マギアレコード 偽書e/s memorys   作:ジャックノルテ

8 / 76
第7話 いつも通りなんだから・・・

□ 神浜市内 北養区 天文台付近

 

 

灯花「じゃんじゃーん。これが今日から一夜に使って貰う仕事場だよー」

 

 少し古い倉庫の前に立つ制服姿の灯花は自慢げに倉庫を指差していた。

 それを驚きながら見つめる私服の一夜と無表情な私服のナナツメ。

 いつもの事と言う様子を見せる制服姿のねむと天音姉妹と私服姿のみふゆ。

 

一夜「こんな立派な建物をアタシが使ってしまってよろしいのですか?」

 

灯花「いーよ。どうせ使ってないしねー。こーゆーのは、有効的に活用しなきゃでしょー?」

 

一夜「はい。ありがとうございます・・・」

 

灯花「それじゃあ中を見てみようかにゃー」

 

 そう言って灯花が持っていた鍵でドアを開いて皆も続いた。

 中には作業用の机と椅子が数脚置かれていた。

 その脇には中身の入った大量の段ボール箱が並べられている。

 

灯花「中は片づけてあったから椅子と机だけはわたくしが用意しておいたよー。ローブや道具を作るのに好きに使って良いからねー」

 

みふゆ「こんな建物を用意出来るなんて・・・。住む世界が違うって気がしますね・・・」

 

ねむ「そうだね。僕もつくづくそう思うよ」

 

月夜「やっぱり聖リリアンナに通うだけの事はあるでございます」

 

月咲「本当。ウチ達とやる事の規模が違うよね・・・」

 

灯花「材料の布とかは、そこの段ボールの中に言われた通りの物をたくさん用意しておいたからこれで問題無いよねー。それと端に積まれているのはいつもの生活物資だから」

 

 一夜はローブの材料が入った段ボール箱の一つを開けて確かめた。確かに一夜が頼んだ物が入っている。

 

一夜「はい。大丈夫です」

 

灯花「うんうん。順調だね。それじゃみんな、一つ発表があるんだけど良いかにゃー?」

 

 発表と言われて周囲にいる全員が表情を引き締めていた。

 

灯花「わたくしとねむとみふゆで相談して今日から一夜は黄羽根に任命する事にしたから」

 

一夜「えっ!?でも黄羽根は灯花様とねむ様の親衛隊じゃ?」

 

ねむ「確かにそうだけど、人員がナナツメしかいないからね。それに前々から裏方である一夜の立場をハッキリさせておきたかったんだよ。以前は裏方の協力者と言う扱いだったけど、これからは黄羽根だから僕と灯花の直属の部下と言う形になるね」

 

灯花「そう。それにここからが重要だけど黄羽根の地位としてはみふゆとは同格だからねー。つまり準幹部と言った所かにゃー」

 

みふゆ「つまりワタシは黄羽根の指揮権を持ち合わせないと言う事です。黄羽根は灯花とねむの親衛隊のナナツメさんに裏方を担当する一夜さん。妥当な配置だと思います」

 

月夜「私も賛成にございます。ナナツメさんと一夜さんの能力と功績を考えれば白羽根より上でも納得がゆくでございます」

 

月咲「そうだね。ウチらは一夜さんみたいにローブや道具を作れないし、ナナツメさんみたいに長期の護衛は出来ないからね」

 

灯花「そう言う訳だから今日から一夜も黄羽根の一員だから。自分用の黄色いローブを作ってね」

 

一夜「はい。分かりました。でも本当にアタシが黄羽根で良いんですか?」

 

灯花「良いんだよー。一夜が黄羽根なら裏方の仕事に専念出来るでしょー?」

 

ねむ「そうだよ。今までは立場が不鮮明だったけど、これで一夜の立場がハッキリするから仕事もしやすくなるだろうね」

 

 黄羽根。それは、マギウスの翼における末端の戦闘工作員である黒羽根とも、その黒羽根を指揮する指揮要員であり準幹部とも言える白羽根とも別の存在だった。

 ある小さな騒動が原因で設立された黄羽根の主な役割は、里美灯花と柊ねむのみが指揮権を有する独立した親衛隊とも言える存在だった。

 しかしここに裏方である一夜が加わった事によって黄羽根は親衛隊のナナツメと裏方担当の一夜の2名となった。

 事実上、一夜も親衛隊の一人と見なされたと言う事だが、戦闘力の無い一夜は黄羽根と言う立場に少しだけ不安を感じていた。

 

