マギアレコード 偽書e/s memorys   作:ジャックノルテ

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第2話 私はあなた達を信じている訳じゃ無いんだから

□8 神浜市内 工匠区 旧車両基地

 

 

 

 旧車両基地からは既に無数の魔力反応が出ている。

 そこでは既に羽根同士の戦闘が行われていた。

 

白羽根8「やめろ!やめるんだ!」

 

黒羽根「うるさい!邪魔をするな!」

 

白羽根8「くっ・・・・・。なんでこんな事に」

 

 その場にいる魔法少女は素性を隠す為か黒羽根や白羽根姿をしていた。

 

時雨「うっ・・・・・」

 

はぐむ「時雨ちゃん!?」

 

時雨「どうしてこんな事に・・・・・」

 

 倒れ込む時雨を庇うはぐむ。

 

白羽根2「お前達!マギウスの信奉者だな!」

 

はぐむ「!?」

 

時雨「こんな事をしている場合じゃ!?速くしないと灯花様とねむ様が!?」

 

白羽根2「それで良いじゃないか!」

 

時雨 はぐむ「「え!?」」

 

白羽根2「アイツらのせいで神浜市はこんな事になったんだ!!だったら責任を取らせて死なせればいいだろ!」

 

時雨「何を言って!?」

 

はぐむ「灯花様とねむ様がいないと」

 

白羽根2「アイツらがいたからこんな事になったんだろう!」

 

 白羽根2が鎖鎌を時雨とはぐむに振り下ろした!

 

時雨 はぐむ「「!!」」

 

 その時、白羽根2と時雨、はぐむの間に一本のパルチザンが投げられて来た。

 

白羽根2「何!?」

 

 思わず飛び退く白羽根2がパルチザンの飛んで来た方向を見ると近くの屋根の上には三つの人影があった。

 

彩月「ちっ。流石に当たらんか」

 

観鳥さん「ちょっと!下手したら誰かに当たる所だったよね!?」

 

郁美「えっ!?そんな酷い事」

 

彩月「魔法少女やし当たっても死なへんやろ」

 

観鳥さん「そう言う問題じゃ無いよ!」

 

彩月「それよりウチらも行くで!」

 

 彩月が飛び降りて切り込んだのを見ると観鳥さんと郁美も飛び降りて時雨とはぐむの元へ駆け付けた。

 周囲では羽根同士の戦闘が続いている。

 

観鳥さん「大丈夫かい?」

 

はぐむ「大丈夫です・・・・」

 

郁美「何があったの?どうして羽根がこんなに集まっているの?」

 

時雨「・・・・・。彩月さんから電話があった後に白羽根の人から連絡があったんです」

 

観鳥さん「連絡?」

 

時雨「はい。連絡では羽根のみんなで集まって意見書を纏めて届けると同時にマギウスを救いに行くって話だったんですけど・・・・・・」

 

はぐむ「でもわたし達が来た時点で急に白羽根の人が周囲の羽根を攻撃し出して・・・・・」

 

時雨「黒羽根の何人かも同調して同士討ちみたいになっちゃって・・・」

 

観鳥さん「成程・・・・・。彩月さんの言う通りだった訳だね」

 

郁美「じゃあとにかく止めないとだね」

 

観鳥さん「二人共立てる?立てるなら戦闘を止める手伝いをして欲しいんだけど?」

 

時雨「はい・・・・・。大丈夫です」

 

はぐむ「わたしも大丈夫です」

 

観鳥さん「じゃあ・・・・・。みんな!戦いを止めるんだ!」

 

 観鳥さんと郁美は時雨とはぐむを率いて周囲の羽根の鎮圧に向かった。

 黒羽根を簡単に捌く彩月に別の黒羽根が飛び掛かって来た!

 

彩月「!!」

 

黒羽根「やあぁ!」

 

 彩月に迫る鎖鎌の刃を別の白羽根の刃が受け止めた。

 

白羽根1「おっとー。そうはさせないよー」

 

彩月(その声!)

