せいら「布団が一組しかないんで・・・・・。寝る時は3人で一つの布団を使うしかないですね・・・・・」

 

古町みくら「避難させて貰ったんだし贅沢は言わないわ。それよりここは大丈夫なのよね?」

 

三穂野せいら「避難指示は出て無いから大丈夫かと」

 

古町みくら「じゃあ一晩の辛抱ね」

 

吉良てまり「電話が繋がらないから両親には明日謝ればいいでしょう」

 

 工匠学舎歴史研究部の3人が神浜市に関わるのは少しだけ先の話である。

 

 

 

□2 神浜市の隣町 浄安寺近辺

 

 

 

ワルプルギスの夜の出現に伴って各地で動きを活発にする魔女。

 浄安寺近辺で一人の魔法少女が戦っていた。

 

南津涼子「なんなんだ一体!?こんなに魔女の動きが活発になるなんて!?」

 

南津涼子(それでも・・・。あたしがこの場所を守る!)

 

 

 

 そして浄安寺から離れた場所では・・・。

 

羽衣の魔法少女「はぁ・・・。どうして。どうして戦わなきゃいけないの・・・・・。どうせ戦ったって・・・・・。私チャンの想いは届かないのに・・・・・。ヒコ君・・・・・。私チャン・・・・・。どうしたらいいの・・・・・」

 

 一人の魔法少女が絶望とも取れる表情をしながら使い魔と戦っていた。

 

使い魔「!!」

 

羽衣の魔法少女「うっ・・・。構わないでよ・・・・・。私チャンに構わないでよ!!」

 

 怒りと共に羽衣の魔法少女は使い魔に八つ当たり気味に自身の怒りをぶつけていた。

 

 

 

 そしてそこから離れた神浜市との境に流れる川にある堤防にある遊歩道。

 

 そこに一人の女性がキュウべえと共に神浜市を見ていた。

 

リヴィア・メディロス「さて・・・・・。あの子の願いがこの出来事を引き起こしたのか・・・・・。見定めさせて貰おうか」

 

リヴィア・メディロス(とは言え・・・・・。この状況じゃヨヅルと月出里を連れて来なかったのは正解やったな)

 

キュウべえ「僕も出来るだけ近い場所から神浜市を観察しないとね。君がいるから安心して観察出来るよ。リヴィア」

 

リヴィア・メディロス「そうやな。それに・・・・・。不詳の弟子たちがこの出来事に絡んどる気もするんやしな」

 

 リヴィアとキュウべえの目は神浜市へと向けられていた。

 そこへ一体の使い魔が現れる!

 しかしリヴィアは難なく使い魔を撃破した。

 

リヴィア・メディロス(と言うてもいつまでここれおれるか分からんけどな)

 

 

 

 神浜市で激しい戦いが行われているのと同時刻。

各地においても局所的に魔女の活動が活発化し始めていた。

 全てはワルプルギスの夜に呼応した共鳴現象だった。

 

 

 

◎松宮市 夜の路地

 

 

 

少女(マズい!宿無し探偵等々力耕一の予約を忘れるなんて一生の不覚!)

 

 少女は慌てた様子で路地を走っていた。

 そこへ背後から使い魔が少女を狙う!

 

使い魔「!!」

 

??「させるかよ!」

 

 そこへ使い魔に攻撃が当たり使い魔は消滅した。

 

少女「あれ?今、何か動いた気がしたけど・・・。気のせいか」

 

 少女は何も気づく事無くその場を去って行った。

 

??「危なかったな・・・。気付かれなくて良かったぜ」

 

路地の裏から魔法少女飾利潤が姿を現した。

 

飾利潤(何で急に魔女の動きが活発になったんだ?まあ助けられたから良かったけどよ・・・。みつね。お前は大丈夫なのか・・・・・)

 

 飾利潤は長い間、会っていない友の事を思い出していた。

 

 

 

◎霧峰村

 

 

 

 突如として霧峰村近辺に現れる魔女。

 

七支刀の魔法少女「どうして急に悪鬼達が」

 

水晶の魔法少女「とにかく村を守らないと!」

 

