マギアレコード 偽書e/s memorys   作:ジャックノルテ

7 / 76
越馬一夜編
第6話 これ以上、思い出したく無い


□ 神浜市内 ホテルフェントホープ 一夜の自室

 

 

4人の魔法少女コピーがフェントホープを襲撃してから三日後。

フェントホープで与えられた自室にある椅子に座りながら一夜は、部屋にある鏡をみながら自分の顔を見ていた。

否、自分の顔では無く自分の魂が入っている朱奈の顔を鏡で見ていた。

 

一夜(どうしてこんな事になったんだろう・・・)

 

 身体を重く感じる一夜がそう思った時、ドアをノックする音がして一夜がドアを開くと黄色いローブで表情の見える事の無いナナツメを伴ったねむが立っていた。

 

ねむ「入っていいかな?」

 

一夜「はい。ねむ様。どうぞ」

 

 一夜に促され部屋に入ったねむとナナツメ。

 ねむは椅子に座り一夜は対面にある椅子に座った。

 ナナツメは護衛の役を果たす為にねむの背後に立っている。

 

ねむ「今日は一夜が今使っているその身体に付いて説明に来たよ」

 

一夜「はい」

 

ねむ「その前に確認したいんだけど一夜。君が目覚める前に覚えている事は?」

 

一夜「はい。確か・・・。いつも通りにフェントホープの工作室で黒羽根用のローブを作っていたら怒号が聞こえて来て・・・。何かと思って工作室を出た時に炎が迫って・・・。そこまでです・・・」

 

ねむ「成程。順を追って説明するよ。その日、一夜が工作室で作業をしている時、マギウスの翼内部で反逆者が出たんだ」

 

一夜「えっ!?反逆ですか・・・」

 

ねむ「うん。反逆者達は僕やアリナ、みふゆが外出していて灯花1人だけがいる時を狙って反逆行動を起こしたみたいだよ。幸い反逆者達は、激怒した灯花がドッペルを使って退治したと聞いたし、連絡を受けて僕とみふゆが駆け付けたから反逆自体は直ぐに収束した事を確認したよ。ただ反逆事件の影響で実験用に作った魔法少女コピーが目覚めて逃げ出した事は予想外だったけどね」

 

一夜「そんな事が・・・」

 

ねむ「おっと。話が少し逸れてしまったね。フェントホープ内部を検分していると一夜のソウルジェムは見つけたけど・・・。残念だけど一夜の身体は完全に消滅していたよ」

 

一夜「じゃあアタシの身体はもう・・・」

 

ねむ「うん。完全に消滅していたよ。けど一夜。君は僕たちマギウスの翼にとって必要な人材だ。だから僕は君のソウルジェムを調整屋の力を借りて、その朱奈と言う少女の肉体に接続して君を蘇らせたんだ」

 

一夜「でも・・・。良いんでしょうか?この身体は、その・・・。朱奈さんって人の身体なんですよね?アタシが使って良いんでしょうか?」

 

ねむ「その事だけどね・・・。その身体の持ち主、朱奈と言う少女は今、心を閉ざしているんだ。何もかもを拒絶していると言っていい」

 

一夜「どうして・・・。ですか?」

 

ねむ「みふゆが保護した時点でショックを受けて完全に心を閉ざしてしまったんだ。暫く眠らせていたけど、流石にどうすべきか考えあぐねてね。そこで一夜が身体を失ったと聞いて代わりの身体にさせて貰ったんだ」

 

一夜「・・・」

 

 他者の身体を無断借用している事に一夜は心を痛めていた。

 

ねむ「でもこれは僕が勝手に決めた事だから一夜が罪の意識を感じる必要は無いよ。それに朱奈もマギウスにとって必要な能力の持ち主だからね」

 

一夜「能力?」

 

ねむ「能力と言うのは語弊があったね。正確には・・・。呪いと言った方が適切だね」

 