 

白羽根1「今はお互いに目的は同じでしょー」

 

 白羽根1=ナルは黒羽根を彩月から引き離して行く。

 体勢を立て直した彩月の目の前にまるで狙いすましたかのように白羽根2が姿を見せる。

 

彩月「さあーて。じゃあウチらも続きをしようか」

 

白羽根2「邪魔をするな!」

 

彩月「生憎とマギウスに死なれちゃウチが困るんや。それに・・・・・」

 

白羽根2「?」

 

彩月「あんさんとはリベンジしたくてなあ!」

 

白羽根2「何を?」

 

彩月「洗脳されたあんさんに傷付けられた右目が疼くと言えば満足かあ!?」

 

白羽根2「そんな事・・・・。私が知るか!!」

 

 彩月は新たに形成したパルチザンで白羽根2の鎖鎌による攻撃を捌いて行く。

 

彩月(ちっ。流石に面倒やな)

 

 走りながら彩月はパルチザンの柄と刃のサイズを縮めた。

 

白羽根2「なっ!?」

 

彩月「手数が多いならスピードで対抗するまでや!」

 

 先程まで刃の大きい槍だったパルチザンが今は片手で扱えるナイフサイズとなった事で大ぶりな攻撃から小ぶりの攻撃となって鎖鎌の攻撃を弾いて彩月と白羽根2の距離を縮めて行く。

 

彩月(魔法少女の武器は魔力で出来とる。ならサイズも自由自在やし、そもそも魔力次第で幾らでも作れる。普通の魔法少女は1度イメージしたサイズの武器をずっと使うが、強固なイメージがあるのなら幾らでも武器のサイズを咄嗟に変えられる!綾女さんの知恵が役にたったな!)

 

白羽根2「舐めるなあ!」

 

彩月「!!」

 

 白羽根2の振り下ろした鎖鎌の重みが先程以上の重みを帯びた事に彩月は驚いた。

 

彩月(重みが増した!?もしかして固有魔法か!)

 

 威力が上がった事で上手く弾けずに身体に切り傷を負って行く彩月。

 

彩月(ジリ貧やな。なら・・・・・)

 

 鎖鎌が振り下ろされた瞬間に彩月は強引に一歩を踏み出した。

 振り下ろされた鎖鎌の刃の軌道のど真ん中に彩月は飛び込んでいた。

 

白羽根2「なっ!?」

 

 驚愕の表情を見せる白羽根2だが振り下ろした武器は止まらない。

 

彩月「!!」

 

 歯を食いしばった彩月の身体に鎖鎌の刃で真っ直ぐに切り刻まれる。

 僅かに体を反らした為、深手を負う事は無かった。

 

彩月「っ!?らぁ!!」

 

 痛みで叫びながら伸ばした彩月の左掌からパルチザンが一気に伸びて白羽根2の胴体に迫る!

 

白羽根2「んぅううううう!!」

 

 必死の思いで身体を脇へ反らしてパルチザンの刃を避けた白羽根2。

 

彩月「甘い!!」

 

 彩月が叫ぶと同時に刃は真ん中からハサミの様に左右に広がった瞬間にパルチザンを後方に引くと白羽根2の身体に大きな切り傷を与えていた。

 

白羽根2「ぐっ・・・・・」

 

彩月「あんた・・・・・。思ったより強かったんやな。見直したで」

 

 彩月の誉め言葉に気を失って倒れた白羽根2は答える事は出来なかった。

 そこへ新たな魔力反応がこの場所へ向かって来た。

 

観鳥さん「この魔力・・・・・」

 

郁美「もしかして!?」

 

 観鳥さんと郁美の予想通りの人物がその場に現れた。

 東のリーダーである和泉十七夜と相野みと、伊吹れいら、桑水せいかの4人だった。

 

和泉十七夜「お前達!今すぐに戦いを止めろ!」

 

伊吹れいら「それ以上戦うって言うなら」

 

相野みと「私達が相手になるよ!」

 

桑水せいか「・・・・・!」

 

 既に和泉十七夜と3人の魔法少女は完全に武器を構えて臨戦態勢を取っていた。

 特に相野みとの弓は既に魔法少女達に狙いを定めている事が誰の目にも明らかだった。

 

黒羽根達「・・・・・・・。」

 

白羽根達「・・・・・・・」

 

 この場にいる魔法少女の殆どが神浜東のリーダーである和泉十七夜の強さを知って怖気づいていた。

 全ての魔法少女がその場で動きを止めていた。

 

黒羽根「邪魔をしないで下さい!これは・・・・・・」

 

和泉十七夜「おい。無駄な事は止めた方が良い。心を読まなくても嘘だと言う事が動きから分かるぞ」

 

黒羽根「う・・・・・・・」

 

和泉十七夜「今、我々はマギウスへの意見書を回収している。君達も提出したい意見書があるのなら我々に提出してくれ。我々から回収役に届けさせてもらう」

 

時雨「はい。僕の意見書を」

 

はぐむ「私の意見書も」

 

 時雨とはぐむが和泉十七夜に渡したのを皮切りに多くの羽根が意見書を渡して行った。

 元々、意見書を所持していない彩月と観鳥さん、郁美はともかくとして何人かの羽根は渡すのを拒否していたが、その場にいた過半数以上の羽根が渡した以上、結果は明白と言えた。