七支刀の魔法少女「そうね!巫(かんなぎ)である私達だけがこの村を守れるんだから!」

 

 霧峰村を守る二人の巫は襲い来る悪鬼=魔女に対して身構えていた。

 

 

 

◎二木市 東扇橋近辺

 

 

 

 二木市に向かう魔女の群れ。

 それを探知した二木市虎屋町に所属する魔法少女達は集結して迎え撃つ構えを見せていた。

 

金棒「間違いないわぁ・・・・・。魔女達はこっちに向かって来ているわぁ」

 

短刀「でも・・・。どうして魔女が急に・・・」

 

金棒「分からないわぁ。でもここで魔女の群れを食い止めないと街が蹂躙されかねないわぁ」

 

短刀「だよね・・・。来たみたいだよ」

 

 そこへ二木市竜ケ崎に属する魔法少女達がやって来て橋を挟んで対峙する形となった。

 

火炎放射器「おーおー。久々に魔女が出たと思ったらこんなに大量かよ」

 

UFOキャッチャー「これなら久しぶりに暴れられるから満足できそうだよね?」

 

斧「けど全部倒さないと街が無くなるかもねー。こんな魔女の群れ、ゲームじゃなきゃ戦いたくないよー」

 

UFOキャッチャー「まあ確かに・・・。でも日頃のストレスをぶつければ楽勝でしょう?」

 

火炎放射器「まあこの数じゃ何匹かは取り逃がしちまうだろう。けどここは・・・」

 

 火炎放射器は橋の向かい側にいる金棒を見ていた。

 二人の視線は交差していた。

 

金棒(樹里・・・・・)

 

火炎放射器(姉さん・・・・・)

 

金棒「聞きなさい!」

 

 突然、金棒が叫び出し魔法少女達は驚いて身を固めていた。

 

金棒「この魔女の群れを倒す為には私達全員で立ち向かわなければ二木市は蹂躙されかねないわぁ!」

 

火炎放射器「だから今だけは一時休戦するぞ!」

 

 直後の火炎放射器の宣言に一部の魔法少女は困惑と不信の反応を見せていた。

 

金棒「それでも共に戦わなければこの街にいる家族や友人が亡くなるでしょうねぇ。それが分かっていても休戦に応じられないと言うのならぁ・・・・・」

 

火炎放射器「この大庭樹里と」

 

金棒「紅晴結菜の双方を敵に回してこの街で生きられると思わない事ねぇ!」

 

火炎放射器「いいか?文句はねえだろ。言う事を聞かなきゃ家族や友達が死ぬぞ」

 

 火炎放射器の宣言に周囲にいる魔法少女達の反応は収まって行った。

 

バトン(えっ?何だか分かんないんですけど・・・。これって普通の事ですよね?そうですよね!?きっと普通の事ですよね!?)

 

UFOキャッチャー「ある訳ないじゃん」

 

斧「家族が死ぬのはちょっとね~。私たち学生だし」

 

金棒「こちらも文句は無いわねぇ?」

 

短刀「文句がある訳無いよ。家族や友人には変えられないからね」

 

金棒「じゃあ行くわよぉ!」

 

金棒(万が一に私達が取り逃がしたとしても策は整えてるわぁ。後は任せたわよぉ)

 

魔法少女「・・・・・・・」

 

 東扇橋の出来事を一人の魔法少女が見つめていた事には誰も気が付かなかった。

 

 

 

◎湯国市山中

 

 

 街から離れた山中に4人の魔法少女が集まっていた。

 

猟銃「間違いない。こっちに向かって来ているであります」

 

ハープ「やっぱり戦うしかないんですね」

 

ヨーヨー「でも戦わないと家族を守れないんよ!」

 

ブーメラン「・・・・・。ここは私達の故郷。魔女に蹂躙させる事は出来ない。たとえ諦念を抱いていたとしても」

 

 故郷と距離を置く4人の魔法少女は魔女の群れに向き直った。

 

 

 

◎某街

 

 街に出現した使い魔を倒す佐和月出里と笹目ヨヅル。

 

佐和月出里(サワスダチ)「ふむふむふむふむ!」

 

篠目ヨヅル「ええ。先生の言う通りに魔女や使い魔の活動が活発になりましたね」

 