一夜「はい・・・。それじゃそうする事にします・・・」

 

しかしマギウスに認められた事に一夜は久し振りに嬉しさを感じていた。

 その時、一夜とナナツメの視線が合わさった。すると珍しくナナツメが口を開いた。

 

ナナツメ「小生と同じ立場だからと言って気にする事は無い。ただやるべき仕事を行えば良いだけだ。護衛は小生が行う」

 

灯花、ねむ、みふゆ、月夜、月咲、一夜「!?」

 

 周囲に多くの人物がいる中で珍しく喋ったナナツメに周囲のメンバーは全員、驚きを隠せなかった。

 

みふゆ「ナナツメさんの言う通りです。一夜さん。これからも頑張って下さいね!」

 

 みふゆは驚いたままの空気を変える為に一夜を励ました。

 

一夜「はい。頑張ります」

 

 一夜が少し元気を出した事を見てみふゆは安堵した。

 

ねむ「そう言えば灯花。アリナはどうしたんだい?来る筈だと聞いたけど?」

 

灯花「アリナなら補修で居残りさせられたってわたくしにメールが届いていたよ」

 

ねむ「そう言えばテストの点数が悪かったって言っていたね」

 

灯花「もー。アリナの勉強も見てあげた方が良いのかにゃー?」

 

みふゆ「マギウスの活動に支障が無ければ良いんですが」

 

灯花「みふゆもそんな事言っている場合じゃ無いでしょー。今年はともかく来年は絶対に合格して貰うんだからー」

 

みふゆ「そうですね・・・。分かっています」

 

 呆れた様子を見せたみふゆに対して、すかさず灯花は釘を刺す一言をみふゆに告げた。

 マギウスの翼の幹部である、みふゆが灯花の援助を受けて実家を出て大学進学を目指していると言う事はマギウスにいれば周知の事実だった。

 

灯花「じゃあ鍵は渡しておくから後は一夜に任せるからねー。わたくし今日は、もう帰る事にするからー」

 

みふゆ「でしたらワタシが途中まで送りましょう」

 

ねむ「僕はウワサの様子を見に行くけど、ナナツメは付いて来るんだろう?」

 

ナナツメ「はい」

 

ねむ「分かった。それじゃ一夜。後は頼むよ」

 

灯花「じゃーねー」

 

 そう言って灯花、みふゆ、ねむ、ナナツメは出て行った。

 

一夜「二人は帰らないんですか?」

 

月咲「うん。ウチらは一夜ちゃんが今日作ったローブを運ぶのを手伝って欲しいってみふゆさんに頼まれているからね」

 

月夜「これも白羽根として当然の役割にございます」

 

一夜「分かりました。じゃあアタシは早速作業にかかります」

 

月咲「じゃあその間、ウチたちは笛の練習をしてるから終わったら教えてね」

 

月夜「笛の音が気になる様であれば教えて下されば外で練習するのでございます」

 

一夜「はい。でも大丈夫です。アタシは作業している時は自分が出す音に夢中になっていいますから」

 

月咲「じゃあお言葉に甘えるね。月夜ちゃん」

 

月夜「はい」

 

 倉庫の隅で椅子を持って来て笛の練習を始めた月夜と月咲。

 それを見て一夜もカバンに入れていた道具を机の上に置いて更に白い布を広げた。

 

一夜「その前にっと。眼鏡。眼鏡」

 

 カバンから一夜は魔法で作った作業用の眼鏡を取り出した。

 作業用と言っても実際には一夜の視力を平均以上に上げ、遠近のピントの調節やサングラスとしての役割を果たす優れ物の一夜が作った道具だ。

 まずは灯花に言われた通りに自分用の黄色いローブを作る事にした。

 ローブ全体に魔力を通す際に魔力によって着色して色を変えて行く・・・。

 全体が黄色く染まったら黒羽根や白羽根のローブと同じ装飾と施し首元のファーを縫い付け袖口には一応、黒羽根と同等の鎖鎌を付けておいた。

 しかし戦闘力をほとんど持たない一夜が使っても精々気休めの効果しか無いだろうと言うのは自分でも分かっていた。

 