 

和泉十七夜「意見書は回収させて貰った。急ぐぞ!」

 

 和泉十七夜達が意見書を持って行った後も彩月や一部の消耗していた羽根はその場に留まっていた。

 傷付いた彩月や羽根達は思い思いにその場に座り込んでいた。

 いつの間にか白羽根1=ナルは姿を消していた。

 

郁美「その人と彩月ちゃんは何かあったの?」

 

彩月「黄羽根だった時に戦ったからなあ。これでウチとは一勝一敗と言う事やな」

 

 彩月の近くには白羽根2が倒れたままにされている。

 

観鳥さん「そのままでいいのかい?」

 

彩月「別に死にやしないんやからそのままでええやろ。ウチらは魔法少女なんやから」

 

観鳥さん「呆れたね」

 

 そこへ鳴り響く観鳥さんのスマホ。

 

観鳥さん「うん。どうやら裁判は終わったみたいだね。みふゆさんから結果の連絡が来たよ」

 

郁美「どうなったの!?」

 

観鳥さん「マギウスのお二人の極刑は避けられたよ。観察処分に落ち着いたよ」

 

時雨「本当!?よかった・・・・・・・」

 

はぐむ「安心して腰が抜けちゃった・・・・・・・」

 

 それを聞いて安心する羽根。

 厳しい表情を見せる羽根と羽根達の表情はそれぞれと言えた。

 

彩月「さて。結果も聞いたしウチは行くで」

 

 結果を聞くと彩月は立ち上がりその場から去ろうとした。

 

観鳥さん「行くのかい?」

 

彩月「裁判も終わったし、もうウチの用は無いからな。ウチはまた何処かに行くだけや」

 

郁美「彩月ちゃん。本当に行くの?」

 

彩月「ああ。行くで。そうや。観鳥さん。一つ。マギウスに伝言ええか?」

 

観鳥さん「いいよ。何を伝えればいい?」

 

彩月「またその内に挨拶に行くでと」

 

観鳥さん「分かった。伝えとくよ」

 

彩月「頼んだで」

 

 そう言って彩月はその場から去って行った。

 

観鳥さん「その内に挨拶ね・・・・・。どう聞いてもそれって一波乱ありそうだね」

 

郁美「令ちゃんが言うと信憑性が増しちゃうよ」

 

時雨(あの人。これからどうするんだろう?)

 

はぐむ(何だかまた直ぐに会う気がするけど・・・・・)

 

 

 

□9 神浜市内 新西区 みかづき荘

 

 

 

 マギウスの翼を対象とした裁判は終結した。

 紆余曲折あれ里見灯花と柊ねむが極刑に処されると言う事態は避けられた。

 里見灯花と柊ねむのマギウスの翼の創設者の二人は魔法少女への変身する事が不可能となった。

 残る梓みふゆ、天音月夜、天音月咲、調整屋の八雲みたまと言った面々も執行猶予と無罪と言う判決を下された。

 なお裁判で裁かれなかった羽根の中にも素性を露わにしたことで裁判を要求する動きもあったが人手不足を理由に無罪とされた。

 それから数日後にみかづき荘に里見灯花、車椅子の柊ねむ、梓みふゆ、万年桜のウワサ、環いろは、環うい、七海やちよ、由比鶴乃、深月フェリシア、二葉さなの10人が、みかづき荘に集まっていた。

 

 

ピンポーン

 

 

 そこへインターホンが鳴り響く。

 

深月フェリシア「ん?なんか来たみてーだぞ」

 

七海やちよ「宅配便かしら?」

 

灯花、ねむ「!」

 

 灯花とねむは意味ありげに顔を合わせていた。

 

由比鶴乃「私が出ておくよ」

 

 ドアの近くにいた由比鶴乃が玄関へと向かった。

 直ぐに由比鶴乃は戻って来たが複雑な表情を見せている。

 

二葉さな「鶴乃さん?どうしたんですか?」

 

七海やちよ「届け物じゃなかったの?」

 

由比鶴乃「それが・・・・・。来て貰った方が速いかも」

 

 由比鶴乃の背後から一人の人物が部屋に入って来た。

 

七海やちよ「あなたは!?」

 

 それは七部セナだった。

 

七部セナ「・・・・・・・」

 

みふゆ「えっ!?ナナツメさん!?どうしてここに?」

 

環うい「灯花ちゃん!ねむちゃん!この人って」

 

