マギアレコード 偽書e/s memorys   作:ジャックノルテ

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10・5章 vol.3 だから自由に進むんや

□10 神浜市内 北養区 ホテルフェントホープ跡地

 

 

 

かつてホテルフェントホープの存在していた跡地。

そこは魔力の爆発によって生じた地割れによって、ここにホテルフェントホープがあったとは知っている者には信じられない状況だった、

 

安積はぐむ「これ・・・・・。どうなっているの?」

 

宮尾時雨「僕にも分からないよ。はぐむん」

 

 ホテルフェントホープで環いろは達とマギウスの戦いを知らない時雨とはぐむには寝耳に水と言えるこの状況は一大事だった。

 二人は強引に白羽根7に指示を出させて里見メディカルセンターの警護を放棄してまで、フェントホープに戻って来てしまったのだ。

 二人がローブを脱いでいるのはここまで来るのに魔女や使い魔との戦闘で黒羽根としての戦い方を維持出来なかった事の現われだった。

 

なお環いろはとマギウスと羽根達は既にこの場を離れている。負傷した羽根はみたまの指示で調整屋に向かっていた為、この場には誰もいなかった。

 

はぐむ「ホテルフェントホープが無くなったって事は・・・・・。まさかマギウスのお三方にも何かあったんじゃ」

 

時雨「待って・・・・・。たくさんの魔法少女の魔力痕跡がある。でもお三方の魔力は電波望遠鏡に向かってる」

 

はぐむ「じゃあマギウスは」

 

時雨「無事だと思う。簡単にやられる人たちじゃ無いし・・・・・!!」

 

はぐむ「何か来るよ。時雨ちゃん!」

 

時雨「この魔力・・・・・。知らない魔法少女と・・・・・」

 

はぐむ「物凄く強力な魔女だよ・・・・・」

 

 二人は思わず武器を構えていた。

 そこへ現れたのは・・・・・。

 

彩月「しつこいで!少しは他に目を配れや!」

 

キメラ綾女「「ガアアアアアアアアア!」」

 

 朱奈を抱えた魔法少女彩月を追ってキメラ綾女が追いかけて来ていた。

 

時雨「えっ?」

 

はぐむ「あれって・・・・・」

 

時雨「一夜さんを抱えてる彩月さん!?」

 

はぐむ「生きてたんだ! でもどうして彩月さんが魔法少女に?」

 

時雨「分かんないけど取り敢えず助けないと!はぐむん!」

 

はぐむ「そうだね!時雨ちゃん!」

 

時雨「僕が援護するから!」

 

はぐむ「えい!」

 

 時雨の持つスリングショットから次々と放たれる弾丸!!

 突然の攻撃に体制を崩すキメラ綾女。

 その射線をなぞる様に巨大な剣を持って突っ走るはぐむ。

 

彩月「!! お二人さんか。助かったで!」

 

 走りながら自信を助けた相手に気が付く彩月。

 

はぐむ「これで!」

 

 はぐむの持つ巨大な剣がキメラ綾女の胴体に突き刺さると苦悶の声を上げて動きを止める。

 

キメラ綾女「「ギィアアアアアアアアアア!?」」

 

時雨「はぐむん!一旦離れて!」

 

はぐむ「う・・・うん!」

 

 はぐむは時雨の忠告を受けて一旦離れた。

 

彩月「アイツはこの子を狙ろうとる。だからウチを追い駆けて来たんや」

 

時雨「一夜さんを?」

 

彩月「・・・・・。まあそんな所や」

 

彩月(今、一夜さんが死んだ事を話してもしゃあないなあ)

 

朱奈「うっ・・・・・。痛い・・・・・。何が起きているの・・・」

 

彩月「起きたんか」

 

 彩月に抱えられた朱奈が顔を上げた。

 一夜のしていた眼鏡は落としており朱奈の素顔が見えていた。

 

時雨「一夜さん。大丈夫?」

 

朱奈「えっ?違う・・・・・。わたしは朱奈だよ・・・・・」

 

時雨「えっ?それって・・・・・」

 

彩月(あかんなあ・・・・・。流石に説明する時間は無いで)

 

彩月「今は止めとき。まずアイツを何とかせんと・・・・・。ウチ等が死ぬで」

 