一夜(よし。自分の黄色いローブが出来たから次は・・・。黒羽根のローブが10着に白羽根のローブが5着と。一時間あれば作れるから今日はもう夕方だからここまでにしよ・・・)

 

 それからきっかり一時間で一夜は、自分用の黄羽根ローブと黒羽根のローブ10着に白羽根ローブ5着を仕上げると月夜と月咲に声を掛けた。

 

一夜「月夜さん。月咲さん。終わりました」

 

月夜「もう終わったでございますか?」

 

月咲「うん。時間ピッタリだね。でも凄いね。もうこんなに出来てる・・・」

 

一夜「それじゃこれからこれをフェントホープに運ぶので」

 

月夜「アリナさんのキューブを使うでございます」

 

月咲「うん。本当は魔女の捕獲用だけど、裏方で必要な事なら仕方ないよね」

 

 キューブとはマギウスの一人であるアリナ・グレイが使う固有結界魔法を他者に貸し与えた物の通称である。本来の用途は魔女や使い魔の捕獲にあるがこうして荷物の運搬や怪我人を運ぶのに使う事も出来る為、マギウスではこうして使う事があった。

 

月夜「それではキューブの中に収めるでございます」

 

 月夜がローブの入った段ボールをキューブで包みこむと直ぐに段ボールはキューブの中に収められた。

 

月咲「ウチは生活物資の段ボールを」

 

 月咲は一夜の使うローブの材料とは別に積まれていた段ボールをキューブに包み込んだ。それはフェントホープで生活するに当たって必要な生活物資が収められた段ボールだった。

 

月咲「じゃあフェントホープに戻ろうか」

 

一夜「はい」

 

 一夜が倉庫の鍵を閉めると月夜と月咲と歩いてフェントホープを目指した。

 フェントホープまでは歩いて20分程かかるが、途中の道で人がいない事を確認すると3人は、魔法少女の姿に変身した。

 一夜はこの姿に二度目の変身だったが変身出来た事に一夜はホッとしていた。

 

月咲「じゃあ一夜ちゃんはウチが抱えるから」

 

一夜「すみません・・・」

 

月夜「恥ずかしがる事は無いでございます。飛ぶのに慣れていないのでは、仕方ありません」

 

 一夜を抱えた月咲と月夜は、魔力を使って跳躍する事で一気にフェントホープの結界入り口に辿り着いた。

 

月咲「入る前にと」

 

月夜「ローブに着替えるでございます」

 

 一夜を降ろした月咲と月夜は白羽根のローブを身に纏いフードを被った。

 

月夜「一夜さんもローブを纏うでございます」

 

一夜「分かりました」

 

 一夜は言われた通りに自分用の黄色いローブを身に纏いフードを被ろうとした。

 

月夜「一夜さん・・・。フードは被らない方が良いでございます」

 

一夜「どうしてですか?」

 

月咲「うん。ウチもそう思うよ。フードを被っているとナナツメさんと区別が付かないから一夜ちゃんは顔を出しても良いと思うよ。顔を出している人は限られるから大丈夫だと思うよ」

 

一夜「じゃあ、そうしておきます」

 

 一夜は黄羽根ローブのフードを降ろして素顔を晒す事にした。

 素顔を晒した黄羽根ローブを纏った一夜と白羽根ローブで素顔を隠した月夜と月咲はフェントホープに入った。

 入り口で3人を見た黒羽根は頭を下げて来た。

 頭を下げられる事に慣れてない一夜だったが自身も頭を下げ返した。

 倉庫に付くと入り口に設けられた広いスペースにキューブから荷物を解放して降ろした。それから降ろした荷物を所定の場所へ納めて行く。

 慣れた作業であり3人は直ぐに仕事を終わらせた。

 

月夜「これで今日の仕事は終わりにございます」

 

月咲「そうだね。やっと一息付けるって言いたいけど、そろそろ晩御飯の支度をしなきゃ・・・」

 

月夜「私もお稽古事があるでございます・・・」

 

一夜「そうなのですか・・・。じゃあ今日はありがとうございました」

 

月咲「別に良いんだよ。同じマギウスの翼のメンバーだからね」

 