ねむ「うん。前に僕と灯花の護衛役をしていた黄羽根のナナツメこと七部セナだよ」

 

灯花「ここに来たって事は」

 

七部セナ「はい。頼まれていた調査は終わりました」

 

みふゆ「待って下さい!?ナナツメさんとの雇用契約は解除されたんですよね?だから裁判の被告には出来ないと」

 

灯花「確かに雇用契約は解除したけど、その後に調査依頼をしていたんだにゃー」

 

みふゆ「それって・・・・・。ワタシ達を騙している事になりませんか?」

 

ねむ「かもね。でも裁判の結果として僕らがいなくなっても問題が起きない様に僕らの生死に関わらずにみかづき荘に調査の報告する様にと頼んでおいたんだよ」

 

環いろは「それって一体何の報告なの?」

 

七部セナ「菖蒲彩月に関する調査です」

 

みふゆ「何の為にそんな調査を?」

 

ねむ「彩月の事で不可解な点があってね」

 

環いろは「それってどう言う事?」

 

灯花「裁判の前にマギウスの翼での活動を纏めていると桜子が不可解な部分を見つけたんだにゃー」

 

環うい「桜子ちゃんが?」

 

柊桜子「|そう。灯花やねむが纏めたレポートやウワサ達から聞いた話、それに梓みふゆや白羽根が提出したレポートを読んでいて気付いた|」

 

七海やちよ「何に気付いたの?」

 

柊桜子「|隣町にいたマギウスの翼に所属していた魔法少女数名が不自然な形でマギウスの翼を脱退している事が分かった|」

 

環いろは「不自然な形って?」

 

ねむ「黄羽根と揉め事を起こした後にマギウスの翼を脱退したんだよ」

 

みふゆ「!? もしかしてそれって改革派の事ですか?」

 

灯花「そうだよー。まあ別にいなくなっても問題は無かったから特に追跡はしなかったんだけどにゃー」

 

七海やちよ「改革派って、もしかしてマギウスにも派閥があったのかしら?」

 

ねむ「確かにあったね。マギウスにおける派閥は・・・。大まかに言えば僕と灯花派。それとみふゆ派。少数だけどいたらしいアリナ派。それと改革派だね」

 

由比鶴乃「その改革派って一体どういう人たちなの?」

 

ねむ「まあ改革派は改革とは名ばかりでマギウスの翼内部で自分達が主導権を握りたいだけの連中だからね」

 

灯花「隣町の魔法少女だけでチームを組んで自作の腕章を付けていたよねー」

 

みふゆ「それで改革派の脱退と彩月さんに何の関係があるんですか?」

 

七部セナ「小生が調べた所、改革派の中心メンバーだった4人は、マギウスの翼を脱退後に隣町で彩月に倒されています。彩月もその前後に不可解な動きをしています」

 

全員「!?」

 

ねむ「灯花。確認だけど彩月がそんな事をしたって知っていたかい?」

 

灯花「知らないよー。ねむも知らなかったんだよね?」

 

ねむ「勿論。それでナナツメ。倒したって言ったけど、どうやって倒したんだい?当時の彩月はまだ疑似魔法少女だった筈だよ」

 

七部セナ=ナナツメ「・・・・・・・。不意打ち。正面切っての戦闘。奇襲に闇討ち。出来る事を全てして倒したそうです」

 

ねむ「倒したって言う事は・・・・・。相手は生きているのかい?」

 

七部セナ「いえ。彩月は倒した相手からソウルジェムを強奪したそうです」

 

ねむ「!?」

 

 絶句するねむ。

 

ねむ「何の為に・・・・・」

 

灯花「その改革派が脱退した時期って確か・・・・・。中央区でお姉様が名無し人工知能のウワサと戦っていた時期だよねー」

 

七部セナ「生き残って脱退したメンバーに話を聞いた所、脱退して暫くすると彩月は現れたそうです」

 

ねむ「あの時・・・・・。僕には彩月に変わった様子は見られなかった・・・・・・」

 

灯花「わたくしも・・・・・」

 

みふゆ「やっちゃんと再会して色々とありましたけど、ワタシも気が付きませんでした・・・・・」

 

 ねむ、灯花、みふゆの脳裏に浮かぶ彩月の姿。

 

万年桜のウワサ「|ねむ。灯花。大丈夫?|」

 

ねむ「大丈夫だよ」

 

灯花「わたくしも大丈夫・・・・・」

 

七海やちよ「話を聞いていたけど・・・・・。その彩月って子。行方不明のアリナと同じ位に危険な存在に思えるわ」

 

由比鶴乃「うん。同感だね」

 