時雨「・・・・・。はい」

 

 少しドスを聞かせた彩月の声に黙って頷く時雨。

 

はぐむ「えっ?何があったの?」

 

 厳しい表情をする彩月と悲壮な表情をする時雨に戸惑うはぐむが合流する。

 

彩月「朱奈さん。ここに降ろすで。さて・・・・・。3人がかりでも厳しいやろな」

 

 朱奈を庇い前に立つ彩月。そして時雨とはぐむ。

 

時雨「でも・・・・・。アレは・・・・・」

 

はぐむ「うん。アレは・・・・・。筒地綾女さんなんでしょう?」

 

朱奈「・・・・・」

 

彩月「知っとるんか?」

 

時雨「うん。僕達もあの場所に黒羽根としていたから」

 

 梓みふゆと朱奈の眼前で筒地綾女がドッペルと魔女化を同時に発動させてキメラ綾女に変貌した時、何人もいた黒羽根の中にたまたま、宮尾時雨と安積はぐむも確かにその場にいた。

 

 

●第1話 私の答えは及び、第12話、返事はどうあれ今は共闘しませんか?より

 

 

彩月「とは言え・・・・・。今は暴走状態や。やる事は分かっとるやろ。マギウスの為にも朱奈さん守る為にも戦わんとな」

 

はぐむ「そうだよね・・・・・」

 

時雨「うん・・・・・。僕も戦う!」

 

 パルチザンを構えた彩月と巨大な剣を構えたはぐむがキメラ綾女に向かって走りだす!

 

時雨「僕が援護する!」

 

朱奈「綾女ちゃん・・・・・・・・・」

 

 何かを察した朱奈の表情は悲壮に満ちている。

 時雨の持つスリリングショットから次々と魔力を帯びた弾がキメラ綾女の身体に撃ち込まれて行く。

 その隙を見逃さずに彩月はパルチザンで移動しながらキメラ綾女を切り付ける。

 続いてはぐむの巨大な剣がキメラ綾女の身体に深い一撃を加える。

 筒地綾女の肉体を覆うドッペルや魔女に亀裂が生じる。

 

キメラ綾女「「ギィアアアアアアアアアア!!」」

 

彩月(やはり固有魔法の差ではぐむさんの攻撃の方が効いとるな)

 

 その時、キメラ綾女を構成する魔女とドッペルの肉体の裂けた部分から筒地綾女の顔面とソウルジェムが露わとなる。

 その瞬間に筒地綾女の右目を覆う様にベルの様な物が具現化すると鳴り響く。

 

 

リーン リーン

 

 

 まるで鳴り響くベルに引き寄せられる様に使い魔がこの周辺に現れる。

 同時に筒地綾女の顔は白い仮面の様な物に覆われた。

 

朱奈「うっ!?」

 

 直後に朱奈は右目を抑えてその場に倒れ込んでしまう。

 それを見た彩月の中にある筒地綾女の記憶が答えを関連付ける。

 

彩月「まさか・・・・・。呪いのハンドベル、朱奈さんの呪いか!?」

 

彩月(あの3人!余計な事をしてくれるなあ!)

 

彩月(もしかして綾女さんが朱奈さんを追い駆けて来たのは右目の呪いが原因か?)

 

時雨「マズい!」

 

はぐむ「時雨ちゃん!」

 

 襲い来る使い魔を相手にするはぐむと時雨。

 

彩月「ちっ。ウチ一人じゃキツイで。時雨さんはぐむさん。朱奈さんを守りい」

 

時雨「分かった。はぐむん!」

 

はぐむ「はい!この!」

 

 時雨とはぐむは朱奈の傍で使い魔から防衛する姿勢を見せた。

 彩月はたった一人でパルチザンを構えてキメラ綾女に向き直る。

 

彩月「全く。面倒な事や」

 

キメラ綾女「「ガアアアアアアアアア!!」」

 

 双頭から叫びながら彩月に攻撃を仕掛けるキメラ綾女。

 その攻撃を回避してパルチザンで切り付ける彩月だったが直ぐに再生してしまう。

 

彩月(ちっ。流石に魔法の相性が悪過ぎる!二人は直ぐにはこれへんか・・・・・。どうするかぁ・・・・・)

 

 彩月が考えながらキメラ綾女の攻撃を受け止めた時に目に写ったのはドッペルから露出している筒地綾女のソウルジェムだった。

 

彩月(これや!!)

