マギアレコード 偽書e/s memorys   作:ジャックノルテ

66 / 76
第4話 いずれマギウスにもその顔をさせてやる

□15 過去の神浜市内 北養区 ホテルフェントホープ

 

 

 

 次の日のホテルフェントホープのエントランスにあるソファーに座って一夜と話す彩月。

 周囲に他の羽根もいるが二人の着る黄色いローブは目立っていた。

 

彩月「それでなくともウチは黄羽根を増員するなら度胸がいると思うんや。だからウチが出した条件はアリナ様の顔に落書きして来いやったな」

 

一夜「えっ。それって」

 

彩月「みんなギブアップしたな。ウチはやろうとしたけど、みふゆさんに止められたな」

 

一夜「でもどうして度胸がいるの?」

 

彩月「黄羽根は親衛隊やし、どうせなら度胸がある方がええやろ。戦いにも強そうやし」

 

一夜「そうだよね。でもアタシは全然戦えないし」

 

彩月「一夜さんは装備を作れる特別な存在やないか。大体、黄羽根は親衛隊いうともナナツメさんが主にその任務を行っとるし、ウチは一夜さんの護衛と地下倉庫の管理。ある意味では組織の中の何でも屋が一番表現としておうてるで」

 

一夜「そうなのかな・・・・・・」

 

彩月「別に批判はしてないで。組織内での役回りの整理不足やからマギウスの責任やな」

 

 彩月は笑みを浮かべながら持っていたジュースを飲む。

 その時、奥の通路をねむとナナツメが歩いているのが遠目に見えた。

 ナナツメの着る黄色いローブは遠目からも目立っている。

 

彩月「どうやら会議は終わったようやな」

 

一夜「そうみたいだね。アタシは地下に行くけど彩月さんは?」

 

彩月「・・・・・・・。護衛は終わったしウチは野暮用があるから行くで」

 

 そう言って彩月は我慢出来る範囲の痛みが走る右腕を左手で押さえながらソファーから立ち上がり左手を振りながら離れて行く。

 

彩月「・・・・・・・」

 

 彩月が脇を見ると改革派のメンバーがこちらを見ている。

 黙ったまま彩月はロビーを出て二階の廊下に向かう。

 そのまま進むと廊下にある非常口と書かれたドアを開いて中に入る。

 そこは非常用の通路であるが今まで一度も使われた事は無かった。

 中で彩月が待っていると改革派Aがその場に入って来る。

 

彩月「一人です・・・・か?」

 

改革派A「そうだ。目立つ訳には行かない。それで?」

 

彩月「この先にある窓です」

 

 声を潜める彩月と改革派Aは通路にある一つの窓に向かった。

 二階の窓の外には小さな並木道が見えるが、その並木道はホテルフェントホープから向かう裏口が閉鎖されており立ち入った羽根は今までいなかった。

 並木道は秋をイメージしたのか銀杏の木で覆われて道には落ち葉が少し積もっていた。

 

彩月「ここです。あっ!出て来ました」

 

改革派A「確かにねむ様か」

 

 窓の前にいる改革派Aの眼前でナナツメとねむがゆっくりとした足取りで閉鎖されている筈の裏口からホテルフェントホープを出ると小さな並木道を二人で歩いている。

 

彩月「あれがねむ様お気に入りのお散歩コースです」

 

改革派A「しかし二人は部屋に向かった筈だ」

 

彩月「ねむ様専用の抜け道があるんです。見た事は無いですけど」

 

改革派A(ありえなくはないな)

 

改革派A「しかし疑問はあるな。どうしてねむ様はローブを羽織っている?」

 

 改革派Aの指摘した通りにナナツメと歩くねむは何故かローブを羽織っていた。

 それは緑色に装飾が多めに改革派Aも初めて見るローブだった。

 

彩月「あれは確かマギウス専用ローブです」

 

改革派A「マギウス専用?」

 

彩月「はい。万一の戦闘時に防御力を上げた専用のローブです。けど誰も使わなかったからねむ様が使ってます。散歩の時のカーディガン代わりに」

 

