マギアレコード 偽書e/s memorys   作:ジャックノルテ

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マギウス裁判編
第1話 だから急ぐで。あの二人には貸しがあるからな


□1 神浜市内 里見メディカルセンター周辺にある公園

 

 

 神浜決戦から3週間後。

 公園には制服姿で里見灯花、車椅子の柊ねむ、ナナツメ、私服姿の万年桜のウワサがいる、

 灯花、ねむ、万年桜のウワサの前に膝を付いているナナツメ。

 

ねむ「ではこれで雇用契約は解除と言う事だね。ナナツメ。いや。解除した以上、君を本名で呼ぶべきかな?七部セナ」

 

ナナツメ=七部セナ「お好きな様に。異論はありません」

 

灯花「今までご苦労様にゃー」

 

万年桜のウワサ「|・・・・・・・・|」

 

ナナツメ「では」

 

ねむ「一つアドバイスだけど、この街を去る前に調整屋に顔を出した方がトラブル防止になるよ」

 

七部セナ「お心遣い感謝します」

 

 一礼して去って行くナナツメ。

 

ねむ「さよなら。七部セナ」

 

 少しだけ寂しそうな様子を見せるねむ。

 

灯花「淡泊だにゃー。もう少し情緒があると思ったんだけど・・・・・」

 

ねむ「君がそう言うなんて珍しいね。灯花」

 

万年桜のウワサ「|本当に彼女との雇用契約を解除してしまって良いの?|」

 

ねむ「良いんだよ。彼女の仕事は神浜には無いだろうからね」

 

灯花「これからの事を考えると雇用契約の解除は妥当な判断かにゃー」

 

万年桜のウワサ「|これから・・・・・・|」

 

 微かに苦し気な表情を見せる万年桜のウワサ。

 

 

 

◎ 新西区 調整屋内

 

 

調整屋には八雲みたまと七部セナだけがいる。

 

七部セナ「雇用契約が解除されたから小生は神浜市を出る」

 

八雲みたま「あら?そうなの。でもねむちゃんの護衛はどうするの?」

 

七部セナ「それは小生には関係の無い事。用は済んだ」

 

八雲みたま「え?ちょっと。神浜を出る前に調整をしても良いのよ~?今日は予約も無い訳だし」

 

七部セナ「必要は無い。急患の為に空けて置くべきだ」

 

 七部セナはそう言って八雲みたまに背を向ける。

 その時、調整屋に慌てた様子の梓みふゆが入って来た。

 

みふゆ「ナナツメさん!本当に神浜市を出て行くんですか!?」

 

七部セナ「そうだ」

 

みふゆ「どうして灯花とねむは急にあなたとの契約を」

 

七部セナ「それは当人に聞け。小生は雇用契約を解除すると言われたから従っただけだ」

 

みふゆ「ですが・・・・・・。これで良いんですか?」

 

七部セナ「・・・・・。意味が分からないが」

 

みふゆ「本当に神浜市を出てしまって・・・・・。灯花やねむと離れて本当に良いんですか?」

 

七部セナ「雇用契約が解除された以上、小生にはこの街にいる理由が無い」

 

 そう言って七部セナは調整屋を出て行ってしまった。

 

八雲みたま「・・・・・・・・。少し彼女が羨ましいわ」

 

みふゆ「何がですか?」

 

八雲みたま「わたしは調整屋よ。本来なら神浜市がどうなろうと中立を保たなくてはいけない。だけどわたしはそれを破ってしまったわ」

 

みふゆ「そうでしたね」

 

八雲みたま「彼女。ナナツメさんはある意味では調整屋に最も的確な人物かも知れないわ。本当にビジネスとしか捉えていないし、余計な感情を抱こうともしない」

 

みふゆ「ある意味ではそうかも知れません。でも近くで見ているとそうとも言えない一面はあると思います」

 

八雲みたま「それはどうしてなの?」

 

みふゆ「もし本当に余計な感情を抱かないなら一夜さんの面倒を見る事は無かった筈です。魔女化した一夜さんをワタシが止めなければ殺そうとしたんですから」

 