佐和月出里「ふむふむ!」

 

篠目ヨヅル「そうですね。この街は月出里の両親がいるから守る様にと先生に頼まれましたから」

 

 近づいて来た使い魔を武器である杖で叩き付ける篠目ヨヅル。

 

篠目ヨヅル「だから戦いましょう。先生の言いつけ通りに」

 

佐和月出里「ふむ!!」

 

 

◎宝崎市

 

 魔女との戦いを経て疲弊する芭蕉扇を持った魔法少女と魔法少女くろ。

 

魔法少女「ようやく一息付けますの・・・・・・」

 

くろ「もう出て来ないですよね?」

 

 ところがそう言った所で再び複数の使い魔が姿を現す。

 

魔法少女「またですの!?」

 

くろ「やるしかないですよね・・・・・」

 

 魔法少女とくろ は新たに現れた使い魔に向き直った。

 一方で宝崎市光塚では・・・・・。

 

神楽教官「どうやらまだまだ現れるようね」

 

ミユリ「ミユはもうお腹一杯です~」

 

黒羽根9「戦っている場合じゃ無いのに・・・・・」

 

神楽教官「この使い魔・・・・・。普通の使い魔じゃ無いわね」

 

黒羽根9(誘拐された一夜さんは・・・・・)

 

神楽教官「二人共集中しなさい。あなたも越馬の事が気になるのなら尚更、目の前の戦いに集中すべきよ。でないと死ぬわよ」

 

黒羽根9「!! 分かりました」

 

ミユリ「ミユもやります!」

 

神楽教官「ええ。何としてもこの戦いに勝つわよ!」

 

ミユリ「ハイです!」

 

黒羽根9「はい!」

 

黒羽根9(どうして一夜さんの事が気になるんだろう?私はただ救われたいだけだった筈なのに・・・・・」

 

 

 

◎赤崎村

 

 某所にある赤崎村。

 隣町との境にある橋の上に3人の少女がいた。

 

見芝実奈「やっぱり悪鬼が近付いて来てます部長。先輩」

 

部長「やっぱりそうか・・・・・。やるぞ」

 

先輩「まあそれが私達の使命ですからね。部長」

 

見芝実奈「来ます!」

 

 3人の少女の指輪が魔力によって光り輝く。

 

見芝実奈(私は日ノ本と人々を守る為に戦う!)

 

 その時、見芝実奈の脳裏に浮かんだのは前に会った越馬一夜の姿だった。

 

見芝実奈(どうして一夜ちゃんの事を思い出したの?)

 

 自分の予想外の心理に驚きながらも見芝実奈は目の前の悪鬼に意識を向けていた。

 

 

 

 これらの街に出現した魔女達はワルプルギスの夜と共鳴した事で活動を活性化させていたのは確かだったが、一部の襲った街に共通点がある事を魔法少女達はこの時、気付く事は無かった。

各地で魔法少女達は自分たちの居場所を守る為に戦い続ける。

 

 

 

□3 神浜市内 ホテルフェントホープ近辺の森林

 

 

 

目の前で起こった土石流と強風。

 

彩月(!! ちっ。助けんじゃ無かったわ)

 

 心の中で悪態を付きながらも彩月は抱えた朱奈を放さなかった。

 

朱奈「・・・・・・・・」

 

彩月(アレは!!)

 

 彩月は咄嗟に何かに気が付くと跳躍すると同時に黄色いローブを身に纏うと同時に鎖鎌を一つの方向に向かって投げ伸ばした!

 

ナナツメ「・・・・・・・」

 

 彩月の投げた鎖鎌は既に安全圏の木の上に逃れていたナナツメの足に巻き付いた。

 

彩月(これで!!)

