マギアレコード 偽書e/s memorys 作:ジャックノルテ
□23 過去の神浜市の隣町 次の日 夕方の公民館
公民館のホール近くにあるベンチに座る女性が台本を読んでいる。
その前に私服姿の改革派Eが黙って待っている。
すると女性は台本を読み終えた様子で台本を閉じた。
女性「待たせたわね。それで訪ねてくるなんてどうしたの?」
改革派E「これをお母さんに見せに来ただけだから」
そう言って改革派Eが渡したのは進路指導の書類だった。
女性=母親「これって・・・・・。もうそんな時期なのね。でもあなた・・・・・。この学校って」
改革派E「私、高校は普通科のある所に進学するから」
母親「前にも言ったでしょう。せめて高校に行くなら栄総合学園にしないと。あそこなら芸能科があるから演技の勉強にも」
改革派E「お母さん。現実を見て。私はそこまで演技力は無いから。それに栄総合学園に通う学費なんて家に無いでしょ」
母親「でも芸能科の特待生になれば」
改革派E「だから私にそんな演技力を求めないで。お母さんは好きな演技を続けられるんだからそれで良いじゃない。私まで演技の世界にいる必要は無いでしょ」
母親「でも親子で演技をするのがお母さんの」
改革派E「勝手な夢でしょ。どうして普通に生きるんじゃいけないの」
母親「そんなお父さんみたいな生き方で何が楽しいの?」
改革派E「そのお父さんが家計を支えてくれるのに・・・・・。お母さんはそんな事を言うんだね」
母親「そんなつもりじゃ」
改革派Eは失望を隠す事無く返事を聞かずにその場から立ち去って行った。
母親への憤りを押さえ公民館の入り口を出る。
入り口を出ると直ぐ公園に繋がっており公園に足を向けようとした時、
彩月「見つけたで。改革派さん」
改革派E「あっ」
改革派E(菖蒲彩月・・・・・・)
驚愕する改革派Eの眼前に車の侵入禁止ポールに腰を付ける私服姿の彩月がいた。
彩月「魔力を隠さんから簡単に見つかったで」
改革派E「・・・・・・・」
彩月「警戒するのはええ事やで。昨日あんさんが見た事になるかも知れへんしな」
改革派E「気づいていたんですか・・・・・」
彩月「何となくやけどな」
気安い笑みを浮かべて彩月は愉快そうしている。
改革派E「今度は私の番と言う事ですか」
身構え厳しい視線を向ける改革派E。
彩月「別にあんさんを倒すつもりは無いで」
改革派E「そんな言葉を信じるとでも」
彩月「だってあんさん。ウチと同類やろ」
改革派E「!?」
驚きを通り越して表情が能面の様になる改革派E。
改革派E「どうして」
彩月「カンや。何と言えばええんかな。普通なら魔法少女とその発する魔力は完全に一致する。けどあんさんから出る魔力とあんさんの存在がイコールで一致しないんや。イメージの不一致と言うヤツやな。まるでウチと一夜さんの様にな」
改革派E「・・・・・・・・」
彩月「だから安心してええで。ウチが欲しいのは、本物の魔法少女のソウルジェムや。まがい物には興味が無いで」
改革派E「それなら何しに」
彩月「まあ・・・・・。昔馴染みやからな。挨拶みたいなもんや」
改革派E「えっ」
彩月「覚えとるで。あんさん。昔、ウチと一緒に舞台におったやろ」
改革派E「・・・・・。覚えてたんですか」
彩月「忘れられない経験やな」
改革派E「分かりました。改革派が無くなった以上、私はもう神浜市には行きません。これで大丈夫ですか?」
彩月「ああ。それでええ。この先、神浜市と関わったらあんさん死ぬで」
改革派E「そうですね。命は大事ですから」
彩月「そうや。もし改革派の行方を調べてる奴がいたらウチの事を話してもええで」
改革派E「え?」
彩月「あんさんはウチに脅された可哀想な被害者と言う事にしとき。そうすれば馬鹿な事を考えるヤツがいてもウチに矛先を向けるやろ」
そう言って背を向ける彩月は歩き去ろうとする。
改革派E「・・・・・・」
彩月「まあウチの用は」
??「そこで何をしているの!!」
改革派E「!?」
彩月「・・・・・・」
突然の怒声に改革派Eは驚いたが彩月は無関心な様子を見せていた。
怒声の主である女性は歩き方からして怒りをにじませているのが誰の目にも明らかにして彩月の前に来ると怒りを隠さない視線を向けていた。
女性「あなたは!舞台や劇団をめちゃくちゃにして!いつもいつも何かを演じて本心を見せない様にして!親を何だと思っているの!」