月夜「そうでございます。一夜さんの仕事を手伝うのも白羽根として当然の仕事だと思うでございます」

 

月咲「それじゃ一夜ちゃん。今日はお疲れ様」

 

月夜「お疲れ様でございます」

 

一夜「お疲れ様です」

 

 月夜と月咲は一夜に挨拶して倉庫から出て行った。

 一夜も倉庫から出て廊下を歩いて自室へ戻った。

 静かで誰かが足音を立てれば響く程、フェントホープの内部は静かだった。

 

一夜「いつも通りだよね・・・」

 

 テーブルの上にはねむから渡された本と灯花から渡されたポータブルテレビが置かれていた。

 

一夜「シャワー浴びたら夕食食べながらテレビ見て、ねむ様から渡された本を寝る前に読んで・・・」

 

 普段すべき事を呟きながら一夜は夕食の準備をした。

 ケトルでお湯を沸かしてスープを作る準備をしてレンジで冷凍食品を解凍して食べる準備をする。いつもの通りに食事を取る。

 いつもの通りだが少しだけ寂しく感じていた。

 

一夜「どうして・・・。少し寂しいんだろう・・・。いつも通りなのに・・・」

 

 いつの間にか目から涙が流れていた。

 涙を拭おうとした時、一夜は眼鏡を付けたままだと気が付いた。

 自分の本当の身体を使っていた時、この魔法の眼鏡を付けたまま生活をしていた。

 その癖が未だ抜けて無かっただけの事だった。

 眼鏡を外すと鏡が目に入りそこには、身体を借りている朱奈の姿が目に入った。

 まるで自分ではない自分がそこに写っていた。

 

一夜「いつも通り。いつも通りなんだから・・・」

 

 自分に言い聞かせる様に一夜は言葉を呟いた。

 

 

□ 神浜市内 北養区 一夜の仕事場

 

 

数日後、眼鏡を掛けて黄羽根のローブを羽織った一夜はいつも通りに仕事場の倉庫でローブを作成する仕事をしていた。いつも通りの作業を終わらせてローブの引き取りを担当する羽根の到着をねむから渡された本を読んで待っていた。

内容はファンタジーで読む進める事に夢中になっていた。

 

 コンコン

 

 するとドアをノックする音がして一夜が覗き穴を習慣的に見た。

 そこには私服姿のみふゆが写っていた。

 

一夜「みふゆさん!?」

 

みふゆ「一夜さん。ローブの引き取りに来ました」

 

 驚いてドアを開いた一夜の眼前にみふゆと白羽根と黒羽根が1名ずつ立っていた。

 

一夜「どうしてみふゆさんが?」

 

みふゆ「驚いていますね。今日はワタシの部下を紹介したくてワタシも来ちゃいました」

 

 微笑を浮かべたみふゆはそう答えた。

 

白羽根5「会うのは初めてじゃないですけど、改めて挨拶させて貰いますか」

 

 白羽根5はそう言ってローブを脱いだ。

 

白羽根5「マギウスの翼、白羽根の一人。観鳥令だよ」

 

 それを見て黒羽根6もローブを脱ぐ動作に入った。

 

黒羽根16「じゃ私も。マギウスの翼、黒羽根の一人。牧野郁美だよー」

 

一夜「こんにちは。えっと・・・。黄羽根の一人、越馬一夜です・・・」

 

白羽根5=観鳥さん「ふーん。あなたがローブ作りを担当している一夜さんか。みふゆさんから聞いたけど、マギウスの翼では観鳥さんや、そこの牧野チャンよりも古株なんだって?」

 

一夜「はい。そうだけど・・・」

 

みふゆ「マギウスの翼に入ったのは8人目ですからかなり早いですよ」

 

黒羽根16=郁美「すごーい。じゃあ一夜ちゃんは、くみ達よりもずっと先輩って事なんだねー。くみはすっごく尊敬しちゃいますー」

 

一夜「えっ。あの・・・。アタシはそこまで大した事はして無いです・・・」

 

観鳥さん「そんな事ないよ。一夜さん。このローブが無いと羽根としての活動が難しい子だっているんだから、このローブを作っているってだけで一夜さんは凄い人だよ。取材対象として興味もあるしね」

 

一夜「取材?」

 