 

 朱奈を抱えたまま彩月はナナツメの足に巻き付かせた鎖を巻き戻して行く。

 

彩月「助かったで。ナナツメさん」

 

ナナツメ「そうか・・・・」

 

彩月「悪かったなあ。足に鎖絡ませて」

 

ナナツメ「問題は無い」

 

朱奈「・・・・・・・」

 

彩月「朱奈さんも無事かあ。まっ運がええな」

 

ナナツメ「・・・・・・・」

 

彩月「なんや?もしかしてさっき朱奈さん投げ飛ばした事を怒っとるのか?」

 

ナナツメ「少し不愉快だった」

 

彩月「不意を付く為や。それに生きとるやし問題無いやろ。それよりこれからどーするんや?」

 

ナナツメ「敵を倒す。それだけだ。小生はそれしか出来ない」

 

彩月「まあそうやろな。ウチも付き合うで」

 

 ナナツメと彩月の視線の先には土石流の向かい側に避難していたベル、ナル、あすみんの姿が写っていた。

 

彩月「おんや? 雨が降って来たなあ」

 

 降り注ぐ雨を浴びた朱奈の顔から大きな水滴が涙の様に流れ落ちたのを誰も見ていない。

 

 

 

□4 神浜市内 ホテルフェントホープ近辺の森林 土石流で寸断された向かい側

 

 

 

土石流が流れた後に羽ばたきながら落下してくるエンブリオ・イブ。

ベル、ナル、あすみんの3人は距離を取りながらも離れ過ぎず、近付き過ぎずと言った距離でエンブリオ・イブの近くにいた。

 

ベル「二人共無事!?」

 

ナル「大丈夫だよー」

 

あすみん「たしも・・・・・」

 

ベル「さて・・・・・。後協力者の二人は・・・・・。こっちね。ナル!アレの準備は?」

 

ナル「直ぐに出来るよー」

 

 ナルの両手の間で様々なモノが浮かんでいた。

 

ナル「ふふ。エンブリオ・イブから拝借した欠片とナルのブロックを一つにまとめてー。ハイ!ブロックの銛になりましたー(笑)」

 

 ナルの手に握られたブロックで出来た銛。

 ベルは銛を受け取った。

 

ベル「ありがとう。あすみん。アイツ等は?」

 

あすみん「あの二人・・・・・。今の所は土石流に阻まれて来れないみたいだね」

 

 このメンバーの中であすみんは一番感知能力が高かった。

 

ベル「なら協力者との合流を急ぎましょう」

 

 足早に移動するベルを追うナルとあすみん。

 暫く進むとそこには協力者である人型の魔女=ウインドピア(雲土ぴあ)と魔法少女サンシャイン(日向楓)が変身して待機していた。

 

ナル「お二人さん。準備の方はー」

 

ウインドピア「うん。出来てる。ワタシの中にあるエンブリオ・イブの欠片は上手く共鳴している」

 

 そう語るウインドピアの身体から迸る魔力にはエンブリオ・イブと同じ物が混じっていた。

 

ナル「フェントホープでイブの欠片を拝借した甲斐があったねー」

 

ナル(最も・・・。当初は使い道が見いだせなくてどうしようかと思ったけどねー。ナルたちに埋め込む訳には行かないからねー。実験台になってくれて助かったよー)

 

サンシャイン「それでここからは打ち合わせ通りに行くの?」

 

 少し落ち着きのない様子でサンシャインは次の事を促した。

 

ベル「ええ。まずこの銛をエンブリオ・イブに刺す。この銛にはウインドピア。あなたがエンブリオ・イブと共鳴するのを補助する役割があるからその後、あなたはエンブリオ・イブとの共鳴を試みて」

 

ウインドピア「分かった」

 

 ウインドピアは武器であるレイピアを構える。

 

ベル「私がこの銛を刺すから続いて。あすみん。アイツ等は?」

 

あすみん「大丈夫。まだこっちには来れないみたい」

 

ベル「ちょうど良いわ。行くわよ」

 

 再度の跳躍を行おうとするエンブリオ・イブに向かって走り出すベル。

 

ベル「ハッ!!」

 

 ベルの投げた銛はエンブリオ・イブの背中に上手く突き刺さった。

 だがエンブリオ・イブは特に意に介す様子は無かった。

 

ベル「今よ!」

 

ウインドピア「分かった!!」

 

 駆け出したウインドピアは背後からエンブリオ・イブに取り付くと武器であるレイピアを突き刺した!