八雲みたま「いずれにしてもマギウスの二人が護衛をわざわざ手放したと言う事は」

 

みふゆ「はい。そろそろワタシ達も含めて覚悟を決めないといけないかもしれません」

 

 八雲みたまとみふゆは神妙な表情を見せていた。

 

 

 

 やがてマギウスの柊ねむと里見灯花からの申し出によってマギウスを裁く裁判が行われる事になった。

 裁かれるのはマギウスである里見灯花、柊ねむ。

 幹部である梓みふゆ。

 白羽根である天音月夜と天音月咲の姉妹。

 古参の《マギウスの翼》創設メンバーだった。

 それとマギウスの翼に加担したとされる調整屋八雲みたま。

 以上の6人を対象とした裁判が始まろうとしていた。

 本来ならばマギウスの一人であるアリナ・グレイも裁かれる筈だったが行方不明の為に除外された。

 

 

 

 マギウスの古参と言う事なら黄羽根であり護衛役でもあるナナツメこと七部セナと装備の開発を行っていた越馬一夜もその対象とも言えた。

 だが越馬一夜は神浜決戦で殺害された。

 マギウスとの雇用契約を解除された七部セナは神浜市を去って行った。

 そして黄羽根と言う事なら菖蒲彩月もその一人だったが、比較的最近入った追加メンバーであり行方不明の為に裁かれる対象にはならなかった。

 

 

 

□2 神浜市内 工匠区 旧車両基地

 

 

 

 元マギウスの拠点の一つだった旧車両基地の一画で制服姿の宮尾時雨と安積はぐむ、それに私服姿の菖蒲彩月だった。

 

時雨「それが観鳥さんを通して回って来た裁判の概要だよ」

 

はぐむ「うん。私にも同じ内容が来てました」

 

彩月「成程。ようは内輪で揉め事片づけようと言う事か」

 

時雨「それは・・・・・」

 

はぐむ「ちょっと言い方が・・・・・」

 

彩月「そうか?けどまあ大体あっとるやろ」

 

時雨「どうして僕らを通して情報を得ようと?」

 

はぐむ「うん。私達は下っ端だから大した情報は持っていないのに・・・・・」

 

彩月「あのな。情報と言うのは多けりゃ多い程、ええんや。後はウソを見抜く事と自分にとって有益なのを判断する力が重要と言う事やな」

 

時雨「まあ言いたい事は分かるけど・・・・・」

 

彩月「悪かったな。じゃお礼や」

 

 そう言って彩月はグリーフシードを二人に一つずつ渡した。

 

はぐむ「えっ?でもグリーフシードなんてマズいんじゃ?」

 

彩月「安心しい。それはマギウスからくすねておいたモノやから心配いらへん」

 

時雨「えっ!?マギウスからグリーフシードを盗んでいたの!?」

 

はぐむ「そんな命知らずな・・・」

 

彩月「まあ正確に言えばねむ様に頼まれてナナツメさん用に里見家の倉庫とかに仕込んだ分があったんや。ウチはそーいう事を色々と知っとるからそれを拝借しただけや」

 

時雨「なんだ・・・・・」

 

はぐむ「確かに彩月さんは黄羽根だから私たちよりも色々と知ってますよね・・・・・」

 

彩月「でも魔法少女歴じゃ負けるで。なんたってまだ本物の魔法少女になって一月も経過してないんやからな」

 

時雨「それでも僕達よりは・・・・・」

 

はぐむ「強いし度胸もあるし・・・・・」

 

彩月「強さは度胸や。度胸がありゃ力で負けても別の面で勝てるで。んでどうするんや?」

 

時雨「えっ?」

 

彩月「裁判の事や。傍聴は可能なんやろ。二人はどうするんや?」

 

はぐむ「どうする?時雨ちゃん・・・・・」

 

時雨「僕は・・・・・。余り行きたくない・・・・・。でも灯花様とねむ様の事は気になるし・・・・・」

 

はぐむ「だよね・・・。私達は灯花様とねむ様の考えに救われているし・・・・・」

 

彩月「個人的には傍聴しておいた方がええで」

 

時雨「どうして?観鳥さんが結果を配信すると思うし・・・・・」

 