環いろは「でも・・・・・。あの裁判の時に意見書の回収を手伝ってくれたんですよね?」

 

ねむ「それは確かだね」

 

深月フェリシア「じゃーいいヤツなんじゃねーの?」

 

二葉さな「そうじゃなくて何か狙いがあったから助けただけなのかも知れません」

 

環うい「灯花ちゃんとねむちゃんを助けてくれたからわたしは悪く思いたくないけど・・・・・。今の話を聞いちゃうと判断が付かなくなっちゃった・・・・・」

 

 その場に突然、流れ込む魔力反応。

 

全員「!!」

 

ねむ「この魔力・・・・・」

 

灯花「彩月だね」

 

みふゆ「どうしてここに!?」

 

七海やちよ「どうやら玄関の方にいるみたいね。それにこの反応は一人じゃ無いわね」

 

由比鶴乃「誰だか分からないけど、もう一人いるね」

 

環いろは「全員で出ましょう。流石にこれだけの魔法少女に戦いを挑んでこないとは思うから」

 

 十一人がみかづき荘の玄関から外に出た。

 道路に向かう通路の途中にある階段に背を向けて頬杖を付いて座っている一人の少女がいた。制服姿の彩月である。

 

彩月「ナナツメさんがおるのは予想外やけど、お久しぶりやなあ」

 

七部セナ「・・・・・・・」

 

ねむ「彩月・・・・・・」

 

灯花「彩月・・・・・・」

 

みふゆ「彩月さん。改革派の事で聞きたい事があります」

 

彩月「ああ。アイツらの事か。思うたより気付くの遅いな」

 

ねむ「やっぱり・・・・。君はソウルジェム奪ったんだね」

 

彩月「必要やったし裏切り者だったんだから問題無いやろ。前のねむ様や灯花様なら何も言わんかったと思うんやが?」

 

灯花「確かにそうだねー」

 

ねむ「僕はそうでもないよ。君がソウルジェムを奪った目的はなんだい?」

 

彩月「簡単や。疑似魔法少女になって魔法を得た以上、いずれウチは本当の契約をするつもりやった。だからソウルジェムを奪ったんや。ウチが有効活用する為になあ」

 

灯花「そっか。他人のソウルジェムを利用して因果律を上げてより確実に契約を出来る様にしようとしたのかにゃー?」

 

彩月「まあ大体は合ってるで」

 

ねむ「それで君は・・・・・。今日ここに何をしに来たんだい?」

 

彩月「ああ。それは・・・・・。ほら。隠れんで出て来い」

 

 彩月の声を聞いて階段の影から一人の少女が少し顔を伏せながら姿を見せた。

 

ねむ「君は!?」

 

万年桜のウワサ「|ねむ。落ち着いて|」

 

 思わず車椅子から上半身を動かし過ぎたねむを制する万年桜のウワサ。

 その少女は越馬一夜の失った肉体を代行した少女、朱奈だった。

 

ねむ「一夜・・・・・。じゃなくて・・・。君は朱奈だね」

 

灯花「・・・・・・・」

 

 少し悲し気に声を出すねむの様子に灯花も目を伏せていた。

 

朱奈「・・・・・・・」

 

彩月「黙っとっても分からんで」

 

 先を促す彩月の声を聞いて朱奈は口を開いた。

 

朱奈「ねむ様。灯花様。わたしは・・・・・。朱奈でもあるし一夜でもあるんです」

 

灯花「どういう事なのー?」

 

朱奈「わたしの中に一夜さんがいて・・・・・。魂が混ざり合ったみたいな・・・・・。そんな感じです・・・・・」

 

ねむ「一夜のソウルジェムを強引に接続したからかな・・・・・」

 

彩月「それだけやないで。ぶっちゃけねむ様はそれだけじゃ無くて朱奈さんから《魔女を引き寄せる呪い》を具現化して取り出しとるよな?」

 

ねむ「・・・・・。そうだね。具現化した呪いをハンドベルの形に収めて、魔女を引き寄せる道具にした。アリナが欲しがったから、そのまま渡したままだけど」

 

彩月「そこや。元々呪いが入っていた右目と言う器から呪いが抜けてしまった。じゃあ空いた器はそのままか?否や。ここからはウチと協力者の推測やけど・・・・・。最初は恐らく一夜さんのソウルジェムから放出される魔力が僅かずつ器に溜まるだけやった。けど一夜さんのソウルジェムが砕かれた際に魂が魔力の溜まった器=右目に入り込んで一夜さんと朱奈さんの魂が混ざり合ったみたいやな。右目が疑似的なソウルジェムになった様な物や」

 