 

ウインドピア「これで!」

 

 エンブリオ・イブとウインドピアの魔力が共鳴する。

 

エンブリオ・イブ「!?」

 

 ウインドピアの意識がエンブリオ・イブの身体の主導権を奪って行く。

 並列的な繋がりをもたらす魔力の共鳴作用はエンブリオ・イブには何の変動も見せない為にエンブリオ・イブの異変にはマギウスと環いろは達も気付く事は無かった。

 その場から動かなくなるエンブリオ・イブ。

 

ウインドピア「クッ・・・・・。ワタシは・・・・・。サンシャインの・・・。楓の為に!!」

 

 全身から共鳴による衝撃によって身体に衝撃が走るもウインドピアはエンブリオ・イブとの接続を続けていた。

 共鳴は続き・・・・・。後僅かでエンブリオ・イブの全身をウインドピアが乗っ取ろうとしていた。

 

サンシャイン「ぴあ・・・・・」

 

 サンシャインを筆頭にエンブリオ・イブに近付いて行くベル、ナル、あすみん。

 不安げな様子を見せるサンシャインを余所にベルは視線をナルとあすみんに向けた。

 

ベル「・・・・・」

 

ナル「・・・・・」

 

あすみん「・・・・・」

 

ベルテレパシー(二人共・・・・・。今よ!)

 

ナル、あすみん(!!)

 

 あすみんが一気に背後から武器であるモーニングスターでサンシャインのソウルジェムに振り下ろすと同時にナルがフィンガースナップを行うとウインドピアとエンブリオ・イブの魔力共鳴が解除されると同時にウインドピアの魔力が暴走して全身に裂傷を負わせてウインドピアは落下してしまった。

 エンブリオ・イブは何事も無かったかのように神浜市内へと向かって飛び立って行った。

 森林の中で倒れるウインドピアとサンシャイン。

 

サンシャイン「どうして・・・・・」

 

あすみん「久しぶりにサヨナラできた」

 

サンシャイン「・・・・・・」

 

 笑顔のあすみんは倒れたサンシャイン蹴り飛ばした。

 サンシャインのソウルジェムは砕けて行く。

 

ナル「いやー。上手く指が鳴って良かったー(笑) 鳴らなかったらどーしよーかとー(笑)」

 

 目の前でそんな事が起きても自身の指先を撫でるナル。

 

あすみん「それ、たしでも笑えないから」

 

ウインドピア「何が・・・・・」

 

 困惑するウインドピアの眼前に立つベル。

 

ベル「悪かったわね。私達は最初からあなたがエンブリオ・イブのコントロールする事をさせるつもりは無かったわ」

 

ウインドピア「!?」

 

ベル「あなたがエンブリオ・イブに干渉さえ出来れば良かったのよ。イブに干渉出来ると言う事は自動浄化システムにも干渉する事が出来ると言う事。そうすれば今の自動浄化システムを私達が乗っ取る事が出来る」

 

ウインドピア「・・・・・・・・」

 

ベル「だからあなたはここで」

 

あすみん「!! ベル!!ナル!!」

 

 あすみんが叫ぶと同時にその場にナナツメと朱奈を担いだ彩月が現れた。

 

彩月「ようやく追い付いたで。さあて・・・・・。仲間割れでもしとるんか?ありがたいで」

 

 倒れたウインドピアとサンシャインに武器を向けるベル達の様子を見て彩月は愉快そうに語る。

 

ナナツメ「・・・・・・・」

 

あすみん「アンタ・・・・・。たしを舐めてるの?そんなの担いでたしに勝てると?」

 

彩月「あー確かに邪魔やな。けど盾にはなるやろ?」

 

 担いだ朱奈の頭を撫でる彩月。

 

ナル「うっわー。ナルでも引くわー」

 

ベル「あすみん。ナル。大切な時だから邪魔はさせないで」

 

あすみん「分かってる。ベル!」

 

ナル「そーだねー。そろそろ死なせようかー」

 

 あすみんとナルが彩月とナナツメに襲い掛かる。

 

彩月「面倒やな」

 

 彩月は流石に朱奈を脇に落とすとナルに向き直った。

 

ナル「おや?今度は彩月ちゃんが相手かなー?」

 