 

 気付くと同時に距離を取る彩月。

 

彩月テレパシー(お二人さん!聞こえるか?)

 

時雨テレパシー(え?)

 

はぐむテレパシー(はい。聞こえてます)

 

彩月テレパシー(使い魔を倒したら協力しい。あの筒地綾女からソウルジェムを取り上げるで!)

 

はぐむテレパシー(えっ?ソウルジェムを取り上げる?)

 

時雨テレパシー(そっか!ソウルジェムと肉体は100メートル離れる事は出来ない!)

 

彩月テレパシー(そうやと言いたいが綾女さんは自分のソウルジェムを改造して100メートル制限を延長しとる)

 

はぐむテレパシー(それじゃあどうすれば)

 

彩月テレパシー(だからこれを使う)

 

 彩月の手に現れるアリナ・グレイのキューブ。

 

彩月テレパシー(このキューブを使って別空間に物理的に隔離すれば止める事は出来るやろ。使い魔を倒したらこっちの援護を頼むで)

 

時雨テレパシー(分かった!)

 

 キメラ綾女に寄って来る使い魔を倒した時雨は再びキメラ綾女に攻撃を加える!

 

彩月テレパシー(はぐむさん!腕を一本押さえてくれ!)

 

はぐむ「はっはい!」

 

 彩月に叩き付けようとして回避されて地面に垂れた腕をすかさずはぐむが巨大な剣で切り付けて地面に押し付ける。

 

キメラ綾女「「ギィアアアアアアアアアア!?」」

 

 攻撃の痛みで余計に暴れるキメラ綾女。

 その巨体が彩月の頭上に迫り退避しようとする彩月はその時、何かを感じていた。

 

彩月(なんや・・・・・。何かが・・・。起きた?)

 

朱奈(えっ・・・・・。何かを感じる)

 

 彩月と朱奈は思わず同じ方向へ目を向けていた。

 神浜市中央区の方向に。

 思わず足を止めた彩月の頭上へ迫るキメラ綾女の巨体。

 

彩月「あっ」

 

時雨「彩月さん!」

 

はぐむ「そんな!?」

 

朱奈「!?」

 

 誰しも彩月が押し潰されると思ったその時に突然、現れた巨大な影がキメラ綾女を抑え込んだ!

 

彩月「なんや!?」

 

 彩月達の目に写ったのは赤紫色をした舌を出してお腹に口の様な文様のある巨大なクマのぬいぐるみがキメラ綾女を押さえ付けている所だった。

 

時雨「巨大な・・・・・」

 

はぐむ「クマのぬいぐるみ?」

 

朱奈(何が起きているの)

 

アシュリー「大丈夫ですかー!?援護しマス!!」

 

御園かりん?「私達も支援するよ!」

 

 近くの森林からアシュリー・テイラーと御園かりん?が姿を現した。

 

彩月「助かるで!こいつの腕を押さえてくれんか!?秘策があるで!!」

 

アシュリー「分かりました!熊之介で押さえマス!」

 

 熊之介と言われたクマのぬいぐるみはその巨体を生かしてキメラ綾女の本体と腕一本を更に力強く押さえ付ける!

 

彩月「ならウチは!」

 

御園かりん?「私も!」

 

 だがキメラ綾女が残っていた2本の腕を熊之介に向けようとした時、彩月と御園かりん?が手にした武器でキメラ綾女の腕を差し止める。

 これでキメラ綾女から生えていた4本の腕が封じられる。

 

彩月「時雨さん!綾女さんのソウルジェムを取り上げるんや!」

 

時雨「えっ!?僕が」

 

彩月「今、動けるのはあんさんだけやろ!」

 

はぐむ「時雨ちゃん!」

 

アシュリー「長くは持ちまセン!」

 

御園かりん?(今はこのまま・・・・・・)

 

時雨「・・・・・。分かった!」

 

 時雨は朱奈をその場に残すとキメラ綾女の元へ向かう。

 初めは埋もれていたが、戦いの中でドッペルから露出した肉体に取り付けられているソウルジェムの位置は魔力探知で直ぐに分かった。

 

時雨「あれが筒地さんのソウルジェム」

 

 時雨が筒地綾女のソウルジェムに手を伸ばした瞬間に突如として二つの手が伸びて時雨の手を跳ね除けた。

 

時雨「えっ!?」

 

彩月「あれは・・・・・」

 

 それは筒地綾女本人の両腕だった。

 

彩月(ちっ。確かに本体があるのなら両手があるのが当たり前やろな!)

