マギアレコード 偽書e/s memorys 作:ジャックノルテ
□17 過去の神浜市 ホテルフェントホープ 次の日のみふゆの私室
次の日にはマギウスのメールマガジンにおいて改革派のメンバー5名がマギウスの翼を脱退したと発表がされた。
改革派と言っても羽根である以上、素性は分からない。
だからこそマギウスの翼を訝しんで逃げ出す魔法少女も何人かいた。
にも関わらず改革派のメンバーが脱退した事を大規模に宣伝したのは組織内における混乱を収める目的があり目論見は成功していたと言えた。
ホテルフェントホープにあるみふゆの私室に彩月とみふゆ、呼び出されたアリナが集まっていた。
アリナ「イヤなんですケド」
心底興味が無いと言う表情でアリナはその言葉を口に出していた。
みふゆ「アリナ!話を聞いていたんですか?」
アリナ「オフコース。でもコイツの呪いを解除した所でアリナには何のメリットも無いんですケド」
アリナは面倒そうに頬杖を付き彩月の方を見ながら語る。
彩月「そんなー。ウチの事を助けてねーな。可愛い可愛いウチの事を助けたって損は無い筈やでー」
そう言いながらアリナの肩を揉む彩月。
アリナ「ハア・・・・・。ウザいんですケド」
言いながらもアリナは彩月を振り払わないのは肩が少しこっていたのも事実だからだ。
みふゆ「ワタシがモデルをやると言うのではダメですか?」
アリナ「それはもう電波少女の件で約束した事だカラ」
みふゆ「他に何か出来る事は」
彩月「なあなあ。そんならウチがモデルをやるって言うのはどうや?」
みふゆ「えっ?」
アリナ「そんな貧相なボディに興味無いんですケド」
みふゆと彩月の身体を見比べながらアリナは語る。
スレンダーな彩月と比べて起伏のあるみふゆなら貧相と言われても仕方ない事でもあった。
彩月「それはどうやろな?ウチが出来るのはみふゆさんの様なモデルだけじゃないで」
みふゆ「?」
彩月「ジーニアスアーティストのアリナさんなら出来るやろ?ウチの身体その物をキャンパスとしてアートを表現する事が!!例え貧相な身体でも他人の身体を好きにキャンパスに出来るチャンスなんか滅多にないで!」
アリナ「へえ・・・・・。アナタ。アリナのキャンパスになる覚悟があるって言うワケ?」
彩月「あるで。と言うても、この間洗脳された人みたいになる気は無いんやけどな」
アリナ「!?」
みふゆ「どうしてそれを」
アリナとみふゆの脳裏に浮かんだのは金髪縦ロールの魔法少女の姿が浮かんでいた。
彩月「話をするならドアをちゃんと閉めた方がええと思うで。まあそう言う訳で生きた人間をキャンパスに作品作りをするチャンスをジーニアスアーティストのアリナ・グレイが活かさないとウチは思えんで」
アリナ「本気でアリナの作品になる勇気があるワケ?覚悟が無いなら断った方が良いと思うんですケド」
彩月「良い踏み台があれば踏んで糧にするのが芸術家やろ」
言いながらウインクして見せる彩月。
それを見てアリナも不敵な笑みを浮かべる。
アリナ「イエス。アリナを言い包めた度胸に免じて呪いを解いてあげる。ただしアリナのキャンパスに一日なって貰う事が条件だカラ」
彩月「構へん。構へん。こっちも滅多に得られない経験が得られる訳やしな」
みふゆ「アリナが良いなら良いんですが・・・・・。彩月さん。覚悟は良いんですね?」
彩月「勿論やで!」
みふゆ「大丈夫でしょうか・・・・・」
不安げなみふゆと対照的に挑戦と言う刺激を受けて上機嫌なアリナ。
目的を達成した彩月。
みふゆは内心、彩月の口車に乗せられた様に感じていた。