改革派A(確か梓みふゆ用も作ったと聞いていたがお蔵入りしていたな)

 

改革派A「しかしあれでは本人か分からないが?」

 

彩月「ここからでも魔力探知は出来るしナナツメさんが灯花様やねむ様以外の人物を護衛をする訳がありません」

 

改革派A「・・・・・。確かにこの魔力はねむ様だな。だがどうやってあの場所へ向かう?」

 

彩月「実はここの窓だけ開くんですよ。ほら」

 

 彩月はそう言って少しだけ両開きの窓を開いて見せた。

 

彩月「全開にするとバレるからこれで。ウチは前にここからあの並木道に入った事があります。あの場所には警備用のウワサがありません」

 

改革派A「何故、白羽根ですら知らないこの場所の事を知っている?」

 

彩月「退屈しのぎにフェントホープの中を冒険していたら見つけました」

 

改革派A(あの様子ではねむ様は気付いていない様だな・・・・・)

 

彩月「ウチの言った通りでしょう?だからウチを助けて!」

 

 彩月は改革派Aの足元に跪きながら命乞いをする。

 

改革派A「だがまだだ。これが本当にねむ様のルーティーンか確かめる必要がある」

 

彩月「明日も必ず来まっせ」

 

改革派A「だと良いがな。今日はもう良いだろう」

 

 改革派Aが魔力を解除すると彩月の右手に走っていた我慢出来る範囲の痛みが消えた。

 

彩月「ありがたや!ありがたや!ウチは改革派を全力で支持しまっせ」

 

改革派A「明日以降もここにねむ様が来るのなら助けてやる」

 

 それから次の日もその次の日もフードを被って素顔を隠したねむとナナツメを連れて並木道を少しの時間、散歩していた。

 最もその間に彩月は改革派のメンバーと会話する姿が目撃されて周囲はまるで彩月が改革派になびいた様に見えていた。

 その様子を密かに改革派Aは彩月と見ていた。

 

改革派A「どうやらお前の言う通りの様だな」

 

彩月「はい。そしていよいよ・・・・・」

 

改革派A「明日か。ふふ。罠だった時の為に仲間を待機させてましたが杞憂だった様だな」

 

 改革派Aの言葉通りに彩月と非常口に向かう際に他の改革派達が通路の外で見張りをしていた。

 

彩月「ウチはもう改革派に忠誠を誓ってます!」

 

 言いながら必死に土下座して地面に頭を擦り付けるする彩月。

 

改革派A「大袈裟だな。だが付く相手を見極めた事に関しては誉めてやろう。それに・・・・・」

 

 そう言いながら改革派Aは彩月の顔を掴み自身の方へ向ける。

 

改革派A「その愚かな負け犬の顔をもっと私に見せてくれ」

 

 彩月は涙と鼻水を流して必死の命乞いを見せている。

 

改革派A「良い顔だ。いずれマギウスにもその顔をさせてやる」

 

 

 

□16 過去の神浜市内 北養区 ホテルフェントホープ 非常通路

 

 

 

 次の日。

 柊ねむとナナツメはいつも通りにホテルフェントホープに来ると自室へと向かった。

 暫くすると黄色いローブを身に纏ったナナツメがロビーを抜けてホテルフェントホープを出て行った。

 それを見届けると非常通路に集合する改革派のメンバーと両手を拘束された彩月。

(フェントホープにいる為に全員がローブを着ている)

 

彩月「んで何でウチは両手を拘束されとるんや?」

 

改革派B「まだお前を信用出来る訳が無いだろ?」

 

改革派C「土壇場で裏切る可能性もある」

 

改革派D「それにねむ様が魔法を与えたのならアナタ自身に何か仕掛けがある可能性も否定は出来ない」

 

彩月「確かにその可能性は否定出来へんな」

 

改革派B「減らず口を・・・・・」

 

改革派E「・・・・・・・・」

 

改革派A「来た。準備しろ」

 

 改革派Aの言葉通りにマギウス専用ローブを被り素顔が隠したねむが一人で並木道へと向かっていた。

 

改革派A「行くぞ」

 

 フードで素顔を隠したまま、ねむが並木道に入ったのを確認すると両開きのドアを開いて改革派Aが音を立てない様に飛び降りる!