 

時雨「くっ!この!?」

 

 鋭く尖った爪先で時雨に襲い来る筒地綾女の両手。

 

はぐむ「時雨ちゃん!?」

 

彩月(マズい・・・・・。時雨さんは近接武器を持っとらん・・・・・)

 

彩月「時雨さん!黒羽根のローブを使うんや!鎖鎌で押さえつけるんや」

 

時雨「あっ。そうか。これで!」

 

 時雨は指示通りに黒羽根ローブを取り出すと羽織ろうとした。

 

キメラ綾女「「!!」」

 

時雨「わっ!?」

 

 キメラ綾女の両腕がローブを切り裂いてしまう。

 

時雨「ローブが・・・・・」

 

はぐむ「時雨ちゃん。これを!」

 

 そう言ってはぐむは自身のローブを時雨に投げた。

 

時雨「はぐむん!」

 

 今度は時雨も上手くローブを羽織ると鎖鎌で一気に筒地綾女の両腕を絡み取って動きを封じた。

 

彩月「これで動きは止めれたけど・・・・・。時雨さん。動けるか!?」

 

時雨「とても動けない・・・・・」

 

 時雨も筒地綾女の両腕を押さえるのに必死で動く事もままならなかった。

 

彩月(どうすりゃええんや・・・・・・)

 

 逡巡する彩月の視界に朱奈の姿が目に入る。

 

彩月「朱奈さん!あんたが綾女さんのソウルジェムを取り外すんや!」

 

朱奈「えっ!?」

 

時雨、はぐむ「!?」

 

彩月「今、動けるのはあんさんだけや。やるんや!」

 

朱奈「でも・・・・・。わたしに・・・・・」

 

時雨「無茶だよ!?」

 

はぐむ「だって朱奈さんは魔法少女じゃない」

 

彩月「やるしかないんや!動ける奴が。ええか!綾女さんを救えるのは朱奈さんだけなんやで。綾女さんを助けなくてええんか!」

 

朱奈「!!」

 

彩月「あの時、言うた事やろ」

 

朱奈「あの時・・・・・」

 

 朱奈の脳裏に数週間前の事が思い出されていた。

 

 

 

 数週間前のホテルフェントホープの地下室。

 封印されている《赤と青に彩られた何か》と化しているキメラ綾女。

 その前で涙を流している寝間着姿の朱奈。

 その脇に立っている寝間着姿の彩月。

 一夜と意識が入れ替わった朱奈は地下室に来ている事が多い。

 彩月を気付くと見に来ていた。

 

彩月(最近、一夜さんと朱奈さんが入れ替わる頻度が多い気がするなあ・・・・・)

 

朱奈「うっ・・・・・」

 

彩月「泣くのはええけど、それでええんか?」

 

朱奈「えっ・・・・・」

 

彩月「綾女さんを救いたくないんか?」

 

朱奈「えっ?でもわたしには何も・・・・・」

 

彩月「本当にそう思うんか?ウチは綾女さんを救えるのは朱奈さんだけだと思うで」

 

朱奈(わたしが綾女ちゃんを救う・・・・・?)