朱奈「・・・・・・・」

 

 朱奈がそれまで伏せていた顔を上げると右目が藍色に輝いていた。

 左目は赤茶色で左右の瞳の色が違うオッドアイとなっていた。

 

ねむ「その右目の輝き・・・・・。魔力を帯びているね」

 

彩月「副作用で一夜さんの魔法もある程度使えるようやけどな。最も溜まっていた魔力が無くなればまた人間に元通りや。これも一種の疑似魔法少女やな」

 

ねむ「これから君は何をするつもりだい?」

 

彩月「それなあ」

 

 

 

???テレパシー(いい加減にしたら?朱奈の事を危険に晒すだけならこれ以上は黙って無いわよ)

 

 

 

 突然、割って入った新たな人物のテレパシーに全員が驚きを隠せなかった。

 

全員「!?」

 

彩月「なんや。せわしない人やな」

 

七海やちよ「今のテレパシーの声・・・・・。聞き覚えがあるわ」

 

みふゆ「はい。ワタシもあります」

 

???テレパシー(そうね。あなた達二人とは前にも会ったわ。特に梓みふゆ。あなたとは直近で一緒に戦ったじゃない)

 

みふゆ「一緒に戦った・・・・。 !! まさか」

 

???テレパシー(そうよ。筒地綾女よ)

 

灯花「そんな!?」

 

ねむ「あの状態からどうやって」

 

 灯花とねむの脳裏にはドッペルと魔女が入り混じった《赤と青に彩られた何か》になった筒地綾女の姿を知っていた。

 両者はあの状態から筒地綾女が意識を取り戻すとは思わなかったからだ。

 

彩月「苦労したで。あんたを蘇らせるんわ」

 

筒地綾女テレパシー(理由はどうでも良いわ。私は朱奈の為にいるんだから)

 

みふゆ「それであなたは何処にいるんですか?どうして姿を見せないんですか?」

 

綾女テレパシー(そんなのはどうでもいいのよ。伏兵と言った所ね。私はあなた達を信じている訳じゃ無いんだから)

 

彩月「そうやな。だから綾女さんには隠れて貰ったんや。それにこれからウチと朱奈さん、綾女さんの3人でチームを組むで。今日はその挨拶やな」

 

ねむ「成程・・・・・。君の言いたい事は分かったよ。それで君達は僕達の敵になるつもりかい?」

 

彩月「さあなあ。ウチはこれから好きにやるだけやで。まあ目的はあるけどな」

 

灯花「何が目的なのー?」

 

彩月「教えないでー。ベー」

 

 振り向きざまにアカンベーをした。

 

灯花「むー」

 

深月フェリシア「やっぱりアイツ嫌な奴じゃねーか?」

 

二葉さな「私もそう思います」

 

由比鶴乃「確かにその通りだね」

 

環いろは「私たちと協力する事は出来ないんですか?」

 

環うい「そうだよ!これから自動浄化システムを広げなきゃいけないんだから!」

 

環いろは「一人でも多くの魔法少女の力が必要なんです!」

 

彩月「嫌やで。ウチのしたい事や無いし」

 

七海やちよ「いろは。やめなさい。とてもじゃ無いけど協力できるとは思えないわ」

 

みふゆ「ワタシもそう思います。それに・・・・・。ワタシも意図的に魔法少女からソウルジェムを奪う様な相手を仲間には出来ないと思います」

 

彩月「まあ当然の帰結やな。マトモな人なら、そう思うのが当然や」

 

灯花「今の彩月に言われると腹立つにゃー」

 

ねむ「同感だね」

 

綾女テレパシー(もうこれ以上は話す必要は無いでしょう?)

 

彩月「そうやな。んじゃウチらは行くで。勿論、追って来ないやろ?」

 

ねむ「何をされるか分からないから誰にも追わせないよ」

 

七部セナ「・・・・・・・」

 

朱奈「待って!まだ・・・・・。わたしは一夜さんとして伝えなきゃいけない事があるから!」

 

彩月「なら伝えんと」

 

 興味が無いのか顔を反らす彩月。

 一度目を閉じて再び開く朱奈。

 

朱奈「・・・・・。灯花様。ねむ様。みふゆさん。ナナツメさん。今までアタシを助けてくれてありがとうございます」

 

灯花「えっ。今の」

 

みふゆ「今、一夜さんの言葉が聞こえました」

 

ねむ「うん。僕にも一夜の声が聞こえたよ」

 

七部セナ「・・・・・・・」

 

七部セナ(礼を言われる様な事をしていないが・・・・・・)

 

朱奈「さよなら・・・・・」

 