 

改革派B「ほら!さっさと行け!」

 

彩月「そんな折衝なー!?」

 

 窓から投げられた彩月だったが改革派Aが受け止めた。

 

彩月「ひー。助かったでー」

 

改革派A「無駄な音を立てるのを避けただけだ」

 

 そこへ次々と改革派達が音を立てない様に飛び降りて来る。

 全員が降りて来たのを見て改革派Aは武器である鎖鎌を構える。

 それを見て他の面々も鎖鎌を構えていた。

 改革派Dだけは魔力の隠蔽に備えて固有武器である杖を取り出していた。

 

改革派Dテレパシー(隠蔽開始します)

 

改革派A(行くぞ)

 

 改革派達は拘束した彩月を連れて並木道へと入って行く。

 すると前方に素顔を隠したマギウス専用ローブを身に纏ったねむの姿が見える。

 

改革派A(やれ!)

 

改革派C(お任せを)

 

 合図を聞いて走り出す改革派C。

 手に魔法陣を出現させると自身の固有魔法を発動させてねむの固有魔法とローブの機能を封じた。

 

フードを被ったねむ「え!?」

 

 驚くねむに対して走り近付いた改革派Bがそのフードを無理やりに剥がした!

 

改革派B「どうやら終わりだな!マギウス!?」

 

 ところがフードを外して現れた顔はマギウスの柊ねむでは無かった。

 それは黒羽根である柚希ほとりだった。

 

柚希ほとり「えっえっ!?何ですか!?一体」

 

改革派C「マギウスじゃない!?」

 

改革派B「だが魔力反応は」

 

 魔力反応を探った改革派Bの目に柚希ほとりが握り締める宝石が目に入る。

 それは魔力を溜めて置ける宝石型の道具でマギウスの翼内部では幹部である白羽根に支給されていた。

 宝石に溜めた別の魔法少女の魔力を用いる事で自らの魔力反応を感知させにくくする目的で作られたアイテムだった。

 

改革派B「この宝石から柊ねむの魔力が!?」

 

改革派A「!!」

 

 改革派Aは即座に鎖鎌を彩月に向けたが、それを予期していた彩月は直ぐに拘束されたま魔力を込めた跳躍で離れて距離を取ったが転んで直ぐに改革派Eに追いつかれる。

 

彩月「ちっ。そこまで上手くはいかんか」

 

改革派E「・・・・・・・」

 

改革派A「裏切ったな」

 

彩月「何の事やら。助けてナナツメさーん!」

 

改革派D「何を言ってる?ナナツメはホテルフェントホープを出て行った。ここに来る筈が」

 

改革派A「まさか」

 

 その時、落ち葉が敷き詰められた並木道に足音を鳴らして誰かが入って来た。

 

改革派D(しまった!?隠蔽中は魔力反応を上手く探知出来ない。解除しないと)

 

 改革派Dが固有魔法の隠蔽を解除した瞬間に入り込んだ魔法少女の魔力が改革派にも分かる様になった。それは黄色いローブを身に纏い素顔を晒したナナツメだった。

 

ナナツメ「・・・・・・・。何だ。お前達。何をしている?」

 

 ナナツメの目には鎖鎌を構える改革派A。

 拘束された彩月に鎖鎌を向けていた改革派E。

 マギウス専用ローブを着ている柚希ほとりを取り囲む改革派BとC。

 唖然とした様子で固有武器を持っている改革派Dの姿が映っていた。

 

彩月「裏切り者や!改革派に殺されそうやから助けとくれー!」

 

 ここぞとばかりに彩月は叫んだ!