彩月「そんな生温い展開になると思うか?恐らく何か起こるで」

 

はぐむ「何が起こるんですか?」

 

彩月「そうやなー。まあウチがもしマギウスに恨みを抱いているならこのチャンスを逃さんやろ。場合によっては殴り込みをするアホもいるやろ」

 

時雨、はぐむ「!?」

 

彩月「なんや?驚く事や無いやろ。今までの事や神浜決戦の事を考えれば当然の帰結や」

 

時雨「それはそうかも知れないけど・・・・・」

 

はぐむ「そんな事が起こったら私達は・・・・・」

 

彩月「だから傍聴しといた方がええで」

 

はぐむ「時雨ちゃん」

 

時雨「でも・・・。僕達は黒羽根だから許可が下りないかも・・・・・」

 

はぐむ「あっ。そうかも知れません・・・・・」

 

彩月「そうか。まあウチは傍聴させて貰うで」

 

はぐむ「えっ?」

 

時雨「でもどうやって?」

 

彩月「ウチにはいくつか伝手があるからな。それにウチは黄羽根やろ」

 

 意味ありげに笑う彩月と不安げな様子を見せる時雨とはぐむ。

 

 

 

□3 風見野市内 風見野中学周辺

 

 

 

 風見野中学から離れて行く七部セナ。

 

七部セナ「・・・・・・・」

 

 魔力を感知する七部セナ。

 

七部セナ(!)

 

 使い魔か魔女の魔力を感知した方向に習慣的に顔を向ける七部セナ。

 

七部セナ(小生には関係の無い事だ)

 

??の声「おいお前!人の縄張りで何してんだ!?」

 

 声のする方に顔を向けるとそこに赤い髪の少女が敵意をむき出しにしてこちらを見ていた。

 

??=佐倉杏子「お前!人の縄張りで何しようとして!?」

 

七部セナ「安心しろ。ここで小生は何もする気はない」

 

佐倉杏子「その言葉を信じろと?アタシはそんなに甘く無いよ」

 

七部セナ「どうすれば証明出来る?」

 

佐倉杏子「そうだね・・・・・。即刻この街から離れるのならと言いたいが、そんな事は直ぐに出来ないだろうからね」

 

七部セナ「それなら可能だ。小生はそこから出ているバスに乗る。バスは見滝原駅へ向かうバスだ。バスから降りなければ問題は無いだろう」

 

 そう言って七部セナはバス停に足を向ける。

 

佐倉杏子「なっ?おい!?」

 

七部セナ「・・・・・・・」

 

 佐倉杏子が制する間もなく七部セナはバス停に向かった。

 バス停で並んで立っている七部セナ。

 佐倉杏子は流石に街中で騒ぎを起こせずに静観するしかなかった。

 

佐倉杏子(アイツ・・・・・。本当にこのままバスに乗る気なのか?)

 

 数分でバスは来て七部セナはバスに乗って行った。

 次の停留所まで付いて行ったが降りる様子も無い。

 

佐倉杏子(なんだったんだ?アイツは・・・・・。おっと。魔女の気配は消えてない。だったらアタシは)

 

 七部セナの存在に引っかかりを覚えながらも佐倉杏子は魔女のいる方向に向かった。

 

 

 

 バスに乗った七部セナは見滝原駅に辿り着くと電車に乗り込んだ。

 

七部セナ(次は・・・・・)

 

 

 

□4 神浜市内 北養区 万年桜のウワサ結界

 

 

 

 マギウスの翼と協力者6人の裁判当日。

 万年桜のウワサ結界には既に魔法少女が集まっていた。

 

 

被告人である里見灯花、柊ねむ、梓みふゆ、天音月夜、天音月咲、協力者である八雲みたま。

傍聴人として環いろは、環うい、七海やちよ、由比鶴乃、深月フェリシア、二葉さな、和泉十七夜が来ていた。

そこから少し離れた場所には観鳥令と牧野郁美が菖蒲彩月を抑え込む様に左右の椅子に座っていた。

 

彩月「やれやれ。信用の無い事やな」

 

観鳥さん「彩月さんのやった事を考えれば、観鳥さんも当然の事だと思うよ」

 