それから五日後の朝。ホテルフェントホープ内にあるアリナの私室。
多くの荷物を持ってアリナと彩月が部屋に入った。
彩月「それでいよいよ始めるんでっか?」
アリナ「イエス。それとこれからキャンパスになって貰うんだからキャンパスが喋るのはおかしいヨネ?」
彩月「黙っとるのは構わんけど、何か問題があったら流石に喋るで」
アリナ「じゃあ早速脱いで」
彩月「ええで」
躊躇う事無く裸体を見せる彩月にアリナも内心少しだけ驚いた。
アリナ(躊躇わないとは思わないんですケド)
アリナ「じゃあコレを着て」
彩月に手渡したのは薄手の全身タイツだったが彩月は躊躇う事無く着替える。
それを横目にアリナは彩月に塗る為に取り寄せたボディペイント用の塗料を用意する。
アリナ「一応言っておくけど、これから使うボディペイント用の塗料は市販の物だから安全性には問題が無いワケ。けれどもし不具合があるのならちゃんと伝えてヨネ」
彩月は小さく頷き筆と塗料の準備を終えたアリナは彩月の身体に色を塗って行く。
身体のどんな場所に塗料を塗っても彩月は何の反応も示さずにただ呼吸からくる鼓動による振動が無ければ彩月が生きているのか判別が付かないとも言える状況だった。
アリナ(ここまで大人しくする事が出来るモデルなんて滅多にいないヨネ・・・・・。その意味ではエクセレントと言えるヨネ)
それから朝8時から午後14時を回って彩月の身体へのボディペイントは終わった。
アリナ「終わったワケ」
彩月の全身はビビッドな色合いに溢れてまるで生命の誕生と腐敗による死を現しているとも言えた。
部屋にある姿見で彩月も自身の姿を見ていた。
彩月(おもろいな。まるでウチがウチじゃないみたいやないか)
この状況を彩月は楽しんでいた。
アリナ「じゃあ次に行くカラ準備してヨネ」
彩月「次ってなんや?」
アリナ「アナタの身体にボディペイントをしたんだカラ、次はアリナが用意したオブジェになって貰うワケ」
彩月「そのオブジェって何処にあるんや?」
アリナ「アリナの学校にあるんですケド」
彩月「それは別にええんやけど流石に上に何か着ないと捕まるで」
アリナ「アリナがキューブに入れて持って行くカラ問題無いんですケド」
アリナは彩月の返答を聞く事無く彩月をキューブに封印した。
次に彩月が姿を現したのは栄総合学園にある美術部と漫画研究部の部室だった。
彩月「・・・・・。何をすれば?」
最早呆れたのか彩月は次に行う事をアリナに問う。
アリナ「次は中庭に行くカラ。ほら!ハリー!ハリー!」
アリナは機嫌良く彩月の手を引っ張って中庭に向かって行く。
授業中の為か生徒の姿は全くない。
アリナ「じゃあこの枝の塊に抱き付いて」
彩月「こうでっか?」
アリナ「足をもう少し上げて」
彩月「・・・・・」
彩月はアリナの要望通りに足を上げる。
その後もアリナの細かいポーズの要求を呑んで彩月はポーズを取る。
アリナ(これで後は・・・・・・)
彩月の身体に土をかけて更に集めた蜘蛛の巣や注射器型のシャーペン等を乱立させていく。
やがて授業が終了して生徒たちは中庭で奇怪な事をするアリナ・グレイとモデルをしている彩月の姿を目撃していた。
既に大きな人だかりが出来ている。
御園かりん「アリナ先輩!何をしているの!?」
後輩である御園かりんが誰も声を掛けられないアリナに声を掛ける。
アリナ「ああ。フールガール。ちょうど完成した所だヨネ」
御園かりん「これは何なの?これ生きている人なの?」
アリナ「モデルを雇って作ってみたんだヨネ。人体を使ったオブジェ」