 

改革派A「しまっ」

 

ナナツメ「なら排除するまで」

 

 ナナツメは彩月の言葉を聞いた瞬間に一気に駆けると彩月の隣に立っていた改革派Eの胸を鎖鎌で真一文字に切り裂いた!

 手加減の無い渾身の一撃に改革派Eは素顔を晒し抵抗する事無く倒れる。

 

改革派E「!?・・・・」

 

改革派B「行くぞ!」

 

改革派C「分かっている!」

 

 倒れた改革派Eを見た改革派BとCは柚希ほとりに興味を失うと二人でナナツメに向かう!

 それを見ながらナナツメは彩月の拘束を切り裂いた。

 

彩月「助かったで」

 

ナナツメ「手伝え。黄羽根の仕事だ」

 

彩月「言われんでも分かっとるで」

 

 ナナツメが改革派BとCに向き直ると改革派Cが手に魔法陣を出現させてナナツメに向けた瞬間にナナツメの固有武器である鎖鎌が消滅してしまう。

 

ナナツメ「!!」

 

改革派C「どうだ!固有魔法と武器を封じればお前な」

 

 だがナナツメは躊躇う事無く改革派Cに近付くと魔力を込めた右手で殴った!

 

ナナツメ(どうやら体外に魔力を放出する事を封じる様だが殴れば問題は無い。無意味な魔法だ)

 

 ナナツメの拳は綺麗に改革派Cの喉を突いて悲鳴にならない悲鳴を上げて改革派Cは倒れ込んだ所を更に蹴り飛ばされる。

 

改革派C「ッ!?」

 

改革派B「なら!」

 

 隙を見つけて改革派Bがナナツメに触ろうと右手を伸ばしたが、ナナツメは後方に下がり右手を回避すると同時に魔力の流れが戻った事を感じ取ると固有武器である鎖鎌を改革派Bに向かって投げる!

投げられた鎖鎌の刃は綺麗な軌道を描いて改革派Bの右の掌に突き刺さった!

 

改革派B「ぎゃあああああああああああ」

 

ナナツメ「・・・・・・・」

 

 悲鳴を聞いても動じる事無くナナツメはそのまま鎖鎌を力任せに振った。

 刃が右手に刺さった改革派Bはそのまま飛ばされて改革派Cに激突して二人はそのまま戦闘不能になった。

 その少し前に彩月は改革派Aと改革派Dと対峙していた。

 

改革派A「我らを謀ったのか?」

 

彩月「当然や。ウチはマギウスに魔法を与えられた存在やで。逆らう訳が無いやろ」

 

 彩月は舌を出しながら改革派Aと改革派Dをあからさまに馬鹿にする表情を見せていた。

 

改革派A「あの命乞いも嘘だったのか」

 

彩月「迫真の演技だったやろ?ウチああいうのは得意やで。やった事もやらせた事もあるさかい」

 

改革派A「・・・・・」

 

改革派A(やらせた事があるだと?)

 

彩月「言葉も無いんか?じゃあ遠慮なく」

 

 彩月が固有武器である薙刀を構えた瞬間に改革派Aが手を彩月に向けた!

 

彩月「なっ!?ぐっぅううううううう」

 

 右腕から発した強力な痛みに彩月はその場に膝を付いてしまう。

 彩月の右腕全体に魔力を帯びた痣が浮かび上がる。

 

改革派A「生憎だったな。一度、私の魔力に侵食されれば何時でも激痛を走らせる事が出来る」

 

 それを見て改革派Dが動けない彩月の元へ走る。

 

改革派D「敵は減らさせて貰う」

 

彩月「・・・・・・・」

 

 改革派Dが振り下ろした鎖鎌を咄嗟に左手の鎖鎌で受け止める彩月。

 

改革派D「無駄な抵抗は」

 

彩月「・・・・へっ」

 

 握り締める鎖鎌から魔力を放出しながら彩月の口元に笑みが浮かんだ事に改革派Dが困惑した瞬間に突然、伸びて来た鎖鎌が改革派Dの頭を切り出血させた。

 

改革派D「うっ・・・・」

 

 頭を切られ余りの痛みに意識を失う改革派Dの視界には改革派BとCを倒したナナツメの姿が映っていた。

 

改革派D(そうか。こいつが魔力を放出したせいで感知が緩んだ・・・・・・・)

 

 鎖鎌を手元に戻したナナツメが彩月の横に歩いて来る。

 

ナナツメ「残るはお前だけか」

 

改革派A「・・・・・。見逃して貰えませんか?」

 

ナナツメ「・・・・・・・」

 

改革派A「交渉の余地は無しですか」

 

 改革派Aが鎖鎌を構えたと同時に走り出したナナツメ!