一夜「呪い・・・。ですか?」

 

ねむ「うん。朱奈の持つ呪いは一週間に一度、魔女を引き寄せる呪いだよ。魔法少女にとっては有益な物だけど、呪いと称されるからには朱奈には、きっと精神的には害を与えるモノだったのかも知れないね。魔女は結局、人間に害を与えるモノなんだから」

 

一夜「はい・・・。呪いってどうしたら良いんでしょう?」

 

ねむ「呪いは僕が魔法で封印したから気にしなくて良いよ。それから一夜。これからはフェントホープでローブを作る作業はしないで欲しい。ここが戦場になれば、また同じ事を繰り返すかも知れないから灯花に頼んで作業場は別に用意したから。これからは、作業場でローブを作ってフェントホープに収める形で仕事を進めて欲しい」

 

一夜「分かりました・・・。でもアタシ、魔法をちゃんと使えるかまだ、試して無いんです」

 

ねむ「そうか。じゃあ僕とこれから調整屋にいこうか。調整屋で調整して貰えば、すぐに魔法を使える様になると思うよ」

 

一夜「はい。恩返しの為にも速く仕事に復帰して見せます!」

 

ねむ「うん。その意気だよ。じゃあ行こうか。ナナツメはどうする?」

 

ナナツメ「護衛の為、付いて行きます」

 

ねむ「分かったよ。じゃあ早速、出発しようか。一応、言っておくけど二人共、これから電車を乗り継いで行く訳だから外出してもおかしくない服装を頼むよ」

 

一夜「はい。月咲さんと選んだ服があるから大丈夫です」

 

ねむ「じゃあ着替えたら早速、出発しようか。一夜は黒羽根のローブを作る道具も持って行ってね」

 

一夜「分かりました」

 

 それから数分後に着替え終わって荷物のカバンを持った一夜と私服のナナツメを連れてねむは、調整屋に辿り着いた。

 

 

□ 神浜市内 新西区 神浜ミレナ座廃墟 調整屋

 

 

参京院の制服を着たねむと私服でカバンを持った一夜と私服のナナツメが調整屋のある神浜ミレナ座と言う建物の前に来ると、中から黒羽根の一人が出て来た。

 

ねむ「どうだい?」

 

黒羽根「今なら誰も来ていないので、何も問題はありません」

 

ねむ「分かった。じゃあ君は、もう帰って良いよ。悪かったね」

 

黒羽根「分かりました」

 

 答えると黒羽根は、その場を立ち去った。

 

ねむ「そう言えば一夜は調整屋へ来るのは初めてだったよね?」

 

一夜「はい。仕事が忙しかったので・・・」

 

ねむ「ここは、マギウスの翼に所属していない魔法少女も来る場所だから言動には注意して。今は他のお客がいない事を黒羽根に確認して貰ったけど、一人で行く時は、その辺りを注意する様にね」

 

一夜「はい・・・」

 

 緊張した面持ちでねむに付いて行く一夜。その背後をナナツメが無表情で付いていた。

 廃墟の中にある階段を上って行き、古びたドアを開くと、そこにはクラシカルなソファーや調度品が並び壁には魔法陣の様な模様が書かれた部屋に出た。

 

ねむ「調整屋さん。お客を連れて来たよ」

 

調整屋「いらっしゃーい。珍しいのねー。あなたが調整屋まで足を伸ばすなんて」

 

ねむ「今日は、前から相談していた僕の大切な部下を連れて来たよ。例のソウルジェムを接続した子だよ」

 

 ねむはそう言って一夜の方を見た。

 

調整屋「そう・・・。彼女が例の・・・。じゃあ自己紹介から済ませましょうか。わたしは、八雲みたま。この神浜市で調整屋を営む特別な魔法少女よ~。以後よろしくね」

 

 調整屋=八雲みたまは、そう言って一夜の手を握って来た。

 一夜は少し驚いた表情を見せていた。

 

