本当にありがとうございます!頑張りますね!
「いったぁ…」
普通に痛い、いきなり引っ張られたんだから当たり前だけど。どこの誰だか知らないが文句のひとつくらい言ってもバチは当たらないだろう。言おうと口を開いたところで_
「何しようとしてるんだよ!そんなことしても誰も喜ばないぞ!」
「…は?」
目の前の少年_おそらく私を思い切り引っ張って尻餅をつかせた本人に私は怒られた、なんで?
「あんたにどんな辛いことがあったか俺は知らないけどさ、そんなの良くないだろ!」
あぁ、なんとなく状況は理解した。多分彼は私が下に落ちてる何かを見ようとして身を乗り出したのを飛び降りようとしたと勘違いしたんだ。そして、見ず知らずの私に怒りの色を露わにして、私のために怒ってくれてるんだ。優しいなぁ。
「別に、そんなんじゃないよ。ただ下に何か落ちてたから何かなって思って見ただけ」
理由を説明したし、これで彼も納得してくれるだろう。さて_
「本当に?」
「なんでこんなことで君に嘘つく必要があるの?」
「…」
彼は普通に下を覗き込んで
「…何処にも何も落ちてないけど…?」
「そんなはずない、この数分の間で物が消えるわけ…」
でも確かに下には何も無い、ここは校舎の裏側だし基本誰も通らない。誰かか通るんだったら絶対に何かしら音がするはずだ。さっき光ったなにかは跡形もなく消えている。
「…で?どういうこと?」
「いやいやいやっ!ほんとにあったの!なんか光るやつ!鍵かなんか多分そういうものが!」
腕を組んでじっとりとこちらを見つめる少年に、私はとりあえず弁明する。明らかに嘘をついたと疑われてしまっている、やばい。
「でも、なんか悩んでるだろ?」
「…え?」
さっきのジト目とは明らかに違って、焦げ茶色の瞳には心配そうな色が宿っていた。眉を下げてこっちを見ている。
「…さっき言ってたじゃん。帰りたくないとか、このままで大丈夫なのかとか…」
「…聞いてたの?」
正直、ここの屋上には私1人だけだと思っていたから…あの大きな独り言をまるまる聞かれていたのかと思うと、だいぶ恥ずかしい。
「んー、実は俺そこの梯子のぼったとこで昼寝するのが好きなんだ。今日もそこで昼寝して、起きたらいきなり帰りたくないなぁって聞こえたから…」
「…」
確かにドアを開けたところには梯子があって、上にスペースがある。倉庫的な何かがあるんだろうか。私はいつも図書室に寄って来るからそれより前に彼は来てたんだ。だから今まで気づかなかったのかもしれない。
「だからさ、俺で良ければ話くらい聞くよ?」
「…たまたま今日は帰りたくなかっただけだよ、そんな時くらいあるでしょ?」
「…まあそうだけどさ…」
「でしょ?」
ダメだな、私ったらいつもこうだ。面倒なことから逃げて、嘘ばっかりついて。親切にしてくれてるのに、でも初対面の人から色々聞かされても困るでしょ?無理に笑ってるのバレてないかな。きっと、こんなんだから
「じゃあ、あんたの名前は?」
「え?」
私のネガティブになりがちな思考を中断させてくれたのはありがたいけど…名前?なんで?
「俺は
「…南海、鶴川南海」
「そっか、それじゃあ俺明日も来るから、またな」
そう言うと少年もとい零は、手ぶらで屋上から出ていってしまった。
「…なんにも言われなかった、もっとぐいぐい聞いてくると思ってたのに」
と言うか普通に手ぶらで屋上から出てったけど鞄とかどうしてるんだろう、梯子をのぼって確認してみたけど特に荷物らしいものはなかった。教室にかけっぱなしなタイプかな、危ないのに…まあいいけど。
「…なんか、疲れたな。今日はもう帰ろう」
そう呟くと、なんとなく帰る気になれた。最終下校のチャイムをどこか遠くに聞きながら私は屋上を出た。