 両者の鎖鎌がぶつかり合い火花を起こるも互いの身体に傷を付けながらも攻め手を緩める事は無かった!

 

ナナツメ(・・・・・・・)

 

改革派A(強い・・・・・。恐らくは自分が今まで戦った敵の中でトップクラス!)

 

 両者は互いに一歩も譲らずに攻守を入れ替え戦いは続く。

 互いに相手のソウルジェムを狙い、命を奪う目的で戦っていた。

 最早決着はどちらかが命を落とす事のみ。・・・・と思われた。

 

彩月(チッ。全く動けん。けどええ物が見れたで)

 

 動けない彩月だったが必死にナナツメと改革派Aの戦いを目に焼き付けていた。

 攻防を入れ替えナナツメが走り出そうとした瞬間に周囲を馴染みのある魔力の籠った霧が立ち込める。

 

彩月(タイムアウトか。思うたより速かったなあ)

 

ナナツメ「!!」

 

改革派A「これは・・・・・」

 

 ナナツメと改革派Aも馴染みある魔力を帯びた霧に気付いて思わず距離を取って動きを止めていた。

 

???「皆さん。ここで何をしているんですか?」

 

 魔力を帯びた幻惑の霧を切り分けて現れたのは円月輪を握り締める梓みふゆだった。

 背後にはバズーカを構える白羽根5とモップを構える黒羽根16、その後ろにマギウスローブを羽織ったままの柚希ほとりの姿があった。

 

みふゆ「もう一度言います。ここで何をしているんですか?」

 

彩月「みふゆさーん!裏切り者やでー!改革派の奴らねむ様を暗殺しようとしたんやー!ウチは脅されて命惜しさに手伝わされましたー!この通り右腕に呪いをやられたし、こんな風にウチの足は怪我だらけやでー」

 

 ここぞとばかりに呪われた右腕と怪我だらけの足を見せて大声で叫ぶ彩月。

 

改革派A「!?」

 

みふゆ「成程。それで柚希さんを囮にした訳ですね?」

 

彩月「なっ何の事やら」

 

 みふゆの指摘に彩月の目が泳いでいた。

 

改革派A(こいつ・・・・・)

 

白羽根5「とぼけるなくても良いよ。彩月さん。話は全部聞いたから」

 

柚希ほとり「すみません。ボク全部喋っちゃいました・・・・・・。彩月さんに頼まれてマギウス専用ローブを被ってねむ様の魔力を溜めた貯蓄宝石を持って並木道を歩けってマギウスからの命令だって・・・・・」

 

みふゆ「いくら何でもこれはやり過ぎですよ。彩月さん」

 

彩月「うっ裏切り者を炙り出したんやから許して下さい!ウチは強い方に媚びる者やで」

 

 そのままみふゆに向かって土下座をする彩月に一同は冷めた視線を向けていた。

 

ナナツメ「!!」

 

 その時、ナナツメが改革派Aに向かおうとした瞬間に間にみふゆが両者の間に割って入る。みふゆは円月輪でナナツメの鎖鎌を受け止めながらも改革派Aへの注意を怠らない。

 

みふゆ「まだ話は終わってませんよ。ナナツメさん」

 

ナナツメ「小生には関係が無い。裏切り者を処分する。黄羽根の役目だ」

 

みふゆ「殺す気ですか?」

 

ナナツメ「・・・・・・・。小生に命令出来るのは灯花様とねむ様だけだ」

 