一夜「えっと。越馬。越馬一夜です・・・」

 

ねむ「むふっ。相変わらずだね。それじゃあ、頼んでいた調整を始めて貰おうかな?」

 

みたま「はーい。せっかちねぇー。じゃあ一夜ちゃん。早速、そこの寝台の上に横になってね~」

 

一夜「分かりました」

 

ねむ「僕らは待たせて貰うよ」

 

 ねむがソファーに座るとナナツメはその傍らに立って待機していた。

 一夜は素直に寝台の上に横になろうとした。

 

みたま「あっちょっと待って。あなたのソウルジェム、今は指輪ね?」

 

一夜「そうです」

 

みたま「じゃあ指輪をした手を胸の上に重ねて~」

 

 一夜は寝台の上に横になると言われた通り胸の上に手を重ねた。

 

みたま「それじゃあ目を閉じて~。深呼吸して~。静かに夢を見る様にぃ~」

 

一夜「・・・」

 

みたま「じゃあ、身体に触れて行くわよ~」

 

 みたまの手が一夜の手から足元へ。そこから足元を遡り頬に触れて再び一夜のソウルジェムに触れた。

 

みたま「それじゃあ一夜ちゃんのソウルジェムに触るわよ~」

 

 そう言ってみたまは一夜のソウルジェムに触れた。触れたと同時に自らの魔力で一夜の魔力を先導して行く形で今の一夜の身体である朱奈の身体に一夜の魔力を通して行った。

 

一夜「うっ」

 

 一夜は初めて感じる感覚に戸惑いを見せた。

 

みたま「大丈夫よ~。わたしが付いているから~」

 

 優し気なみたまの声に一夜が安心感を覚えた時、一夜は朱奈の身体に感じていた重みが軽くなって行く事を感じていた。

 

一夜(これが調整・・・)

 

 その時、一夜の脳裏に何かのイメージが浮かんだ。

 一夜を庇う赤と青の髪をした背の高い女性。

 服装からして魔法少女なのは明らかだった。

 その魔法少女と対峙するみふゆと数人の黒羽根と白羽根。

 

一夜(何のイメージ?)

 

???(嫌・・・)

 

一夜(えっ!?)

 

 突然、響いて来た他者の声に一夜は驚いた。

 テレパシーを使っていないにも関わらず声が聞こえたのだ。

 更にテレパシーならば魔力を帯びているのを感じ取れるがそれを感じ取れなかった。

 

一夜(誰の声!?)

 

???(これ以上、思い出したく無い!!)

 

 声がイメージを拒絶した事を一夜は直感的に感じ取った時、一夜は目を覚ました。

 自分がベッドの上で横になっていた事に気が付き起き上がると、みたまはソファーに座ってねむと何事かを話していた。

 ねむの傍らには、ナナツメもいる。

 

ねむ「みふゆと白羽根の調査によると反逆を起こした魔法少女は誰かに操られていたらしいんだ。そう言う魔法を持った魔法少女に心当たりは無いかい?」

 

みたま「わたしは一応、中立だけど・・・。一つだけ心当たりはあるわ。更紗帆奈と言う魔法少女が暗示魔法を使う事が出来るわ。彼女ならあなた達の言う突然の反逆を起こす事が出来るかも知れないわ」

 

ねむ「じゃあその魔法少女は何処に?」

 

みたま「でもね・・・。彼女はもう・・・。死んでいるのよ。少し前に他の魔法少女との戦いで自殺したって聞いているわ・・・」

 

ねむ「なるほど。じゃあ捜査は振り出しに戻った訳だね。ん?一夜。目覚めたのかい?」

 

みたま「あら?起きたのね~。身体の方はどうかしら?」

 

一夜「はい。前より軽くなりました・・・。でも、変なイメージが見えたんです」

 

みたま「どんなイメージ?」

 