御園かりん「それは良いんだけど・・・・・。良く無いの!先輩!それで学校をサボったら本末転倒なの!?先生が怒っていたの!」
アリナ「アリナは自分の作品が作れれば満足なんですケド」
御園かりん「勝手に学校でこんな事やって大丈夫なの?」
アリナ「アリナは一応、ジーニアスアーティストだから新作の発表なら問題無いと思うんですケド」
御園かりん「モデルの人・・・・・。アリナ先輩に付き合うなんて奇特な人なの」
彩月は小さく御園かりんに向かってウインクした。
御園かりん「!! それで・・・・・。このオブジェは何を表現しているの?」
アリナ「人体キャンパス。人体をキャンパスにしたらどうなるかって言ういわば試作品(プロトタイプ)だヨネ。一定の平面しか無いキャンパスと違って人体に塗るって言うのは本当に刺激的だったワケ。光の当たり方で時間と共に変化して万華鏡の様に再現性の無い美。まさしく一点物の芸術だヨネ」
御園かりん「それは良いんだけど・・・・・。そろそろお叱りの時間みたいなの」
アリナ「ホワット?」
振り向いたアリナの視界には顔を真っ赤にしている教頭の姿が目に写った。
アリナ「バッド」
それからアリナとモデルをした彩月はこっぴどく二時間に渡る説教をされた。
教頭「授業を無断でサボった挙句に部外者を勝手に校内に連れ込んで一体何のつもりなんだ!?」
流石のアリナも何の反論も許されない状況だった。
説教を終えるとアリナとペイントされたままの彩月は再びホテルフェントホープにある私室に戻っていた。
そこにはみふゆが様子を見に来ていた。
みふゆ「大丈夫ですか?彩月さん」
彩月「まあおもろい経験やったで」
アリナ「アリナも面白いアートを作れて満足ですケド」
そう言いながらアリナは約束通りに彩月の手にキューブを通して浸食魔法を取り除いていていた。
アリナ「これで右手の魔法は取れたワケ」
彩月「サンキューな。アリナさん。じゃあそろそろこの塗料を落としてもええか?」
アリナ「ダメなんですケド」
みふゆ「え?」
アリナ「アートの絵具を落として良いのはアーティストだけなんですケド」
彩月「どういう事や?」
アリナ「アナタの身体に塗ったペイントはアリナの作品だからアリナだけが落とす権利があるワケ」
みふゆ「つまり?」
アリナ「これからアリナと一緒にペイントを落とす為にシャワーを浴びるワケ」
みふゆ「・・・・・・・」
アリナ「だから直ぐにシャワールームへ行くワケ。みふゆと違って貧相な身体だけど、それなりに楽しめたから後は最後のお楽しみだカラ」
要約(ペイントを落として作品を破壊する瞬間を楽しむと言う意味)
彩月「ようやくかいなー。じゃあウチもアリナさんの身体でも堪能するかー」
アリナ「見たければ見ればいいカラ。さあ!ハリー!ハリー!」
彩月の首根っこを掴んでシャワールームへ引っ張って行くアリナ既に服を脱ぎだしている。
彩月「みふゆさんも一緒にどうや?」
みふゆ「・・・・・。遠慮しておきます」
死んだ目をしながら答えたみふゆはその部屋を後にした。
しかしみふゆは建付けの悪いドアを閉めるのを忘れてしまった。
アリナ「ちょっと!なにアリナの顔を摘まんでるワケ!?」
彩月「ウチだって今、アリナさんに身体を委ねてるんやからウチがいじってもええやろ?」
アリナ「アリナは今、アナタの身体を堪能しているワケ。アナタが楽しむ理由なんて無いと思うんですケド」