改革派E(この人・・・・・。確か菖蒲さんのお母さん)
女性=彩月の母親「誰にも本心を見せられないあなたは演技を利用しているだけよ!そんな子が!私の舞台に近付くな!演技を馬鹿にするな!」
彩月「・・・・・・・」
改革派E「!!」
改革派Eは彩月が無表情にただ母親を見ていたのに気付いた。
周囲で行きかう人々も彩月の母親が発する怒声に気付いて様子を窺っていた。
彩月「あー。尊敬するお母様。私はとてもとても弱くて愚かな存在です。ですから何かを演じる事によって自分を偽る事でしか周囲に自分を見せられない哀れな哀れな子羊に過ぎません。ですが一つ、ご意見を。この世で本心を見せている人間がどれ位いるのでしょうか?そもそも本心はなんでしょうか?何をもって本心とするのかはあらゆる人の、八百万の心の中から一つの本心を探す様な物。ああ。私は砂漠を彷徨う一粒の種。今日も風と砂に呑まれて流れゆく定めゆえ」
大袈裟に自らの身体全体を使って周囲にアピールしながら彩月は一気に語り終える。
語り終えると同時に笑顔で母親の方を見る。
彩月「お母様もずるいで。こんな風に不意打ちで小演技のテストをさせるなんて」
改革派E(テスト?そんな風には・・・・・)
彩月の母親「!!」
彩月「けどこういう不意打ちは嫌いじゃないで。それじゃ演技を頑張ってな。お母様」
満面の笑みを見せて彩月は歩き去って行く。
様子を見ていた様子を見ていた周囲の人々も彩月の発言を聞いて納得した様子で歩き去って行く。
改革派Eの眼前で彩月の母親は憮然とした表情を一瞬だけ見せたが直ぐに笑顔の仮面を見せるとそのまま公民館に入って行った。
改革派E(彩月さんも親子関係良く無いんだ・・・・・・・。でも私はあの人みたいにはなれない・・・・・・。あの人みたいな演技も出来ない・・・・・)
改革派Eは少しだけ彩月に親近感を抱いたが直ぐにそれは消えていた。
□24 過去の神浜市 北養区 ホテルフェントホープ 地下倉庫
地下倉庫の番をしている黄羽根姿の一夜。
そこへ大きな足音を響かせてこちらに向かって来る人がいたが一夜には直ぐに誰だか分かった。
一夜(彩月さん!?)
彩月「お久しぶりやで―!一夜さん」
一夜の予想通りに彩月が地下倉庫に入って来る。
一夜「もう具合は大丈夫なの?」
彩月「ああ。心配かけたで。もう具合は大丈夫や。昨日も魔女と戦ったからなあ」
一夜「えっ?そうなの?」
彩月「それで残念やけど改造して貰った巨剣とか魔力を溜めた宝石は全部パーやな。使い勝手は良かったんやけど」
一夜「そっかあ。あれは作るのに手間が掛かるから・・・・・・」
彩月「壊して悪かったなあ」
一夜「でも道具は使ってれば何時かは壊れる物だから。ところで聞きたい事があるんだけど」
一夜は眼鏡越しに彩月の事を見る。
彩月「なんや?」
一夜「倉庫の中にあった黒羽根のローブが足りないんだけど」
彩月「あっ。言うの忘れてたわ。5個位、ちょーと借り取ったで。魔女退治で壊れちまったわ」
一夜「やっぱり。どうりで数が合わないと思った」
彩月「済まへんなあ。色々と使えるんや。貰ったコピーの武器と同じでな」
一夜「何に使っているのか知らないけど、余り変な事をしてるとこの間みたいにみふゆさんにも怒られちゃうよ」
一夜も改革派が脱退した事は聞き及んでいた。
彩月「そうやなー。まあ怒られるだけで済まなくてもええんやけどな」
一夜「そんな事を言っているとみふゆさんが・・・・・」
彩月「まあ確かにまた体重が増えるかも知れへんなあ」
みふゆ「それは悪かったですね。まあ確かに苦労が増えると体重は増えますが」
彩月、一夜「!?」
みふゆ「それで彩月さん。病気が治ったのに上司への挨拶は無しですか?」
彩月「あー。みふゆさん。いやー。一夜さんに挨拶したらみふゆさんやねむ様達にも挨拶するつもりやったんですけどー」
みふゆ「それは良い心がけですね。じゃあ早速行きましょうか?」
みふゆの顔は笑っているが内心が笑っていない事は一夜と彩月にも分かっていた。
彩月「はい・・・・・」
珍しく素直に彩月はみふゆの言う事を聞いてみふゆに引っ張られて行く。
一夜「いつもあれぐらい素直なら良いのに・・・・・」
その後、彩月はみふゆに首根っこを掴まれる形でフェントホープに来ていたねむとナナツメの前に連れて行かれた。
ねむ「やあ。彩月。風邪だと聞いていたけど随分と調子が良いようだね」
皮肉を隠さずにねむは彩月に告げナナツメは無言でそれを見つめている。