みふゆ「はあ・・・・・・。念の為に灯花に連絡しておいて良かったです。牧野さん。通話をスピーカーにして下さい」

 

黒羽根16「分かりました」

 

 そう言って黒羽根16が持っていたみふゆのスマホを操作した。

 

灯花電話「もしもし~。聞こえてるかにゃー?」

 

みふゆ「聞こえています。灯花。先程説明した事と今までの会話は聞いていますね?」

 

灯花電話「さっきから会話は全部聞いているよー。ナナツメ。ここはみふゆに従ってくれないかにゃー?」

 

ナナツメ「灯花様のお言葉なら。ですが武器は下げません」

 

 ナナツメは武器を構えて同じく武器を構える改革派Aから目を逸らさずに語る。

 一方のみふゆや白羽根5も改革派の面々から目を放していない。

 

みふゆ「灯花。ありがとうございます。では改革派の処分はワタシが決めた通りでよろしいですね?」

 

灯花電話「みふゆに任せるにゃー。ねむやアリナにはわたくしからメールしておくから」

 

 そう言って通話は切れた。

 みふゆは改めて改革派Aに目を向ける。

 

みふゆ「改革派の皆さん。反乱を引き起こしたアナタ達の処分はワタシに一任されました」

 

改革派A「それでどうするつもりですか?こちらも命が惜しい。場合によっては全力で抵抗しますよ」

 

 改革派Aの言葉と同時に周囲で倒れていた改革派達も意識を取り戻すなりして立ち上がりみふゆ達を睨んでいた。

 

みふゆ「安心して下さい。命を奪う気はありません。今、この場でマギウスの翼から脱退して下さい。そして二度と神浜市に立ち入らないのならば、ワタシ達も追撃はしません」

 

改革派A「その言葉をこちらが信じると思います?」

 

みふゆ「信じなくても構いません。それにワタシが何の備えもせずに来ると思いますか?」

 

改革派A「!!」

 

みふゆ「ここはホテルフェントホープ。マギウスの翼の本拠地です。既に他の羽根も待機しています」

 

 みふゆの言葉通りに並木道の外には白羽根である天音姉妹が数人の黒羽根を率いてその場に臨戦態勢で待機して発する魔力は並木道まで届いていた。

 

黒羽根15(マギウスの命令でナナツメさんの振りをしていたけどこんな事になるなんて・・・・・)

 

 黒羽根15=黒江は事件に巻き込まれた事に困惑を隠せなかったが、みふゆの要請に応じて天音姉妹の指揮下に入っていた。

 黒江はナナツメの振りをしてホテルフェントホープを出た後、10分後に戻った所、柚希ほとりと話す梓みふゆと天音姉妹に遭遇したのだった。

 

みふゆ「先の条件を守るのならばワタシは必ず約束を守ります。例え相手が裏切り者でも。かつて命を奪おうとした相手でも」

 

 みふゆの脳裏にかつて七海やちよ、和泉十七夜、都ひなのと共に改革派のメンバーとミラーズで戦った記憶が過った。

 その時にも改革派のメンバーはみふゆ達の命をあわよくば奪おうとしていたのだ。

 

改革派A(この場は引き下がるしか選択肢は無い・・・・・)

 

改革派A「分かりました。我々改革派は神浜市から去りましょう」

 

みふゆ「その言葉。信じて良いですね?」

 

改革派A「はい。私達も命が惜しいですから。私達改革派は本日をもってマギウスの翼を脱退します」

 

みふゆ「わかりました」

 

みふゆテレパシー(月夜さん。月咲さん。改革派の皆さんを通して下さい。そしてホテルフェントホープを出るまでは見張って下さい)

 

月夜、月咲テレパシー((分かりました))

 

ナナツメ「・・・・・・・」

 

彩月「やーいやーい。反逆失敗してやんのー(笑)」

 

改革派B「アイツ!!」

 

 ワザとらしく彩月は笑い声を上げる。

 それを見て改革派のメンバーが睨み付ける。

 