一夜「アタシの事を庇う、赤と青の髪を生やした背の高い魔法少女とみふゆさんと黒羽根や白羽根のイメージが出て来て・・・。そしたら急に知らない女の子の声がして目が覚めたんです」

 

ねむ「声はなんて言っていたんだい?」

 

一夜「嫌、これ以上、思い出したく無いと・・・」

 

みたま「それは・・・。身体の記憶ね。きっと一夜ちゃんのソウルジェムがその身体に馴染んで行ったから身体が持つ魂の記憶を覗いてしまったのね」

 

ねむ「声の意味は恐らく、一夜が見てしまった記憶を思い出す事、事態を拒絶しているみたいだね」

 

一夜「拒絶・・・。それはどうして・・・」

 

ねむ「それは僕からは話せない。個人の事情だからね。朱奈に何があったのかは、いずれ身体を借りている一夜が自分の意思で知りたいと思った時に知るべきだと思うよ」

 

みたま「そうね・・・。でも、もし記憶を知りたいと思ったら何時でもわたしの店に来てね~。もう料金は前金で支払って貰っているから問題無いわよ~」

 

一夜「えっ?料金って?」

 

ねむ「ああ。君達二人、一夜とナナツメの調整料金は僕と灯花で払っているから大丈夫だよ」

 

一夜「でも良いんですか?」

 

ねむ「一夜はローブや道具を作る仕事で十分にマギウスの翼に尽くしているよ。ナナツメは、僕や灯花の護衛をしてもらっているから当然の配慮だと思うよ」

 

ナナツメ「ありがたき幸せ」

 

一夜「はい。ありがとうございます・・・」

 

ねむ「じゃあ一夜。早速魔法を試してみようか?」

 

一夜「あっ。はい。試してみます。まずは変身を・・・」

 

 一夜が指輪のソウルジェムを宝石に変えて魔力を集中した。

 魔力の収束によって変身は問題無く行われた。

 

一夜「変身はできたみたいです」

 

みたま「そうね~。ちゃんとできているわよ~」

 

 みたまはそう言ってテーブルの上にある鏡を一夜に向けた。

 ちゃんと朱奈の身体で変身できている姿が写っていた。

 

一夜「魔力のコントロールも前と同じで身体の方にも問題無いみたいです」

 

みたま「でも魔力を使って身体を動かす時は気を付けてね~。まだ上手く行かないかもしれないから~」

 

一夜「分かりました・・・。魔法とローブ作りを試してみたいので、調整屋さん。机を借りても良いですか?」

 

みたま「良いわよ~。わたしの事はみたまで良いわよ~」

 

一夜「はい。みたまさん」

 

 一夜はみたまに断りを入れて机の上に持って来た荷物から出した黒い布を広げた。

 布の周囲には、ハサミやメジャー、筆と言った道具が置かれている。

 最後に度の強そうなレンズの丸い眼鏡を付けて一夜の準備は出来た。

 

一夜「じゃあ、始めます!」

 

 久しぶりに一夜は自身の魔力を目の前にある布に注いだ。

 前と変わらない感じで注がれている感じがしている。

 一夜はメジャーで布の採寸を取ると一気にハサミで余分な部分を切って行く。

 既に何度も行っている作業であり慣れもある。

 かけている眼鏡が採寸とサイズをレンズに見せてくれる為、サイズを間違えて切る事は無い。素早く肩に当たる部分にファーを針と糸で縫い合わせて行く。

 袖口には魔力を通したチェーンを魔力で縫い付け実戦に耐えうる耐久性を持たせる。

 金色の模様が刻まれた筆でローブの模様が必要な部分を筆で塗って行く。

 全ての作業は一夜の手作業である。しかし全ての作業に魔力を用いて効率的に行い布全体に魔力を浸している為、布に魔力が浸透していく。

 一夜の固有魔法である魔力による具現化が作用していく。

 直ぐに黒羽根が纏うローブが一つ完成していた。

 その間、約15分。

 