ナナツメ「・・・・・・・」
彩月「いやー。そんな事は無いで。初日は凄く苦しかったで」
みふゆ「でも風見野で魔女退治をしてたんですよね?」
彩月「それはー。成り行きで・・・・・」
ねむ「一夜が黒羽根用のローブの数が合わないと言っていたけど君が持ち出したんだろう?」
彩月「ちょいと試したい事があって・・・・・・」
みふゆ「いくら黄羽根でもやって良い事と悪い事があると思います」
ねむ「在庫の管理は一夜の仕事だし護衛である君にも責任があるからって好き勝手は困るよ」
彩月「もうしません。だから許して下さい」
地面に手を付いて土下座の姿勢を見せる彩月。
みふゆ「本当に反省してます?」
彩月「してます!してます!凄くしてます!」
ねむ「はあ。今回は許す事にするから黄羽根の仕事に戻ってくれないかな?」
彩月「ははー。今まで以上に精進するさかい」
一礼して出て行く彩月。
みふゆ「ねむ。良かったんですか?簡単に許してしまって」
ねむ「どうせ彩月の反省は口だけだよ。だったらもう仕事に戻した方がこちらのストレスも軽くなるだろう?」
みふゆ「同感ですね」
ねむ「僕達も仕事に戻ろう。灯花に頼まれている記憶ミュージアムの準備もあるからね」
みふゆ「はい。これでやっちゃ・・・・・。七海やちよの動きは抑えられる筈です」
ねむ(果たしてそう上手く行くのかな?みふゆの提案した口寄せ神社を倒した以上は記憶ミュージアムで仲間をこちらに取り込んでも七海やちよは変わらない可能性は高い。みふゆは本当にその事を理解しているのかな?それとも・・・・・。理解した上で提案しているのかな?)
ナナツメ「・・・・・・・」
ねむが心に抱いた疑問に誰も答える事は無い。
そこへ激しい足音共に彩月が一夜を引っ張って来た。
彩月「ねむ様!折角やし記念写真とろうや!ねむ様と黄羽根で」
そう言って彩月は自分のスマホを取り出す。
ねむ「君は本当に空気を読まないね」
ナナツメ「・・・・・・・」
みふゆ「彩月さん・・・・・」
呆れた表情を見せるねむとみふゆ。
それに対してナナツメは何も語らない。
一夜「でも・・・・・。折角だからアタシは撮ってみたいです・・・・・」
ねむ「!」
朱奈の身体を借りている一夜が積極的な発言をした事にねむは驚いていた。
ねむ(これは一夜の成長の為にも必要な事かな?)
ねむ「そうだね。じゃあ折角だから僕とナナツメ、それに彩月と一夜で黄羽根の集合写真を撮ろうか。むふ」
彩月「そうやろ!そうやろ!今日はそう言う気分なんや」
みふゆ「ねむ。良いんですか?」
ねむ「たまの思い出作りだよ。みふゆ。撮影をお願いして良いかな?」
みふゆ「分かりました」
ねむはみふゆに自信のスマホを渡す。
彩月「ウチのもお願いします!」
彩月も自身のスマホをみふゆに渡した。
ねむ「一夜とナナツメには僕のスマホから画像は送るよ。ところでナナツメ。君も一緒に写ってくれるよね?」
ナナツメ「仰せとあらば」
彩月「ほら!一夜さんも」
一夜「あっ。眼鏡したまま」
彩月「そのままでええやん。似合っとるで」
一夜「・・・・・。まあいっか」
みふゆ「それじゃ撮りますよ。良いですか?」
ねむ「何時でも良いよ」
ナナツメ「・・・・・・・」
彩月「準備OKやで」
一夜「お願いします」
彩月「ねむ様は一番ちっこいから真ん中やで」
ねむ「まあ確かにバランスは大事だからね」
みふゆ「撮りますよー」
魔法少女姿のねむを中心に黄羽根のローブを纏った彩月、一夜、ナナツメが囲む形で写真は撮られた。
彩月「なかなかええ写真やないか」
一夜「アタシもそう思います」
ねむ「そうだね。たまには悪く無いかな」
ナナツメ「・・・・・・・」
そしてこれが唯一の黄羽根が集合した写真となった。
マギウスへの裁判終了を経た現在。
何処かでスマホに表示されている黄羽根の集合写真を見つめる彩月。
彩月(そうやなあ。この頃は楽しかったで。マギウスのみんなと色々と仕事を手伝ったり遊んだりからかったりしながら改革派の奴らをバレない様に倒したのは。そう言えばウチが使ってたソウルジェムの持ち主、こまちさんはこの事に気付い取らんかった様やな。こまちさんの意志が強く出たのは改革派に金縛り魔法や浸食魔法で攻撃された後。もしかしたらアリナさんがキューブで浸食魔法を取り除いた事も要因か?まあ分からへんな。余りにも条件が多すぎる)
彩月(まあなんにせよ・・・・・・。バレたんならもうええか)