彩月「そうかなあ?人は何だって楽しむモノやろ?だから色々と楽しみがあるんやろ。アリナさんがウチの身体を楽しむならウチだってアリナさんの身体を楽しんだってええやろ?こう言うのは互いに楽しんだ方がおもろいやろ」
アリナ「だったらアリナが楽しむ為に協力してヨネ!」
彩月「おっ?そこが気になるんか?ならウチも」
アリナ「ドコ触ってるワケ?」
彩月とアリナがシャワールームで繰り広げた刺激の強い会話は暫く羽根の間で噂話となってしまった。
アリナ・グレイがモデルと称して羽根を部屋に連れ込んでシャワールームで迫ると。
その為、アリナを見る羽根の目がいかがわしい者を見る目になったがアリナ自身は気付く事は無かった。
□18 過去の神浜市 ホテルフェントホープ
その次の日・・・・・。
みふゆがホテルフェントホープにあるねむの私室に入った。
ねむはソファーに座りナナツメはその後ろで待機している。
みふゆ「ねむ。話と言うのは?」
ねむ「うん。さっき彩月から連絡があって風邪を引いたって」
みふゆ「えっ?あんな薄着でアリナに付き合わされたから仕方ないですよね・・・・・」
ねむ「アリナから送られた写真で見たけどそうだよね」
みふゆ「話は彩月さんの事ですか?」
ねむ「うん。彩月がいない間、一夜の護衛役が必要だからね。と言ってもどうせ外の倉庫と地下倉庫を往復するだけだからね」
みふゆ「分かりました。それでは護衛をする羽根はワタシが選びましょう」
ねむ「頼むね。それと改革派の件だけど・・・・・」
みふゆ「はい。彼女達は二度と神浜市に来ないでしょう」
ねむ「断言できるかい?」
みふゆ「もし来るなら・・・・・。今度はマギウスの総力を持って戦うだけです。正直に言ってマギウスの中にはまだ改革派の影響を受けているメンバーがいるでしょう。だからこそまた神浜市に来るのなら全力で倒すべきだと思います」
ねむ「みふゆにしては随分と力強い表現だね」
みふゆ「ワタシだって自分を殺そうとした相手には辛辣になりますよ」
ねむ「そうだったね。話には聞いているよ。改革派のメンバーはかつてミラーズで君や七海やちよ達を殺そうとしたんだってね」
みふゆ「正直に言って危険性に関してはやっちゃん。じゃなくて七海やちよや和泉十七夜よりも上だと思います。改革派のメンバー達がマギウスの翼に入る事もワタシは内心反対でしたが、解放への志は同じだと思ったから自分の感情を押さえていました」
ねむ「・・・・・。みふゆの気持ちは分かったよ。もし改革派がまた神浜市に来る様なら・・・・・。ナナツメ。君の出番かも知れないね」
ナナツメ「仰せとあらば今すぐにでも」
ねむ「彼女達がまた神浜市に来たらね」
みふゆ「そうならないと良いのですが・・・・・」
ねむとの会合を終えたみふゆはその足で地下倉庫へと向かった。
そこにはいつもと同じく黄羽根の一人である越馬一夜が一人で倉庫番をしていた。
一夜「みふゆさん!」
みふゆに気付いた一夜が立ち上がりお辞儀をする。
みふゆ「そう畏まる事はありませんよ。一夜さん」
一夜「はい・・・・・」
みふゆ「彩月さんが風邪を引いた事は知っていますね?」
一夜「ねむ様から聞いています」
みふゆ「彩月さんの風邪が治るまで臨時の護衛を連れて来ました。入って下さい」
みふゆに促されて黒羽根10=柚希ほとりが地下倉庫に入って来た。
柚希ほとり「みふゆさんに依頼されて今日から護衛を行う黒羽根です。よろしくお願いします」
一夜「こっこちらこそ」
柚希ほとりと一夜は互いに頭を下げていた。
みふゆ「じゃあ一夜さん。後は頼みます。護衛の方も頼みます」
みふゆテレパシー(柚希さん。後は頼みます)
柚希ほとり(!!)
