完結まで書ききったので投稿します!
今日も相変わらず雨は降り続いていた。傘を軽く振って水を落とし、下駄箱に靴を入れて上履きに履き替える。
前の七不思議の話を聞いてから何となく胸騒ぎがしている…気がする。だって、旧校舎の屋上は私と零が会った場所だ。でも、誰にも話は出来ないし…この雨じゃ零も来ないだろう。
(…先生なら、相談しても平気かな…誰にも言わないでって言えば、言わないだろうし…)
思い立ったが吉日、私は図書室に向かった。
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「佐田先生…って、朝は居ないか」
図書室の中は暗かった、朝で誰も居ないし、外は雨だからだろう。壁際の電灯を全部付けるとだいぶ明るくなった。そう言えばアルバムは帰ってきたんだろうか。
「えっとアルバム…あ、あった」
昨日の内に帰ってきたらしい。2010年の卒業アルバムがきちんと並んでいた。
「…予鈴までまだあるし、どんな写真があるか見ちゃおう」
10年でイベントなんか変わらないはずだ。ペラペラとめくっていく。入学式、新入生歓迎会、マラソン大会、体育祭、修学旅行、文化祭etc…うちの高校は本当にイベントが多いなぁ、と私の手が止まった。
「え」
そこには、
「零…?」
体育祭だろうか?赤のハチマキを巻いた零によく似た少年が、笑顔で写っている。
兄弟だろうか?
兄弟じゃないよ
出した答えには即座に否定が飛んできた。だってそこにいる彼は、
一卵性の双子でもない限り、ここまで似ないだろう。そしてこのアルバムは10年前のものだ。つまり、今まで会っていた彼は?
「鶴川さん!」
振り返ると、そこには佐田先生が居た。急いできたのだろう、息が切れている。けど、それよりも
「…先生、聞いて欲しいことがあるんですけど」
「事情は分かってるわ。そこにいる男の子のことでしょう」
先生はアルバムに目をやりつつ、そう答えた。
「先生は、零のことを知ってるんですか?」
「彼は私の教え子だったの。話の続きをしなくてはね…そこに座って」
「あの、私授業が…」
時計を見ると予鈴までもう5分もない、走らないと遅刻してしまう。
「担任の先生には説明してるから大丈夫よ…まあ、仮病ということにしておいたけれど」
「は、はい…」
勝手に…いや、仮病を先生がわざわざ使うって…そこまで重大なことなのかな…零のことでも頭を悩ませつつ、私は席についた。
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「まず、昨日の話の訂正をしなくてはいけないわね…この学校の七不思議が六不思議であったのは本当よ。ただ、
「隠されていた…?」
「7番目の七不思議は
幽霊…ということは…
「零…は、死んでいるんですか?」
「…酷な話だけど、彼は死んでいるわ」
ズキッと心に痛みが走る。
「死んでいるというより…七不思議に殺されたと言った方が正しいわ」
「七不思議に…殺された?」
「旧校舎の幽霊くんは、昔は幽霊さんだった…昔、屋上から飛び降り自殺した女の子が1年にひとりずつ引っ張り続けてるらしいのよ」
そんなのおかしい。
「だって…1年に1人いなくなったら絶対に誰かの記憶に残るはずです…!そんな…」
「鶴川さん、屋上で亡くなった人達が、幽霊さんや、幽霊くんて呼ばれてるのはどうしてかわかる?」
「幽霊だからじゃないんですか?」
「…引っ張られて亡くなった人は、名前を盗られるのよ」
名前が盗られてしまう?
「じゃあつまり、零は…」
「彼の本名では無いはずよ、苗字と本当の名前があったはずなの」
「本名が、なにか鍵になるんですか?」
「零くん本人と話したところ、今まで名前を取り戻せた人は居ないようなの。つまり彼の名を取り戻して連鎖を断ち切れば、彼は開放されるはず…即ち、成仏できるわ」
「………」
零が七不思議にされているのは分かった。不本意で殺されてしまったのも分かった。助けたい…助けたいけど…
「居なくなって欲しくないのね」
思っていたことを言い当てられて顔を上げる。そりゃそうだ、零は私の悩みを解決してくれた恩人だ。たとえ生きていなくたって彼のしてくれたことは変わらない。何より、私はまだ彼と一緒に過ごしたい。でも、先生は厳しい顔をしていた。
「…あなたの命が狙われていても?」
「え」
「零くんから聞いた話だけれど、あなたは最初の幽霊さんにいたく気にいられているそうなの…なにか、危ないことにあった記憶はない?」
「危ないことなんて……そんな……」
待って、零と初めて会った時…私は…
「1回、1回だけ屋上から落ちそうになったことがあります…」
「恐らくその子の仕業ね…」
「あの、名前が盗られているってことは、先生も零の名前を思い出せないんですか?」
「ええ…彼の死を止められなかったことをあんなに悔やんでいたくせに、今は名前すら思い出せないのよ」
先生はギリッと歯を食いしばり、何も無い机の上を睨んでいた。穏やかな表情しか見せたことのない先生も、こんな顔をするんだ。死を止められなかったって言うのは…
「…えっと…」
「あ…4階で男の子同士の喧嘩では無いのよ、あなたが関わっているなんて嫌でも想像したくなかったから…」
男の子同士の喧嘩で起きた不幸な事故…ではないということは
「零は…自ら死にに行ったんですか…?」
「…そこも…説明しておかないといけないかしら…?」
そう言った時の先生の顔は、何時になくやるせないような、悲しい顔をしていた。
「…いえ、零の名前を見つけるのが先ですね。先生、アテはあるんですか」
「…名前は盗られるけど、七不思議とはいえ世界全てに大きく影響する力を持ってはいないはずよ。卒アルに零くんのことは載せられなかったけれど…他のものに彼の名前が載っている可能性はあるわ」
例えば…名簿とかかな。
「先生、名簿は…?」
「卒業生名簿ならあるけど…載ってるかしらね…探しておくわ」
あとは…
「零の持ち物って…もう残ってないですよね…」
「そうねぇ…」
10年前の教科書とか残ってるんだろうか…
「一応持ち物を探して…あとは10年前からいる先生から手がかりを…」
私は一応仮病を使って休んでいることになっているのだから不用意に動けない、それに休む理由が『隠されていた七不思議に殺されそう』なんて信じてもらえるわけが無い、もれなく病院行きだ。
つまり図書室という狭い空間で制限されつつ、失敗したら死ぬミッションをこなさなければならないわけだ。セーブもできない、復活もできない…あれ?これ無理ゲーな気がするけど
_生憎、ゲームは得意な方だ_