 

彩月「救うチャンスがあったらそれをみすみす逃すつもりは無いんやろ」

 

 

 

 ホテルフェントホープの地下で交わした会話を思い出した朱奈。

 

朱奈(そうだよね・・・・・。前にも彩月さんに言われていた)

 

彩月「朱奈さん。今が綾女を救う最後のチャンスやで」

 

 現実を拒否する様に目を閉じていた朱奈だったが目を開いた時には決意を固めていた。

 

朱奈「やる・・・・・。わたしがやる!」

 

 そう言って朱奈はキメラ綾女に走って近付いて行く。

 倒れ込んでいるキメラ綾女の胴体から露出している筒地綾女本体の胸元に付けられているソウルジェムに手を伸ばす朱奈。

 

朱奈「これが綾女ちゃんのソウルジェム・・・・・。ごめんなさい。綾女ちゃん!」

 

 朱奈は躊躇いながらも筒地綾女の胸元にあるソウルジェムに触れたと同時に衝撃が腕に走る。

 

朱奈「うっ!?」

 

彩月「朱奈さん!」

 

時雨「これ・・・・・。魔力の衝撃。僕達、魔法少女は平気だけど朱奈さんには・・・・・」

 

朱奈「痛い・・・・・。でも・・・・・!」

 

 腕を伸ばし続ける朱奈の全身を魔力が引き起こす衝撃が朱奈の身体に切り傷や打撲を与えて行く。

 

朱奈「うっ・・・・・・・・」

 

彩月(やはりダメか・・・・・)

 

朱奈(あ・・・。綾女ちゃん。綾女ちゃんを助けたい!)

 

 その時、突如として朱奈の身体を黄色いローブが包み込んだ。

 

朱奈「えっ!?何!?」

 

彩月(!? あれは一夜さんのローブ!?何で急に現れたんや!?それに・・・。今、一瞬やけど一夜さんの魔力を感じた様な気が)

 

 一夜の使っていた黄色いローブは普通の羽根のローブよりも高い防御力を持っている。

 朱奈の全身に新たに痛みは発生しなかった。

 

朱奈「痛くない・・・・・。今の内に!」

 

 朱奈は無理やりに筒地綾女のソウルジェムを取り外した。

 

彩月「でかした!こっちへ来るんや!一時的にジェムを封印する!」

 

朱奈「はい! えっ?身体が・・・・・」

 

 朱奈は彩月の元へ向かおうとしたが身体が動かなかった。

 

はぐむ「これって」

 

彩月「ちっ。魔力で構成された触手で拘束しとるんか!?」

 

 朱奈の全身を半透明な触手が拘束している。

 

朱奈「う・・・・。動けない・・・・」

 

 朱奈の右目からは血の涙が流れている。

 更に呼応する様に筒地綾女の右目に具現化していたベルが砕けて白い仮面に赤い瞳が不気味に輝きを発していた。

 

キメラ綾女「「グァアアアアアアア!!」」

 

彩月「どうすりゃええんや・・・・・・」

 

アシュリー「こっちも限界デス!?」

 

はぐむ「これ以上は・・・・・」

 

時雨「はっ速く・・・・・」

 

御園かりん?「それなら!」

 

 大鎌から手を放さずに御園かりん?が朱奈の方に右手を向けた。

 

御園かりん?「私の魔法(窃盗)で引き寄せる!」

 

御園かりん?(固有魔法の使用はソウルジェムに負担が掛かるけど仕方ないよね。さっきかりんちゃんがアリナちゃんを助けた様に・・・・・)

 

御園かりん?が右手を朱奈に向けた瞬間に朱奈の身体が強引に引き寄せられた。

 

御園かりん?「うぅ・・・・・!!」

 

キメラ綾女「「グァアアアアアアア!!」」

 

朱奈「・・・・・・」

 

 朱奈は魔力の触手に囚われたまま空中で御園かりん?の固有魔法で引っ張られる状態で拮抗した状態で浮かんだ状態だった。

 

彩月(どうする!?誰が動いても綾女さんの腕が自由になってまう!その瞬間に詰む!)

 

 彩月、はぐむ、時雨、アシュリー、御園かりん?の誰も動けない状況となっていた。

 

彩月(この際、誰でもええから来て欲しいで!)

 

 まるで彩月の願いに答えるかのように森の中から一人の人物が走って来た。

 巨大な鎌の様な武器を掲げて赤く輝く瞳で狙いすました様に朱奈の元へ駆けつけた。

 

水樹塁「待ってて!私が助けるから!」

 

水樹塁(状況は良く分からないけど、この子を拘束する魔力は天門眼で見る事が出来る!そして見る事が出来ると言う事は干渉が出来る!筈・・・・・。だよね!)