改革派A「全員。行きますよ」

 

 それを無視して改革派Aは他のメンバー達と足を揃えて並木道から去って行った。

 

みふゆ「何とか穏便に済ませられましたね」

 

白羽根5「灯花様は見せしめにウワサの餌にすべきと言ってましたからね」

 

黒羽根16「それって無限病床のウワサですよね?でも確か封印された筈じゃ」

 

みふゆ「機能を一時的に停止しているだけですから何時でも動かせると聞いています。ですが改革派の様な存在感の大きな一員がそうなれば組織内での動揺は大きいと思います。彼女達が自主的に脱退したのであるなら他の羽根も左程、関心を抱かないでしょう」

 

彩月「あー!?あいつらウチの右手に呪いを仕掛けたままやん!?」

 

 彩月は自身の右手を見て愕然とする。

 右手には呪いから発症する痣がそのまま残っている。

 

みふゆ「見せて下さい」

 

 そう言ってみふゆは彩月の右手の呪いを検分した。

 

みふゆ「これは・・・・・。調整屋さんなら時間を掛ければ何とかできるかも知れません。後は・・・・・。アリナなら固有魔法で直ぐにこの呪いを排除出来ます」

 

彩月「そうなんでっか!?じゃあ何とか頼まんと」

 

みふゆ「ワタシが頼んでも良いですよ。彩月さんが柚希さんや黒江さんに何をさせたのか白状するのなら」

 

彩月「白状します!だから・・・・・。場所は変えませんか?」

 

 それから彩月はみふゆの部屋で自身が行った事を全て白状した。

 部屋の中にはみふゆと彩月の二人だけがいる。

 

彩月「とまあ改革派の奴らに脅されて言う事聞けと言われたから聞いた振りをしてやったんです」

 

みふゆ「それであの並木道にねむとナナツメの偽物を用意して歩き回らせる事で改革派の信頼を得た訳ですね」

 

彩月「はい。ねむ様役にはマギウス専用ローブを被せて素顔を隠させてナナツメさん役には顔を見せない様にして貰って魔力を溜めた宝石を持って貰って信憑性を増して貰いました」

 

みふゆ「それで黒江さんと柚希さんを巻き込んだのですね」

 

彩月「いやー。改革派に襲われた後にホテルフェントホープに戻っていたら丁度良さげな二人が歩い取ったからちょーと協力して貰っただけやで。マギウスからの命令って事にして」

 

みふゆ「柚希さんにねむの振りをさせて、黒江さんにはナナツメさんの振りをさせる。流石に黄羽根の行動としてはやり過ぎでは?」

 

彩月「それしか手が思い浮かばなかったんや。ナナツメさんがあの場所で自主トレしてるのも知っとったしな」

 

みふゆ「他にも灯花やねむに相談する手段はあったと思いますが?電話やメールと言った手段がありますよね?」

 

彩月「たぶんそれ直ぐにバレると思うで。この右手の呪い、恐らくウチの感情状態が分かるんやないか?一部の会話で明らかにこっちの感情を見透かしてる感じがしたで」

 

みふゆ「成程。だから演技をして騙したと」

 

彩月「それにぐうの音も出ないような行動を行わせれば簡単に処分が決められるやろ」

 

みふゆ「・・・・・。分かりました。今回の行動に関しては何も問いません。ですがこれからもし黄羽根が羽根を使う場合は事前の許可を得て下さい」

 

彩月「分かっとるで。まあ黄羽根が増える事も無いやろし他の羽根を使う事も無いやろ」

 

みふゆ「だと良いのですが・・・・・・」

 

 

 

 同じ頃、ホテルフェントホープにある白羽根5=観鳥令の私室において黒羽根10=柚希ほとりと黒羽根15=黒江への事情聴取が行われいた。

 黒羽根姿の黒江と柚希ほとりが座る椅子の向かい側に白羽根5が座っていた。

 気を利かせたのか黒羽根16=牧野郁美が紅茶を用意していた。

 