牧野郁美「うーん。くみも令ちゃんに賛成かな?」

 

 当然と言う表情を見せる観鳥さんと複雑な表情の郁美。

 

彩月「まあ仕方ない事やな」

 

 裁判を見ながら彩月は三日前の事を思い出していた。

 

 

 

 三日前。

 観鳥さんを通してねむと連絡を取った彩月は調整屋でねむと会っていた。

 店主である八雲みたまの眼前で彩月と観鳥さん、それにねむと万年桜のウワサが顔を合わせていた。

 

ねむ「それで君は裁判を傍聴したいと言う事だね」

 

彩月「そうや。上司がどうなるか気になるやんか」

 

ねむ「・・・・・。いいよ。君は仮にも黄羽根だったからね」

 

観鳥さん「良いんですか?連絡を仲介したのは確かですけど観鳥さんは余り賛成出来ませんよ」

 

ねむ「どうせ君の事だから潜入しようとしていたんだろう?だったら手元で監視した方が効率的だよ」

 

彩月「まあ断られたらそうするつもりだったで。けど・・・。どうして裁判なんてするんや?」

 

ねむ「それは・・・・・」

 

彩月「元マギウスの翼メンバーが騒いどるのは知っとるで。けど何の為にわざわざ裁判何て派手な真似をするんや?」

 

ねむ「ケジメと言う事だね。これだけ派手な方法を取れば皆にも分かりやすく周知されるだろう?」

 

彩月「まあそうやな。テレビのニュースを見とれば分かるで。けどな」

 

ねむ「なんだい?」

 

彩月「ウチの知る限り今回の裁判は神浜市内の魔法少女だけでやろうとしているな。マギウスの翼には神浜市外から来た魔法少女もおるんのにな」

 

ねむ「・・・・・」

 

みたま「彩月ちゃん。神浜市外の子を裁判に参加させるのは無理じゃないかしら。マギウスの翼にいる魔法少女達の出身地は誰も把握していないんだから」

 

観鳥さん「確かに顔が広い観鳥さんも他の魔法少女の出身地は知らないかな。それにマギウスの翼は出たり入ったりが簡単に出来る組織と言う一面もあったからね」

 

彩月「けど調整屋さんなら知っとるんやないか?」

 

みたま「どうかしらね。わたしも調整の時に記憶を見えてしまう事があるけれどそれが何処の記憶なのか判断が付かないわ」

 

ねむ「だからこそ今回の裁判は確実に連絡が付く神浜市内の魔法少女だけに連絡したと言う訳だよ」

 

彩月「言われてみればそうやな」

 

ねむ「君、僕に言わせる為にわざと聞いてないかい?」

 

彩月「どうやろなー」

 

ねむ「はあ。まあいいよ。裁判の傍聴は認めるけど見張りは付けさせてもらうよ。それが僕からの条件だからね」

 

彩月「用心深い事やなー。長生き出来そうやで」

 

ねむ「相変わらずだね」

 

万年桜のウワサ「|・・・・・・・・|」

 

 

 

 三日前の事を思い出しながら彩月の眼前では裁判がスムーズに進んで行く。

 彩月は何もする事無く観鳥さんと郁美に見張られながら裁判の一審を見終えていた。

 

彩月「何やこの結果・・・・・」

 

観鳥さん「・・・・・・」

 

郁美「でもまだ一審だし・・・・・」

 

彩月「一審でこの結果はマズすぎるやろ」

 

 彩月の表情は完全に呆れと不機嫌を隠そうともしてなかった。

 

彩月「今の神浜市でこの6人が機能不全はマズいやろ」

 

観鳥さん「確かにね・・・・・」

 

郁美「くみもこの結果はちょっと・・・・・」

 

 万年桜のウワサによる裁判の一審の結果として里見灯花と柊ねむには極刑。

 文字通りの死刑=ソウルジェムの完全破壊が言い渡されていた。

 残りの4人である梓みふゆ、天音月夜と月咲、調整屋の八雲みたまは命こそ助かったが、魔法少女への変身を制限されると言う刑罰が下されていた。

 

彩月「本当にこれでええんか?」

 