 

 躊躇う事無く水樹塁が大鎌を振り下ろして朱奈を拘束していた魔力の触手を切り裂いた。固有魔法である天門眼の作用によって水樹塁は見えた死相を自身の行動によって消す事が出来た。つまり本人は気が付いていないが天門眼で見えた運命に何らかの形で干渉する事が出来る事を示唆していた。

 

水樹塁「えい!」

 

 水樹塁が握り締める武器で朱奈の身体を拘束していた魔力の触手を切り捨てた!

 

朱奈「あっ!?」

 

御園かりん?「今だよ!」

 

 御園かりん?が右手を彩月に向けると同時に朱奈が彩月の元へ飛ばされて来た。

 

彩月「いよっと。ソウルジェムは!?」

 

 片手で器用に朱奈を受け止めた彩月。

 

朱奈「ここに」

 

彩月「なら!」

 

 彩月は朱奈の掌の上にある筒地綾女のソウルジェムを固有結界のキューブの中に収めた。同時にキメラ綾女はその場に沈黙してしまった。

 

キメラ綾女「「・・・・・・・・」」

 

彩月「これで大丈夫やろ」

 

時雨「本当だ。動かなくなった」

 

はぐむ「よかった・・・・・」

 

アシュリー「魔力が限界でシタ」

 

 熊之介は元の大きさに戻って行く。

 

御園かりん?(これで後は・・・・・。まあ何時でも帰れるからもう少し付き合ってあげようかな?)

 

 御園かりん?の手には小さな手鏡が握られている。

 

彩月「とりあえず全員、離れときい。どうなるか分からんで」

 

朱奈「綾女ちゃん・・・・・」

 

 朱奈の手の中で輝く封印されたキューブに包まれた筒地綾女のソウルジェム。

 だが水樹塁の表情は晴れない。

 

水樹塁(どうしよう・・・・・。みんなの死相が消えてない・・・・・)

 

 その時、たまたま顔を上げた水樹塁だけが魔力を帯びた謎の光がこの場に落下してくる事に気が付いた。

 

水樹塁「えっ!?みんなそこから離れて!」

 

 

 

□11 神浜市内 中央区 数十分前

 

 

 

炎に包まれる中央区。

周辺には瓦礫が散乱して誰の目にも大規模な災害が発生しているのは確実だった。

その最中にマギウスである柊ねむと頭から絵具の様な血を流したアリナ・グレイ(ホーリーアリナ)は互いの魔力を激突させていた。

 

ねむ「!!」

 

アリナ「アッハハハハハハハハ!」

 

ねむ(アリナ。君がこのタイミングで裏切ったと言う事はあの裏切り者達と君は繋がっていると言う事だね!!)

 

背後にいるエンブリオ・イブの近くには、里見灯花、環いろは、ういの姉妹。

そして七海やちよ、由比鶴乃、深月フェリシア、二葉さな、十咎ももこ、水波レナ、秋野かえで、八雲みたま、和泉十七夜が成り行きを見ている事しか出来なかった。

傍には数人の黒羽根達も倒れている。

 

灯花(今の状況でアリナが反逆するなんて!?せめてナナツメがいてくれたらアリナを押さえられたのに!!前にアリナを返り討ちにしたナナツメがいれば!)

 

灯花(マギウスでアリナに対抗出来るわたくしとねむに損得のみで忠誠を誓っている護衛役のナナツメがこんな時にいないなんて!!)

 

 ねむとアリナの戦いは激しさを増して行く。

 

灯花(ねむ・・・・・。あの時、どうして彩月達だけを追い出さずにナナツメに追わせたの?そんなに一夜を取り戻したかったの?でも・・・・・。こんな状況になるんじゃ判断ミスとしか思えないにゃー!)