そう言ってみふゆは地下倉庫を出て行った。
柚希ほとり「それでは護衛の任務に就きます」
一夜「お願いします。それじゃあまずは里美家の倉庫に行くから」
柚希ほとり「分かりました」
一夜と柚希ほとりはホテルフェントホープを出て里見家の倉庫へと向かった。
倉庫に着くと一夜は普段通りにローブやペンダントと言うマギウスの翼において必要なアイテムの増産に取り掛かる。
道具作り用の眼鏡を掛けて一夜は慣れた様子で用意された布に自身の魔力を浸して装飾を施すと袖口に鎖鎌を取り付ける。
普段から作り慣れているローブを作る事は一夜にとって簡単な事だった。
柚希ほとり「あの」
一夜「なっなんでしょう?」
柚希ほとり「同じ黄羽根の彩月さんって人がいるじゃないですか」
一夜「はい。普段はアタシの護衛をして貰ってます」
柚希ほとり「彩月さんって何時もあんな感じなんですか?」
一夜「えっ?」
柚希ほとり「何というか・・・・・。気さくに色々な人と話したりしているしたまに羽根の魔女退治に混ざっていたりと・・・・・。何だか凄く自由な人に思えるんです」
一夜「自由かあ。確かに彩月さんって自由な人って印象があるよね」
柚希ほとり「ボクもあんな風に人を助けられる人になりたいです。ボクはいつも助けられてばっかりなんで。マギウスの翼に入ったのだって」
一夜「そうなの?」
柚希ほとり「はい。ボクがマギウスの翼に入ったのは」
柚希ほとりは数ヵ月前の過去を語り始めた。
(後に環いろはが神浜市で七海やちよと出会う数日前の出来事)
その日の放課後、聖リリアンナ学園で魔女の結界が発生した。
柚希ほとりは果敢に魔女に戦いを挑むも直ぐに地面に叩き付けられて戦闘不能に陥っていた。
柚希ほとり「うぅ・・・・・・」
身動きの取れない隙を見逃さずに魔女は止めの攻撃を行おうとした!
柚希ほとり「!?」
その時、無数の日傘が周囲を覆い尽くしたかと思うと日傘から放たれた光線が魔女を包囲してその身を焼き尽くす!
柚希ほとり(何が!?)
困惑する柚希ほとりだったがこのままでは自身もその光線に巻き込まれる事を悟っていた。身動きの出来なこの状態では諦めるしかない状況だと悟っていた。
柚希ほとり(りおん・・・・・。ごめん)
だが柚希ほとりの身体を誰かが抱き抱えると光線の範囲から連れ出した。
みふゆ「大丈夫ですか?」
柚希ほとり「えっ!?はい・・・・・」
梓みふゆに抱えられている間に結界の崩壊を目撃する柚希ほとり。
みふゆ「灯花。ご苦労様です」
灯花「まさかリリアンナで魔女が出るなんて思わなかったにゃー」
みふゆ「ワタシが迎えに来て良かったです」
そこへ魔法少女に変身している里見灯花が姿を見せる。
先程の日傘と同じ日傘を持っていた事で柚希ほとりにも灯花が先程の攻撃を行ったのだと理解した。
灯花とみふゆが魔法少女の変身を解いたのを見て柚希ほとりも変身を解いた。
柚希ほとり「あっありがとうございます」
みふゆ「いえ。良いんですよ。魔法少女は助け合いですから」
灯花「それでも!アナタは弱すぎるんですけど!」
柚希ほとり「すっすみません・・・・・」
みふゆ「灯花。言い過ぎですよ」
灯花「本当の事だもん。それに・・・・・。よく見たら中等部にいるわたくしの先輩なんだー。それであんなに弱いんじゃ話にならないかにゃー」
柚希ほとり(確かこの子は初等部の有名な天才。里見灯花!まさか魔法少女だったなんて・・・・・)
灯花「だけどそんな先輩にチャンスをあげちゃうかにゃー?」
灯花はいたずらを閃いた子供の様に微笑む。
柚希ほとり「えっ?」
灯花「先輩。魔法少女としての実力を付けたくないかにゃー?」
柚希ほとり「はい!強くなりたいです」
みふゆ「だったら丁度良いですね」