観鳥さん「ああ。観鳥さんはマギウスの広報担当だからね。白羽根やりつつ羽根向けのメルマガも作っているよ。一夜さんは知らないのかい?」

 

一夜「アタシ裏方だから広報の事は聞いてたけど、スマホ持ってないからメルマガの事は・・・」

 

観鳥さん「ナナツメさんが持っているから所持しているかと思ったけど意外だったね。持っていた方が便利だと思うよ」

 

みふゆ「そうですね。一夜さんにも支給出来ないかワタシが灯花たちに相談してみましょう」

 

一夜「そんな。みふゆさんにそんな事をして貰うなんて・・・」

 

みふゆ「良いんですよ。マギウスの幹部として羽根の待遇に問題があるのなら改善を提案するのもワタシの仕事ですから」

 

郁美「そうだよー。くみだって待遇や仕事に問題があったら直ぐに了ちゃんやみふゆさんに相談しているからねー」

 

一夜「へぇー。そうなんですか。アタシはいつも一人で作業してるだけだから、不満も何もなかったから」

 

みふゆ「駄目ですよ。一夜さん。それじゃ精神的に参ってしまいますよ。正直、前に反逆事件が起きる前の一夜さんは精神的に参っている様子でした。ですから今日は少し交友関係を広げて貰おうと羽根の中で信頼できる人に来て貰ったんです。一夜さんが交流している人は少な過ぎますからね」

 

一夜「そうですよね・・・」

 

観鳥さん「交流があるのって誰と誰なんだい?」

 

一夜「えっと。まず灯花様とねむ様。みふゆさんに月夜さんと月咲さん。それにナナツメさんぐらい・・・」

 

観鳥さん「最後にえらい人が入っているね・・・」

 

一夜「後は、最近会った調整屋のみたまさん位・・・」

 

郁美「うーん。くみもお少な過ぎるっておもうなー」

 

観鳥さん「一夜さんってナナツメさんとそんなに喋るのかい?正直、観鳥さんもあの人だけは取材できないからね。取り付く島もないから」

 

一夜「灯花様に頼まれて給料を渡した位かな・・・。後、この間少しだけ喋ったから・・・」

 

観鳥さん「あの人は無口過ぎるからね・・・。じゃあこれからは暇な時に観鳥さんも一夜さんの喋り相手になってあげるよ。牧野チャンも暇な時だったら相手出来るだろ?」

 

郁美「くみはぁ、お喋りなら大好きだから暇な時はいつだって歓迎だよー」

 

一夜「あっありがとうございます・・・」

 

観鳥さん「さてそれなら、今度の日曜日に一夜さんに取材を申し込みたいんだけど良いかな?」

 

一夜「えっ。アタシですか?でもそれは・・・」

 

 困った一夜はみふゆを見た。

 

みふゆ「大丈夫ですよ。広報の取材を受ける事はねむも許可しています。それにもしマギウスの活動に問題があったり余りに個人的な部分に踏み込むなら記事には載せないと観鳥さんからは聞いていますから」

 

一夜「それなら・・・。良いですよ」

 

観鳥さん「よし。決まりだね」

 

郁美「あの、良かったらくみもぉ同席しても良いですか?」

 

一夜「あっ。はい。良いですよ」

 

観鳥さん「確かに観鳥さん一人よりも牧野チャンがいてくれた方が助かるかもね。みふゆさんは?」

 

みふゆ「すみません。ワタシは生憎、その日は用事があるので参加は出来ません」

 

観鳥さん「そっか。じゃあまずは仕事を済ませようか。ローブはこの箱?」

 

一夜「はい。こっちが白羽根のローブで、こっちが黒羽根のローブです」

 

郁美「くみー。こんな荷物運べないよぉー」

 

観鳥さん「仕事なんだから、そのキャラを出す必要は無いんじゃいのかな?」

 

郁美「えー。くみはこう言う性格なんですうー」

 

みふゆ「相変わらずですね」

 

 観鳥さんと郁美のやり取りを見て微笑するみふゆ。

 

一夜「ふふ」

 

 それを見て一夜も久しぶりに笑っていた。

 

 カシャ

 

 その時、観鳥さんが持っていたカメラで一夜の事を撮っていた。

 

観鳥さん「済まないね。良い写真だったからつい撮らせて貰ったよ」

 

一夜「えっ。でもアタシの写真なんか・・・」

 