彩月「面白そうやしウチが相手したるで」

 

ナル「確かにお互いに面白いと思ってるねー」

 

あすみん「はあ・・・・・。アンタをサヨナラするのは骨が折れそう」

 

ナナツメ「・・・・・・・」

 

あすみん「本当に骨が折れそう」

 

 ナルがブロックで出来た拳銃を撃つも彩月は銃撃を交わして接近しようと試みる。

 その脇ではナナツメとあすみんが鎖鎌とモーニングスターの鎖を絡めて膠着していた。

 

ベル「今度こそ」

 

 ベルが脇からブロックで出来た短刀を取り出すとウインドピアに振り下ろした!

 だがウインドピアは握り続けていたレイピアで受け止めて抵抗した。

 

ベル「・・・・・。抵抗しなければ苦しまずに済むわよ」

 

ウインドピア「ワタシに何をする気?」

 

ベル「あなたの身体からグリーフシードを引きずりだそうと思って」

 

ウインドピア「!?」

 

ベル「大丈夫よ。ナルがあなたの身体にグリーフシードがある事を調べたし、魚を捌くのと大差無いわ」

 

ウインドピア「だとしても渡さない・・・・・」

 

 ウインドピアはレイピアで応戦するも身体へのダメージもあって上手く戦えなかった。

 

ベル「ハッ!」

 

ウインドピア「くっ」

 

 ウインドピアの手からレイピアを弾き飛ばすと左胸に向かって短刀を振り下ろした。

 

ウインドピア「!?」

 

ベル「抵抗しなければ良かったのに」

 

 左胸から血の様な物を流して膝立ちになったウインドピアの身体を押さえるとベルは左胸の中に躊躇なく片手を入れて体内をかき回した。

 

ベル「ああ・・・・・。やっぱり心臓の位置にあるのね。ナルの言う通りだったわ」

 

 ウインドピアの身体から血だらけの片手を引き抜いたベル。

 その手の中にはグリーフシードが握られていた。

 

彩月「うわ。えげつな」

 

ナル「彩月ちゃんに言われたくはないかなー(笑)」

 

あすみん「やったのね」

 

ナナツメ「・・・・・・・」

 

ベル「これで・・・・・」

 

ウインドピア「!!」

 

ベル「!?」

 

 その時、ウインドピアは地面に手を付けたと同時に魔法陣を展開すると突風を引き起こすとその場からサンシャインを連れて去ってしまった。

 目的を達成した事もあってウインドピアから注意を外していたベルは咄嗟に防御する事しか出来なかったが、グリーフシードを奪われる事は無かった。

 

ベル「逃げたのね・・・・・。苦しむのが長引くだけなのに」

 

 ベルは憐みの様な発言をしていたが笑みを浮かべていた。

 

ベル「目的は達成したわ。ナル!あすみん!」

 

あすみん「分かった」

 

ナル「りょーかい。じゃあ二人の相手は予定通り彼女に任せようかー(笑)」

 

 そう言ってナルの手に緑色のキューブが出現する。

 キューブから迸る魔力反応に驚く彩月とナナツメ。

 

ナナツメ「!!」

 

彩月「なんや!?この魔力・・・・・」

 

 ナナツメも彩月も驚きを隠せない様な魔力が発せられており二人はベル達から距離を取っていた。

 

ナル「うん。距離を取ったのはお互いにとって正解だよー」

 

あすみん「サヨナラ出来ないのは残念だけど」

 

ベル「あなた達はこれで終わりよ」

 

ナル「じゃあこれでー」

 

 ナルは手に持っていた緑色のキューブを彩月とナナツメに向かって投げた。

 投げられた緑色のキューブが分解されて行くと迸る魔力を帯びた何かが彩月とナナツメの前に現れると同時に結界を形成して彩月とナナツメ、脇に倒れたままの朱奈も飲み込んでしまった。

 近くにいたナル、ベル、あすみんの3人も巻き込んで。

 

ナル「うん。ナルちゃんのお手柄―(笑)」

 

あすみん「次はどうするの?ベル」

 

ベル「まずはここを脱出してからエンブリオ・イブを追い駆けましょう」

 