観鳥さん「良くは無いね・・・・・」

 

郁美「でも二審があるから・・・・・」

 

彩月「・・・・・。まあええわ。聞きたい事は聞けた。ウチは帰る」

 

観鳥さん「ねむ様達と話さなくて良いのかい?」

 

彩月「話す気にもならん」

 

郁美「じゃあくみ達が外に連れて行くから。そう言う約束だから。ね?」

 

彩月「分かっとるで」

 

 観鳥さんと郁美に連れられて彩月は万年桜のウワサ結界を出ると、黙って立ち去ってしまった。

 

観鳥さん「彩月さん。裁判が気に食わなかったみたいだね」

 

郁美「うん・・・・・。くみも少し言いたい事は分かるけど・・・・・」

 

観鳥さん「観鳥さんには彩月さんは何が気に食わないのか、が気になるかな?」

 

郁美「やっぱり何か狙いがあるんだよね?」

 

観鳥さん「そう。裁判と関係があって彩月さんが狙っている事だろうね」

 

 観鳥さんと郁美は厳しい表情をしながら立ち去って行く彩月を見送っていた。

 

 

 

□5 神浜市の隣町 浄安寺近辺の路地裏

 

 

 

七部セナ「分かった。もう用は無い」

 

 路地裏にいる私服姿の七部セナの目の前には一人の少女が怯えた表情をしていた。

 傍から見れば恐喝の様にも見える。

 

怯えた少女「・・・・・・・・」

 

 怯えた少女を残して立ち去ろうとする七部セナ。

 

??「おい!何してんだ!?」

 

七部セナ「・・・・・・・」

 

 七部セナが振り返った先には既に変身している一人の魔法少女が立っていた。

 

??=南津涼子「知らない魔力を感じると思ったら魔法少女が魔法少女をカツアゲしてるなんてな」

 

七部セナ「話を聞いただけだ。小生は行く」

 

 七部セナは南津涼子に関心を払わずにその場から離れて表通りの方へ向かって行く。

 

南津涼子「なっ。待ちやがれ!」

 

 追おうとした南津涼子だったが七部セナが表通りに出た事を知って断念した。

 

南津涼子(アイツ・・・・・。だから変身していなかったのか・・・・・)

 

南津涼子「アンタ!大丈夫か?アイツに何をされたんだ?」

 

怯えた少女「いえ・・・・・。何も・・・・・。ただ・・・・・」

 

南津涼子「ただ?」

 

怯えた少女「あの人はただ・・・・・。死んだ先輩たちの事を聞いて来ただけです」

 

南津涼子「死んだ先輩?それって魔法少女だったのか?」

 

怯えた少女「はい。ただ・・・・・。先輩は魔女を求めて神浜市に行ってから亡くなったんです」

 

南津涼子(死んだ魔法少女の事を調べてる?一体何が目的なんだ?)

 

 目的の読めない相手に南津涼子は顔をしかめていた。

 

怯えた少女「あの・・・・・。もう良いですよね?」

 

 怯えた少女はそう言って立ち去っていく。

 

南津涼子「一体何だってんだ?」

 

 

 

□6 宿北サービスエリア 神浜市との境周辺 夜

 

 

 

 宿北サービスエリアにある駐車場にリヴィア・メディロスのキャンピングカーが停まっていた。

 

彩月テレパシー(待たせたなあ。リヴィアさん)

 

リヴィア「ようやく来たか」

 

 ドアロックを解除したキャンピングカーへ入って来る彩月。

 

リヴィア「全く人使いの荒い子やな。私を迎えに来させるなんて」

 

彩月「ええやないか。その分、神浜での出来事全てを伝えとるんやから」

 

リヴィア「それでどうなったんや?」

 

彩月「何の事や?」

 

リヴィア「今日の裁判の事に決まっとるやろ!」

 

彩月「わーとる。わーとる。じゃあ説明するで」

 

 彩月は今日の裁判で起こった事をリヴィアに説明した。

 

彩月「とまあこんな感じやな」

 

リヴィア「みたまの事はともかく・・・・・。これマズいんやないか?」

 