観鳥さん「良い笑顔だったよ。だから自信を持って良いと思うよ」

 

一夜「でも、この身体は・・・」

 

観鳥さん「おっと。そうだったね。その辺りの事情を含めて日曜日に聞く事にするよ。さあ牧野チャン。そこの荷物持ってフェントホープへ戻るとしようか」

 

郁美「ふぇ!?わかりましたですぅ~」

 

 郁美は観鳥さんに言われた通りに段ボールをアリナから借りたキューブに収めていた。

 観鳥さんもキューブに荷物を収めるのを見るとみふゆは

 

みふゆ「これで持って行く荷物は全てですね?」

 

 と確認をして来たので一夜は頷いた。

 

みふゆ「じゃあ皆さん。フェントホープへ戻りましょう」

 

観鳥さん、郁美、一夜「はい」

 

 

□ ホテルフェントホープ 一夜の自室 日曜日

 

 

午後になって一夜の部屋に一夜と観鳥さん、郁美が集まり椅子に座ると、まずは雑談から始めていた。

 

観鳥さん「ここが一夜さんの部屋なんだ。作りは他の部屋とは変わらないんだね」

 

一夜「ねむ様が言うには違う部屋を作るよりも同じ部屋を増やしていく方が合理的だって前に言ってました」

 

観鳥さん「成程。ねむ様らしいね」

 

郁美「でもぉ、くみはちょっと部屋が寂しすぎると思うなー。それに静か過ぎて怖い気もするぅー」

 

 郁美の言う通り、一夜の部屋には最低限の品物だけが置かれている状態だった。

 それにフェントホープの内部は殆ど音がせずに静まり返っている。

 

一夜「確かにちょっと怖い時もありますけど、慣れればどうって事無いですよ」

 

郁美「一夜ちゃんは強いねー。くみにはぁちょっと我慢できないかもぉー」

 

 それから数分間雑談してリラックスした所を見計らって観鳥さんが声を掛けた。

 

観鳥さん「さて、雑談してリラックスした所で取材を始めさせて貰おうかな。まずは名前からかな」

 

一夜「えーと。名前は越馬一夜です・・・」

 

観鳥さん「出身は何処なの?」

 

一夜「えっ?出身ですか?」

 

観鳥さん「答えたく無かったら答えなくても良いんだよ」

 

一夜「・・・」

 

郁美「一夜ちゃん。どうかしたの?」

 

 硬い表情を見せた一夜に郁美が思わず声を掛けた。

 

観鳥さん「どうしたんだい?さっきも言ったけど、答えたく無かったら答えなくても良いんだよ」

 

一夜「そうじゃなくて・・・。答えられないんです」

 

観鳥さん「?」

 

一夜「アタシ、その・・・。出身が分からないんで・・・」

 

観鳥さん「えっ?」

 

郁美「えっ?」

 

 思わず声を上げた二人に一夜は申し訳なさそうにしていた。

 

一夜「アタシここに来る前に色んな町を引っ越して暮らしてました。見滝原、風見野、あすなろ、ホオズキ、二木、松宮、宝崎。色々な場所を引っ越してアタシは母親と神浜市に来たんです・・・」

 

観鳥さん「そうだったんだ。観鳥さんとした事が悪い事を聞いちゃったね・・・」

 

郁美「私も聞いちゃってごめんなさい」

 

一夜「それに・・・。アタシ・・・」

 

観鳥さん「言いたく無かったら本当に言わなくて良いんだよ?」

 

 更に何かを話そうとする一夜を観鳥さんは制した。

 しかし一夜は自らが抱えている秘密を誰にかに話したかった。

 知っているのはマギウスとみふゆとナナツメだけ。

 だから勇気を振り絞って言った。

 

一夜「アタシ・・・。戸籍が無いんで・・・」

 

観鳥さん、郁美「!?」

 

 驚き言葉も出ない観鳥さんと郁美。

 一夜の真顔がそれを真実だと語っていた。

 

 

 




あとがき
一夜に戸籍が無いと言う設定は某刑事ドラマにそうした話があったので取り入れました。
ここでようやく郁美と観鳥さんを登場させる事が出来ました。
いくみんのセリフは書くのがすごく書くのが難しい。
書く事への刺激になる。
意欲になる。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。