 幸い彩月とナナツメとは別の階層だったらしく周囲にはいなかった。

 

ナル「さあーて。便利屋ナルちゃんの出番ですねー。まずは周囲に魔力を通してと・・・・・。うん。浅いからこれならナルの魔法で一時的な分解が出来るねー」

 

ベル「それは良いわね。じゃあ行きましょう」

 

あすみん「全てが終わったら好きにサヨナラ出来るんだよね?」

 

ベル「そうよ。私は好きな様に人を操れる」

 

ナル「ナルは好きなだけ人間を組み替えられるねー(笑)」

 

 狂気の笑みを浮かべながら3人の魔法少女は外に向かって歩き出した。

 その頃、深い階層ではナナツメと彩月、それに朱奈がキューブから出て来た何かと対峙していた。

 

彩月「おいおい・・・。冗談やろ」

 

ナナツメ「・・・・・・・」

 

 驚く彩月と対照的に黙っているナナツメ。

 その背後では意識を失った朱奈が倒れたままだった。

 

朱奈「・・・・・」

 

 3人の前に現れたキューブから出て来て結界を張った何か。

 それはホテルフェントホープの地下に封印されていた《赤と青に彩られた何か》。

 つまり・・・。筒地綾女だった。

 しかしその全身からはドッペルが具現化して更にそのドッペルを突き破る様に魔女の肉体が突き出ていた。

 今の筒地綾女はドッペル半魔女と言う異例の状態だった。

 筒地綾女は神浜市と宝崎市の境で起きた戦いでドッペルシステムの有効範囲のギリギリでソウルジェムを濁らせて魔女と戦っていた最中にドッペルを発動した為にドッペルだけでなく魔女化まで作用してドッペルと魔女が混ざったキメラとも言える存在となっていた。

 赤と青に彩られた肉体に埋め込まれている筒地綾女の姿。

 筒地綾女の顔は白い仮面の様な物で覆われている。

 

 

 

 キメラ綾女が彩月とナナツメに迫ろうとして来た。

 

キメラ綾女「ガアアアアアアアアアアアア!!」

 

 

 

□5 ???

 

 

 

一夜(ここは何処・・・・・・・)

 

一夜(そっか。アタシは・・・・・・・・)

 

 拘束されていた一夜。

 一夜のソウルジェムに武器を突き付けるあすみん。

 周囲で戦っている彩月とナナツメ。

 

一夜(彩月さんは生きてた・・・・・。生きててくれた・・・・・。でも・・・・・。アタシは・・・・・)

 

 彩月の無事を知って間もなくあすみんによって一夜のソウルジェムは砕かれた。

 砕かれた瞬間に一夜は終わったと思った。

 痛みも何も無くただ自分が終わったと感じていた。

 

一夜(アタシは死んだの・・・・・。でも・・・・・。これで良かったのかも。彩月さんやナナツメさんの足手まといにならないで済むし・・・・・。それに・・・・・。朱奈さんに身体を返す事が出来たから・・・・・。アタシはずっと朱奈さんの身体を盗んでいたのと同じ事だったんだから・・・・・)

 

一夜(あれ・・・・・。死んだのにどうしてアタシは意識があるの? もしかして・・・・・。アタシは・・・・・。地獄に行くのかな・・・・・。だってアタシは・・・・・。何も出来なかったから・・・・・)

 

 その時、一夜は自分が何処か一つの方向に落ちて行く事を感じ取っていた。

 

一夜(死んだらみんなこうやって落ちて行くのかな?)

 

 何も無い空間の中を落ちて行く一夜。

 だが落下は唐突に止まって一夜は宙に浮いた状態になっていた。

 

一夜(何が起こっているの?アタシは死んだ筈なのに・・・・・)

 

 戸惑う一夜だったが答えは出ない。

 

一夜(でも・・・・・。アタシはここに落ちて行くのが決まっていたの?)

 

一夜(落下が止まったのは、まるでアタシがここにパズルのピースが当てはまるのと同じ事の様な気がする・・・・・。じゃあ・・・・・。ここは何処なの・・・・・)

 

 暗闇の中で一夜の問答への答えは出ない。

 

 

 

 

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