灯花「うん。先輩。わたくし達は今、魔法少女の運命を解放する組織、マギウスの翼を作ったんだんだにゃー」
柚希ほとり「マギウスの翼?」
みふゆ「どうやら知らない様ですね。他の魔法少女に会った事は?」
柚希ほとり「余り無いです。二、三回同じ結界で鉢合わせた位で」
柚希ほとりの脳裏に浮かんだのは前に深夜に魔女と戦った際に遭遇した入名クシュだったが彼女は夜明けが近付くのを察すると直ぐに立ち去ってしまい名前を知らなかった。
灯花「リリアンナにいる魔法少女なんて天然記念物並に数が少ないだろうしにゃー。じゃあそんな先輩に魔法少女の秘密も含めて全部教えてあげるにゃー」
柚希ほとり「えっ?秘密?」
灯花「先輩は本当に運が良いにゃー。わたくしやみふゆが直々にマギウスの翼に誘うなんて本当についてるんだにゃー」
みふゆ「とりあえずまずは連絡先を交換しましょう。都合の良い日にマギウスの関する説明を行います」
こうして里見灯花と梓みふゆと出会った柚希ほとりは、そのままマギウスの翼へと入る事になった。
その過程でキュウべえとソウルジェムの秘密や魔女化と言った事も全て知る事になったが、神浜市に広がるドッペルシステムによって神浜市内でだけは魔女化しないと言う事を知った。
柚希ほとり(じゃあ神浜市にいる限りは大丈夫なのかな・・・・・・)
マギウスの翼はドッペルシステム=自動浄化システムを全世界に広げる為に活動する為に魔女に酷似したウワサを使い感情エネルギーを収集するのが目的で活動を行っていると知らされた。
全く疑念を抱かなかった訳では無かったが、他に頼れる魔法少女の知り合いがいない柚希ほとりはそのままマギウスの翼で活動する事になった。
神楽教官による訓練期間を経て・・・・・。
柚希ほとり(正直に言って神楽教官の訓練は厳しかった・・・・・)
魔法少女となった柚希ほとりでも神楽教官の訓練は音を上げてもおかしくない様な物だった。
神楽教官「そこ!足を止めない!足を止めたら死ぬわよ!」
柚希ほとり「ひぃいいいい」
必死になって動き続ける黒羽根姿の柚希ほとりに対して神楽教官は容赦無しに両腕のガトリングを撃っている!(手加減はしている)
周囲では同じ様に羽根達が必死になって避けていた。
柚希ほとり「!?」
慌てて躓く柚希ほとり。
柚希ほとり(やっやられる!?)
その時、一人の黒羽根が柚希ほとりの脇に近付くと腕を引っ張って強引に立たせた!
黒羽根?「ほら!後は自分で逃げい!」
柚希ほとり「えっ!?」
その黒羽根に神楽教官のガトリングの弾が当たる! も気にする事無く脇へ飛ぶ。
神楽教官「!? ちょっと待ちなさい。あなた・・・・・。菖蒲ね?」
突然、攻撃を止めた神楽教官が黒羽根?に話しかける。
黒羽根?「なんや。バレたか」
そう言って黒羽根?がローブのフードを脱ぐとそこに菖蒲彩月の素顔が見えた。
神楽教官「・・・・・。魔力反応が違うわね。何をしてるの?」
黒羽根?=彩月「ちょーとした実験や。これのな」
そう言って懐から魔力を溜める宝石を取り出す。
神楽教官「成程。その宝石に別の魔法少女の魔力を入れて魔力反応を変えている訳ね」
彩月「そうや。それに一夜さんに頼んで強化して貰ったローブの性能も試したかったしな」
彩月の着ているローブは神楽教官の弾丸が当たっても傷一つ付いていなかった。
他の黒羽根のローブは傷だらけにも関わらず。
神楽教官「どうりで手応えに違和感があった筈だわ。それで?どうして羽根の訓練に勝手に紛れているのかしら?」
彩月「テストしたいなーと思うたらたまたま神楽教官が訓練すると聞いてそれに混ざれば良いと思うたんや」
神楽教官「だからと言って勝手に訓練に混じって良いとは限らないわよね?」
彩月「そうやな。だから・・・・・」
いきなり彩月は神楽教官の足元に縋りつく。