ねむ「むふっ。相変わらず良い腕だね。これならもう職場復帰も大丈夫だね」

 

 ローブを検分してねむは機嫌良さそうに告げた。

 

一夜「ありがとうございます。これでまたお役に立つ事が出来そうです」

 

ねむ「うん。また週明けからローブの製造を頼むよ一夜。調整屋さんも済まないね。これでマギウスの活動も捗るよ」

 

みたま「そうねえ~。調整屋さんとしてはお客さんが増えてくれるなら大歓迎よ~。それと一夜ちゃん。一つだけ注意しておきたい事があるのよね~」

 

一夜「何ですか?」

 

みたま「一夜ちゃんの今の身体とソウルジェムは今、ねむちゃんの魔力で無理やり繋いだ状態だわ。それを今日は、わたしが更に身体とソウルジェムを馴染ませる調整をしてあげたわ~。でもねえ、もし今の状態でドッペルを出したら身体とソウルジェムの魔力の繋がりが断ち切れてしまうかも知れないわ~。だから注意してね」

 

一夜「はい。でもアタシは殆ど戦わないから・・・」

 

ねむ「一夜。戦わないからと言っても心理的なショックを受けてもソウルジェムは穢れるよ。神浜市にいればドッペルシステムがあるから安心だと思ったけど盲点だったね。一夜はこれからソウルジェムの状態に気を付けてね。グリーフシードが必要な時は僕や灯花に聞けば大丈夫だから」

 

一夜「はい。これから気を付けます・・・」

 

 神妙な表情で頷く一夜。

 

みたま「じゃあ一夜ちゃんの調整も終わったから今日はねむちゃんとナナツメさんも一緒に調整していかない?」

 

ねむ「生憎だけど、今日は自宅に帰る事にするよ。もう夕方だからね。ナナツメはどうする?」

 

ナナツメ「小生はねむ様の護衛を優先します。私事等、些細な事です」

 

ねむ「ふむ。相変わらずだね。それじゃあナナツメと一夜は僕の家の近くまで付いて来て。僕が帰宅したらナナツメは一夜を連れて一度、本拠地へ戻って、それから調整屋へ行くのはどうかな?調整屋さんはどうだい?」

 

みたま「そうねえ~。わたしは問題無いわよ。ナナツメさんの調整も興味あるのよね~」

 

ナナツメ「ねむ様がそう言うのならばそう致します」

 

一夜「アタシも分かりました」

 

ねむ「じゃあ調整屋さん。また来るよ」

 

みたま「またのご来店をお待ちしてるわ~。ナナツメさんも後でね~」

 

 手を振って送って来たみたまに手を振り返した一夜は、ねむとナナツメに付いて調整屋を出て行った。

 それから電車を乗り継いてねむの自宅近辺に辿り着いた。

 

ねむ「二人ともここまでで構わないよ」

 

ナナツメ「分かりました」

 

一夜「はい。今日はありがとうございます」

 

ねむ「別に構わないよ。僕は上に立つ者としてすべき事をしただけだからね。それじゃナナツメ。一夜の事を頼むよ」

 

ナナツメ「はっ」

 

 小さく返事したナナツメと一夜の様子を交互に見てねむは自宅に帰って行った。

 フェントホープまでの帰り道、一夜とナナツメは特に喋らなかった。

 

 

□ 神浜市内 ホテルフェントホープ 正面入り口

 

 

 一夜とナナツメは仕事上では同士ではあるが、さほど親しい訳では無かった。

 ナナツメは普段、マギウス二人の護衛を中心に単独で動いているからだ。

 ただその日はフェントホープの入り口に付いた所でナナツメが珍しく話しかけて来た。

 

ナナツメ「もしグリーフシードが必要なら小生にも言えば良い。小生も持っている」

 

一夜「わっ分かりました・・・」

 