 そう言って朱奈は駆け出して行く。

 

彩月「まっお別れは必要やしな。じゃあさいなら」

 

 そう言って彩月もその場から手を振って朱奈を追う。

 

七海やちよ「とんでもなく厄介な相手が出て来たわね」

 

みふゆ「はい。彩月さんの闇があそこまで深いと思いませんでした・・・・・」

 

環いろは「あの人とも戦わなきゃいけないのかな・・・・・」

 

環うい「お姉ちゃん・・・・・」

 

万年桜のウワサ「|4人を悲しませるなら私が容赦しない|」

 

ねむ「・・・・・。七部セナ。これからの契約の事だけど」

 

七部セナ「はい」

 

灯花「今日からわたくし達との雇用契約は復活です!」

 

七部セナ「了解しました。それではこれからも小生は護衛ですか?」

 

ねむ「いいや。ナナツメ。君には神浜市を回って自動浄化システムの事を調べ回って欲しい。それと・・・・・。報告にあった君と彩月が戦った裏切り者の事も含めて調べて欲しい」

 

灯花「わたくし達も自由に動けないからよろしくねー」

 

七部セナ=ナナツメ「了解しました。それでは直ぐに」

 

ねむ「報告はいつも通りに頼むよ」

 

ナナツメ「はっ」

 

 そう言ってナナツメはその場を去って行った。

 

みふゆ「それにしても・・・・・。結局、綾女さんは姿を見せませんでしたね」

 

灯花「ナナツメの報告から推測するとー。そもそも筒地綾女の肉体って、わたくし達がワルプルギスの夜と倒した時に一緒に吹き飛んじゃったんだよね」

 

みふゆ「じゃあ、あの綾女さんの声は一体?」

 

ねむ「恐らくだけど・・・・・。僕が一夜や彩月に施した、ソウルジェムを持ち主ではない人間に接続する魔法を応用したんじゃないかな?」

 

みふゆ「と言う事は、彩月さんと繋がっていたと言う事ですか?」

 

ねむ「それなら姿を見せなかった事に説明は付くけど・・・・・。そうとも言い切れないね」

 

みふゆ「どういう事です?」

 

ねむ「逆もまた然りと言う事だよ」

 

灯花「ああ。そう言う事かにゃー」

 

みふゆ「まさか」

 

ねむ「誰かの身体に強制的に筒地綾女のソウルジェムを接続するとかね」

 

灯花「でもそこまでするかにゃー?」

 

ねむ「どうだろうね?そもそも僕達は彩月の魔法が何なのか分からないからね」

 

みふゆ「そう言えばそうですね。魔法を強制制御するだけとも思えませんから」

 

ねむ「だからお姉さん。やっぱり少し急いだ方が良いと思うよ。神浜を纏めるチーム作りは」

 

 

 

□10 宿北サービスエリア

 

 

 

 宿北サービスエリアに停まっているキャンピングカー。

 その真横にはリヴィアが私服姿で立っている。

 

彩月「やあやあ。待たせたなあ」

 

 そこへ彩月と朱奈が歩いて来た。

 

リヴィア「んでどうやったんや?」

 

彩月「宣戦布告してやったで!」

 

朱奈「わたしはその・・・・・。一夜さんに頼まれてた、マギウスの人達にお礼を」

 

リヴィア「そうか・・・・・。それでこれからはどうするんや?」

 

彩月「まあ協力はここらでええやろ。お互いに必要な情報は手に入れた訳やしな」

 

リヴィア「そうやな。んで・・・・・。二人共、調子はどうなんや?」

 

彩月「ウチはバッチリやで!」

 

リヴィア「アンタには聞いてへん」

 

綾女テレパシー(私は平気ね。こんな形でも生き返らせてくれて感謝するわ)

 

 綾女の姿は見えないがテレパシーで回答した。

 

リヴィア「それに関しては彩月ちゃんに感謝すべきやな。あんな手段を考え付くなんて私には出来へん」

 

綾女テレパシー(それでもあなたの調整技術が無ければ無理だったでしょうね)

 

リヴィア「朱奈ちゃんの方はどうや?」

 

朱奈「大丈夫です。もう一夜さんの記憶と意識もわたしと一つになったから・・・・・」

 

リヴィア(体内にある魔力の塊。アレが何なのかだけは私にも分からんかった。けど右目の魔力が尽きた時、一夜って子の魂は恐らく完全に消滅する・・・・・)

 

リヴィア「もし何かあったら直ぐに知らせるんやで。出来る事はしたる。体内にある魔石が何を引き起こすかは分らんからな」

 