彩月「ウチもそう思うで。なんたって自動浄化システムを作った二人が極刑じゃこれからの事がどうにもならん危険性が高いで」

 

リヴィア「せやなあ・・・・・。出来るならこの裁判で神浜が纏まってくれた方が私にも都合がええんやけどな」

 

彩月「まあ二審が気に食わなきゃウチが介入するだけや。最悪、万年桜のウワサを破壊すれば裁判は無くなる訳やしな」

 

リヴィア「それじゃアンタが恨みを買うだけやないんか?」

 

彩月「構へん。構へん。どうせちょっかいを出すと言うたし今はナナツメさんもいないからな。幾らでも勝算はあるで」

 

リヴィア「気になっとたんやけど・・・・・。そのナナツメと言う護衛役は本当に神浜市を去ったんか?」

 

彩月「確かや」

 

リヴィア「でも何処にいるか分からないんやろ?」

 

彩月「そうやなー」

 

リヴィア「それって何か暗躍しとるって事や無いんか?」

 

彩月「あり得るやろな。けど・・・。追跡出来へん以上、裁判の行方に集中した方がええやろ」

 

リヴィア「そうやな。んでどうするんや?」

 

彩月「場合によっては裁判をぶっ潰す。あの万年桜のウワサならウチでも破壊出来るやろ。まあその場合、他の魔法少女がどう出るかと言う所やな。最悪はウワサの作り主であるねむ様一人の犠牲で何とかなるやろ」

 

リヴィア「ウワサは命を削って具現化した存在と聞いとる。なら確かにウワサを強引に破壊すれば作り主も犠牲にしかねないなあ」

 

彩月(最もウチにはリヴィアさんには話してない強制停止と言う切り札があるんやけどな)

 

リヴィア「それはそうとあの子の事は聞かへんのか?」

 

彩月「ああ。朱奈さんの事か。今はどうしてるんや?」

 

リヴィア「今は後ろの席で眠っとるで」

 

彩月「そか。そろそろ例の事も仕上げへんとな」

 

リヴィア「本気でアレをやるつもりなんか?」

 

彩月「それしか手が無いやろ?」

 

リヴィア「他の方法も無い訳や無いんやろ?」

 

彩月「確かにあるで。でもその内の一つは碌な結果を出さないのはウチと朱奈さんが証明しとるやろ?」

 

リヴィア「・・・・・。そうやな。まあ今日はもう遅いから安い駐車場に行くで」

 

 

 

□7 神浜市内 北養区 万年桜のウワサ結界

 

 

 

 万年桜のウワサによる裁判の一審から数日後に二審の裁判が開かれた。

 一審と同じく彩月は観鳥さんと郁美に囲まれながら裁判を傍聴していた。

 

彩月「観鳥さん。これもうマズい所や無いやろ」

 

観鳥さん「そうだね・・・・・」

 

郁美「流石に全員の意見書が遅れるなんて変だよ・・・・・」

 

 魔法少女達にウワサの力を使って送られた意見書が一通も裁判に届かないと言う異常事態が起きていた。

 なおこの場にいる魔法少女達には公平性を期す為に初めから意見書は配布されなかった。

 彩月もその事は了承の上で裁判を傍聴していた。

 

彩月(やるか・・・・・)

 

 指先に魔力を込める彩月。

 

観鳥さん「彩月さん。流石に何かしようとするのは」

 

郁美「うん。くみ達も全力で止めるよ」

 

彩月「けどこれでええんか?流石にマギウスが何か仕込んだんやろ。このままじゃ死ぬで。あの二人」

 

観鳥さん「・・・・・」

 

郁美「令ちゃん・・・・・」

 

 彩月の視線の先にいたマギウスの二人は遂に裁判の真意を明かした。

 神浜決戦までに至る行動の全ての責任を負って裁判の結果として極刑を受け入れて自殺しようとしていたのだ。

 その時、彩月達の眼前で意見書の回収に動こうとする魔法少女達がいた。

 七海やちよ、由比鶴乃、深月フェリシア、二葉さな、和泉十七夜の5人が意見書の回収の為に神浜の街へ向かった。

 被告人である灯花とねむ、天音月夜と月咲、梓みふゆと八雲みたまは動けず、環いろはとういの姉妹は万年桜のウワサと向き合っていた。

 