ナナツメ「調整に行く」

 

 答えてナナツメは再び来た道を戻って行く。

 それを見て一夜は自室へ戻ろうとエントランスに入ると横から声を掛けられた。

 

みふゆ「一夜さん」

 

灯花「あっ。一夜。戻ったんだねー」

 

 そこには、マギウスの翼の幹部であるみふゆと、羽根を束ねるマギウスの一人である里美灯花が私服と制服姿でソファーに座っていた。

 

一夜「灯花様。みふゆ様。その・・・。暫くの間、迷惑を掛けました」

 

みふゆ「いえ。あれは事故ですよ。仕方ありません」

 

灯花「そうだよー。あのタイミングで反逆を起こすなんて、反逆者達は頭が悪すぎるよー。どうせわたくしに勝てる訳が無いのにねー」

 

 反逆者を罵倒する灯花に対してみふゆは少し硬い表情をしていた。

 

みふゆ「一夜さんはその身体には慣れたのですか?」

 

一夜「はい。もう明日にでもローブを作るのを再開出来ます」

 

灯花「そっか。じゃあ明日からまた作業が出来るねー。ねむから聞いたと思うけど明日からの作業場は、わたくしが用意してあげたからそこで作業してねー」

 

一夜「分かりました。場所は遠いんですか?」

 

灯花「ここから少し離れた場所にある、里美家の使ってない倉庫があるからそこで作業して貰おうかなって思ってるかにゃー」

 

一夜「仰せのままにします」

 

灯花「うん。良い返事だねー。場所は明日、わたくしが案内するから。じゃあ後、これは今月分ねー」

 

 灯花はそう言うとカバンから二通の少し厚めに中身の入った封筒を取り出した。

 

灯花「一夜の今月のお給料だよー。ナナツメの分もあるけどナナツメは?」

 

一夜「ナナツメさんはさっき調整屋へ行きました」

 

灯花「そっか。じゃあ一夜から渡しといて」

 

一夜「はっはい」

 

 そういって一夜は灯花から封筒を二通、受け取った。

 重要な物を受け取って少し責任感を感じる一夜。

 

みふゆ「灯花。気になっていたのですが、一夜さんとナナツメさんの給料に関してはどうやって支払っているのですか?」

 

灯花「うん?わたくしのお小遣いから支払ってるよー」

 

みふゆ「大丈夫何ですか?月一とは言えかなりの額を渡してますよね?」

 

灯花「うーん。一応、世間一般における会社員の給料を参考にして額を決めて渡しているんだけどにゃー」

 

みふゆ「具体的な額は聞きませんが、灯花の方はそれで大丈夫なんですか?お父様にバレて問題になったりはしないのですか?」

 

灯花「ああ。それなら大丈夫だにゃー。だって一夜とナナツメの給料に必要なお金はネットの取引で合法的に稼いでもう3年分位は貯蓄出来てるかにゃー」

 

みふゆ「えっ。それ凄いじゃ無いですか!?」

 

灯花「でも短期間でここまで稼ぐのはしんどかったにゃー。三日はパソコンから目が離せないから暫くはもう良いかにゃー」

 

みふゆ「もしかして前に三日位、連絡が付かなかったのは、それが原因だったんですか?」

 

灯花「そーだったかも知れないねー。でもわたくし、夢中になると徹夜を三日位する時もあるからねー」

 

一夜「そんな事までしてもらって申し訳ありません」

 

灯花「もう。頭なんか下げなくても良いのにー。一夜はマギウスの翼における裏方として一番、働いていると思うよ」

 

みふゆ「そうですよ。黒羽根や白羽根が使うローブや他にも必要な道具を一夜さんが作ってくれるじゃないですか。他の誰にも出来ない一夜さんにしか出来ない仕事です」

 

灯花「そうそう。ねむに近い魔法を使える魔法少女なんて一夜しかいないんだからもっと自信を持った方が良いのにー」

 