朱奈「お願いします・・・・・」

 

彩月「ウチも備えないとなー。朱奈さんと綾女さんの事もあるしなー」

 

綾女テレパシー(私は仕方ないから協力するだけよ)

 

 綾女の姿は相変わらず見えない。

 

リヴィア「綾女さんは本当にその状態でええんか?今はその状態にしか出来へんけど」

 

綾女テレパシー(仕方ないわ。私の身体が無い以上、今はこれで我慢するしかないもの)

 

朱奈「綾女ちゃん・・・・・」

 

彩月「無い物ねだりしてもしょうがないやろ。それも含めてこれからや」

 

リヴィア「じゃあ私はもう一度、神浜市へ来る為の準備を進めとくで。次に会う時もちゃんとグリーフシードを用意しとくんやで」

 

彩月「分かっとるで。ビジネス的な方がお互いに余計な事を考えずにすむやろ」

 

リヴィア「つくづく嫌な言い方やな。ほな。またな」

 

 そう言ってリヴィアはキャンピングカーに乗り込むと、そのまま走り去って行った。

 

彩月「それで二人はどうするんや?ウチに付いて来るんならそれでもええし、ここで別れるのならそれでもええで」

 

朱奈「わたしは・・・・・」

 

綾女テレパシー(今の状態であなたと離れるのは得策じゃ無いわ。分かり切っていたでしょ)

 

彩月「まあそりゃそうやな。ウチも生き返らせたり助けたりした以上は、ある程度までは面倒を見るで」

 

朱奈「わたしは・・・・・。彩月さんに付いて行きたいです。わたしの中にいる一夜さんもそうしたいって言ってるから・・・・・」

 

彩月「そっか。んじゃあ行くで。とりあえずは寝床へ行こうや」

 

 先を歩く彩月に付いて行く朱奈。

 綾女の姿はずっと何故か見えなかった。

□11 某所 某部屋

 

 

 某所にある何処かの部屋にある一室。

 並べられたソファーに腰掛ける私服姿のあすみんとベル。

 あすみんはテレビを見ており、ベルはゼリーを食べている。

 

ナル「ただいまー」

 

 そこへ明るい様子でナルが部屋に入って来た。

 

ベル「ルフフフフフ。成果はどうだったの?」

 

ナル「裁判の結果はねー。マギウスのお二方は魔法少女への変身を封印されたよー。他の4人は無罪放免みたいなモノかなー」

 

ベル「成程・・・・・。まあ大方そうなるだろうと思ってました。環いろはや七海やちよ、和泉十七夜と言ったリーダー格の性格を考えればマギウスが何をしようと穏便に済ませるのは読めましたから」

 

ナル「そうなってはつまらないから一部の羽根を炊き付けて暴れさせたんだけど上手く行かなかったなー。あっ。そうそう。羽根同士で戦った時に彩月ちゃんに会ったよー」

 

あすみん「!! あの女。まだ神浜にいたんだ」

 

ナル「うん。マギウスを助ける側に回っていたねー」

 

あすみん「次に会ったら、たしが殺してやる」

 

ナル「良いんじゃないかなー。殺したら死体は欲しいなー。幾つか才能は取れるかも知れないしー」

 

ベル「今、ICH(イヒ)達は潜伏しましょう。これから神浜の魔法少女は確実に二分されます。自動浄化システム派と魔法少女至上主義派に」

 

ナル「うんうん。偵察した甲斐はあったねー。それに・・・・・。マギウス内部には他の地域からの偵察者も少なからずいたしねー。もしかしたらそういう人たちもどんな形であれ動くんじゃないかなー?」

 

あすみん「自動浄化システムに興味を持たない魔法少女なんていないだろうしね」

 

ベル「どちらにしてもICH達は先んじてる。これがあるんだから」

 

 ベルの目線の先には魔力を伴った謎の魔石がテーブルの上に置かれていた。

 

 

 

 その頃、ヒイラギ町の外れには二人の少女がいた。

 

日向楓「これからどうするの?」

 

雲土ぴあ「折を見て神浜に戻ろう。ワタシと楓の未来の為に」

 

 

 

 何処とも知れない場所。

 空間の中に浮かぶ筒地綾女?の顔。

 その目が開くと右目から魔力を伴った輝きを見せていた。

 

筒地綾女?「・・・・・・・。時が来た」

 

 




今回の裁判編の話はまだ続きますが一旦、しばらく休載して別の作品のアップを始めたいと思います。

再開は来年を予定しています。

次回の話において彩月が何をしたのか?

マギウスの翼、改革派とは?

それらを書いていきたいと思います。
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