彩月「お願いやー。ウチも混ぜてー。仲間に入れてー」
神楽教官「・・・・・。呆れた。良いわ。じゃあ黒羽根と同じ訓練を行って貰おうかしら?」
彩月「ええで」
神楽教官「全員!これから二人一組で組み手を行いなさい!」
誰と組もうか逡巡する柚希ほとりに彩月は話しかける。
彩月「じゃあやろか?」
柚希ほとり「はっはい」
羽根にとっての組手とはローブを着た状態で武器を使わずに行う事である。
万が一の事を考えて素手での戦闘を想定して神楽教官とみふゆによって最低限の戦い方の基礎と言える物だった。
彩月「いよ!」
柚希ほとり「わっ!?」
彩月の拳を交わして反撃に転じようとする柚希ほとり。
元々、素手での戦いを行っていた彼女は組手には慣れた物だった。
柚希ほとり「これなら!」
彩月「!!」
柚希ほとりが咄嗟に放った回転蹴りに回避は出来ないと判断した彩月は腕で防御する。
彩月「痛いなあ。中々やるやん」
柚希ほとり「ごっごめんなさい!?」
彩月「別に怒っとらんで。褒めとるんやで。これなら魔女にも通用するやろ」
柚希ほとり「そうでしょうか・・・・・。ボクはいつも肝心な時に動けなくて・・・・・」
彩月「そんなら後は経験や慣れが必要やろ。場数をこなせば自然と慣れるやろ」
神楽教官「次!各自、相手を変えなさい」
彩月「ほな。またな。さあて。お次は誰や?」
彩月は柚希ほとりの肩を軽く叩くと別の相手との組手に移る。
再び里美家の倉庫。
柚希ほとり「と言う事があったんです」
一夜「彩月さん。またそんな事を・・・・・」
柚希ほとり「また?」
一夜「彩月さん。たまにそうやって魔女退治や訓練に混ざったりしてるから・・・・・。前に彩月さん急に結界に入り込んで魔女に逃げられた事もあるから・・・・・」
柚希ほとり「でもボクは彩月さんに勇気づけられたお陰でマギウスの翼にいてもやっていけるんです」
一夜(彩月さんのやる事がたまには他の人に役立ったのかな?)
一夜には答えが出ないが、少なくとも柚希ほとりは彩月に勇気づけられた様だった。
柚希ほとり「それに彩月さんに鍛えて貰ったお陰で魔法少女を救う事も出来たんです」
一夜「そうなの?」
柚希ほとり「はい。神浜市に迷い込んだ魔法少女が魔女に襲われているのを見てボクは」
一夜「・・・・・・」
柚希ほとり「彼女の手を引いて魔女から逃げ切ったんです」
一人の魔法少女の手を引く黒羽根姿の柚希ほとりの回想。
柚希ほとり「こっちです!」
魔法少女9「えっ!?」
柚希ほとり「今は勝てそうも無いから逃げるのも必要です」
そう言って柚希ほとりと魔法少女9(後の黒羽根9)は結界を脱出する事に成功した。
一夜「そうだったんだ」
柚希ほとり「はい。お陰で彼女を助ける事が出来ました。随分と遠くの街からマギウスの電波を聞いてやって来た様です」
一夜「そんなに遠くから?」
柚希ほとり「確か二木市だったかな?みふゆさんからマギウスの事を聞いて彼女はマギウス入りを決めたんです。ボクは逃げてばかりだったけどお陰で彼女を救う事が出来て自信が出て来たんです」
一夜「アタシも・・・・・。誰かを救う事が出来るのかな?」
柚希ほとり「一夜さんはマギウスの翼にいる魔法少女を救っていますよ!」
一夜「えっ?」
柚希ほとり「だって一夜さんの作っているローブのお陰でボクらは戦う事が出来るんですから。ボクは感謝しています!」
一夜「あっありがとうございます・・・・・」
驚きながらも一夜は柚希ほとりの感謝を受け入れるのだった。
今回の話で書いた柚希ほとりがマギウスの翼に入った経緯は完全にオリジナルです。
マギアレコードにおいても結局語られる事が無かったのですが何となく灯花経由なイメージはかなり強かったのでその通りに書きました。