彩月「もうええわ。見てられん。観鳥さん。ウチも回収の手伝いに行ってもええか?」

 

観鳥さん「手伝ってくれるのかい?」

 

 観鳥さんも郁美も意外そうな顔を見せていた。

 

彩月「壊す方法は一つや無いやろ」

 

郁美「うん!それなら3人で行こう!」

 

観鳥さん「そうだね。こういう状況だし仕方ないね。みふゆさん。観鳥さん達も意見書の回収に向かいます」

 

みふゆ「分かりました。観鳥さん。牧野さん。お願いします。それと・・・・・。彩月さん。信じて良いんですね?」

 

彩月「好きにするとええで」

 

 振り向かずに彩月と観鳥さん、郁美は万年桜のウワサ結界を出て行った。

 北養区の森林地帯に出た3人は神浜の街へと向かって走りながら魔法少女へ変身して跳躍する。

 

観鳥さん「で?どうするつもりなんだい?」

 

彩月「初めに出てった七海やちよ達なら神浜市にいる大概の魔法少女は説得に応じるやろ。ウチが狙うのはそいつらや無い。元羽根の魔法少女やな」

 

郁美「どうして元羽根を?」

 

彩月「全員が全員、この裁判の事を良く思っている訳や無いやろ。それに・・・・・。極刑の事を聞いて喜んでる奴もおったと聞いたしな」

 

観鳥さん「それは聞き捨てならないね。どうして知ってるんだい?」

 

彩月「ウチにも情報源はあるからなあ。さて・・・・・。まずは電話をと」

 

 走りながら彩月はスマホを取り出して電話を掛けた。

 

彩月電話「もしもし。時雨はんか?」

 

時雨電話「えっ?彩月さん。何かあったの?」

 

彩月電話「意見書は手元にあるか?」

 

時雨電話「あるけど・・・・・。二審の裁判は延期されたんでしょ?だから意見書はまだ手元に」

 

彩月電話「・・・・・。二審の裁判は今日や」

 

時雨電話「えっ?それってどういう」

 

彩月電話「時間が無い。今すぐに意見書を集めている魔法少女と連絡とりい。じゃないとマギウスがマジで死ぬで。後、他の羽根にもこの事を知らせときい」

 

時雨電話「わっ分かった」

 

 慌てた様子で時雨は電話を切っていた。

 

彩月「さて・・・・・。ウチは工匠区に行くけど二人はどうするんや?」

 

観鳥さん「そうだね・・・・・。まあ彩月さんを監視すると言う役割もあるから付いて行くよ」

 

郁美「くみも賛成だよ!」

 

彩月「じゃあ工匠区に行きましょか」

 

 暫く走っていると彩月のスマホに電話が着信した。

 

彩月「なんや?時雨さんか?」

 

彩月電話「もしもし。どうしたんや?」

 

時雨電話「うっ・・・・。彩月さん。今襲われてるんだ!?」

 

彩月電話「何処にいるんや?」

 

時雨電話「旧車両基地だよ。他の羽根に呼び出されて・・・・・」

 

彩月電話「待っとれ。今行く」

 

 電話を切った彩月の表情は渋い。

 

彩月「マズいで。旧車両基地でなんかあったらしい」

 

観鳥さん「旧車両基地?マギウスの拠点だった場所の一つだね」

 

郁美「何が起きているのかな?」

 

彩月「もう予想は出来とる筈やろ。意見書の回収を妨害しているバカがおるって事や」

 

観鳥さん「それって」

 

郁美「そんな事したら・・・・・」

 

彩月「やった事を考えれば、そう言うバカが出るのも無理ないやろ。ウチだって片棒を担いだ口やしな」

 

観鳥さん「・・・・・・・。観鳥さんも思い当たる節はあるよ」

 

郁美「それを言ったらくみだって・・・・・」

 

彩月「だから急ぐで。あの二人には貸しがあるからな」

 

 彩月達3人は跳躍を繰り返して旧車両基地へ急いで向かって行く。

 

 

 

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