一夜「えー。そんなに褒められるのは、ちょっと慣れてません・・・」

 

 恐縮一夜が小さくなったのを見て灯花とみふゆは苦笑した。

 

みふゆ「でも、もっと自信を持っても良いと思いますよ。それじゃあ灯花。ワタシ達もそろそろ行きましょうか」

 

灯花「そうだねー。今日は時間があるから少しだけみふゆの勉強を見てあげるよー」

 

みふゆ「それは・・・。ありがとうございます・・・」

 

灯花「じゃあね。一夜。ナナツメにもよろしくー」

 

 灯火と苦笑した、みふゆはそう言ってフェントホープから出て行った。

 それを見た一夜も自室へと戻った。

 フェントホープの内部には、羽根達が使う客室や、幹部クラスや特別な事情で宿泊を許された羽根達用の個室も用意されている。

 実際問題として個室を所有しているのは、マギウスである里美灯花、柊ねむ、アリナ・グレイの3人。そして幹部である梓みふゆと白羽根である天音月夜と月咲も所有が許されている。それに加えてナナツメと一夜も特別な事情があって個室が与えられている。

 一夜の部屋はナナツメの隣でもあり帰って来たら直ぐに分かった。

 

一夜「明日から・・・。頑張らないと・・・」

 

 一夜は自室の中で明日からの仕事での決意を抱いていた。

 

 

 

□ 神浜市内 新西区 調整屋

 

 

みたま「はーい。深呼吸して~」

 

ナナツメ「ふぅー」

 

みたま「楽にしてー」

 

ナナツメ「・・・」

 

みたま「ねえ。ナナツメさんは、今日はどうして自分の事を後回しにしようとしたのかしら~」

 

ナナツメ「仕事が優先・・・」

 

みたま「でもねむちゃんの提案が無ければ調整を受けないつもりだったんでしょう~?」

 

ナナツメ「小生の事など気にする必要無い・・・」

 

みたま「ねむちゃん達も上に立つ者としてあなたには、もう少し自分の事をして欲しいと思っているみたいよ~」

 

ナナツメ「別に必要は無い」

 

みたま「ナナツメさんは本当に仕事が好きなのね~」

 

ナナツメ「好きとかでは無い。無駄な記憶を消したからこそ小生は仕事をする」

 

みたま「そうね。ナナツメさんは記憶が無いから仕事に集中出来るのかも知れないわね。でも何をするにしても突き詰め過ぎない様にした方が良いわよ~。頑固なままでいると気が付いたら周りから誰もいなくなる時があるんだから・・・」

 

 みたまが遠い所を見る様な表情を見せていた。

 

ナナツメ「心得ておく・・・」

 

 

□ 神浜市内 ホテルフェントホープ 廊下

 

 

廊下を歩くナナツメ。自室に辿り着くとドアを開き中に入るとベッドに座った。

 

ナナツメ「喋るのが疲れた・・・」

 

その時、部屋のドアをノックする音がした。

この部屋を訪ねて来る人物は限られている。

灯花様、ねむ様、一夜、みふゆさんのどれか。

ドアを開くとそこには、一夜が立っていた。

 

ナナツメ「何か用か?」

 

一夜「そうじゃなくて・・・。これ灯花様が渡しておいて欲しいと」

 

 一夜はそう言って封筒を差し出した。

 

ナナツメ「そうか。給料日か。すまない」

 

 ナナツメは一夜から封筒を受け取ると直ぐにドアを閉めた。

 

ナナツメ「もう疲れた・・・」

 

 ナナツメはベッドに横になると少し早めに休む事にした。

 

 




ようやくお気に入りでもあるみたまさんの登場です。
そしてナナツメ。
ナナツメはコードネームで本名は別にあります。
朱奈と綾女に何があったのかはこれから明かして行きます。
それは一夜が知らなければいけない事でもあるので。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。