 

灯花(ねむはそんなに一夜を助けたかったの・・・・・・)

 

 

 

 この時、その場にいた誰もが魔力を隠して暗躍する3人の姿に気付く事は出来なかったのは誰にも責められないだろう。

 ベル、ナル、あすみんの3人は黒羽根姿をして近くのビルから様子を窺っていた。

 

ベル「経緯は分からないけど、アリナ・グレイはやっぱり反逆したみたいね」

 

ナル「うん。うん。計画通りだねー。ナル達がナナツメを引き離したお陰だねー」

 

ベル「あれほど分かりやすいチャンスを逃す訳が無いわ」

 

あすみん「後はイブに仕掛けた銛(マーカー)を回収するだけ」

 

ベル「あすみん。一つ忘れているわ」

 

ナル「そうそう。場合によってはアリナ様を助けないとねー。唆した責任者としてねー」

 

あすみん「サヨナラした方が良いと思うけど」

 

ベル「でも場合によってはまだ使い道があるわ。だから死なせない方が良いわね」

 

 ベルの言葉と同時にねむとアリナの戦いにも決着が付いていた。

 ねむとアリナは互いに相打ちとなり地面に倒れたねむに対してアリナは高く吹き飛ばされていた。

 

ベル「アリナは私が確保するからマーカーの確保をお願い」

 

ナル「了解―」

 

 落下するアリナに向かって走り出すベル。

 既に鎖鎌を両手に構えており落下するアリナに鎖鎌を巻き付けて助ける算段だった。

 マギウスに属する黒羽根ならば落下物に鎖を巻き付けるなど容易い事だった。

 

ベル(まだアリナ・グレイには使い道がある。だからこそ・・・・・)

 

 炎に包まれた瓦礫に落下して行くアリナに向かって鎖鎌を向けるベル。

 

ベル「これでっ!?」

 

 驚くベルの目の前に鏡の魔女結界が落下するアリナの真下に現れる。

 ベルの目の前でアリナは鏡の魔女結界に勢いを増して吸い込まれる。

驚き足を止めたベルの眼前にはもうアリナの姿も鏡の魔女結界も無い。

 

ベル(どういう事・・・・・。どうして鏡の魔女がアリナ・グレイを?)

 

 予想外の事態に驚いたベルだったが直ぐに来た道を戻る。

 

ベル(それならマーカーだけは回収を)

 

 来た道を急いで戻るベルの眼前で無数の光が各地に拡散するのが見えた。

 それはエンブリオ・イブのいた方向だった。

 

ベル「なっ!?」

 

 驚くベルだったが直ぐにエンブリオ・イブの魔力が消滅した事に気が付いた。

 

ベル(まさかエンブリオ・イブが倒されたの?)

 

 思案していたベルの眼前に何かが落下して来た。

 

ベル「!?」

 

 寸前で踏み留まったベルの足元に何か魔力を帯びた原石の様な物が落ちていた。

 

ベル「これって・・・・・」

 

ナル「ベル―。大変だよー」

 

 そこへナルとあすみんがベルの元へ走って来る。

 

ベル「どうしたの?」

 

あすみん「エンブリオ・イブが消滅した」

 

ナル「そうなんだよー。全く予想外だったよー」

 

ベル「じゃあマーカーだった銛は?」

 

ナル「吹っ飛んじゃったよー」

 

あすみん「完全に計画が崩れたよ。もうサヨナラしても」

 

ベル「待って。じゃあこれは?」

 

 ベルは足元に落ちていた宝石を拾って二人に見せる。

 

ナル「これってー。仕込んだ銛の魔力を感じるよー」

 

ベル「それにエンブリオ・イブの魔力もね」

 

あすみん「どういう事なの?」

 

ベル「つまり形は違ったけど計画通りにマーカーは出来ていたと言う事ね。この様子だと神浜中に散ってしまったようだけど」

 

ナル「そうだねー。でも今から探すのはおススメ出来ないねー。そろそろワルプルギスの夜が来るよー」

 

あすみん「本当だ。流石にたしも死ぬ気は無いかな」

 

ベル「そうね。退却しましょう。もうここで出来る事は無いわ」

 

ナル「そうだねー。こういう時の為に仕込んだ出口もあるからねー」

 

ベル「ええ。保澄雫にマギウスからの指示と偽って作らせた私達だけの出口を使って脱出しましょう。良いでしょう?あすみん」

 

あすみん「そうだね。人を不幸にするのは後でも出来るんだから」

 

ベル「行きましょう」

 

 ベルに先導されて3人の反逆者は誰からも知られる事無く神浜市を去って行った。

 

 

 

□12 神浜市内 北養区 森林地帯

 

 

 

キメラ綾女の魔力を追ってナナツメは痛む身体を引きずる様に移動していた。

 

ナナツメ(やはり筒地綾女を殺す以外に選択は無い。最悪は朱奈と彩月ごと・・・・・)

 

 ナナツメは確率が高ければ朱奈と彩月を囮にキメラ綾女を倒す事を考えていた。

 

ねむのテレパシー?(ナナツメ!)