白羽根5「じゃあ聞かせて貰おうかな。彩月さんに何を依頼されたのかを」

 

黒江「はい。私はあの日、仕事を終えてホテルフェントホープから帰ろうと出口に向かって歩いていました」

 

柚希ほとり「はい。ボクもたまたま同じタイミングで出口に向かっていました」

 

黒江「そこで彩月さんと会ったんです」

 

柚希ほとり「怪我をしているみたいでふら付いていたんですけどボクらを見つけたら急に嬉し気な表情をして・・・・・」

 

黒江「それで私と彼女を自分の部屋に連れて行くとマギウスからの命令を伝えて来たんです」

 

白羽根5「それが毎日、ねむ様とナナツメさんがホテルフェントホープに来て部屋に入ったのを確認したら彩月さんの部屋からあの並木道に行って歩いて一周して戻ると言う事だった訳だね」

 

柚希ほとり「はい。その時にボクはマギウス専用ローブを羽織って顔が見えない様にする事を頼まれました」

 

黒江「私は予備の黄色いローブを羽織ってナナツメさんの振りをする様にと。今日はそのままホテルフェントホープを出て10分後に戻って来る様にと」

 

白羽根5「念を入れる為に魔力の溜められる宝石を持たされて魔力の偽装まで行われた訳か。顔を隠して魔力がねむ様やナナツメさんなら確かに誤魔化されるだろうね」

 

黒羽根16「でもどうしてマギウスやナナツメさんの魔力が入った宝石が?そんな重大な物があるなんて」

 

白羽根5「前にあの宝石の性能を試す為に色々な魔法少女の魔力を集める実験をしていたからその時に作った物だろうね。私も魔力を提供したね」

 

黒羽根16「私も提供したのかも・・・・・」

 

白羽根5「それでこの行動に二人は疑問を抱かなかったのかな?」

 

黒江「それは・・・・・・」

 

柚希ほとり「多少は疑問もあったんですけど・・・・・。マギウスの親衛隊である黄羽根の人にマギウスからの命令だって言われたら・・・・・」

 

黒江「黒羽根の立場じゃ疑う事は出来ないです・・・・・」

 

柚希ほとり「黄羽根の人って白羽根位の立ち位置だと思うから・・・・・」

 

白羽根5「まあ確かにね・・・・・」

 

黒江「それで今回の件って何か罰はあるんでしょうか?」

 

柚希ほとり「ボクもそれが気になります・・・・・」

 

白羽根5「別に罰は無いよ」

 

柚希ほとり「えっ?」

 

黒江「えっ?」

 

白羽根5「今回の件は彩月さんの独断だけど裏切り者を炙り出せたしね。君達二人にはお咎めは無いよ。特に悪い事はしてないんだから」

 

黒江「良かった・・・・・・」

 

柚希ほとり「じゃあ彩月さんは?」

 

白羽根5「独断で羽根に勝手な命令をした訳だし多少の罰はあるだろうね。と言っても右手に呪いを掛けられたままだからそれが罰になるかもね。だから二人は何も気にする事はないよ」

 

黒江「分かりました・・・・・・」

 

柚希ほとり「はい・・・・・・」

 

白羽根5「それとこの事は他言無用だからね。これで事情聴取は終わりだから帰って良いよ。引き留めて悪かったね」

 

 頭を下げて出て行く黒江と柚希ほとり。

 

白羽根5「さて・・・・・。観鳥さんは報告書を書かなきゃいけないから牧野チャンはもう帰ってもいいよ」

 

黒羽根16「うん。でも彩月ちゃんの呪いはどうするんだろう?」

 

白羽根5「まあ調整屋さんや他にも打つ手はあるだろうから平気だろうけどね。ただ彩月さんには良い薬かも知れないけどね」

 

黒羽根16「それは言い過ぎじゃ・・・・・」

 

白羽根5「ただ彩月さんにはもう少し大人しくして貰いたいけどね」

 

 フード越しに皮肉な笑みを見せる白羽根5を黒羽根16は戸惑った表情を見せていた。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。