 

ナナツメ(!!)

 

 ナナツメが思わず足を止めてねむから預けられたウワサの栞を取り出すとウワサの栞は赤く輝き《緊急事態》と言う文字が浮かんでいた。

 

ナナツメ(これは!?ねむ様からの緊急の合図!!)

 

 ナナツメは直ぐにウワサの栞が指し示すねむの居場所へ向かって走り出した。

 ウワサの栞にはねむが特殊な操作をした場合、ナナツメに居場所を指し示す機能が施されていた。

 ナナツメは先程まで彩月の方向へ向かっていたが転じるとねむのいる方向に向かって走り出した。

 

ナナツメ(ねむ様が緊急事態を告げる程の事態・・・・・。やはりアリナ・グレイが裏切ったか・・・・・)

 

 個人的な事情からナナツメは気まぐれ過ぎるアリナ・グレイを信じていなかった。

 ナナツメの足は自身が考えるよりも速く動いていた。

 跳躍すると同時に両手、両足から出した鎖鎌を出して足場とする事で出来るだけ速く動いていた。

 

ナナツメ「!?」

 

 その時、ナナツメの向かう先に無数の光が爆発の様に散って行くのが見えた。

 

ナナツメ(!? ・・・・・。何だ?エンブリオ・イブの魔力が消えた?)

 

 ナナツメは再びウワサの栞が示す方向へ足を速めた。

 

灯花テレパシー(ナナツメ!緊急事態!速く来て!)

 

 灯花も持っていたウワサの栞を通して緊急のテレパシーがナナツメに届く。

 

ナナツメテレパシー(急いでいます)

 

 更に足を速めるナナツメ。

 ナナツメの眼前には倒れたねむの前にいる灯花達の姿が見えた。

 そのまま近くに飛び降りるナナツメ。

 

環うい「なに!?」

 

環いろは「えっ!?」

 

二葉さな「いろはさん!」

 

由比鶴乃「黄色い羽根!?」

 

深月フェリシア「なんだ!?」

 

水波レナ(何?こいつ。雰囲気がヤバイ)

 

秋野かえで(すっ凄く怖そうな人が飛び降りて来たよー)

 

 現れた黄色いローブを纏うナナツメに全員が驚いていた。

 

ナナツメ「灯花様!」

 

灯花「ナナツメ!やっと来た」

 

ねむ「・・・・・・・・」

 

 ねむは意識が無いのか変身を既に解除されている。

 

ナナツメ「ねむ様は?」

 

灯花「アリナと戦って意識が無いの!だからナナツメ。あなたはねむの事を調整屋に連れて行って」

 

ナナツメ「了解しました」

 

 ナナツメはねむを両腕で抱えるとその場から跳躍して離れた。

 

灯花「お姉様!これでねむの事は心配いらないからみんなでワルプルギスの夜の所へ行こう!」

 

環うい「ありがとう。灯花ちゃん」

 

環いろは「うん。みんな行こう!」

 

七海やちよ「そうね。行きましょう」

 

十咎ももこ「行こう!いろはちゃん!」

 

和泉十七夜「我々も向かうぞ。他の魔法少女を待たせる訳にはいかん」

 

七海やちよ(今の黄色い羽根・・・・・。何処かで会った様な・・・・・)

 

八雲みたま(今の状況じゃ調整屋に連れて行ったとしても・・・・・。どうなるか分からないわね。でもそれを灯花ちゃんも分かっている筈。だからこそ勝たなきゃ行けないと言う事よね・・・・・)

 

 それぞれの懸念を解決する間も無く環いろは達はワルプルギスの夜との戦いに向かった。

 そしてこの時、神浜市にだけは自動浄化システムが完成していた。

 

 

 

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